転生先で行き倒れを拾った結果。   作:如月雪見

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生じたズレで起きた事件。



取り敢えず思い付いたもしも/その3の分岐3つめ中編

 

 

惣右介のケガが完治して数年が経った。

成長期真っ只中で、少しずつ私の記憶にある〈原作〉の藍染惣右介に見た目は近付いてきている。

喋り方はすっかり私に似たが。

 

 

 

「…行くで、真子さん」

「よし」

「…〈軽量〉…よっと…持てた!持てたで真子さん!」

「やるやんか惣右介。壺をいきなり天井にぶち当てたのが嘘みたいやん」

「…それは言わんといてや」

 

〈魔法〉に興味を示した惣右介に頼まれて、魔力量が少なくても使える言わば〈基本魔法〉のひとつ〈軽量〉を教えている真っ最中である。

惣右介は家で1番重くてデカい漬物石に〈軽量〉をかけて、軽々と持ち上げられたと喜んだものの、加減が解らず失敗した事を弄られて拗ねた。

 

「まぁこれで〈基本魔法〉は終わりやね」

「え、ほんま?」

「ほんまやで。にしても凄いなぁ惣右介は。全部修得すんのにもうちょいかかるもんなんやで?しかも〈転写〉なんか一発で覚えたやんか」

「あれは…被写体が(ゴニョゴニョ)」

「ん?」

「な、何でもあらへん!まだ時間あるし、他のも教えてぇな」

〈軽量〉対象を軽くして持ち運びを楽にする。加減を間違えると対象が軽くなり過ぎてしまい、何処かに飛んで行ってしまう事があるので注意が必要。真逆の〈重量〉もある。

〈転写〉対象の姿をしっかりと脳に刻み、その姿を色々な物に貼り付けられる。カメラ機能とコピペを融合したもの。術者の魔力量に応じてモノクロやフルカラー、立体化に動画化等加工し放題である。

 

「ん~…せやなぁ、そしたら…〈停止〉でも教えよか?」

「うん!」

〈停止〉は生き物にも通用する為、引ったくり等の現行犯をその場に止めたりも出来るので、自衛目的で教える事にした。

 

ゴーン、ゴーン、ゴーン…

 

気付けば夕食の時間になっていた。

 

「おっと、今日はここまでやな。夕飯作らな」

「ほなぼく、庭から野菜取って来るわ」

「ん、任せたわ。食べたいの持って来ぃ」

「うん!」

 

直後、藍染惣右介にとって絶対に忘れられない事件が起きた。

 

 

 

ドォォォォォンッ!!

突如、庭から轟音が響いた。

 

「何や今の!?惣右介!?」

 

大慌てで庭へと駆け込むと、そこには植えてある野菜と黒装束の男を踏み付けて嗤う虚が居た。

不幸中の幸いで、惣右介は私のすぐ傍に倒れていた。

 

「う…真子さん」

「惣右介!」

 

恐らく、空から突然降って来たと思われる死神と虚から逃げようとした拍子に転んだのだろう、あちこちに擦り傷が出来ている。

 

「…戻ろう思ぅたらいきなり「話は後や、逃げるで惣右介!」」

 

ーニガサナイー

 

「くっ!〈極光〉!」

〈極光〉目眩まし。兎に角物凄く眩しい。加減を間違えると失明する危険性もある。因みに、かけられた対象は一定時間光り続ける。

 

ーグァァァァ!?ー

 

虚を怯ませ、惣右介を抱き上げて全力で逃げ出した。

 

「〈慟臂〉!〈駿躁〉!〈顕翼〉!」

〈慟臂〉感情の揺さぶりが激しい程腕力が上がる。所謂火事場の馬鹿力を引き出す。

〈駿躁〉移動速度や機動力が爆上がりする。但し、運動不足の人が使うと〈魔法〉が切れ次第、即地獄の全身筋肉痛に襲われて行動不能になる。

〈顕翼〉一定時間、背中に翼が生えて空を飛べる。魔力消費(霊力消費)が激しいのが難点。

 

兎に角、虚から逃げる事を最優先にしつつ、あの男の仲間を探した。

 

…見付けた!こっちに来てる!

 

先程の光に気付いたらしく、同じ格好の男達が向かって来ているのが見えた。

それと同時に悪寒が全身を駆け抜けた。

 

ゾクッ―――

 

咄嗟に身体を捻って、追いかけて来た虚の何十mも伸びた腕を避けた。

 

…普通に気持ち悪っ!

 

伸ばせる腕が左だけなのが救いだが、流石にそろそろ地上に降りないと〈顕翼〉が保ちそうに無い。

※重ねがけは霊力消費が更に激しくなる。

 

…何やってるのよそこの死神達!

 

私が回避している間にさっさと対応すべき死神達は私達を見ているばかりで、本当に役立たずとしか言いようが無い。

 

…私が死神になった時、覚えてなさいよ!

 

反応が鈍くなった私を、好機とばかりに肉薄して来た虚に惣右介が叫んだ。

 

「〈停止〉!!」

 

ーギッ!?ー

「え…!?」

 

虚が急に動きを止めた。

同時に惣右介を抱き締めていた私の〈魔法〉の効果も打ち消された。

それはつまり、空中に居られなくなったという事で。

〈停止〉は消費する魔力量によっては、直ぐ傍で発動中の〈魔法〉にも干渉出来る。発動中の平子(♀)よりも惣右介の消費した魔力量が上回っていたらしい。

 

「ちょ…」

 

…〈魔法〉が使えない!?

…霊力残量はまだある筈なのに

…何これ!?

 

自分の魄垂と鎖結両方が何か膜のような物で覆われているような感覚を覚えた。

同時に惣右介の〈停止〉が、私の〈魔法〉そのものを一時的に使えない状態に陥らせている事にも気付いた。

 

…このままじゃヤバイ!

…せめて惣右介だけでもっ

 

躊躇いなく〈奥の手〉を使う事にした。

 

「〈引換〉!〈浮遊〉!」

 

ブォンッ………プカァ…フヨ…フヨ

地面スレスレだが、どうにか間に合った。

 

「っはぁ~、大丈夫か惣右介?ケガ無いか?」

「…真子さん…なして…なして髪が…!?」

「ん?」

 

地面に降りた惣右介は、私の〈短くなった〉髪の毛を信じられない目で見た。

先程使った〈奥の手〉である〈引換〉は、身体の一部と〈引換〉に願いを叶える〈究極魔法〉のひとつで、そう何度も容易く使えない強力な〈魔法〉である。

今回、私はお尻が隠れるくらいまで伸ばしていた髪の毛と〈引換〉に〈魔法〉を使える状態に戻して〈浮遊〉を発動した。

今の長さは肩にかかるくらいになっている。

 

…あの高さから落ちたら、ケガじゃ済まなかった可能性が高いからね

…何にせよ、惣右介が無事で良かったぁ

 

それを話したら、惣右介の顔が今にも泣きそうな表情に歪んだ。

自分のした事を正しく理解したらしい。

 

「…ぼくの所為や…ぼくの所為で…ほんま、ほんますんまへん…」

「何謝っとん惣右介?お前さんのおかげであの化けもん止められたんやで?見てみぃや、奴さんスパッとやられたで」

「でも、真子さんにょ…」

「髪はまた伸ばせばえぇ。そない気になんなら…せやな、ウチの髪が元の長さになった時に、ウチに似合う簪のひとつでも買ぅてや。な?」

「………」

 

ムニムニと惣右介の両頬を揉みながら言い聞かせた。

それでも、割に合わな過ぎると惣右介の表情にこれでもかと出ている。

 

…本当に気にしてないのに

…困ったなぁ、どうしよ?

 

「お取り込み中のところ悪いんだけどさ、お2人さん死神にならないかい?」

「ん?」

「え…」

「誰やアンタ?」

 

振り返ると、原作よりも若い京楽春水が居た。

彼曰く此処ら一帯が8番隊の担当地区だが、あの虚は逃げ足が速くて、他の隊の担当地区へも移動を繰り返す所為で討伐は難航、今回漸く捕捉出来た事。

そして私とあの虚の攻防戦をどう判断すべきか迷ってしまい、手出し出来なかった事を詫びて来た。

 

「何せ、少年を抱えた状態で、背中に翼を生やして空を飛ぶ女性の報告は今まで一度も無かったからねぇ」

「…さよか」

 

…だからか、棒立ちしてたのは

 

私の霊力と特殊能力は兎も角、惣右介の霊力は今から制御出来ないと更に大変な事になると、京楽は大真面目な表情で本人に告げた。

 

「…ほなぼく、死神になる。真子さんを傷付けへん為にも…!」

「…せやったら、ウチも付いてくわ。元々惣右介がやりたい事見付けて、それを叶えたらなるつもりやったし」

「決まりだね。推薦状を用意しておくよ」

 

こうして私達は死神になる為に京楽の誘いに乗った。

 

 

 

 

 

 

藍染惣右介視点

 

今日も真子さんに〈魔法〉を教えて貰った。

〈基本魔法〉を全て修得し、まだ時間があるからと〈停止〉を教えて貰える事になった。

失敗を弄られ、ついムキになって練習に熱を入れ過ぎてしまい、少し遅くなったが夕食の用意を始めた。

庭に植えている野菜を、夕食ついでに朝食の分もと多めに取り、立ち上がった瞬間視界が突然暗くなった。

「え?…うわっ!?」

落ちて来た大きな塊…死神と虚から急いで逃げようとして、足が縺れてそのまま転がった。

直ぐに異常を察した真子さんが来てぼくを抱き抱え、〈魔法〉を駆使して逃げた。

幾ら真子さんが優秀な術者でも、〈魔法〉を同時に幾つも使えば消耗は激しくなる。

ましてやぼくを抱き抱えていれば負担は更に大きくなってしまう。

現に虚から逃げ続ける真子さんの霊力が、どんどん減って行くのを感じた。

…このままでは真子さんが!

咄嗟に未修得の〈停止〉を虚だけにぶつけたつもりが、ぼくを抱き抱えている真子さんにも影響を与えてしまい、〈魔法〉を維持出来なくさせてしまった。

…そんなつもりは無かったのに!

…どうすれば真子さんの霊力を元に戻せるんだ!?

予定外の事態に混乱するぼくとは違い、真子さんは迷う事無く〈奥の手〉を使い、綺麗な髪を犠牲にしてぼくを助けた。

…ぼくの所為だ

…ぼくが余計な事をしたから真子さんが

そう自分を責めるぼくに朗らかに笑う真子さんに笑い返す事は出来なかった。

そんなぼく達を見ていた死神、京楽春水とやらが話しかけて来た。

ぼくの霊圧は、そのまま放置しておくともっと大変な事になると。

今からでも然るべき場所で、その力をしっかり制御出来るようにした方が良いと。

…真子さんを守りたいのに、逆に迷惑をかけてしまうだなんて

…真子さんにとっての危険な存在になんかなりたくない

…ちゃんとこの力を使いこなせなければ

死神になると決めたぼくを見て、真子さんも付いて来ると京楽春水に返事を返した。

どうやら、ぼくの将来を案じてくれていたらしい。

…本当に、何処までも優しい人だ

数日後、真央霊術院に入学する為の推薦状が届いた。

 

 

 

観察記録XXX

平子真子(♀)の行動について。他の【世界線】では隠す傾向にある〈魔法〉を、藍染惣右介を守る為にと大胆に使用する傾向にあり。藍染惣右介にも請われたとは言え、積極的に指導している。この【世界線】に新たな技能が加わる可能性あり。

 






次回、後編。

結末はどうなる?



手元が狂った拍子に折角書いた文章を消してしまい、書き直すのに結構な時間がかかりました…。

ただいま後編を執筆中。
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