転生特典《防御完全無視》で異世界を生きる~冒険者組合の直属冒険者です。二つ名が【人狩者】になりました~ 作:KNa\
やぁ、珍しく初っ端の挨拶からどうも。俺だ、
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァ……」
自分の意志に関係なく、口から空気が逃げていく。体に熱が籠りすぎて、耳がじんじんと熱い。そのくせ末端は冷え切って、痛みの感覚すら殆ど無いから質が悪い。
「マジ、で……疲れた……」
両の手を膝について支えにしないと、直ぐにでも体が崩れそうだ。身に着けていた制服は、着衣泳でもしたように塩水で濡れている。張り付く感覚が気色悪い。
「でも……ギリ、勝っ……たぞ」
項垂れた頭を少しだけ持ち上げて、数歩先に倒れている男を見る。俺が
「……あ、ヤバ」
つっかえ棒に徹していた腕が、汗で滑って膝から落ちる。べしょ、と俺の体は肩から地面へと潰れてしまう。ざらざらとした砂と土が、すぐに溶けて肌を滑らせた。体を何とか
「……つめてぇ……や」
身体の熱が地面に逃げて、蒸発する水分は体温を奪う。自然、俺の意識も落ちていく。
……起きたら、ふろに入りてぇなぁ。
抗い難い意識の底で、俺はそう考えながら眠りに落ちた。
やぁ、二度目ましてどうも。俺だ。
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「凄ぇ、マジで
「当たり前でしょ、ここは
俺の呆けた声に対して、同伴者兼先輩予定のアイナさんがそう答えた。今いる場所は
俺とアイナさんは、現在
「いや、こう、武装した人が大量にいるのを見て実感がわいてきたというか……」
「武器や防具なら私もレインもしてるじゃない。ギーツ何て首から下は鎧だし」
「そうだけど、違くてね」
俺の言いたいことは、アイナさんにうまく伝わらない。しかしそれも仕方がないのだろう。だって日本と
「ほらイズナ、前が空くから進むわよ」
「ほいー……あ、あの人すごい格好してら」
「……もう、ほらこっち!」
「おわ!?」
注意力が外に向き過ぎて、列が進むのに気づかなかった俺の腕を、アイナさんがグイっと引っ張る。俺ま全く踏ん張れずに、引きずられるように前へと進んだ。なんで俺より小さいのに力つよいんですか?まったく適わないんだが。
俺は腕を引かれるままに受付の近くへとやって来た。もう少し
受付の女子は、前髪で隠されていない方の右目でアイナさんを見とめると、にこりと笑って挨拶をする。
「おはようございます、アイナさん。今日はどうしたんですか?例の依頼なら、教会の人が昨夜に報告に来てましたよ?」
「おはよう、フォウ。今日は依頼じゃなくて、この子の登録をしに来たの」
「えっと、登録ですね!わかりました。えっと……見た感じ
どうやら二人は知り合いらしい。アイナさんは挨拶を返しながら、俺を自分の隣へ、つまりメカクレ女子のフォウさんのカウンター前へと引っ張り出した。フォウさんは、俺をじっと見てから何か言っていた。
「あぁ、違うのよフォウ。パーティーの登録じゃなくて、
「はぇ?……ご、ご、ごめんなさい……そうとは知らず失礼なことを……」
俺はわからんままに謝られる。どうやら何かシツレイがあったらしい……しかし俺は、今のやり取りの何が失礼かもいまだ知らんぞ。異世界二日目を舐めないでほしい。気づけば森の中で寝てたから、常識も社会も何なら
「
「えぇ、信じられない気持ちはわかるけど。この子本当に何も知らないのよ。本当に、何も」
「ねぇ、なんか悪意無い?なんで繰り返すの?なくよ?
嘘なんか吐いてないのに酷い言われようである。ちくちく言葉はいけないと思います。ヒヒン。
「ま、とりあえずこの子、
「よくわかりませんけど、わかりました!しっかり
「ありがとう、よろしくね……てことでイズナ、後はしっかりやりなさい」
アイナさんはそう言って俺をずい、と前に突き出す。フォウさんもむん!って感じの表情でカウンターの向こうでごそごそ準備しだしていた。しかし俺には一つ解せないことがある。俺は後ろのアイナさんへと首だけ振り返って問いかける。
「いや待って?俺今日は様子見って聞いてたんだけど?」
「言ってたかしら、そんなこと?」
「いや言ってたろ!覚えてんぞ!」
俺は憤慨する。だって朝に確かにそう言っていたはずだ。なのに今は登録する方向になっている……いや、逃げる気はないけど。選り好みも出来る立場は無いと理解したし。ただ一応、一応心の準備というか、納得くらいは欲しくなるものだ。
俺の様子を見たアイナさんは、そこまで言うならと口を開いた。
「今日の朝までは、本当に様子見のつもりだったのよ?ただ、イズナが思ってたよりタフだったから、今日で登録しちゃっていいかなって思ったの」
「タフたって、俺別に格闘技の経験とか無いが?」
「経験の話じゃなくて、イズナが昨日今日と、私達について来れたから、っていうのが理由ね」
「ついてこれたって……俺何もしてないじゃん別に。ついて歩いてただけだぞ」
昨日のことを思い返す。森で起きて、三人に捕まって、色々あって街まで歩いて、教会の地下でズィール神父とお喋りして菓子食って、そんで酒飲まされてぶっ倒れた。今日だってアイナさんの《
やはり俺がタフ、と言うのは誤りな気がする。こんな普通の一般男子相手には、過大評価の誇大広告では?
「……あのね、イズナ。一般の人は森の中や街外の道を、
「ほん?」
「それに加えて、昨日教会で審判まで受けてたでしょう?闇属性の魔法は、対象者の精神に負荷をかけるものなの。普通の人なら、二日は疲労感が抜けないわ……なのにイズナったら、二日酔いが治ったら凄い元気なんだもの、それでタフじゃない、は通らないわよ」
やれやれ、といった様子でアイナさんは俺にそう説明した。なるほど、確かに昨日はかなり歩いた記憶がある。街に辿り着いた時には、足も棒になっていたっけか。ただ、足の疲労に関しては、たぶんズィール神父が何とかしてくれただけなんだよな。椅子から立ったら治ってたし……俺はそんなことを言おうとするが、その前に別の方向から言葉が流れる。
「それは凄いですね……私だったら、街を散歩しただけで休日が潰れるくらい疲れちゃうのに。でも、それだけ体力があるなら
声の主はカウンターの向こう、フォウさんからだった。彼女は素直に感心した様子で、右目を丸くしながら俺を見ていた。
「え、いや……あー、うん。俺の名前なら
「そ、そうですね。聞いた私も、まだ名乗っていませんでした……えと、私の名前はフォウ。フォウ・ソーヤといいます。フォウと呼んでくださいね!」
「どうも、さっきも言ったけど俺の名前は
「はい、よろしくお願いしますイズナさん……えっと、それじゃあ
どうにも訂正のタイミングを失って、互いに自己紹介をする感じになってしまった。しかも流れで登録まで進みそうになっている。
……まぁいいや、どうせ遅かれ早かれだ。俺はそうやって
俺はフォウさんに促されるままに動き出し、別室へと共に移動する。アイナさんは
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「―――はい、これでおしまいです。お疲れさまでした!」
「うぃ、お疲れ……なぁフォウさん。ほんとにこれで終わり?これで
別室へ移動してから大体一時間弱ほど経って、俺は机に上半身を預けながら、向かいに座るフォウさんへ問いかけた。疲れているわけじゃない、むしろなんだか肩透かしを食らった気分で、持ち上げた腰の勢いが残ってて前のめりになってるとか、そんな感じだ。
……嘘である。正直拍子抜けしていた。
「はい、おしまいです……というかイズナくん、社会の事を何も知らないって本当ですか?結構スラスラ答えてましたけど……」
「そりゃ算数と道徳レベルなら躓かねぇよ流石に……魔物とか歴史は全く答えられんかったけども」
「あはは、確かに勇者と教会について以外の常識は、ちょっと抜けてましたね……けど、守るべき契約とか、理念や秩序は完璧でした!今すぐでも警備隊に入れそうですよ!」
ぐでーっとしながら言っている俺に、フォウさんは元気にそう返す。いやぁ、一応試験と講習って聞いて身構えてたんだけど、日本なら当たり前、くらいの内容が殆どで、詰まることは少なかった。むしろ犯罪者に対しての対応が思ったより過激で驚いたくらいだ……社会常識がないのは浮き彫りになったが、『これからですよ、これから!』とフォウさんも言ってくれていたし、これから頑張って覚えよう……というかいつの間にかくん呼びになってら、年一つしか違わないんだが。
「警備隊って、金と記憶と身元がない俺が入れんの?」
「……あ、あはは」
「笑ってごまかされた……」
「と、とにかく。これで知識面での講習、試験は終了です!犯罪歴も無かったので、学科は合格ですよイズナくん!」
一応とばかりに聞いてみたが、やはり選択肢は
「……学科“は”合格?」
「はい、これであとは実技・実戦の講習と試験だけですね」
「一応聞きたいんだけど何すんの?」
「えぇっと、
ガバリと、俺は顔を上げた。ふふふ、なるほどなるほど……ようやく俺の転生特典が輝くらしいな!思わず顔が緩んでしまう。あのカミサマ()は説明もろくすっぽしてはくれなかったが、《防御完全無視》という名前はわかっている。名前から察するに、相手の防御を無視するらしい……なんだろ、すり抜けるのかな。もしくは盾とか鎧を貫通するとか?
仔細は不明だが、どう考えても戦闘向きの能力だろう。ついに異世界モノっぽい体験が出来そうだ。そうやってニヤリとしている俺を見て、フォウさんは「イズナくんも男の子ですねぇ」と右目を細めて笑っていた。いや、そう……ではあるんだけど、生暖かい目を向けるのは止めて欲しい。気恥ずかしくなるから……。
「待ちきれないみたいですし、次へ進みましょうか。まずは裏の方から外に出ますよイズナくん!」
「うぃす」
さあ、実技とやらに挑もうか……!
俺は心の中でそう言いながらフォウさんの後ろに続き、
なんか長いから切っとけと思って