ただただ他人の踏み台になり続けたとしても―――
君は柔道が楽しいか?
意外な来客、
柔祭り最後の相手。
それは、昨日の昇格戦で
青桐達の足を引っ張り続けていた彼が、今再び青桐の前に立ち塞がる。
場内へと足を踏み入れ、目の前の敵を冷ややかに
一方の不死原は、昨日までの頼りなさが嘘のように、腹を括ったような
「……また足を引っ張りに来たのかよ、
「んだよ、そんなに睨むなよ。
「何考えてんだか知らねぇが、テメェが5人目ならよぉ……全力で
柔祭りの最後の試合が始まる。
審判の声を聞くや否や、一気に距離を詰める2人。
互いに
(瞬殺してやんよ。この前の
「……あ"ぁ"!? んだよ、この……馬鹿力はぁ"!?」
敵を引き付けるため、両腕に力を込める青桐。
だが敵の体は、巨大な岩石めいてビクとも動かない。
そればかりか、青桐の体の方が不死原の元へと引き寄せられていくのだった!!
(この
「テメェ……ドーピングでもしたのか!?」
「……」
無言の返答で大方の察しがついた青桐。
両腕に力を込めながら深くため息を吐くと、目前の不死原へ吐き捨てるように啖呵を切っていく。
「…………
不死原の煮え切らない態度に、ついに堪忍袋の緒が切れた青桐。
夜空に響く雄叫びとともに、腕だけでなく両脚にまで力を込め、畳を蹴って大きく動き出す。
会場を広く使い、圧倒的な力で不死原を引きずりながら、わざと上体を傾け、自らの体重すら武器として相手の体勢を崩しにかかる!!
しかし……
「……!?」
(この野郎……腕力だけで俺の動きを止めやがった……!! クソゴリラがっ!! あ"ぁ"!? コイツ……!!)
「やぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
硬直したように動かなくなった青桐。
力ずくで拘束する不死原は、必死の形相で白雲を生み出し、その隙に紛れ込ませた右足で青桐の両脚を横薙ぎに刈り取る。
それは青桐が常々に繰り出すNo.14の足技、
練度では到底及ばないものの、荒々しい力任せの一撃が、青桐の体を無慈悲に宙へと弾き飛ばしていく!!
(
背中から畳へと強く叩きつけられる青桐。
審判の判定は一本には至らなかったものの、不死原に技ありが与えられた。
同時に
青桐は乱れた
対峙する不死原も元の場所へと歩を進め、依然として油断なく構え続けていた。
青桐は決意を込めて息を吐くと、全身に
その瞬間、乱れていた呼吸が徐々に整い始め、動きの精度が増していった。
それは体力が徐々に回復し、技の隙を減らす水属性の技。
No.80―――
「青桐、それは……
「あぁ……習得したての技で、あんま使いたくねぇんだけどよぉ……特別に見せてやんよ……!!」
「
青桐の動きが明らかに一段階引き上げられた!!
繰り出される足技は無駄がそぎ落とされ、反撃の隙が目に見えて減っている。
連戦の疲労で肩で息をしていた姿はもはや過去のもの。
時間の経過とともに呼吸が整い、青桐の動きは研ぎ澄まされていく!!
その様子を前に、不死原の表情には
(クソ……!!
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『はぁ……はぁ……!! クソが……!! また1回戦負けかよ……!! 俺ってこんなに
『うわすげぇ!! 青桐のやつ、瞬殺だぜっ!?』
『やっぱアイツ
『言ってやるなよ? あの不死原が可哀そうじゃん』
(……クソがっ!! どいつもこいつも
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『また1回戦負け。こんなはずじゃ……』
『おぉ!!
『アイツ、頭悪いのに柔道は
『いいよな~俺もあのくらい戦えたらなぁ~』
『……クソが。俺だって……俺だって……!!』
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『……んで結果が出ねぇんだよ。練習してんのに、なんでなんだよ……アイツらと何が違ぇんだよ!?』
『なあ聞いたか?
『あぁ。アイツ
『うっひゃ~とんでもねぇ天才が出て来たなぁ!?』
『…………まだだ、まだだぁ……!!』
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『
『え? まだ
『だよな~インタビューの受け答えもしっかりしてるし、男としてカッコいいよなぁ~』
『なぁ~……あ、
『さぁ~? 試合に負けた負け犬じゃね?』
『
『な~』
『………………』
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かつての記憶が脳を過る不死原。
彼が今まで味わって来た苦痛は、彼しか知らない。
だが今は、それらのノイズをかき消して、ただ目の前の相手を倒すことだけを考える彼。
道を歩むことを止めた彼の背中を押すきっかけ。
それは―――
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『ブルァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!』
『クソくだらねぇなぁ……!! 銭ゲバ小判鮫野郎がっ!!』
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(……あそこまでボロ負けして、あそこまでボロクソに言われて……それで黙ってられるほど、俺はまだ終わっちゃいねぇんだよ……!! 俺のこのちっぽけな
「クソがぁ青桐ぃ……!!」
「……テメェみてぇな人間が、俺に勝てると思ってんのか? あ"ぁ"!? 思い上がんじゃねぇぞボケがぁ"!!」
「く……はっ!! 釈迦に
止まることを知らない荒波めいた連撃を捌き続ける不死原。
彼は先ほどと同様、力任せに青桐の猛攻を封じようとする。
だが、青桐も同じ手を食うつもりはない。
体を拘束される前に、迷いなく水属性最強の技を繰り出しにかかる。
まずは右足で軽く相手の左足を払う。
次の瞬間、四方八方から身の丈を超える巨大な波が襲いかかっていく!!
圧倒的な水流に呑まれ、不死原の体勢が……
「オ"ラ"ァ"ァ"ァ"!!」
万物を飲み込む自然の驚異に、真っ向から立ち向かう不死原。
彼は荒れ狂う波を力強く右手で切り裂き、自らの進むべき道を切り開いていく。
幾重にも押し寄せる波浪を捌ききったその刹那、荒波に紛れる青桐の
彼は果敢に、それを右手で素早く掴み取ろうと攻め込んでいくのだった!!
「俺だってなぁ"ぁ"ぁ"!! ……!?」
(これは……
やっとのことで防ぎ切った大技を、再び放つ青桐。
一度目の猛攻をしのぐだけで、ほとんどの体力を消耗した不死原は、再び押し寄せる大波に飲み込まれ、もみくちゃにされていく。
その隙間から青桐が姿を現すと、不死原の体を鍛え上げた背に乗せ、左へと旋回。
荒波を束ね、桜の花びらが豪華絢爛に舞い散る!!
No.91―――
「
宙を舞っていく不死原。
彼は自分が数秒後に負けることを受け入れながらも、殺気をまき散らす青桐のことを、どこか
(……良いよなぁお前達は。そんなに
「一本ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ん!!」
高々と派手に飛び散る水飛沫と共に、審判から青桐に勝利が告げられていく。
歓声に沸く
「はぁ……はぁ……これで、
「クソ……クソォ……!!」
「……あー」
暴言を吐き捨てようとした青桐は、不死原の項垂れる姿を見て言葉を遮る。
右手で髪を掻くと、バツが悪そうにしながらも、対戦相手を起こそうと、その手をそのまま不死原へと差し出す。
「えっと……おらよ不死原、手」
「あ、あぁ……」
「次
「っ!! ……くぅ」
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柔祭り閉会の言葉を聞くことなく、試合会場を後にした不死原。
燃え尽きた様子の彼だったが、その
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「次
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「次……かぁ……また昔みてぇに体鍛えなおそっかな? ……ん?
『
「この声……
『この前渡した
「あ、あぁ……」
『何時間前くらいに?』
「え? ……1時間前くらい?」
『おおっ!! そうですかそうですか。それでは小市民さん、ワタクシの
「目が覚めたら? おい、財前さん!? ……うぅ!?」
(視界がぐらついた!? ……眠気が……あぁ!?)
「おい、誰だよお前らっ!? 待て、離せっ!! 誰か、誰かぁぁぁぁぁぁ!!」
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「おほほほ……お~~~ほっほっほっ!!
小説家になろう、カクヨム、NOVEL DAYS、アルファポリスでも投稿をしています。