最高効率の周回場解放のためにラスボス最速撃破したらシナリオブレイクしました。   作:ニャル太郎

1 / 7
0.廻る魂は過ぎた力のために

そこは生きとし生けるものが訪れる末路。

そこは物語の終着点。

そこは破壊を貪る罪人の城。

そこは破滅を防ぐために作られた王の監獄。

そこは虚言と快楽で模った偽りの夢。

そこは無知と苦痛で作られた悲しき夢の果て。

 

そこは、二人の出会いであり決着の地。

 

 

 

 

「きたか来訪者、オレの退屈を殺しにきた者よ」

 

玉座に座る若い男が語り出す。

 

黒曜石のような艶やかな長い髪に翡翠の宝石を埋め込まれたかの如く輝きを放つ瞳。

陶器と表現するには程遠いまでの透き通った純白の肌、そしてひび割れのように絡みつく灰色の古い紋章。

 

鋼鉄のように仕上げられた肉体からはとてつもない威圧が放たれ、気を抜けばこちらが圧倒されてしまう。

 

「依代を破壊する前に来られたのは想定外、いやむしろ好都合と言うべきだろう! なんとも幸運なんたる運命! だが悲しきかな今からオレとキサマはどちらかの魂が尽きるまで血肉を削り合い殺し合わなければならない! なんたる悲劇! いいや喜劇と言わざるをえない!」

 

玉座から立ち上がり、上機嫌に近づいてくる。

 

「我が名はアルヴェニール! 災厄の魔王にして禁忌を備えし罪人の王であり黒蝕の渦を操る道化である! さあ対するキサマは何者か?」

 

自己紹介を促すようにアルヴェニールが右手を差し出す。

その問いかけには返答せずに深呼吸をし白いローブの下から剣を鞘から抜き、構える。

 

「……語らぬか白き来訪者? それとも既に魅入られたか?」

 

剣に魔力を込めて、集中する。

 

左手に装備してる小盾(バックラー)のベルトを固定し直して、ちょっとズレちゃった仮面の位置も調整して準備万端。

 

「……ハハッ! ハハハハハッ! 良い! 良い良い! それでこそ!」

 

雷鳴が如く笑い、両手で空間を引き裂く。

裂け目に手を突っ込み漆黒の大剣を取り出して天高く掲げる。

 

「征くぞ! 語らぬ白き来訪者! キサマが今まで歩んできた旅路の記録! 血が滲むような修行の成果! オレに見せろ! 全てだ! キサマという存在そのものが枯れ果てるまで殺し殺され尽くし合おうではないか!」

 

衝撃音が襲い来る。

それは最後の戦いの合図の音。

 

 

 

────そして決着はついた。多分。

 

「………………ハ、ハハハハハッ!」

 

壊れた玉座に埋もれながら、アルヴェニールは何かが弾けたかのように笑い出す。

 

「面白い、面白いッ! このオレが!? このオレが負けただと!? あり得ない! いいやあり得た! あり得てしまっているんだこれがッ! 幾星霜と生きてきた人生の中で今までこんな出来事があっただろうか!? 否ッ! 断言できる! してやってもいい! いいやされたのだ! 今この瞬間! この場をもってしてそれは証明されたのだ!」

 

アルヴェニールは饒舌に高笑いをしながら、体のあらゆる個所から血を噴き出しつつも起き上がる。

 

白い肌は焼きただれ赤黒く変色し、端麗であったであろう顔の面影はない。両腕は飛ばされた衝撃で吹き飛んだのか骨がむき出しとなり、空洞ができた腹部からは内臓とその者の血液とされる黒い液体が絶え間なく流れ落ちている。

 

瓦礫によってつぶされた脚はもはやその意味を成していないにもかかわらず、立ち上がっていた。

 

「今この瞬間ッ! オレはキサマに敗北した! だが認めない! 認めてたまるか! 今この時この瞬間全ての事象をもってしてもオレは認めない!」

 

不敵な笑みを浮かべるや否や、彼の肉と骨が急激な速度で再生を始め、自己改造が繰り返されていく。

 

背中からは真っ黒な竜を模した翼と腰あたりから五メートルに及ぶ尻尾が生え出し、頭には曲がりくねった歪な黒い角、手首から下は黒色に染まり爪は赤くひび割れてて禍々しく染まっていた。

 

ようやく『災厄の魔王』と呼ぶに相応しい姿に変わったが、こちらのやることは変わらない。

 

復元と改造を終えたアルヴェニールは不敵な笑みを浮かべ指を鳴らす。

呼応するかように、空間を引き裂きながら百を超える黒い剣が現れた。

 

「……、……」

 

その光景に一瞬だけ、息を呑む。

だが、すぐさま思考を切り替える。

 

「だからこそ問おう! 問わせてもらおう来訪者! キサマがオレが求めた『勇者』か? 否! そうではなくても言葉は不要! もはやこの戦いにそのような無粋な問答は意味を成さない!」

 

なら質問するな。という返答は心にしまい込み、再び剣を構えた。

 

「さあ我が悲願! 我が虚無! 我が絶望! 存分に味わうがいい! そして再び証明して見せろ! キサマの願いを! 夢を! 希望を!」

 

刹那。

音を、光を、時を、世界を置き去りに、魔王が襲い掛かってきた。

 

真の最終決戦が始まる。

 

 

 

────最後の決着はついた。

 

魔王の猛攻を全て弾き、心臓を貫く。

貫かれた心臓は黒く輝き、砕け散った。

 

心臓の破片が散らばり、力なくアルヴェニールは地面に叩きつけられて斃れる。

 

「……不思議だ、負けたのにこんなにも清々しいとは」

 

悲しみも怒りも生への執着もない声色で吐き捨てるも僅かに満足げで、しかしほんの僅かに後悔が入り混じるように呟く。

 

なんて声をかけようか悩んでいると、その視線に気づいたのか穏やかな表情で口を開いた。

 

「直に(おわり)がオレを迎えに来る、だがその前に聞かせろ」

 

少し苦しそうにこちらを見てくるので渋々転がる魔王に近づいた。

攻撃してくる様子はない、してきたらとりあえず弾くので大丈夫、多分。

 

「……オレは、強かったか?」

 

ボロボロの手を伸ばしてきたのでそっと優しく触れる。

ほんのりと暖かく、かろうじてヒトの体温を保っていた。

 

「強い、強かった。馬鹿みたいに強かったよ。相変わらずディレイはいやらしくて攻撃モーションの発生フレームがクソ速えし全体攻撃の範囲が思ったよりも広くてちょっと死を覚悟したしなんか剣の量増えすぎだし見たことない必殺技出してきた時は流石に馬鹿じゃねえのって言いたい。ごめん今言ったね。それとさっきの形態で禁忌の力を応用してきたのは予想外すぎてちょっとビビり散らかしたよ。伊達に六度の弱体化(ナーフ)と四度の観測者(プレイヤー)強化でやっと勝率四割になったって言われるほどの元祖最強ボスっていうほどに、まあ、強かった」

 

嘘偽りのない、真っ直ぐな感想をぶつける。

 

「……そう、か。そうかそうかそうかッ! ()()()()か!」

 

二割くらい何言ってんだこいつの顔をしたあと、後悔なんて言葉を吹っ飛ばすほどの声量で笑い上げた。

 

「そうか、そうか。オレは、強かったか。オレは……やっと……」

 

噛み締めるように呟いていたのに急に黙り込んだ。

ようやく事切れたかと懐を探ろうとした瞬間、爆音が耳に突き刺さる。

 

「フフハハハハハッ! さあ別れの時だ来訪者! キサマは未来を掴み取った! 存分に誇り! 後世に語り継いでいけ! そうでなくても語り継がれるべきだ! キサマは今! 偉業を成したのだ!」

 

今度こそ、満足げな顔を浮かべて目を瞑り、自壊に身を任せていた。

もう長話をする様子もなく、静かに死を受け入れた魔王の体は塵になっていく。

 

 

 

「うし、感傷タイム終わり」

 

アルヴェニールくん言葉はいらないとか言ってたけど話し出すとマジで止まらないし長いから黙って死んでくれや。戦闘中(さっき)とかずっとあのテンション喋ってるのやかましいんだよ。いい声だったけど。

 

「とりあえず第二形態は死ぬほど練習したおかげでそんなに苦労しなかった……なわけねえだろバカタレ。明らかに剣の数が多すぎ、本来は二十本くらいだったのが五倍の数で飛んできやがって、パリィと回避特化構成じゃなかったら死んでたぞ」

 

……というかさっきの第二形態、一部没技も入ってたな。確か神代形態だっけか?

DLCで実装予定だったけどVRゲーム機のスペックじゃ再現できなくて結局お蔵入りになった幻の形態だったっけ。まあDLCの方はというと別形態実装後、強すぎて十二回くらい弱体化(ナーフ)されてたけども。

 

そもそもフルダイブ型VRゲームでフレーム回避とか全体範囲攻撃を撃ってきたり五感を奪ってくる敵をストーリーボスとして配置しないでほしい。真エンディング形態の方がまだ戦いやすいの何? それでも勝率八割ちょいだが……。

 

「てかよく生身対応できたね自分、我ながら驚き通り越してドン引きだよ」

 

……さて、散々愚痴ったので気持ちを切り替えて報酬チェック。

途端に待っていましたと言わんばかりに『ぱらっぱっぱっぱ~』と間抜けなクリア音が頭の中で鳴り響いた。

 

「ではラスボス最速撃破したんでクリアタイムから見ていこう」

 

魔法陣(リザルト画面)を覗くと記録は十六年二日十三時間三十六分二十六秒と人生換算で行くと速い部類でしょう。知らんけど。

 

HPとか普通にワンパン圏内だったけど身代わり人形と己の技量(プレイング)でどうとでもなるのはゲーム基準だったね。

 

「挑戦前のレベルも七十二だったのが九十七に上がってんじゃあないすか〜。流石ラスボス、経験値テーブルす……は? 経験値倍加のチャームつけ忘れてるじゃねえか、何してんの自分?」

 

予定ではこの戦いでレベルカンストになるつもりだったのに、って今となっては些細な問題なので流しつつ肝心の魔王討伐の報酬ですが……と死体()を漁って引きずり出す。

 

「てれれってれ〜。魔王アルヴェニールくんの血肉で作られた『宝物庫の鍵(ラスト・アーカイブ)』〜」

 

宝物庫の鍵(ラスト・アーカイブ)』、今回の目的の品。

神代の遺物やら記憶媒体やら置かれてるすごい倉庫ですが本命はそこではない。

 

その宝物庫を警備する魔物くんの経験値が非ッッッ常に美味しい。

どれくらい美味しいかというと一周回るだけでレベル一からレベル八十七〜九十二なるくらい。もはや数字(アホ)のインフレである。

 

「ここまでは想定通り、っと」

 

あのボケカスクソ強ボスをぶっ飛ばしたんだから例の()()を解放してくれないと困るんだよな〜と、魔法陣(リザルト画面)をスクロールしていく。

 

「……あ」

 

あった。見つけた。見つけちゃった。

このゲームの醍醐味、メインと言っても過言ではない機能、それ即ち。

 

 『廻魂(オーバー・ソウル)』 解放 

 

レベルリセットシステム。レベルが上がりづらくなる代わりにステータス値が大幅に上がるというレベ上げ厨歓喜の最高機能。

 

これだけのためにやってきたと言っても過言ではない。

これだけのためにラスボスをぶち殺しにきた。

これだけのために十六年二日十三時間三十六分二十六秒もかけて生きてきた。

 

「……ひひっ、ひっひひひっひひいひひひっ、うわきたね涎出た」

 

興奮のあまり獣がごとく涎を垂らすなんてはしたない。ソロで来てよかった。

しっかしまあ、諸々のフラグやらイベントやら叩き折ってきちゃったもんだから各所で弊害とか起きてたらどーしよ。

 

「……どうでもいいか。終わりよければ全てよし(ハッピーエンド)だし」

 

倒さなきゃいけないネームドボス放置してるのは、うん、誤差の範囲ってことで。

最悪やばそうだったら自分が責任持ってぶち殺せばいい(経験値に変える)のでええやろ。

 

「さーてと、鍵回収したしちょろっとレベリングするか。あっいやその前に廻魂(オーバー・ソウル)が使えるように女神像みっけないと、でもカンストしてからの方が効率いいか? けど万が一のこともあるから見つけてから、やっでもな~」

 

 

 

────かくして思いもよらない形で世界は平和になった。めでたしめでたし。

 

 

 

 エンディング『永き使命を終わらせる者』 

 

 新章『初めまして、貴方がいる世界』 開始 

 

 

 


 

【ボス紹介】

〇『災厄の魔王』アルヴェニール Lv200☆

推奨Lv:100

 

『Soul Lead』の物語(ストーリー)最重要(ラスト)ボス。

 

属性・神聖耐性が非常に高く、呪いに関しては完全無効耐性を持つ。

物理耐性も高いが比較的通りやすいのでパリィ(攻撃モーションを弾く動作)などによる近接戦法が主軸となる。

 

第一形態は基本的に動きが速いだけで慣れたらそこまで強くないのでパリィの練習に最適とされているが問題は第二形態。

 

形態変化後、『黒蝕剣(ニグレド)』使用してくるようになる。

固有呪術(ユニークスキル)黒蝕剣(ニグレド)』:触れただけで防御デバフ・黒蝕ダメージが発生。パリィなどで跳ね返すと反射ダメージとして加算されるため積極的にパリィしていこう。

 

最初は二十本の黒蝕剣(ニグレド)を生成し一定間隔で発射してくる。

プレイヤーを一人選び対象(ターゲット)とし、そのプレイヤーが死亡あるいは戦闘不能になるまで追撃を繰り返す。

 

体力の六割を切ると魔法・遠距離攻撃(黒蝕剣(ニグレド)は除外)を防ぐようになり、さらに残り三割を切るとステージ全体を覆う即死級の範囲技を乱発してくる凶悪ボス。

HP減少につれ黒蝕剣(ニグレド)の本数が増えていき最終的の数は百本を超える。

 

本体の攻撃の予備動作が極端に短くなり回避タイミングを見極めるのが難しいためか、真EDボスの『禁忌の器/王の帰還』(※リンク先ネタバレ)の方が倒しやすいと言われるほどに攻略難易度が高い。

 

ただ、『創世の女神』フェイリアの加護を得た『白豊剣(アルベド)』を所持するだけで『黒蝕剣(ニグレド)』を無効化し、アルヴェニール本体を大幅に弱体化できるようになる。

 

※『白豊剣(アルベド)』は3章『災厄は白亜の夢を喰らう』(※リンク先ネタバレ)にて入手可能。

 

 

(追記)エンドコンテンツの『新たなる世界(オーバー・ワールド)』で解放される『三神の塔(トリニティ・メモリアル)』、通称ボスラッシュにて再戦可能となった。

 

ただし『白豊剣(アルベド)』は物語(ストーリー)限定武器であるためか討伐率は『Soul Lead』歴代ワースト一位を記録。

 

上記のことから、『白豊剣(アルベド)』なしのソロ討伐はほぼ不可能とされている。

 

 

 

・報酬『宝物庫の鍵(ラスト・アーカイブ)

『災厄の魔王』アルヴェニール撃破で入手可能になる鍵。

 

神代の遺物や記憶媒体などが保管されている倉庫。

解放すると強力な武器や杖、『魔導書』や『聖書』などが手に入る。

詳しくは『禁忌の墓』(※リンク先ネタバレ)で解説。

 

なおこの宝物庫を守護する魔物の経験値が非常に高く、一時期運営側の調整ミスだと思われていたがのちに隠し要素の一つ『廻魂(オーバー・ソウル)』の布石であったことが判明。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。