転生先で行き倒れを拾った結果。   作:如月雪見

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まずは2人の出会いまで。

平子(♀)は15歳くらい、藍染は5歳くらいを想定して書いています。


取り敢えず出会い

 

 

日課である月光浴ついでの夜の散歩中だった。

車両通行禁止の道に突然突っ込んで来たトラックに轢き逃げされ、偶々通りかかった誰かが救急車を呼んでくれたが間に合わず、そのままこの世を去った。

 

 

ー貴女の行き先が決定しましたー

「は?」

ーこれより転生しますー

「え?」

ー来世をお楽しみ下さいー

「ちょ、ま」

 

暗闇の中での謎のアナウンスに戸惑う私は、まともな反応も返せないうちに、突如出現した扉へと押し込められて意識を失った。

 

 

 

我が家には無い筈の畳の上で目が覚めた私は、家の中を物色した結果、職場の同僚が愛読し、お勧めだと貸してくれた漫画【BLEACH】の世界だと判明した。

 

最初は大混乱して、既に死んでいるのに「変な夢を見ている」「早く起きなければ」と必死に目を強く瞑り続けた。

しかし、いくら目を瞑っても状況は変わらないどころか、空腹だけでなく渇きまで身体が訴え出し、取り敢えず何か口に出来る物は無いか探す事にした。

 

…お腹が空くという事は、この身体には霊力があるという事

…兎に角この渇きと飢えをどうにかして、情報収集をしないと

…この身体はどんな容姿をしているのだろう?

…目線が低いから多分、子どもだよね

…鏡もしくは姿を映せる物が何処かにあれば良いけど

 

この身体にある記憶を頼りに、水飲み場を見付けて渇きを潤すついでに顔を確認した。

 

…金髪ストレートで顔ってか目付きは前世よりもキツいかな?

…あれ?気の所為かな?

…誰かに似ているような気がする

 

 

取り敢えず、元の場所に戻ったら、関西弁の子達に話しかけられた。

 

「身体はもう大丈夫なん?」

「ずっと寝込んどったけど、熱は下がったん?」

「飯取って来たんやけど、食べられるん?」

「「「なぁ、シンジ」」」

 

…シンジ?この身体、女の子なんだけど?

…待って、シンジって名前のキャラいたよね?

…もしかして

…いや、違う。〈彼〉は男でこの身体は女

…偶々同じ名前のモブに違いない

…女の子に男性名を付けた親のセンス疑うけど

 

一先ず結論が出た私は、彼等が持ち込んだご飯こと果物をありがたくいただいた。

まだ本調子では無いと告げた私に、彼等は私が寝込んでいた間の事を教えてくれた。

そのついでにこの身体の記憶の整理も出来た。

 

結果解った事は、此処は流魂街西区の真ん中辺り、亡き両親から受け継いだ私の家。

そして、彼等の中に私と同じ境遇の子はいない。

みんな僅かな霊力を持っているだけの、現世に転生するのを待っている子達。

そして私の名前は平子真子、〈彼〉と同姓同名だという事も。

 

 

 

彼等と共に生活して早100年、みんな現世へと旅立って行った。

その間に私はゆっくりとだが確実に成長した。

前世よりも背が伸びて、体格にもだいぶ丸みを帯びて女らしくなった。

他にも判明した事がある。

両親は元死神だったらしく、家には現役時代の教材や手記その他がたくさんあった。

文字の読み書きを教わっていたらしく、そのおかげでどれも難なく読めた。

そして前世の身体ではありえなかった、どんな事でも努力した分だけ確実に身に付き、またそれを応用出来る能力が備わっている事も。

おかげで霊圧の制御となんちゃって回道が出来るようになった。

そして何よりも、前世で当たり前に使えた能力が、此処でも使えるのはとてもありがたい。

 

「…そろそろ食料なくなりそうやなぁ…また手伝いに行くか」

 

この区で2人しか居ない薬師(元死神、4番隊所属)の所へ行き、薬物と回道について教えて貰いながら店番や身の回りの手伝いをした。

 

 

 

「ご苦労さん!いやぁ~、今日も助かったわ~。はいこれ、今日の手間賃と野菜に豆腐や。今日のはえぇ感じの力作やで。次来た時に感想聞かせてぇな」

「お~!先生んとこのはどれも美味いから今から楽しみやで。ほな、ありがたく頂戴して…毎度おおきに!」

 

何時も気前良く食料を背中に背負えるだけくれる薬師は最近、豆腐作りに嵌まってるらしい。

こうやって給料とは別に試作品も貰えるから、此処に来るのは止められない。

 

「今日も大漁っと…うわっ…と、何やこの匂い…血?何処から?」

 

風向きが変わった事で気付いた、微かな血の匂いの大元が何故か気になり、本来の帰り道からだいぶ外れた道を駆け出した。

 

 

行った先には、行き倒れと思われる少年が横たわっていた。

 

「ちょ、おーい!生きとるかー!?」

 

咄嗟に少年の首に指3本を揃えて当てて、脈を取りながら声をかけた。

 

「…っ」

ぐぅ~~~~~~きゅるるるるるるる

 

返事の代わりに物凄い大きな腹の虫が響いた。

 

「…よし、生きとるな。偉いで!後は…うわ、何があったらこないケガすんねん!?」

 

うつ伏せから楽な姿勢へと慎重に身体を動かしたら、恐らく殴打による青痣だらけであちこちが腫れているし、擦り傷と切り傷も酷い。

そして何より、無理矢理折ったのだろう、左腕と左足がおかしな方向に曲がっていた。

よく見れば似たような古傷もある事から、日常的に暴力に晒されていたと断言出来る。

 

取り敢えず、この場で出来る応急処置をして、背負っていた籠を前に、空いた背中に何とか少年を乗せて家に戻った。

 

 

 

使っていない布団を引っ張り出して、そこに少年を横たえて、顔や手足を清めた。

※どういう訳か前世で当たり前に使えた能力、蝋燭とかに点ける小さな火や、大きな桶に温度調整可能な水を溜められたり、屋内限定だが室温や湿度の調整が出来たりと言った生活魔法を魔力の代わりに霊力を少しだけ消費する事で使えるのはこういう時凄く有難い。

 

…いちいちお湯沸かしたりとか大変だしね

 

何時から彼処に居たのか解らないが、少年はかなり衰弱していて水を飲むのがやっとだった。

私に出来るだろう事を全てやって、その日は寝た。

 

翌日、目を覚ました少年と話をした。

 

此処は私の家、私の名前は平子真子。

何故助けたのか聞かれたから素直に答えたら、鳩が豆鉄砲を食らったような表情をされた。

 

…聞かれたから答えたのに何さ?

 

少年の名前はあいぜんそうすけと言うらしい。

 

…あいぜんそうすけねぇ

…って、藍染惣右介!?

…う~わ、大分衰弱しててボロボロだから解らなかったけど、よく見たら確かに面影あるわ

…もしかしなくても、未来の厄災拾っちゃった?

 

朧気になりつつある〈原作〉が一瞬頭を過ったものの、〈今〉私の目の前に居る〈彼〉は死神にすらなっていない、帰る家を失い誰も頼れず、大怪我を負って衰弱しきっている〈幼い子ども〉に過ぎない。

取り敢えず、

「ケガが治るまで此処に居たら良ぇ」

「その後の事は追々考えれば良ぇからな」

とだけ伝えた。

 

…後は野となれ山となれだ

 

 

 

 

※藍染惣右介視点

 

ぼくの母はぼくを生んで直ぐに亡くなったらしい。

父はぼくを祖母にあずけてそのまま行方不明になったとも。

その祖母も死んでしまった。

その数日後、知らないおじさんが家に来て、家の中にあるお金になりそうな物を売ったり、女の人を連れて来たりと、好き勝手を始めた。

おじさんがいない間に、女の人に身体中をベタベタ触られたりもした。

気持ち悪いけど、我慢した。

だって、おじさんは常に女の人の味方で、ぼくの話なんて聞いてくれないし、すぐに暴力を振るわれる。

水すら自由に飲ませて貰えないから、いつも空腹に苛まれた。

眠る場所は押し入れの隅っこ、身体を丸めて耳をふさいで朝が来るのを待つ毎日。

そんな生活がどれだけ続いたんだろうか。

ついにそれも我慢出来なくなる事が起きた。

祖母がぼくにと残してくれた宝箱にまでおじさんは手を出した。

それだけはと抵抗したら激怒して、殴る蹴るだけじゃ足りないと、ぼくの左腕左足を無理矢理へし折った。

そして気絶したぼくが死んだと思ったのか、そのまま人目の付きにくい場所に捨てて行った。

唯一ぼくに残ったのは、気絶しても手放さなかった宝箱だけ。

その後、ぼくを見かけた人達は皆顔を顰めたり、素知らぬ振りをして通り過ぎて行った。

夜が来た回数が片手の指じゃ足りなくなる頃、その人は現れた。

ぼくを心配する声がぼんやりとだけど聞こえた。

手当てをしてくれて、意識を失わないようにと声をかけながら、どう見たって訳ありのぼくを背負って家に連れて行ってくれた。

悪意も下心も無い、人の温かさを感じたのは凄く久し振りだった。

何日振りか解らない水は喉や胸、お腹に痛かったけどとても美味しかった。

翌朝、ぼくを助けた人と話をした。

名前は平子真子、どう見ても女の人なのにどうしてそんな名前なんだろう?

不思議に思ったものの、聞くのは失礼だからと飲み込み、他に気になっていた事を聞いた。

何故ぼくを助けたのかと。

答えは至って単純だった。

「声をかけたら生きてたから助けた」

「死んでたらお墓でも作るつもりだった」

と。

勿論、そこに他意は一切なかった。

ぼくの名前を聞いて凄く驚いた表情を浮かべた彼女だったが、ぼくの両親や祖母と知り合いという訳ではないらしい。

何故驚いたのか尋ねたら、同じ名前の男が大切な人達に酷い事を平然とする夢を良く見るからだと教えてくれた。

少なくとも彼女が嘘を言っているとは思えない。

でも、ぼくとその夢の男は別人だ。

一緒にして欲しくない。

幸いにも彼女はその男とぼくを同一視する事は無かった。

ぼくの怪我が治るまで此処に居て良い、その後の事は治ってからだといってくれた。

まともに人と話をしたのはいつ振りだろう。

ぼくの事を実験台だと言いながら、死神が使えるという回道で、少しでも早く回復するよう手を尽くしてくれた。

それだけじゃない。

水ばかりじゃ飽きるだろうからと、葛湯を用意してくれたり、何処かへお手伝いに行ったお土産だと飴を口に押し込んで笑いかけてくれた。

彼女がどんな人なのかはこの数日で良く解った。

この人の温もりを絶対に手放したくない。

 

…この人のそばにずっと居る為に、何をすべきかしっかりと考えなくては

 

 

 

この瞬間、この【世界線】の藍染惣右介の未来は定まった。

 

 





次回、死神にはなったけど…
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