メモ書きの分岐点その6、先に誰かが拾ったけど…(まだ藍染は子どもver.)が思い付いたので、書いてみました。
平子真子(♀)の複製完了、転送成功。
観察開始。
無事、真央霊術院に入学して初の長期休暇になり、近所の人達や家を管理して貰っている人に挨拶をする為に帰省した。
数日前にこの区に虚が出現したと聞いていたから、内心気が気じゃなかったが、幸いにも我が家とその近所は無事だった。
その翌日、ずっとお世話になっている先生の診療所へも顔を出しに行った。
…ら、どうやらその近辺に件の虚が出現したらしい。
診療所と居住空間が一体となっている先生の居住空間が全壊、一応無事だった地下のシェルターで何とか生活していたらしい。
「いやぁ~、流石に今回ばかりはヤバかったわ~」
「此処来るまでの惨状見たら肝が冷えたでホンマ」
「あら、真ちゃんおかえり~。元気してたん?」
「真姉ちゃんだ~!おかえり~!」
「あ、フミさん、友介ただいま~。…ん?」
「………」
抱き付いて来た先生の息子、友介の頭を撫でながら挨拶した。
が、先生の助手であるフミさんと手を繋いではいるが、明らかに落ち込み、項垂れている男の子が目に入った。
「どないしたん?その子」
「…どうやった?」
「…先生の予想通りやったゎ。やられたわ」
「…ほうか」
「…」
「…何があったん?」
凄く困り果てた先生と、かなり憤っているフミさんから俯いている男の子について聞いた。
何でも、私が入学する少し前に、かなり衰弱した重傷の彼をとある女性が連れて来た。
当面の治療費を渡して、足りない分は必ず工面するからと頼み込まれて、取り敢えず預かった。
しかしそれ以降、週に一度、夜中にお金が診療所の扉に挟まれはするものの、その女性は一度も顔を見せず、それどころか、請求額に達した途端、行方が解らなくなったらしい。
…間違い無く押し付けられたわね、これは
…何を考えての行動なのかしら、その女性は
「…で、その保護者らしき人の家に行ったと…で、結果は?」
「見ての通りや。この子の記憶を頼りに家に行ったんやけど…居らへんかったわ。今は別の家族が住んどったわ。あの女…ご近所さんに聞いたんやけど、最後の支払いしたその足でそのまま…らしいわ」
…ご丁寧に、もう帰って来れなくしたと
…そりゃ、落ち込まない方がおかしいわね
「…取り敢えず、先生達は此処の建て直し終わるまでウチに泊まりや」
「え」
「ちょ、何言うて」
「ずっと地下で雑魚寝はアカンやろ。建て直しが完了するまでの間ウチに泊まりや。勿論、ちゃ~んと家賃は払って貰うで」
「…悪いな。恩に着るで」
「おぉきに、真ちゃん」
「真姉ちゃんの家に泊まれるん?やったぁ!」
「…」
「何しとん?お前さんも来るんやで?」
「…え?」
「話聞いとらんかったか?此処の建て直し終わるまでウチに泊まりって。勿論、お前さんもウチに泊まり。これは決定事項やで」
「…」
「あぁ、自己紹介しとらんかったなぁ。ウチは平子真子や。お前さんは?」
「…あいぜん…そうすけ」
「ほぅかほぅか…ん?…え!?」
…あいぜんそうすけ?
…藍染惣右介!?
思わず、恐る恐る名乗った男の子をマジマジと見つめた。
「…なんですか?あなたもぼくを…」
明らかに傷付いた表情を浮かべた彼に、何となく予想が付いた。
…多分、彼を拾った女性も転生者だったんだ
…で、彼の正体を知って、怖じ気付いたか何かして、それでも一応怪我人だからと此処に置いて、最低限のすべき事として、治療費を払ってそのまま逃げたんだろうな
目の前の、行く当ての無い小さな男の子にとって、どれだけの絶望を与えたのか、その目が何よりも語っている。
…なるようにしかならないよね、うん
「ちゃうちゃう、ビックリしたんや。昔から良ぉ見る夢に出て来る男と同じ名前やからなぁ」
「…え?ゆめ?」
「せや」
私が知っている〈原作の藍染惣右介〉を夢の中の話として教えた。
「…っぼくは」
「ソイツはウチよりもこ~んなデカい大人の男やで?お前さんとはこれっぽっちも似とらん別人や。聞いとらんかったか?」
「…きいてましたよ」
「そんなら良ぇ。ほなこの子と先に帰っとりますわ。買い出しと部屋の掃除しとかな」
「お~」
「おぉきに、真ちゃん」
「持ってくモンはそれだけで良ぇんか?」
「…はい、もともとこれしかもってないです」
「ん、なら行こか惣右介」
「…」
「…名前呼びはイヤやったか?」
「いえ…よろしくおねがいします」
惣右介の右手を痛くない程度の力でしっかり握り、我が家へと戻った。
…先ずは買い出し、帰ったら掃除と
…やる事いっぱいだなぁ
藍染惣右介視点
祖母の死後、直ぐに知らないおじさんに家を乗っ取られ、散々好き勝手された挙げ句、左の手足を折られて捨てられた。
誰もがぼくを遠巻きにして通り過ぎて行く中、癖のある黒髪の女の人がぼくに声をかけてきた。
「大丈夫?」
その人の家に手当てをするからと連れて行かれた。
その人は不器用らしく、何回やっても上手く包帯を巻けなくて、それでも必死で手当てをしてくれた。
水も飲ませて貰った。
優しかったのはそこまで。
お礼を言って名前を名乗ったら驚愕の表情を浮かべ、それ以降、凄く余所余所しくなった。
ぼくがしたのはお礼と名前を名乗っただけなのに、拾った事を後悔したような、何処か嫌悪を感じる態度を取られた。
その翌日、近所のお医者様に治して貰おうと言われ、連れて行かれた。
その人とはそれきりだった。
…ぼくの名前を聞いた時のあの反応は何だったんだろう?
…おばあちゃんや顔も知らないおかあさん、おとうさんの知り合い?それともあのおじさんの?
…だったら、おばあちゃん達のことを聞いて来るはずだけど、それは全く無かった
…だったら何故?
グルグルと解らない理由を考え続けた。
ただひとつ解ったのは、ぼくは〈また〉捨てられた事だけだった。
怪我が治ってもあの人は迎えに来ないからと、ぼくの記憶を頼りに家に行った。
そこには知らない若い夫婦が住んでいた。
…やっぱりぼくは捨てられたんだ
そんな確信を胸に抱きながら、お医者様の助手さんと診療所に戻って来たら、知らない女の人が親しげにお医者様と話をしていた。
ぼくの事情を知ったその人は、ぼくを置き去りにしたあの人に不快感を示しながら、ぼくに話しかけて来た。
名前は平子真子、どう見ても女の人なのに何故か男の人の名前の変わった人。
その人もぼくの名前を聞いて凄く驚いて、動揺した。
…この人もぼくの名前に反応した
…なら、この人もあの人みたいにぼくを
そう思ったが、予想に反してこの人、平子さんは何故ぼくの名前に反応したのかを教えてくれた。
忘れたくとも忘れられない頻度で、夢に出て来る男と同じ名前だからだと。
その男は既に成人している長身で眼鏡をかけた、ぼくとは似ても似つかない別人だと言い切った。
…この人はあの人みたいにぼくを嫌悪しない?
お医者様の家の建て直しが終わるまで、平子さんの家にお世話になる事が決定し、彼女は一足先に皆が泊まれるように準備するからと、ぼくを連れて帰宅した。
「ほれほれ、遠慮せんとたんと食い」
「もぐもぐ…食べてますよ」
「真姉ちゃん、しょうゆもうないよ?」
「ちょ、友介かけ過ぎやでそれ」
「あぁもう、この子ったら目を離したら直ぐこれや」
「大根おろしで薄めたれ」
「うぇ~、大根おろしキライ~!」
「好き嫌いはアカンで!」
霊術院の寮みたいに賑やかな夕食に何処か戸惑っている惣右介だったが、食欲には勝てなかったらしい。
私が注いだ(豆腐多め)はしっかり食べていた。
「各部屋の掃除と食事で手一杯やったさかい、スマンけど今夜の風呂は近くの大衆浴場行くで」
「え…」
「やったぁ!水鉄砲持ってって良い?」
「駄目や。他人様の迷惑になるやろ」
「え~!」
「明日、ウチの風呂使えるようなったら構へんで」
「…じゃあガマンする」
「ヨシヨシ…で、どないしたん?惣右介」
「…ぼくはるすばんしています」
「却下や」
「…おふろはいやです」
「…強情やなぁ…なして嫌なん?」
「…こわいから」
祖母がまだ生きていた時に行った大衆浴場で、他の子ども達の喧嘩に巻き込まれた挙げ句、溺れた経験から湯船が大の苦手になったらしい。
…成程ね
「…なら、ウチと入ろか」
「は?」
「惣右介の歳なら一緒でも問題あらへんやろ」
「え、ちょ」
有無を言わさず連れて行った。
「…どや?気持ち良ぇやろ?」
「…わるくはないです」
湯着に着替え、湯船に入る段階で渋る惣右介に、湯船の深さはどれくらいかを具体的に教えて、転ばないようにしっかりと手を握ってゆっくり浸からせた。
…上手く場所取り出来て良かったぁ
「…ふぃ~…明日からはウチの風呂使う予定やさかい、此処よりも浅いし、狭いからそう構えんでも良ぇからな?」
「…はい」
漸く肩の力を抜いた惣右介にホッとしつつ、のんびりと温まった。
帰って来て早々、明日も早いからと先生達は直ぐに床に着き、私は霊術院から出てる課題に向かった。
「…そないなとこで何しとん?身体冷めるで?入って来ぃ」
「…しつれいします…まだおきているのですか?」
「お~、霊術院からの課題がなぁ…も~ちょいで終わるんやけど…惣右介はどしたん?」
「…ねむれなくて…すみません」
「あ~…気にせんとき。場所変わると中々寝られへん言うのはようある話やしな。眠うなるまで居っても良ぇし、何なら其処の布団使うても構へんよ」
「…おじゃまします」
「ん~」
背中に視線がチクチクと刺さるものの、気にせずササッと課題を済ませて布団に入る頃には、惣右介もだいぶウトウトし始めていた。
「よっと…お休み惣右介」
「…おやすみ…なさい…あなた…は…ぼく…を…」
惣右介は、自分の頭を撫でた私の手を握り締め、眠りに落ちた。
「…明日から忙しなるなぁ」
…今後の話は明日、しっかりしないとね
藍染惣右介視点。
平子さんの家に帰るまでの道中にあるお店に寄って買い物をした。
「夕飯何が良ぇ?」
「…なんでもいいですよ」
「はいダメ~!もっかい、夕飯何が良ぇ?」
「えぇ…」
「ダメで元々、言うだけ言うてみい?料理やなくても、食べたい食材…魚とか卵とか。逆にこれはイヤや言うのでも良ぇで?」
「…なら、とうふがたべたいです」
「よっしゃ!ほんなら豆腐屋行こか。こういう時は素直になるのが1番やで。覚えとき」
「…はい」
平子さんは少し頑固らしい。
その後、お医者様とその家族とで食卓を囲んだ。
遠慮をすればする程、平子さんは世話を焼きたがる人らしい。
…頑固だけど世話好きな人なんだ
夕食後、大衆浴場に行くのを嫌がったが、平子さんはぼくの見た目なら、女性用の浴場に入れるからと、抱っこして連れて行った。
…抱っこなんて、おばあちゃんが具合を悪くしてからずっとなかった
行き先が大衆浴場だから抵抗したけれど、元気が良いと笑う平子さんには適わなかった。
渋々入った大衆浴場では、ぼくが溺れないように平子さんが壁になってくれた。
風邪を引かないようにと、髪をしっかりと乾かしてくれて、素足だったぼくは帰りも抱っこされた。
…今日出会ったばかりの人の腕の中でうたた寝したのなんて、初めてだ
でも、就寝時間だからと案内された部屋の布団に横たわった途端、何故か眠れなくなってしまい、少し躊躇ったものの平子さんの部屋に行く事にした。
やっぱり平子さんはぼくを部屋に戻さず、そのまま自室に招き入れて、自分の布団で寝ても良いと言ってくれた。
…この人は、平子さんはぼくを捨てない?
…拒絶しない?
…嫌わない?
ぼくがじっと見つめ続けていたのを気付いていたのだろう、苦笑しながら布団に入って来て、ぼくの頭を撫でながらお休みと言って目を閉じた。
頭を撫でる手に触れてみたくなって、そっと手を掴んだ。
…あの人とは全然違う
…あたたかい
拒絶せず、好きにさせてくれる平子さんに安心出来たのか、あんなに眠れそうになかったのに、ぐっすりと眠れる気がした。
観察記録X
藍染惣右介と遭遇。
霊術院に在学中の長期休暇というシチュエーションからの始まりで平子真子(♀)は如何するのか。
観察継続。
平子真子(♀)よりも先に誰かが藍染惣右介(子どもver.)を拾い、即捨てた場合の【世界線】開幕。