転生特典《防御完全無視》で異世界を生きる~冒険者組合の直属冒険者です。二つ名が【人狩者】になりました~   作:KNa\

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06冒険者(ハンター)になる試験ー合否は最初に出しとけ

 

 

 

やぁ、珍しく初っ端の挨拶からどうも。俺だ、出稲(いずな)宇井(うい)だ。茹る頭を必死に脳でたたきつつ、何とか肩で息をしている所だ。時間とか場所は後にしてくれ、今かなり余裕がない。

 

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァ……」

 

 

自分の意志に関係なく、口から空気が逃げていく。体に熱が籠りすぎて、耳がじんじんと熱い。そのくせ末端は冷え切って、痛みの感覚すら殆ど無いから質が悪い。

 

 

「マジ、で……疲れた……」

 

 

両の手を膝について支えにしないと、直ぐにでも体が崩れそうだ。身に着けていた制服は、着衣泳でもしたように塩水で濡れている。張り付く感覚が気色悪い。

 

 

「でも……ギリ、勝っ……たぞ」

 

 

項垂れた頭を少しだけ持ち上げて、数歩先に倒れている男を見る。俺が冒険者(ハンター)になる為の最終試験、戦闘試験の試験官に立候補してくれた強面の男性だ。顎が赤く腫れている。骨が割れていないことを祈るが、全力を叩き込んでの一撃だったのでちょっと微妙……こっちは手加減とかする余裕もなかったので許してほしい。

 

 

「……あ、ヤバ」

 

 

つっかえ棒に徹していた腕が、汗で滑って膝から落ちる。べしょ、と俺の体は肩から地面へと潰れてしまう。ざらざらとした砂と土が、すぐに溶けて肌を滑らせた。体を何とか()たせていた気力が今ので尽きる。瞼が重く垂れ込んで、ベッドの上でもないというのに、暗い視界を脳が夜だと錯覚してくる。精も魂も尽き果ててもはや限界……あぁ、でも。

 

 

「……つめてぇ……や」

 

 

身体の熱が地面に逃げて、蒸発する水分は体温を奪う。自然、俺の意識も落ちていく。

 

 

……起きたら、ふろに入りてぇなぁ。

 

 

抗い難い意識の底で、俺はそう考えながら眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

やぁ、二度目ましてどうも。俺だ。出稲(いずな)宇井(うい)だ。なんで挨拶を二回もするのかっていうと、倒れた俺が起きるまで、大体半日くらい掛かるからだ。普通にしてると空白が250行くらい続くから、一度夢の中から事の経緯を吐き出そうと思う。とりあえず、俺が冒険者(ハンター)になる為に冒険者組合(ギルド)へ辿り着いた所から始めようか。

 

 

 

 

 

 

「凄ぇ、マジで冒険者(ハンター)ばっかりだ」

 

「当たり前でしょ、ここは冒険者組合(ギルド)なんだから」

 

 

俺の呆けた声に対して、同伴者兼先輩予定のアイナさんがそう答えた。今いる場所は冒険者組合(ギルド)の拠点なんだからそれはそうか。

 

俺とアイナさんは、現在冒険者組合(ギルド)の中で、受付の列に並んでいた。冒険者組合(ギルド)の中は結構広く、受付の窓口が六つもある。俺たちが並んでいるのは、比較的列の短い受付だ。

 

 

「いや、こう、武装した人が大量にいるのを見て実感がわいてきたというか……」

 

「武器や防具なら私もレインもしてるじゃない。ギーツ何て首から下は鎧だし」

 

「そうだけど、違くてね」

 

 

俺の言いたいことは、アイナさんにうまく伝わらない。しかしそれも仕方がないのだろう。だって日本と異世界(こっち)じゃあ日常と非日常が違うのだし。ただ慣れない俺にとっては、異世界感があって面白いのだ。剣に槍に、鞭に斧。杖や本を提げてる人もいるし、一目で戦闘用とわかる手甲(ガントレット)の人もいる。俺は列の中からキョロキョロと周囲の人を見て楽しんでいた。

 

 

「ほらイズナ、前が空くから進むわよ」

 

「ほいー……あ、あの人すごい格好してら」

 

「……もう、ほらこっち!」

 

「おわ!?」

 

 

注意力が外に向き過ぎて、列が進むのに気づかなかった俺の腕を、アイナさんがグイっと引っ張る。俺ま全く踏ん張れずに、引きずられるように前へと進んだ。なんで俺より小さいのに力つよいんですか?まったく適わないんだが。

 

俺は腕を引かれるままに受付の近くへとやって来た。もう少し冒険者(ハンター)観察したかったが、仕方ない。名残惜しくも目線をアイナさん側、つまり前へと戻すと、受付カウンターの向こう側には、一人の女性……いや女子か、たぶん俺とほぼ変わらん年の女子がいた。

 

受付の女子は、前髪で隠されていない方の右目でアイナさんを見とめると、にこりと笑って挨拶をする。

 

 

「おはようございます、アイナさん。今日はどうしたんですか?例の依頼なら、教会の人が昨夜に報告に来てましたよ?」

 

「おはよう、フォウ。今日は依頼じゃなくて、この子の登録をしに来たの」

 

「えっと、登録ですね!わかりました。えっと……見た感じ輜重係(ポーター)でしょうか?」

 

 

どうやら二人は知り合いらしい。アイナさんは挨拶を返しながら、俺を自分の隣へ、つまりメカクレ女子のフォウさんのカウンター前へと引っ張り出した。フォウさんは、俺をじっと見てから何か言っていた。輜重係(ぽーたー)ってなんぞ?

 

 

「あぁ、違うのよフォウ。パーティーの登録じゃなくて、冒険者(ハンター)登録なの」

 

「はぇ?……ご、ご、ごめんなさい……そうとは知らず失礼なことを……」

 

 

俺はわからんままに謝られる。どうやら何かシツレイがあったらしい……しかし俺は、今のやり取りの何が失礼かもいまだ知らんぞ。異世界二日目を舐めないでほしい。気づけば森の中で寝てたから、常識も社会も何なら冒険者(ハンター)についてもよく知らんぞ!そんな風なことをぼかして伝えると、フォウさんは罪悪感と珍妙な感情が混ざった表情になってしまった。ちょっとウケる。

 

 

冒険者(ハンター)を知らないって、そんなこと……え、本当なんですか……?」

 

「えぇ、信じられない気持ちはわかるけど。この子本当に何も知らないのよ。本当に、何も」

 

「ねぇ、なんか悪意無い?なんで繰り返すの?なくよ?(いなな)くよ?」

 

 

嘘なんか吐いてないのに酷い言われようである。ちくちく言葉はいけないと思います。ヒヒン。

 

 

「ま、とりあえずこの子、冒険者(ハンター)以外に道がないのよ。登録お願いできるかしら、フォウ?」

 

「よくわかりませんけど、わかりました!しっかり冒険者(ハンター)登録します!」

 

「ありがとう、よろしくね……てことでイズナ、後はしっかりやりなさい」

 

 

アイナさんはそう言って俺をずい、と前に突き出す。フォウさんもむん!って感じの表情でカウンターの向こうでごそごそ準備しだしていた。しかし俺には一つ解せないことがある。俺は後ろのアイナさんへと首だけ振り返って問いかける。

 

 

「いや待って?俺今日は様子見って聞いてたんだけど?」

 

「言ってたかしら、そんなこと?」

 

「いや言ってたろ!覚えてんぞ!」

 

 

俺は憤慨する。だって朝に確かにそう言っていたはずだ。なのに今は登録する方向になっている……いや、逃げる気はないけど。選り好みも出来る立場は無いと理解したし。ただ一応、一応心の準備というか、納得くらいは欲しくなるものだ。

 

俺の様子を見たアイナさんは、そこまで言うならと口を開いた。

 

 

「今日の朝までは、本当に様子見のつもりだったのよ?ただ、イズナが思ってたよりタフだったから、今日で登録しちゃっていいかなって思ったの」

 

「タフたって、俺別に格闘技の経験とか無いが?」

 

「経験の話じゃなくて、イズナが昨日今日と、私達について来れたから、っていうのが理由ね」

 

「ついてこれたって……俺何もしてないじゃん別に。ついて歩いてただけだぞ」

 

 

昨日のことを思い返す。森で起きて、三人に捕まって、色々あって街まで歩いて、教会の地下でズィール神父とお喋りして菓子食って、そんで酒飲まされてぶっ倒れた。今日だってアイナさんの《解酒(デトクォール)》が無けりゃ今も寝込んでたろうし……うん、やっぱ何もして無いな。一応昨日は魔物や賊にも会ったけど、対処したの九割九部九厘アイナさん達だし。

 

やはり俺がタフ、と言うのは誤りな気がする。こんな普通の一般男子相手には、過大評価の誇大広告では?

 

 

「……あのね、イズナ。一般の人は森の中や街外の道を、冒険者(ハンター)について数時間歩くなんて出来ないの」

 

「ほん?」

 

「それに加えて、昨日教会で審判まで受けてたでしょう?闇属性の魔法は、対象者の精神に負荷をかけるものなの。普通の人なら、二日は疲労感が抜けないわ……なのにイズナったら、二日酔いが治ったら凄い元気なんだもの、それでタフじゃない、は通らないわよ」

 

 

やれやれ、といった様子でアイナさんは俺にそう説明した。なるほど、確かに昨日はかなり歩いた記憶がある。街に辿り着いた時には、足も棒になっていたっけか。ただ、足の疲労に関しては、たぶんズィール神父が何とかしてくれただけなんだよな。椅子から立ったら治ってたし……俺はそんなことを言おうとするが、その前に別の方向から言葉が流れる。

 

 

「それは凄いですね……私だったら、街を散歩しただけで休日が潰れるくらい疲れちゃうのに。でも、それだけ体力があるなら冒険者(ハンター)向けかもしれませんね、えっと……イズナさん、でいいでしょうか?」

 

 

声の主はカウンターの向こう、フォウさんからだった。彼女は素直に感心した様子で、右目を丸くしながら俺を見ていた。

 

 

「え、いや……あー、うん。俺の名前なら出稲(いずな)であってるよ。そういえば自己紹介もしてないっけ」

 

「そ、そうですね。聞いた私も、まだ名乗っていませんでした……えと、私の名前はフォウ。フォウ・ソーヤといいます。フォウと呼んでくださいね!」

 

「どうも、さっきも言ったけど俺の名前は出稲(いずな)。フルネームだと出稲(いずな)宇井(うい)。俺もイズナ、でいいよ。よろしく、フォウさん」

 

「はい、よろしくお願いしますイズナさん……えっと、それじゃあ冒険者(ハンター)登録、しましょう!まずは別室で―――」

 

 

どうにも訂正のタイミングを失って、互いに自己紹介をする感じになってしまった。しかも流れで登録まで進みそうになっている。

 

……まぁいいや、どうせ遅かれ早かれだ。俺はそうやって覚悟を決め(あきらめ)て、冒険者(ハンター)登録に挑むこととなった。こっちで何か書く必要はないらしい。楽で良いな。

 

俺はフォウさんに促されるままに動き出し、別室へと共に移動する。アイナさんは冒険者組合(ギルド)内に併設されてる酒場で暇を潰すそうだ……多分まだ正午前だと思うんだけど、冒険者(ハンター)って自由なんだなぁ、と思いました、まる。

 

 

 

 

 

「―――はい、これでおしまいです。お疲れさまでした!」

 

「うぃ、お疲れ……なぁフォウさん。ほんとにこれで終わり?これで冒険者(ハンター)になれちまうの?」

 

 

別室へ移動してから大体一時間弱ほど経って、俺は机に上半身を預けながら、向かいに座るフォウさんへ問いかけた。疲れているわけじゃない、むしろなんだか肩透かしを食らった気分で、持ち上げた腰の勢いが残ってて前のめりになってるとか、そんな感じだ。

 

……嘘である。正直拍子抜けしていた。

 

 

「はい、おしまいです……というかイズナくん、社会の事を何も知らないって本当ですか?結構スラスラ答えてましたけど……」

 

「そりゃ算数と道徳レベルなら躓かねぇよ流石に……魔物とか歴史は全く答えられんかったけども」

 

「あはは、確かに勇者と教会について以外の常識は、ちょっと抜けてましたね……けど、守るべき契約とか、理念や秩序は完璧でした!今すぐでも警備隊に入れそうですよ!」

 

 

ぐでーっとしながら言っている俺に、フォウさんは元気にそう返す。いやぁ、一応試験と講習って聞いて身構えてたんだけど、日本なら当たり前、くらいの内容が殆どで、詰まることは少なかった。むしろ犯罪者に対しての対応が思ったより過激で驚いたくらいだ……社会常識がないのは浮き彫りになったが、『これからですよ、これから!』とフォウさんも言ってくれていたし、これから頑張って覚えよう……というかいつの間にかくん呼びになってら、年一つしか違わないんだが。

 

 

「警備隊って、金と記憶と身元がない俺が入れんの?」

 

「……あ、あはは」

 

「笑ってごまかされた……」

 

「と、とにかく。これで知識面での講習、試験は終了です!犯罪歴も無かったので、学科は合格ですよイズナくん!」

 

 

一応とばかりに聞いてみたが、やはり選択肢は冒険者(ハンター)しかないらしい。一応励ましてくれているのか、明るい声で合格を……学科?

 

 

「……学科“は”合格?」

 

「はい、これであとは実技・実戦の講習と試験だけですね」

 

「一応聞きたいんだけど何すんの?」

 

「えぇっと、冒険者(ハンター)の基本心得、武器の選択、防御と受け身、的への打ち込み、解体演習と……あとは、冒険者(ハンター)の方と模擬戦だったはずです」

 

 

ガバリと、俺は顔を上げた。ふふふ、なるほどなるほど……ようやく俺の転生特典が輝くらしいな!思わず顔が緩んでしまう。あのカミサマ()は説明もろくすっぽしてはくれなかったが、《防御完全無視》という名前はわかっている。名前から察するに、相手の防御を無視するらしい……なんだろ、すり抜けるのかな。もしくは盾とか鎧を貫通するとか?

 

仔細は不明だが、どう考えても戦闘向きの能力だろう。ついに異世界モノっぽい体験が出来そうだ。そうやってニヤリとしている俺を見て、フォウさんは「イズナくんも男の子ですねぇ」と右目を細めて笑っていた。いや、そう……ではあるんだけど、生暖かい目を向けるのは止めて欲しい。気恥ずかしくなるから……。

 

 

「待ちきれないみたいですし、次へ進みましょうか。まずは裏の方から外に出ますよイズナくん!」

 

「うぃす」

 

 

さあ、実技とやらに挑もうか……!

 

 

 

俺は心の中でそう言いながらフォウさんの後ろに続き、冒険者組合(ギルド)の裏へと駆け出した。

 

 

 

 

 




なんか長いから切っとけと思って
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