影の存在は蔑ろにされたとしても―――
君は柔道が楽しいか?
黒衣の柔道家の出現に、喧々囂々としていた
唾をのみ、
黒の
「んんー……そんなに静まり返る必要はないのですが……ねぇ?」
「お、おま……あの黒い
「あ、誤解なさらずに。ここに来たのは、ただの偶然です。大穴に落ちたときは、さすがに心臓が止まりかけましたが……受け身を取ってなんとか、です」
「……アンタ、味方ってことでいいんだよな?」
「おや、青龍の
「
東雲の挑発に、まんまと乗せられた荒くれ者が
漆黒の襟元を右手で乱雑に掴みにかかるが――
その突進を、東雲は涼やかにいなした。
左手の甲で相手の右腕内側を外へと弾き、同時に、無防備となった鳩尾へと正拳突きの要領で右手の平を押し当てる。
接触の瞬間、敵の身体に氷の紋章が浮かび上がり、紋章が刻まれた者には、一時的に弱点が付与される。
No.68―――
「―――
「おぉ!? んだこりゃっ!?」
「……? 義務教育で
「こ、この野郎……
物を知らぬ荒くれ者に、東雲はどこか呆れたような視線を向ける。
だがその男は、そんな態度に気づく様子もなく、距離を取ろうと畳の上で足を動かそうとした。
しかし彼の両脚は、柔道を始めたばかりの
先ほどまでは何の問題もなかったその動きが、氷の紋章が刻まれた瞬間から、別人めいて
「その氷の紋章が、アナタの細胞に働きかけて、勝手に弱点を作ってしまったんですよ。氷が融けるまではそのままです」
「こ、この!!」
「……ダメですよ、そんなに足を上げてしまっては。その瞬間を狙われますよ?」
互いに組み合わぬまま、間合いを取る2人。
荒くれ者の左足が畳から離れた一瞬――東雲は間髪入れずに踏み込み、両手でその
続けざま、右足を滑らせて敵の左足の外側を刈り取る。
放たれた小外刈りに抗う間もなく、男の巨体はふわりと宙を舞い、背から畳へとパタリと落ちた。
「い、一本ぉ"ぉ"ぉ"ん!! あの
「テメェ審判、どっちの味方だよっ!! クソが、続け野郎どもォ"ォ"ォ"!!」
その洗練された所作に、思わず敵ですら感嘆の声を漏らした。
続けざまに何人もの荒くれ者が挑みかかるも、誰一人として東雲の背を畳に付けることはできない。
それどころか、彼の呼吸ひとつ、乱すことすら叶わなかった。
圧倒的な
東雲は、ただ静かに、着実に、敵をねじ伏せていったのだった。
「……あの人で10位か。この前の
「
「
「ムリムリムリ!!
「……ちっ。こっちはチンタラ出来ねぇってのに……頂点までの道のり、遠すぎんだろ……!!」
一騎当千。
その言葉をそのまま体現するように、東雲の柔道は見る者すべてを黙らせた。
――今の自分で、あいつに勝てるのか。
青桐は、胸の奥が焼けるような
隣の
そして、終わりは唐突に訪れた。
最後の敗れた男が音もなく畳に沈み、東雲だけが、耳につけ直したイヤリングを揺らしながら、静かに立っていたのだった。
「
「な、なんなんだよコイツ……」
「ひ、ひぃ~……助けてよぉ~母ちゃ~ん……」
「青桐っ!! エレベーターの稼働に成功した……ぞ……? 黒い
別動隊として動いていた
そして視線を向けた瞬間、東雲の
青桐に
「
「オラ待てやぁ"ぁ"ぁ"!!」
「
「青桐、草凪、シモン、離れてろっ!!」
施設の奥から、
もはや時間稼ぎを続ける必要はない。
後退していく青桐達と入れ替わるようにして、伊集院が前へと飛び出し、敵の進行を妨げるべく、右足で畳を強く踏みしめる。
瞬間、足元から白氷が芽吹くように立ち上がり、敵陣へと這い進んでいく。
氷のカーペットめいて広がり、それに触れた者はたちまち脚を取られ、動きを封じられていった。
No.5―――
「
「っと危ねぇ!! お前ら、側面から攻めこめぇ!!」
「!! ……9割9分9厘、俺の想定よりも数が多いな……全員を捕縛出来んか」
「おや? そういうことなら、私もお手伝いしましょうか。No.5……白踏み―――!!」
畳の試合会場二面分に相当する広さの白氷を展開した伊集院。
その冷気によって集団の一部を足止めすることには成功したが、全員の動きを封じるには至らなかった。
攻撃範囲の外にいた荒くれ者が、氷の技の隙を縫って前進してくる。
伊集院が手こずっている様子を見かねた東雲は、
だが、東雲の放った技の規模は、伊集院の白氷が赤子めいて見えるほど桁違いだった。
東雲の右足から放たれた凍気は、
「おっと……ちょっと
「あ、あぁ……」
(コイツ……
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地上へ戻った青桐達は、現在、博多駅
管理人である
その場には青桐達の他に東雲の姿もあり、彼は遠くで飛鳥と何やら言葉を交わしていた。
対する青桐達は、普段の訓練で使用している休憩場で、タオルで汗を拭きながら今後の対応について
「
「あ、あぁ……
「あぁ? あぁー……まぁ、気にすんなよ。色々あって知らねぇ仲じゃねぇし。んでどうする? とりま
「9割9部9厘、それが妥当だろう。まずは
「あの
「ああ。だが――あまり期待しない方がいいかもしれん」
「あぁ? ……
「いや、
「
「今、
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青桐達が今後の方針を話し合う傍ら、東雲は
それに気づいた東雲は、にこやかな笑みを崩さぬまま、自然な口調で距離を詰めようと会話を重ねていく。
「そんなに警戒なさらずに。ここの存在は、私の胸の内に留めておきますよ」
「……その言葉を信じろと言われてもねぇ……時間がなさそうだったから、まとめて全員入れたけどさ? 管理人の立場としては、ちょっとねぇ……?」
「そりゃあ当然ですよねぇ……お互い立場さえなければ、もっと気楽に
「……君達、一体何が目的なんだい?
「革命を起こす、というのが基本線です。この前、
「……今のランク制度は確かに過剰な競争を生んでるかもしれないけどさ。柔道タワーやコンビニエンス道場、学校への支援制度もある。
「不満……というより……納得出来ないと言えばいいのでしょうかね」
「……」
「過去に色々ありましてね……総合的に考えた上での行動です。……ま、話し合いでどうにかなるとは思ってませんけど。コーヒーどうも
小説家になろう、カクヨム、NOVEL DAYS、アルファポリスでも投稿をしています。