転生先で行き倒れを拾った結果。   作:如月雪見

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会うタイミングが本当にほんの少しだけズレた場合。

藍染がおじさんを手にかけたその後に会ったとしたら。


※メモ書きを編集した翌朝、目覚めと同時に思い付いたので、そこからチマチマ書いていたら、また長くなって来たので前中後で分ける事にしました。



取り敢えず思い付いたもしも/その3の分岐3つめ前編

 

 

夕飯を食べて後片付けを終えた後。

 

「…あ~、食った食った。今回のは、前回よりもしっかり木綿になっとったなぁ…と。前のはちょいボロボロやったからなぁ…」

 

手伝いの駄賃として貰った薬師の手作り豆腐の感想を、忘れないうちにメモ書きして空を見た。

多少雲があるものの、月が見えない程では無かった。

 

「…久し振りに月光浴がてらの散歩にでも行こか」

 

ふと前世からの日課をしに出掛けた。

 

 

 

「…満月…やないな。ちょい欠けとる…ん?今何か音せぇへんかったか?気の所為?…いや、気の所為やない…井戸の方やな」

 

微かにバシャッと水の音とつるべを誤って落とした時に出る音が聞こえた。

ついでに何かが倒れる音も。

気になって井戸に向かったら、小さな子どもが水汲みに四苦八苦していた。

 

「…っ!」

「危ない!」

 

何故か両足で踏ん張らず、しかも左手をケガしているのか右手だけでつるべを動かそうとした子どもは、体勢を崩して井戸に落ちそうになった。

慌てて駆け寄り、子どもの足と服を掴んで落下を阻止した。

 

「…っ!っっ!」

「ちょ、暴れんなやっ!落ちたいんかこの阿呆!」

 

暴れる子どもの懐から箱?が飛び出て井戸へと落ちて行った。

 

「ぁ…!」

「…っ〈停止〉!〈浮遊〉!で、自分はこっち来ぃ!」

「ぇ?…ぁ…?」

〈停止〉術者の体重の200倍の重さまでの物体をその場に留められる。事故を防ぐ際に良く使う。

〈浮遊〉術者の体重の100倍の重さまでの物体を浮かせる事が出来る。今回の箱程度なら意のままに操れる。荷物が多い時にとても便利。

 

咄嗟に落ちた物に〈魔法〉をかけて取り戻した。

目の前の現象に驚き固まった子どもを、今のうちにと何とか井戸から引き離した。

そして抱き抱えた事で、何故あんな無茶な汲み方をして、こんなに暴れたのかを理解した。

 

…何なのさこのケガは!?

…左足と左腕なんて折れてるじゃない!

…誰かに襲われた?

…月明かりだけじゃ流石にこれ以上は解らないな

…って酒臭い!?この歳で飲酒!?

…本当に何があったのさこの子!?

 

「…っげほっ、げほげほっ…うぇっ…げほっ…」

「ほら、お前さんのやろ?中が無事かも調べぇや。あと水汲みならウチがやるさかい、此処でちょい大人しゅうしとき」

「…っ!?」

 

子どもの伸び放題な髪の隙間から見えた目は、大袈裟な程に見開いて驚きに満ちていた。

 

…この反応、もしかして人を頼った事が無い?

 

取り敢えず、水飲み用にと帯に挿していた柄杓で水を飲ませた。

 

「…なぁ、家は何処や?送ったるで?」

 

子どもは躊躇いがちに首を左右に振った。

 

「お父ちゃんかお母ちゃんは?」

 

やはり首を左右に振った。

 

「…ウチ来るか?」

 

驚きが混ざった怪訝な目を向けて来た。

 

「いや、そのケガ気になってしゃあないねん。手当てさせてくれへん?」

 

更に困惑した目を向けられた。

 

 

 

 

 

 

何とか説得して、連れて帰る事に成功した。

 

「…これで良し、と…おぉきにな、ウチの自己満足に付き合うてくれて。今日はもぅこのまま寝たらえぇわ。話は明日しよや。ほな、お休み」

 

…ずっと困惑しっ放しだったなあの子

…それにあのケガ、似たような古傷が全身隈無くって感じだった

…日常的に暴力に晒されてた何よりの証拠だよね

…水をガブ飲みしてたって事は、あの子も霊力持ちだろうな

…両親はもういない上に、帰る家も無くしたっぽいな

…両親を亡くしたのを良い事に、親代わりの名目で誰かが家を乗っ取ったとか?

…治安の悪い向こう側から来た奴ならやりかねないし、有り得ない話じゃない

…兎に角、明日だ明日

…どれだけ話が出来るかな

 

 

 

 

 

 

翌朝、湯冷ましと葛湯を用意したら、子どもは凄く驚きながらも、空腹には勝てず、全部飲み干した。

 

「食欲があるなら大丈夫やな」

「…何で助けた?」

「ん?」

「ぼくを助けたって、あなたには何ひとつ良い事はない。なのに何で?」

「何でって…見付けたからや。こないケガしとって滅茶苦茶しんどい筈やのに、それでも生きる為に必要なモン手に入れようと気張ってたやん?せやから、ちょっとお節介焼きたぁなっただけや」

「…変な人」

「褒め言葉として貰っとくわ。取り敢えず、ウチの自己満足にもうちょい付き合うてくれへん?ケガ治るまで此処に居ぃや」

 

後にこの子どもがあの藍染惣右介だと知って驚愕したものの、

「もう拾っちゃったし、此処まで世話したのに、放り出すのは無責任が過ぎるやろ」

と、そのまま完治するまで家に住まわせた。

完治した頃にはすっかり懐かれて、「真子さん」と呼んでは後ろをくっ付いて歩く惣右介を見ると、弟が居たらこんな感じだろうか?と思うようになっていた。

 

 

 

 

 

 

藍染惣右介視点

 

宝箱を諦めきれずに奪いに来たおじさんをどうにかしたくて抵抗していたら、身体から出た〈何か〉がおじさんに当たり、おじさんはピクリとも動かなくなった。

…助かった?

…まぁいい、今まで好き勝手されたんだ

…少しくらいやり返して何が悪い

そう思って、おじさんの懐から汚い財布、女に貢ぐつもりかそれとも誰かから盗んだのか解らないが、身の丈に合っていない簪、液体の入った瓢箪…簪以外は大した物は持っていなかった。

「ゴクゴ…!?ゲホッ!ゴホッ!ぅおぇっ…」

兎に角何か口にしたくて、瓢箪の中身を飲んで直ぐに後悔した。

おじさんがいつも飲んでいたのはお酒だという事をすっかり忘れていた。

口の中だけでなく、のど、そして胸まで激しい痛みに襲われた。

余りの痛みに意識を失う事はなくなったものの、気持ち悪さも加わって益々水が欲しくなり、左足を引き摺りながら彷徨った。

ようやく見付けた井戸で水を汲もうとしたが、上手くいかずに何度も転び、これだけ水の音と何かが倒れる音がすれば、人が来てしまうのではと焦っているところに知らない女の人の焦った声が聞こえた。

結果、その女の人に助けられた。

女の人は自分の為、自己満足だと言ってケガの手当てだけでなく、水を欲しいだけ飲ませてくれて、身体を休めるようにと、部屋を貸してくれた。

…本当に変な人だ

…不思議な力で井戸に落ちそうになったぼくの宝箱を守ってくれたり

…貴重な薬や包帯を惜しげも無く使って手当てしてくれて

…昔着ていた女物だけど我慢してぇなって、着替えだってしてくれて

…あの人には何の得にもならないのに

…助けられて良かったって、嬉しそうに笑ってた

…今までそんな人は祖母以外に居なかった

…あの人の名前、何て言うんだろう?

手足を伸ばして布団で寝たのはいつぶりだろうか。

有り得ない程ぐっすりと眠れた。

翌朝、女の人はわざわざ湯冷ましと直ぐに食べられるようにと温度調整した水飴入りの葛湯を用意してくれた。

具合が悪い時に祖母が作ってくれた葛湯よりも甘かったけど、凄く美味しかった。

食べ終わった後、ケガが治るまで居候するように言われた。

行く当てが無いなら、尚更だとも。

自己満足の為とは言え、ここまで良くしてくれる人なんて、この世にどれだけ居るのだろうか。

ぼくの名前を聞いて凄く戸惑った表情を浮かべたのは気になったけど、聞かないでおこうと思った。

でも彼女、平子真子さんは隠し事は余り好きじゃないからと理由を教えてくれた。

曰く、ぼくと同姓同名のその男は、忘れかける頃に夢に出て来ては、目的の為ならどんな犠牲も厭わない、それこそ何百人何千人の命が犠牲になっても構わない、必要な犠牲だと平然と言う冷酷な奴なのだと。

ぼくの名前を聞いてその男を思い出したからだと。

嫌な事を思い出させてしまった申し訳なさを感じたけれど、苦笑いをしながらぼくはぼくだと頭を撫でてくれた。

…優しくて暖かいお日様みたいな人だ

…こんなに暖かい人を傷付ける奴は絶対に赦さない

…夢の中の話だから助けに行く事は出来ないけど

…それ以外でこの人を傷付けるかも知れない奴は絶対に近寄らせない、徹底的に排除してやる

…ぼくが真子さんを守ってみせる

…その為の力が欲しい

…ケガが治ったら、真子さんを守れる力を必ず身に付けてやる

その後、ケガが治ったぼくは真子さんに恩返しがしたいと告げて、ぼくが出来る事を積極的に手伝い、生きていくのに身に付けていた方が良い事をたくさん教えて貰った。

…まずは自分を確実に守れるようにならないと

 

 

 

観察記録X

どうやらすべき事を見付けた藍染惣右介は、何処の【世界線】でも全力で取り組み、一直線に進むらしい。

 






一先ず此処まで。

次回、死神になる経緯。

ただいま中編執筆中。
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