転生特典《防御完全無視》で異世界を生きる~冒険者組合の直属冒険者です。二つ名が【人狩者】になりました~   作:KNa\

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11冒険者(ハンター)合格とネタバラシ

 

 

 

「……はらへった」

 

 

やぁ、のっけからどうも。俺だ。死力を尽くして試験を突破して、そのままぶっ倒れていた出稲(いずな)宇井(うい)だ。

 

現在俺は目を覚まし、冒険者組合(ギルド)の救護室のベッドに腰掛けているところだ。ちなみに着ている服が病院で借りるタイプのゆったりした上下二枚の服に代わっていた。冒頭通りにお腹が空いてはいるが、ここにはご飯の類はないので、大人しく座ってるくらいしかできない。

 

さて、ここが救護室といっても、その様相はそこまで物々しい感じはない。清潔なベッドが沢山あって、それらがカーテンで仕切られてる……わかりやすく言ったら広くなった学校の保健室だな。ちなみに俺がいるは出入口近くの窓側のベッド。利用者は今のところ俺だけみたいで貸し切り状態になっている。

 

そして俺が倒れてからこうして目を覚ますまでに、大体四時間弱ほど経過しているらしい。現在時刻は見事に夜だ。窓の外では空の色も切り替わり、日中のような煌々とした光は届かない。今は丸くて大きな月鏡の反射光が、代行して街を照らしていた。

 

まぁこの世界の月光がどんな理屈なのかは知らんけど。もしかしたら平面天動説もあり得るかも知らんね。転生してからまだ二日目の俺は、未だに知らないことだらけである。

 

人に聞けばいいって?仮にもそれで異端者にはなりたくないねんなぁ。

 

そもそも地動説が正しき異端だったとして、俺は証明できる程賢くないし……それにズィール神父に裁かれる可能性とか勘弁なんだわ、次に会うときは普通にお菓子食いながらお喋りがしたい。普通に生きる分には、地が動こうと天が動こうとどうでもいいことなのだ。異端じゃない可能性もあるが、危ない橋はあんまり渡らないようにしたい。

 

そんなことを考えながら窓の外を見つめている俺である。ちょっと暇だなと、そう思っていた時、丁度救護室の扉が開く音がした。俺は目線を窓から外しておかえりーと声をかける。

 

 

「あ、えと、ただいま?でいいんですかね?……体の調子はどうでしょうか、イズナくん」

 

 

俺の声掛けにそう返しながら部屋に入ってきたのは、冒険者組合(ギルド)職員であるフォウ・ソーヤさんだ。その両手に奇麗に畳まれた俺の制服を持っていた彼女は、右の眉尻を心配そうにへなりと下げて問いかけてきた。

 

まぁつまり、俺が目を覚ましたのを確認した後、寝起きの俺の代わりに服を取りに行ってくれていたわけである。

 

 

「ん。おかげさんで痛みとかはないかな。魔法って凄いねフォウさん」

 

「一応、聖属性は得意な方だから……コレ返しますね、どうぞ」

 

 

腕をぐるぐる回しながら答えると、フォウさんはほっとしたように笑った。お察しかもしれないが、俺の治療をしたのはフォウさんらしい。凄いありがたいわマジで。

 

……実際魔法って凄い、あれだけ限界ギリギリで動いてたのに、たった四時間弱寝てただけで回復している。腹に食らった蹴りの痛みも、全力を繰り返した手首や肩の関節の痛みも残ってないのだ。効力が高すぎて若干不安になるくらいだ。

 

そんなことを考えながら、手渡された制服を受け取る。新品同様とはいかずともクリーニングおろしたてくらいにはまっさらである。手元に寄せて嗅いでみるが、汗やら土やらの臭いもない。

 

 

「すっげ、あんだけ汚かったのに……これも魔法?」

 

「やったのは私じゃなくてボムさんですけど……確か、水属性と風属性、それと火属性の魔法を少し……?」

 

「ほーん……便利なんだなぁ、魔法」

 

 

フォウさんに聞けば、なんと洗濯をしてくれたのはあのボム・ストキラエさんだったらしい……今回の試験が結構苛烈だったから、怒られて雑用的なのをやっているとかなんとか。

 

というか魔法を三つも使ったのか……便利とか言っちゃったけど、三位一体の洗濯魔法ってすげえ贅沢に思えてきたな?それとも異世界だと普通なのか?

 

そんなことを考えてながら服を広げていると、ふとシャツのポケットに硬質な感触があることに気が付いた。はて、木製ナイフの破片でも入ったかと思いつつ、取り出してみる。

 

 

「んー?木の……札?」

 

 

入っていたのは、言った通りの木製の札だった。長さが大体指一本、幅は一本半くらいの長方形の木の板だ。そして短い辺の一方に頑丈そうな紐が、輪っかになるよう括り付けられている。

 

ただの板か?とも思ったが、それなら紐なんぞ要らないだろう。こすれた指が裏面に引っ掛かりを感じて、俺はくるりと板をひっくり返してみる。

 

 

「……コレって」

 

 

そこには文字が載っていた。「【木札級(ウッド)】イズナ・ウイ」という文字が、その木の札には書かれていた。

 

俺はバッと顔を上げて、フォウさんのほうを見る。隠れていない右の瞳と目が合うと、フォウさんはにこりと優しく微笑んで、口を開いてこう言った。

 

 

「試験合格、おめでとうございます。今日から立派な冒険者(ハンター)ですね」

 

「合……格?」

 

「はい、合格です。イズナくん」

 

 

フォウさんは俺を見ながら笑っている。ほんの少しの微笑だけど。

 

突然の合格発表に、気持ちの整理が追い付かない。俺はボケっとしながら、手の中の文字とフォウさんとを交互に見る。

 

しかし何度見直したって変わらない。フォウさんは変わらずそこにいるし、札の文字は消えたりしなかった。つまりはきっと、これは所謂そういうわけで。

 

 

「合格、そっか合格か……はぁ~……!」

 

 

俺は両手を天井に掲げながら、勢いよくベッドに背中を倒す。指先に挟んだその証を両手でつまみ、またもう一度文字を見て、ようやく。実感というものが徐々に徐々に湧いてくる。

 

こんな感覚は久しぶりな気がする。サプライズとか受けた時の、時間差で理解できる喜びだ。いつからだったろうか、誕生日を祝って貰えるものと覚えて、喜ぶ準備が出来るようになったのは。部活の先発に選ばれるときに、大声を上げなくなったのは。費やした勉強の点数が、友達とジュース一本の賭け道具になったのは……。

 

喜びが予測可能に変わった瞬間なんて、いちいち覚えているわけがない。しかしやはり。何度だって味わいたくなるものだ。意識の隙間に入り込む、驚きと高揚と大きな歓喜を。体の底から湧き出してくる、予測不能の感情の発露を。

 

口の端が勝手に弧を描き、腹筋が縮んで胴体を締め付ける感覚。肺を押しつぶして抜ける空気が鼻を通って、飲み込んだ唾液が食道を通る感触。

 

気持ちが良い、心地が良い、気分が良くて(こころよ)い。

 

 

「~~~よっしゃぁ!!」

 

 

俺はそれらの気持ちを噛み締めて、叫ぶ。勝ち取ったと、そう言い切れるだけの成果を、声と一緒に拳の中に握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

……そのあと、救護室の外にスタンバってたらしいレイン、アイナさん、ギーツさんが入ってきてめちゃくちゃ恥ずかしい思いをした。

 

フォウさんが服を取りに行くついでに、待機していた三人に目が覚めたことを伝えていたらしい。制服に冒険者(ハンター)の証である冒険者認識票(タグプレート)……通称タグを入れる試案はレインが出したそうだ。そして三人は救護室の前で待機していた、と。なるほどね。

 

つまりは俺の喜びの声は、三人に筒抜けだったわけである!この場にいるのがフォウさんと二人だけだからと油断していた……!

 

しかも。

 

 

「嬉しそうで何よりね、おめでとうイズナ。まさか試験官に勝っちゃうとは思わなかったわ」

 

「ギリッギリだったけどな、ま、大金星だし妥当な喜びだろ……合格おめでとさん、イズナ」

 

「……俺はあまり凝ったことは言えんが……二人の言ったとおりだ。誇っていい成果だった。おめでとう、イズナ」

 

 

そうやって笑いながら、しかし全員が本心からの「おめでとう」を送ってくれたのも恥ずかしさに拍車をかけんだよなぁ!!

 

 

「うぐぐ……!あぁもう!いったん全員出てってくれぇ!!」

 

 

そう叫んで布団に潜りこんだのは、仕方ないことじゃあないかと思う。感謝の言葉はすまんが後に言わせてくれ。せめて緩んだ口端が、まともに言葉を結べるくらいになってから。

 

離れていく四人分の足音と、部屋の扉の閉まる音を聞いて、ようやく俺はベッドから抜け出した。見回しても誰もいない。救護室にはぽつんと一人だ。

 

とりあえず、着替えるかな。

 

俺はそう決めて動き出した。出来れば着替えが終わる頃には、この羞恥も消えてて欲しいなぁ。と、そんなことを祈りながら。

 

 

 

 

 

 

さて。

 

 

さて、である。驚き→喜び→羞恥→切替で感情のジェットコースターを経た俺だ。出稲(いずな)宇井(うい)だ。現在俺たち五人は冒険者組合(ギルド)を後にして、夜の街へと繰り出している……まぁぶっちゃけ飯屋だ。もう夕飯の時間だしね。

 

着替えを終わらせた後、レイン達の立案で俺の祝賀会を行うことになったのだ。ちなみにフォウさんも一緒にいる。アイナさんが誘ったのだ。俺の治療で本日分の業務は終わっていたらしく、かなり遠慮した様子だったが、誘いに頷いてくれていた。

 

……アイナさんは、ついでに最終試験手配担当のボムさんにも声かけていたらしいが「遠慮しておきますねぇ、面倒なので」と断られたらしい。ブレねぇなあの人。

 

とまぁ、そんなわけで現在俺たち五人は、街の少し外周よりの飯屋【食事処ナンブ】に入っていた。今いるのは完全個室の部屋だ。

 

ちなみに席は俺の両隣にレインとギーツさん。向かいの席にフォウさんとアイナさんが座っている。勝手に料理が出てくるタイプの店らしい……高そうだな、とは思いつつも、楽しまなければ損である。祝ってくれるとのことなんだし、気にするほうが失礼かとそう考えて、俺は料理に舌鼓を打っている。来るときには若干遠慮していたフォウさんも次第に料理に手を伸ばし……いや、全然手ぇ付けてねぇな、小食なのか?

 

まぁ人の事情は置いておいて、一皿ずつが大きいので、誰かが食べ損ねるということはないらしい。各々が適度に手を伸ばしては食事をつまんでいる。

 

そんな中、ギーツさんがひょとこんな話を俺に振ってきた。

 

 

「……そういえばイズナ。今回の試験。なぜ降参をしなかった?はなから勝算があったのか?」

 

「ほん?……あーいや、勝算はほぼ無かったかな。降参しなかった理由は……まぁ、負けたくなかったから?」

 

 

俺は当然のようにそう答えた。いや、知っている。降参が出来たことくらいは知っている。ボムさんからも危ないと思ったらそうするよう言われていたし……頭に明確に浮かんだのは、走馬灯を見た時だけど。

 

しかしまぁ、俺の渾身の一撃が片手で受け止められていて、攻撃がマトモに通じなかった時点で降参の選択肢はあった。明確な力不足、手加減されてなお響くくスーメイクの攻撃、唯一虚を付けていたスピードと体捌きも、すぐさま対応してくる技術の差に、終盤まで全く使えなかった転生特典……思い返せばマジで勝算も勝ち目も無さすぎるな?

 

ただそれでも参ったをしなかった理由なんて、安っぽいプライドでしかない。試験に合格したかった、というよりは俺の恩人たちを馬鹿にしたスーメイクに、何もできずに「負けました」と言いたくなかったからである。理由は本人たちに言ったりしないけども。恥ずいし。

 

そうやってぼかして答えると、ギーツさんは「そうか……」と言って食事に戻る。その隙間にするりと声を入れ込んだのは、向かいの席のアイナさんだ。

 

 

「確かに負けん気は必要だけど、冒険者(ハンター)には引き際の見極めも必要よイズナ。それで死んじゃったら元も子もないわ……それと、言い出すなら早いほうがいいわよ、フォウ?」

 

「!、そう……ですね……」

 

 

俺に対して助言していたはずのアイナさんは、なぜか突然隣に座るフォウさんにも言葉を投げる。なんだろう、サプライズか?にしてはフォウさんの様子は少しくらい気がするが……そんなこと思っていると。

 

 

「……あの、私、イズナくんに謝りたいことがあります」

 

 

意を決したようにフォウさんはそう言ってきた。どうやらサプライズって感じじゃない。しかし、謝られることなんてあっただろうか?むしろ世話になりっぱなしな記憶しかないんだけども。

 

そうは思いつつも、フォウさんは割と真剣な声である。ふむ?食指が進んでないと思ったけど、食が細い以外の理由がありそうだ。

 

俺はそう推測して、フォウさんの言葉を待つことにした。両隣のレインもギーツさんも、空気を読んで黙っている……アイナさんは酒を飲みつつ黙っている。

 

 

「実は、試験についてイズナくんに黙っていたことがあるんです……」

 

「ほん……?」

 

冒険者(ハンター)試験の結果で重視するのは、実技や実戦じゃなくて学科の方で……多少実技の結果が良くなくても、学科で大きな問題がなければ評価は変わらないんです」

 

 

ゆっくりと、しかし俺にも聞こえやすいように、フォウさんは語りだす。

 

 

「……いえ、というよりも極論を言ってしまうなら、大きな犯罪歴がない人であれば、どなたでも冒険者(ハンター)になれるんです。知識面で引っかかる部分は予習して受けなおせるし……実技も同じで、最初は不慣れでも仕事をこなすうちに、だんだんと覚えていくものなので」

 

「なるほど……?」

 

「だから最終試験では降参しても全く問題がないんです。合否には関係ないので……でも、私、それをイズナくんに伝えられなくて」

 

「……」

 

「だから、ごめんなさい。イズナくん……私のせいで、あんなにボロボロに」

 

 

そして俺はフォウさんに申し訳なさそうに謝られた。フォウさんは右の瞳を苦しそうに細めて今にも泣きそうになっている。

 

どうやら、そこまで俺に対する罪悪感を抱えていたらしい。自分が合否の基準を伝えたなかったから、俺が頑張りすぎたんだと、そう考えてしまったのか。

 

思い直せば、フォウさんの様子は俺が起きた時から少し暗かった気もする。よく観察すれば分かったはずだが、他の人の様子に気が回すことをしていなかったな……と、俺は少し反省する。

 

 

「あー、ちょっといいか、イズナ」

 

 

そこへ割り込んで来たのは、黙していたはずの隣のレインだ。

 

 

「なん?」

 

「……一応言っておくが、あんまり嬢ちゃんを恨まんでやってくれ。冒険者組合(ギルド)の職員は、冒険者(ハンター)に対しての評価を、他人に漏らしちゃいけないんだわ」

 

 

どうやら反省の沈黙が変な意味にとられたっぽく、レインが擁護に入ってきた……これこの感じ、俺以外の三人はフォウさんが悩んでたの知ってたな?個室の店を選んだのも、変な横やりが入らないようにする為か。

 

勘違いしないでほしいものだ。俺にフォウさんを恨む理由なんて欠片もない。変な空気を断ち切るために、俺は努めて気楽な声で、フォウさんの発言に言葉を被せた。

 

 

「いや、恨む気なんてこれっぽちもないぞ?……というかフォウさん、筆記の後に『これでおしまいです。お疲れさまでした!』って言ってたよな。そのあと胡麻化すみたいに筆記は~とか付け足してたし。ホントは俺があそこで察するべきだった」

 

「いや、でも……」

 

 

食い下がるフォウさん。しかし俺はそれを無視して言葉を続ける。そもそも違うのだ。俺が降参しなかった理由は試験に合格したかったからじゃない。負けたくなかったから、なんてのは方便だ。

 

 

「……それに、実際俺が降参しなかった理由なんて、推薦してくれたアイナさん達を馬鹿にしたスーメイクに、どうしても一発ぶち込まないと気が済まなかったからだし」

 

 

俺はそのままの勢いで本音を吐いた。恩人が馬鹿にされたことに苛立っていて、どうにか一発やり返したかった。なんて言ってしまうのは、結構恥ずかしい話ではあるのだが。

 

 

「……だから降参しなかったのはこっちの問題。そもそも俺が売った喧嘩だし……けどまぁ、言っておく。許すよ、フォウさんのこと」

 

 

俺の言葉に顔を上げたフォウさんは、いまだに暗い顔だ。いやしかし、それも当然か。

 

この世界のことは知らないけど、フォウさんはまだ17歳。つまり俺の一個上でしかないわけで……少し仲良くなった同年代が、ただの試験なんかで無意味に死にかけたら……しかもそれが自分のせいだと考えたら、そりゃあ罪悪感湧くに決まってるわな。

 

 

「というか一応、今回ってお祝いなんだろ?……できれば『ごめん』とかより、『おめでとう!』とか『すごい!』とかが聞きたいなぁ?」

 

 

俺はわざとらしくそう言った。俺の祝いの食事の席だって言うのなら、暗くなられるよりは明るく褒めてほしいものだろう。

 

 

「……そっ、か……そう、だよね」

 

 

俺の言葉を受けて、フォウさんはそう言ってから大きく一つ深呼吸をした。パチリと開いた右の瞳が、改めて俺へとまっすぐ向けられる。

 

 

「……最終試験の目的は、殆ど洗礼のようなものなんです。これから進む冒険者(ハンター)の道には、絶対に自分より強い相手が現れる……それが魔物なのか、ヒトなのかはわからないけど……その時に絶望して折れてしまわないよう、経験を積ませる……そういう目的なんです。試験の担当が灰石級(ストーン)以下になっているのは、試験を受ける人が、辛うじて逃げたり、防御したりし得る力量差がそれくらいだから。つまりは最終試験は、負けるか途中で降参することが前提の難易度、なの」

 

「そうなんだ」

 

「そう。だからね、試験とはいえその相手に勝つっていうのは凄い事だよ……イズナくん」

 

 

フォウさんはその顔に笑みを浮かべる。今度は遠慮しがちな微笑みではなく、ニコリと明るく朗らかに笑って俺を見た。

 

 

「改めて言わせてね……合格おめでとう!頑張ってて凄かった!」

 

「ありがとう、フォウさん。自分でもめっちゃ頑張ったと思ってる……!」

 

 

つられて俺も笑って言ってみると、なんだか妙な気恥しさがやってくる。端的に言ったら「試験頑張ったからちゃんと誉めてほしいなぁ」(チラチラ)って言ったのと同じだし……あ、クッソ恥ずいなこれ!?

 

しかし、ここまで雰囲気を読んでくれた人達が、この空気を放っておくわけもないのである。円満な解決だと見た途端に、その場に声が差し込まれた。

 

 

「よーし!これで何とか万事解決ね!さぁさぁ!ようやく本番よー!好きなだけ飲んでいきましょう!」

 

「はぁ~やっとかよ。静かに飯食うのには飽き飽きしたたとこだ、オラ!イズナも嬢ちゃんも、切り替えてけよ!」

 

「……一件落着といったところか。すぐに騒ぐ、というのは難しいかも知らんが。アイナたちの言うとおりだ二人とも。祝いの席くらい楽しむと良い」

 

 

両隣と斜め向かいから、そうやって三者三様に声をかけてくる。

 

 

「呆けてんなよイズナ。今日はお前が顔だろ?率先して飲んで食って騒げや!そのための個室だからなぁ!」

 

「フォウもそーよ!今日は私が誘ったんだから、一緒に楽しみましょう!はいコレ!」

 

 

テンション上げてけ!といった感じのレインやアイナさんは、その手に料理や飲み物をもって、俺やフォウさんに向けてぐいぐいと押し付けてきた。一人しずかめなギーツさんも、二枚の取り分け皿へと料理を手際よく分けてくれている。

 

これが気遣いだということくらい、言われずとも分かっている。流れには従ったほうが良いものだ。

 

俺はレインから受け取った肉を行儀も気にせずかぶり付き、肉を剥いで飲み込んだ。「美味ぇ!」と声を上げて見せれば、同じ立場のフォウさんも後に続く。

 

フォウさんは手渡されたジョッキを両手に持って一気に飲み干す。俺に倣ってなのか「美味しいです!」と言って見せれば、二人分の羞恥心なんてどこ吹く風。その場は祝いの食事の雰囲気へと飲み込まれた。

 

 

そこからは、特筆するべきこともないだろう。俺たち五人は食べて飲んで、話して笑った。

 

 

レインが俺が勝ったのは指導者がよかったおかげだと言ってふんぞり返ったり。アイナさんがフォウさんと酒の飲み比べをして普通に大差で負けたり。ギーツさんが俺に何か聞こうとして「いや、やはり何でもない」と途中でやめたり。少し酔ったフォウさんが俺や三人をめちゃくちゃに褒め出したり。

 

 

夜が更けるにつれて、俺たちの胃から空きは消えて、テーブルの皿も空いていく。それでも楽しい晩餐は、その日の遅くまでやむことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

食事が終わり、宿に戻った。

 

俺がベッドの上に寝転がってから、かれこれ二十分は経っている。ちゃんと眠気は感じているのだが、気が高ぶってどうにも寝付けなかった。

 

理由は簡単。明日のことを考えていたから。

 

今日まで、俺は異世界にいただけのお客様だった。金もない、仕事もない、記録もない。そんな状態で、レインたちにおんぶにだっこされていただけの、異世界からのお客様。

 

ふっと、少し自嘲気味に鼻を鳴らした。俺が今生きているのは、ひとえに運が良かったからだ。

 

【天意の森】で目覚めて運よくレインたちに出会って、そのまま逆らわなかったから運よく街に来れて、運よくズィール神父だったから前科を逃れて。今日だって、フォウさんやボムさん。そして冒険者組合(ギルド)の制度に運よく乗れたから生きている。幸運だけで生きてきた。

 

けれど、今日。俺はお客様から冒険者(ハンター)になった。

 

明日からようやく始まるのだ、俺の異世界生活が。

 

高ぶる気持ちを何とか静めながら、俺は瞳をぎゅっと閉じる。明日からの冒険者(ハンター)業を想像している俺の意識が解けたのは、それから二十分後のことだった。

 

 

 

 




すてーたす


出稲(いずな)宇井(うい)

[年齢] 16  [性別]男  [職業]冒険者(ハンター)

[状態]健康 [称号]木札級(ウッド)


[魔法まほう]
・該当なし

[戦技スキル]
・仮称-強打(ぜんりょく)(微) ・仮称-投擲(ほんきなげ)(微) 
・仮称-思考加速(そうまとう)(-/Ⅱ) 

「天与ギフト」
・該当なし
・《防御完全無視》


おまけ
冒険者(ハンター)ランク 低→高

木札級(ウッド)白骨級(ボーン)灰石級(ストーン)黒鉄級(アイアン)青銅級(ブロンズ)赤銀級(シルバー)黄金級(ゴールド)虹晶級(プリズム)



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