堀北鈴音は二度目の高校生活を諦めない   作:ほりきたすずね

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 無人島試験で獲得したポイントの詳細を載せておくので、興味のある方はご覧ください。

 【1位】Dクラス:290
 初期ポイント残り:80
 スポット占有ポイント:120
 リーダー指名成功:90
 リーダー指名失敗:0
 他クラスからの指名:0
 
 【2位】Aクラス:230
 初期ポイント残り:250
 スポット占有ポイント:160(無効)
 リーダー指名成功:30
 リーダー指名失敗:-20
 他クラスからの指名:-30
 
 【3位】Bクラス:40
 初期ポイント残り:150
 スポット占有ポイント:90(無効)
 リーダー指名成功:0
 リーダー指名失敗:-20
 他クラスからの指名:-90

 【4位】Cクラス:0
 初期ポイント残り:0
 スポット占有ポイント:0(無効)
 リーダー指名成功:30
 リーダー指名失敗:-20
 他クラスからの指名:-30


 無人島試験の結果を受けて、クラスポイントはこのようになりました。

 Aクラス:1270
 Bクラス:790
 Cクラス:590(Aクラスとの契約により、毎月一人2万PP)
 Dクラス:490

 いや~、Dクラスがいい感じに迫って来ましたねぇ。
 この勢いに乗って、船上試験でも大暴れしてやるぜ!





第25話:新たな始まり

 

 

 

 

 試験が、終了した日の夕方。

 

 堀北は、デッキで一人、海を眺めていた。

 

 夕日が、水平線を赤く染めている。

 

 潮風が、髪を優しく揺らす。

 

 船は学校へと向かわず、その場に停泊したままだ。

 

 生徒たちは、試験から解放されて、自由気ままにはしゃいでいる。

 

 その様子を眺めていると、無人島での七日間が、まるで夢のように感じられた。

 

 龍園の妨害、クラスの分裂、そして――仲間との和解。

 

 様々なことがあった。

 

 だが、全てを乗り越え、Dクラスは見事一位を獲得した。

 

 結果は前回と同じだが、内容はクラスにとって、より意義のあるものとなった。

 

 堀北は、静かに海を見つめながら、次の試験のことを考えていた。

 

 前回の記憶では、無人島試験の後に、船内でも特別試験があったはずだ。

 

 「優待者」を探る人狼ゲーム。

 

 無人島試験とは一味違った、難しい試験。

 

 生徒同士が疑心暗鬼になり、人間関係に亀裂が入る。

 

 ただし、ポイントが大量にもらえる試験でもあった。

 

 優待者の法則さえ分かってしまえば、試験を優位に進めることも出来る。

 

 試験のからくりを理解している堀北にとって、こんなに美味しい試験もない。

 

 

 

「よお」

 

 

 

 声がして、振り返る。

 

 龍園が、立っていた。

 

 夕日を背に、不敵な笑みを浮かべている。

 

 

 

「龍園くん」

 

「随分とやってくれたな、鈴音」

 

「気安く名前で呼ばないで」

 

 

 

 ほとんど初対面だというのに、相変わらず馴れ馴れしい。

 

 堀北は嫌そうな顔をするが、龍園は気にした様子もない。

 

 むしろ、その反応を楽しんでいるようだった。

 

 

 

「まさか俺の罠を見破るとはな。大したもんだぜ」

 

 

 

 龍園が、堀北の隣に立つ。

 

 船の手すりに寄りかかり、海を見つめる。

 

 

 

「……あなたの性格を考えれば、当然の結論よ」

 

「そうかよ。他の連中は全員騙されたってのにな。Aクラスも、Bクラスも、まんまと引っかかった。だが、お前だけが俺を読み切った」

 

 

 

 龍園が、自嘲するように笑う。

 

 

 

「伊吹と真鍋には、わざと「聞かせる」ように会話させた。誰かが盗み聞きしやすいような場所で、わざとな」

 

「知ってるわ。だから、あなた自身がリーダーだと判断した」

 

「クク……俺は、誰も信用しねぇ。クラスの命運を握るリーダーなんて、他人に任せるはずがねぇ。お前は、そこまで読んだってわけか」

 

「ええ。あなたほど疑り深い人間なら、当然そうするでしょう」

 

 

 

 龍園は、しばらく堀北を見つめていた。

 

 その目には、値踏みするような光がある。

 

 獲物を見定める、獣のような目だ。

 

 そして――笑みを深めた。

 

 

 

「お前は面白い女だ、鈴音。俺の獲物として、最高だぜ」

 

「私は、あなたの獲物じゃないわ」

 

 

 

 堀北は、真っ直ぐに龍園を見返した。

 

 もう、怯えない。

 

 この男の罠を見破り、完全勝利を収めた。

 

 仲間と協力すれば、どんな相手にも対抗できる。

 

 それを、無人島試験で証明した。

 

 

 

「ハッ、言うじゃねぇか」

 

 

 

 龍園が、一歩近づく。

 

 その威圧感は、相変わらず凄まじい。

 

 だが、堀北は一歩も退かなかった。

 

 

 

「だが、勘違いするなよ。今回は、お前の勝ちだが、次は俺が勝つ」

 

「楽しみにしてるわ」

 

 

 

 堀北は、真っ直ぐに龍園を見据えた。

 

 龍園は、その視線を受け止めて、さらに笑みを深めた。

 

 

 

「いい目だ。ますます気に入ったぜ」

 

 

 

 龍園は、それだけ言って踵を返した。

 

 だが――

 

 

 

「最後に、一つだけ聞かせてちょうだい」

 

 

 

 堀北は、龍園を呼び止めた。

 

 

 

「Dクラスのキャンプを荒らしたのは、あなたなのよね?」

 

 

 

 龍園が、足を止める。

 

 振り返らない。

 

 しばらくの沈黙。

 

 潮風だけが、二人の間を吹き抜ける。

 

 

 

「……さあな」

 

 

 

 龍園は、とぼけるように曖昧に答えた。

 

 そして、振り返ることなく去っていった。

 

 その背中が、夕日の中に消えていく。

 

 堀北は、その背中を見送った。

 

 彼が犯人だという証拠はない。

 

 だが、恐らく間違いないだろう。

 

 龍園翔。

 

 この男との戦いは、まだ始まったばかりだ。

 

 

 

「大丈夫か」

 

 

 

 声がして、振り返る。

 

 綾小路が、立っていた。

 

 いつからそこにいたのか。

 

 相変わらず、気配を消すのが上手い。

 

 

 

「ええ。大丈夫よ」

 

「龍園と何を話していたんだ?」

 

「試験の話よ。少しだけだけど」

 

「そうか」

 

 

 

 綾小路が、堀北の隣に立つ。

 

 二人で、夕日に染まる海を眺める。

 

 

 

「龍園は、お前を狙ってくるだろうな。これからも」

 

「分かってる。でも、怖くないわ」

 

 

 

 堀北は、綾小路を見た。

 

 

 

「あなたがいるから」

 

 

 

 綾小路は、少し驚いた顔をした。

 

 その表情は、いつもの無表情とは違う。

 

 僅かに、困惑しているようにも見えた。

 

 そして、小さく笑った。

 

 

 

「……そうか」

 

 

 

 二人は、並んで夕日を眺めた。

 

 潮風が、心地よく頬を撫でる。

 

 波の音が、静かに響いている。

 

 

 

「次は、船上試験ね」

 

 

 

 堀北が、呟いた。

 

 

 

「船上試験? 前回はあったのか?」

 

「ええ。無人島試験の後に、船内で特別試験があったの。人狼ゲームのような試験がね」

 

「……二つ目の特別試験、それも人狼ゲームか」

 

 

 

 綾小路は、少し考え込んだ。

 

 

 

「今度は、ルールが変わってないといいな」

 

「そうね。でも、あまり期待はしていないわ」

 

 

 

 堀北は、海を見つめた。

 

 夕日が、水平線に沈もうとしている。

 

 空が、茜色から紫色へと変わっていく。

 

 

 

「これからは、何が起こってもおかしくない。前回の記憶に頼ることは、もうできない」

 

「……不安か?」

 

「少しね。でも、それ以上に――」

 

 

 

 堀北は、微笑んだ。

 

 それは、いつも以上に、晴れやかな微笑みだった。

 

 

 

「解放感があるの」

 

「解放感?」

 

「ええ。もう、「前回はこうだった」と縛られなくていい。自分で考えて、自分で決めて、自分で戦える」

 

 

 

 堀北は、深呼吸をした。

 

 潮風を、胸いっぱいに吸い込む。

 

 

 

「前回の私は、ずっと一人で戦っていた。兄を追いかけることしか考えていなくて、クラスメイトのことなんて、ほとんど見ていなかった」

 

「……」

 

「でも、今回は違う。私には、仲間がいる。一緒に戦ってくれる人たちがいる」

 

 

 

 堀北は、綾小路を見た。

 

 

 

「あなたも、その一人よ」

 

 

 

 綾小路は、少し黙った。

 

 そして、頷いた。

 

 

 

「……そうか」

 

「もう、前回の知識に頼らない。これからは、今の私として、今の仲間と一緒に戦っていく」

 

 

 

 堀北は、決意を新たにした。

 

 

 

「だから、怖くないわ。未来が変わっても、私たちは前に進める」

 

「……それなら、いいんじゃないか」

 

 

 

 綾小路が、小さく笑った。

 

 

 

「お前は、どんどん変わっていくな」

 

「そうかしら?」

 

「ああ。入学した頃のお前とは、また別人のようだ」

 

「……そうね。私も、そう思うわ」

 

 

 

 堀北は、微笑んだ。

 

 前回の堀北鈴音は、孤高の存在だった。

 

 でも、今回は違う。

 

 綾小路がいる。

 

 須藤がいる。

 

 軽井沢がいる。

 

 平田がいる。

 

 無人島試験を乗り越えた、クラスメイトがいる。

 

 みんな、一緒に戦ってくれる仲間だ。

 

 

 

「これからも、色々あるだろうな」

 

「そうね。でも、乗り越えられるわ」

 

 

 

 堀北は、夕日を見つめた。

 

 

 

「今度こそ、Aクラスに昇り詰める。そして、兄さんに認めてもらう」

 

「お前なら、できるだろう」

 

「一人では無理よ。でも、みんなと一緒なら」

 

 

 

 堀北は、綾小路を見た。

 

 

 

「ねえ、綾小路くん」

 

「何だ?」

 

「これからも、一緒に戦ってくれる?」

 

 

 

 綾小路は、少し戸惑っていた。

 

 だがすぐに、小さく笑った。

 

 

 

「……ああ。約束する」

 

「ありがとう」

 

 

 

 夕日が、水平線に沈んでいく。

 

 空が、紫色から藍色へと変わっていく。

 

 星が、一つ、二つと輝き始める。

 

 特別試験を一つ、乗り越えた。

 

 だが、高校生活はまだ続く。

 

 乗り越えるべきことは、山ほどある。

 

 前回の知識は、もはや完全に通用しない。

 

 でも、一人じゃない。

 

 仲間がいる。

 

 信じられる人がいる。

 

 堀北は、そう思いながら、星空を見上げた。

 

 新しい未来が、始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 一週間後。

 

 船は、学校に到着しようとしていた。

 

 堀北は、再びデッキに立っていた。

 

 遠くに、学校の建物が見える。

 

 

 

「……何もなかったわね」

 

 

 

 堀北は、呟いた。

 

 この一週間、船内では何も起きなかった。

 

 生徒たちは、豪華客船を満喫するだけの日々を過ごした。

 

 プールで泳ぎ、レストランで食事を楽しみ、娯楽施設で遊びつくした。

 

 まるで、本当のバカンスのように。

 

 そして――船上試験は、行われなかった。

 

 

 

 

 

 

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