スポーツマンシップの欠片もない敵が相手だったとしても―――
君は柔道が楽しいか?
艦上に降り立った白髪の老者。
その姿を認めた瞬間、場の空気が変わった―――!!
全日本柔道連盟公認の審判員は、技能・知識・資格に応じて、S、A、B、Cの4段階に階級が区分されている。
だが―――この話はここで終わりではない。
日本に4人のみ存在する、柔道の番人と呼ばれる彼ら。
柔道に関わる揉め事や
そして――勝者の願いを現実とすることで、事態を決着へと導くのである!!
その決定は、時に司法すら超越すると囁かれ、
その1人にして、永き時を生き続ける男。
名は
彼の出現に、この場の誰もが息を呑んでいた!!
「なななっ!? なぜ
「理事長は理解が早くて助かるよ。まさか僕達がノープランでここに来たとでも? 見くびられたものだよね。まあ……相応の出費はかかっちゃったけど」
「ぐぅぅ……!! これでは柔道をせざるを得ないではありませんかぁ!! そんな話、聞いてませんよぉ"ぉ"ぉ"!!」
「……血気盛んなのは結構じゃが、そろそろ決めてもらおうかのぉ。各々、勝った暁に何を望むのか……はっきり申してみよ」
「僕、ルーカス・ジョンソンは、
「あい
「ぐぅぅ……!! ……っ!! 審判寺さん、これは
「そうじゃのぉ」
「どれほど無茶苦茶な願いでも?」
「ああ。我らには大概のことを成し遂げる力がある。申してみよ」
「ならば……ワタクシがこれまで行ってきた、ありとあらゆる悪行を――その
「……罪をなすりつけよ、と?」
「はぁ"ぁ"ぁ"い!! よろしいですよねぇ!?
「……ああ、問題ないぞ。では……互いに望みは定まった。それぞれ
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試合開始を前に、武道家達はそれぞれ
関節を鳴らす音、帯を締め直す擦過音、吐息が白く空気を震わせる。
その傍らでは、審判寺一族の
豪華客船の甲板は瞬く間に整えられ、即席とは思えぬ試合場へと姿を変えていく。
四肢を伸ばし、筋肉に火を入れながら、彼らは自然と円陣を組み、ジョンソンヘッドコーチを中心に静かな作戦会議を始めていた。
「さて……結局戦うことになったけど、気を取り直していこうか。それで肝心の相手なんだけど……財前理事長以外は知らない
「……ん? アイツら……」
「青桐さん、知ってるのかい?」
「
青桐が財前達へ視線を向ける。
その指の間に握られていたのは、医療用を思わせる細長い注射器だった。
透明な液体が、ためらいもなく己の肉体へと押し込まれていく。
5人全員が、まるで合図でもあったかのように同じ動作を繰り返していた。
あまりに
青桐の右眉が、わずかに沈む。
「何してやがんだ、アイツら……?」
「……9割9部9厘、俺の出番だな。
片眼鏡を静かに外し、団体戦の先鋒として名乗りを上げた
対する赤ちゃんプレイもまた、場内と場外を隔てる赤畳の前で足を止め、一礼。
淡々とした所作で場内へ踏み込んだ。
やがて両者は試合開始位置に立つ。
静かな探り合いが、火蓋を切ろうとしていた―――!!
「テメェが俺の相手かぁ……ずいぶん
「……赤ちゃんプレイ、か。名は体を表すとは言うが……直視するとなかなかに堪えるな」
「ばっぶぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! 青桐といい、お前といい……揃いも揃って
「……そろそろ始めるぞ。両者、
「「
「よかろう……神前に礼!!」
「「
「お互いに礼!!」
「「
「……
「こい……!!」
「しゃぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
静かに呟いた伊集院の声を切り裂くように、傭兵が前へと踏み込む!!
迫り来る敵の戦法を見極めるべく、伊集院は右足で大地を踏みしめた!!
No.5白踏み。
足裏から広がる冷気が瞬時に畳を侵食し、氷の絨毯が場内を覆い尽くす!!
本来ならば、その一手で機動を封じられるはずだった赤ちゃんプレイ。
凍てついた畳に一瞬、足を取られる。
だが――
へばりついた足裏を力任せに引き剥がし、氷を砕き散らしながら、真正面から組手争いへと雪崩れ込んできたのだった!!
「……ほう」
(
「
獣めいた咆哮とともに、赤ちゃんプレイの腕が唸る!!
野生動物を錯覚させる膂力で横襟と中袖を掴まれ、伊集院の身体が場内を時計回りに振り回された!!
砕け散った氷片が四散し、照明に照らされ宝石めいて
伊集院は腰をくの字に折り、両足を畳へ突き立てるようにして踏みとどまる。
そのまま相手と同じ部位―――横襟と中袖を取り返し、強引に足を止めた!!
拮抗状態―――互いに組み合ったまま、微動だにしない。
伊集院はわずかな重心の揺らぎを探り、崩しに入ろうとする。
だが、想定を上回る腕力が、それを許さない!!
握力と前腕にかかる負荷が、着実に伊集院の体力を削っていく!!
場外から戦況を見つめるジョンソンヘッドコーチもまた、その
隣で試合を見守る
「……大原さん、敵は随分と力に自信があるようだね」
「ええ……ですが……少しおかしいですよね? あの出力……人間の域を逸している気がします」
「
「
「ん? 青桐さん、何か心当たりがあるのかい?」
「柔祭りで戦った相手の中に、ドーピングしてた奴がいるんすけど……そいつも馬鹿みたいに
「……もしかしたらかもね。そうなると……さっき注射器を打っていたのは、その可能性が高かな? ふぅん……力比べでは分が悪いかな? でも柔道は力だけじゃ……」
「ばぶぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!
「……っ!! 青桐さん、大原さん、あれは……!!」
「あ"ぁ"!? 柔皇の技っ!? この前の
力だけに依存する存在ならば、技を極めた人間に敵う道理はない。
だが、もしその獣が、人間と同じ技術を手にしたとしたら。
赤ちゃんプレイの動きに洗練はない―――
だが次の瞬間、粗雑な踏み込みから放たれた一閃は、かつて柔皇が現役時代に振るった、ある足払いと酷似していたのだった!!
「……っ!! こいつ、使えるのか……柔皇の技を……!!」
「ばぶぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!!
青桐や水属性の選手が連撃の起点として多用する足技、No.14八雲刈り。
その足払いが、澄み渡る太刀筋の居合斬りだとするなら――
赤ちゃんプレイのそれは、鉄塊を振り下ろす大槌。
強化された肉体が、技を洗練ではなく凶器へと昇華させていたのだ!!
右足が、伊集院の右踵の内側を力任せに刈り払う。
同時に、赤ちゃんプレイの右手が横襟から滑り落ち、後腰の帯を鷲掴みにする。
伊集院の逃げ場が奪われたまま、赤ちゃんプレイは体を左へと強引に捻転。
腰に乗せ、敵の体を引き剥がし、畳へと叩きつける釣腰を披露してく!!
伊集院の体だふわりと浮かび上がり、彼の背中は無慈悲に畳へと沈んでいった!!
同時に、甲板に鈍い衝撃音が響く……!!
「一本ぉ"ぉ"ぉ"ん!!」
「だばぁ"ぁ"ぁ"!!
「お~~~ほほほほっ!! よくやりましたよぉ、赤ちゃんプレイぃ"!! 100万っ!!
(はぁ~勝った、勝ちましたよこの勝負っ!! まあ、ドーピングしているので、勝って当たり前ですけどねぇ!?)
周囲で観戦している財前は、喉の奥でくつくつと
団体戦が始まったばかりだというにも関わらず、彼は既に勝ちを確信ているかのようであった!!
(……勝ち抜きの団体戦は、どちらか5人が先に倒されるまで続く試合形式。先鋒を取ってしまえば、あとは引き分け狙いで十分!! 適当に
無意識に財前の唇が、歪に吊り上がる!!
彼の心境をそのまま表しているかのように、その
(さあさあ、金にもならないスポーツマンシップなんて
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