最高効率の周回場解放のためにラスボス最速撃破したらシナリオブレイクしました。   作:ニャル太郎

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3.数字の暴力

「あンのクソゴーレムめ、宝物庫以外は自分で歩けだなんてケチかよ」

 

やっぱ無機物はクソだわ。いや無機物にそんな器用なことを求めるのは酷か、とセルフツッコミをしつつ静まり返った廊下を歩いていく。先の戦いでメイン武器が壊れてしまったので身も心もボロボロ。なんなら食料も底をつきかけていたので近場に買い出しに行こう。

 

「ここからだと近いのは、ブルームか」

 

『花の都』ブルームとは、西側に位置する小規模都市で名前に似合わず魔学技術が有名。対黄金使徒対策を積極的に考案しあらゆる場所に魔学技術を提供している『Soul Lead』屈指の超有能都市。人口二千人程度だがその半分が技術者であり魔法への研究意欲が尽きない人らが集まる変人都市とも呼ばれている。

 

だがゲーム本編開始時点では既に滅んでいた。第ニ位『大地の彫刻家』金牛宮(トーラス)、第七位『調律の裁判官』天秤宮(リブラ)、第九位『星燐の射手』人馬宮(サジタリウス)、第十二位『溺哀の歌姫』双魚宮(ピスケス)の圧倒的な蹂躙により一夜にして地図上から名を消されたのだ。

 

敵が過剰戦力なのと魔学技術を嫌ってる聖教会連中のこともあって当初は見捨て路線で準備を進めてたんだけど周回場から一番近い都市なので諸々のことを再思考した結果、上記四名を討伐。まあ普通に強かったよ、双魚宮(ピスケス)ちゃん以外。

 

「ダメだったら当初の予定通り『水の都』コバルトに行くつもりだったけど苦労した甲斐があったな~」

 

思い出に浸りながら玄関扉を開けて外に出、うおっ一ヶ月ぶりの陽の光が目に染みて痛いっ。隠の者には目に刺さって痛いので大人しく仮面を被ろう。

 

ここからだと場所は遠いがそこはブルームお得意の魔工技術の出番、転移門(ワープポイント)でひとっ飛びだぜ。

 

「宝物庫の鍵は閉めた、焚火は消した……よね? 多分消した」

 

いざ『花の都』ブルームへ。

 

 

 

 

────っつっても早く周回場解放したくて転移門(ワープポイント)設置し忘れてきちゃったんだよな。片道三日もかかるんだぞアホンダラ。

 

「まあ外の空気も吸いたかったし結果的に良しとしましょうかね、ん?」

 

野原を爆走しながら進行方向に目を凝らす。見えてきたのは数十体の魔物(モンスター)に囲まれている少年とその光景を楽しそうに眺める男。

 

「な、何をするんですか!」

「別に? 今からあの方々の障害になりうる邪魔者を消そうとしてるだけだが?」

 

男の容姿はぱっと見、三十代前半くらいで前髪を七三分けで切れ目の男前、好みじゃないけどそれなりに美形。軍服を着こなし左腕の腕章にはライオンの尾を模したシンボルが描かれており、両腕には『使役魔法(テイム)』の術式っぽいのが刻まれてるから魔獣使い(ビーストテイマー)だろうか。

 

少年の方は大体十代前半くらいで赤髪の短髪、青い瞳の人形のように整った顔。青色のベストに黒のフリルシャツ、サスペンダー膝出し短パンにブーツと一部の性癖異常者が喜びそうなビジュアル。体の至る所が傷まみれで血がにじみ出し、目から大粒の涙をこぼしていながらも折れた剣をしっかりと握って目の前の敵と相対していた。手は震えてるが姿勢からは真摯に剣術と向き合ってきたことが目視だけでも伝ってくる。

 

「モーネ・ラピス・シュタイン、その若さでブルームの魔学技術者に上り詰め神代技術の解析と幅広い知識を携えている天才と謳われた少年、最近では黄金使徒討伐計画を画策してると言われているがな」

「……そ、それがなんだというのですか」

「可哀想だと思ったまでよ、どれだけ才を積もうが屈強な七人の女騎士に守られていようがお前は世界を知らないお子様だ。現にお前は自分の力を過信し、俺に騙され一人でノコノコとこの魔物(モンスター)の群れに囲まれていたぶられ今まさに嬲り殺されるというに!」

 

男は憐れむように、あるいは嘲笑うかのように口角を上げる。その顔には己の勝利を疑わない自信気な色に染まっていた。対してモーネは顔色変えず剣を構えたまま動かない。恐怖で動けないのではなく、相手の様子をうかがってすぐに攻撃に転じることができるように身構えている。

 

「だがこれは救済でもある、黄金使徒に盾を突こうものなら天罰が下ってしまう。そうならないために俺が直々に交渉しにきたのだよ、今なら俺に頭を────」

「アッハハハ! 笑止千万とはこのことのようですね!」

 

愚門とでも言いたげな顔でモーネは答えた。

 

「僕を殺すならお好きにどうぞ! それで貴方のちっぽけなプライドが満たされるなら何より!  ですが僕一人の命如きで我が愛しきブルームを落せるとは思わないことですよ!」

 

言葉の中の信念は揺らがず真っ直ぐと構え直す。体のあちこちにある傷口から血を噴き出そうが、握ってる剣が砕け散っていようが彼の心までは砕け散っていない。

 

「ハッ! その高貴な心掛けは評価して無様に魔獣の餌となるがいい!」

 

合図とともに囲んでいた魔物(モンスター)がモーネに襲い掛かる。勝敗なんて見なくてもわかる。

 

助けるのが普通だろう、と考えた。自分は世界を救う勇者じゃなくてただレベリングがしたい転生者(変人)だし、救えなかった命や見捨てた命だってたくさんあった。善人ではないしどちらかと言えば悪人寄り、この数を相手にするのは命知らずにも程がある。だったら見捨てるのが安定だ。

 

普通ならば、ね。

 

「飛躍術『翔』、拳術『剛』」

 

飛び上がり隕石が如く落下し、着弾直前にモーネに結界を張って襲い掛かってくる魔物(モンスター)の群れを一掃。予想外の乱入だったのか男とその場にいる全員から注目の視線を浴びる。

 

「あ、貴方は……」

「名乗るほどのものではないけど君の味方ではあるよ」

 

不安そうな顔をでこちらを見るモーネの頭を撫でて、青筋を浮かべる男の方に向き直す。

 

「多勢に無勢、卑怯だが合理的な戦術にまずは拍手。さぞかし名のある臆病者とお見受け致すが無名であるからに何も知らない、とりあえずは君の名を聞かせてはもらえないだろうか」

「…………フン、その無知さと無謀さに甘んじて名乗ってやろう! 我が名は」

 

背後に攻撃魔法を発動させて即爆破。素直に自己紹介に応じるなんて殺してくださいって言ってるようなもんよ、不意打ち対策してから出直しな。

 

「……不意打ちとは、弱者の手口だな」

「なにィ!? 対応できてる!? 怖ッ!」

 

土煙の中から例の男が出てきやがった。背後から火魔法を飛ばしたはずなのに、直前で防御結界を張ったのか? あれって気づくのにちょっとでも遅れると結界の中が爆炎と煙まみれになって酸欠起こしちゃうのにすごいな。

 

「コホン。では改めて、俺は黄金使徒の第五位にて『紅焔の執行人』獅子宮(レオ)様の懐刀、ガルディオである!」

 

その名を聞いて一瞬だけ思考が停止し、すぐに再起動させる。

 

「はぁあ!? ガルディオ!? えっ君あのガルディオくんなのォ!? 噓でしょ!?」

「おぉ! 俺のことを知ってるのか! まあ俺ってば強くてかっこよくて天才だからな! 名前を知ってるのも当たり前か」

「知ってる、そういうことだから死んでくれや」

 

有無を言わせず即爆破、ついでに凍結させて頭上から隕石落下の確殺コンボを決めていく。

 

ガルディオっていったら陰謀論者で魔法反対派の聖職者のモブ。ブルームが気に喰わないので黄金使徒を手引きした極悪人、死んで贖え。てか見た目変わりすぎだろ、作中の君マジでモブみたいな容姿だったのになんかめっちゃ強いネームドボスに進化してるじゃん。あと君聖教会派じゃなかったっけ? 寝返った? まあいいや死ね(直球)

 

「これだから野蛮人は、知性という素晴らしいものを持っているのに感情でしか物を語れない」

 

しかし自分の願いも虚しく、起き上がったガルディオの体に傷一つなかった。

 

「そもそもなぜそいつを助ける? お前には関係のないことだろう」

「ないよ、なんなら見捨てることも視野に入れてた」

「ならば」

「シンプルに君に腹が立ったので助けただけ」

 

いつだって自分はこのスタンスだし、ムカつく相手には問答無用でぶち殺す。

 

「全く愚かなことだ、しかし俺はこう見えて優しいぞ? 地べたに頭を擦りつけて許しを請うのであれば許してやらんことも────」

「一端の雑魚キャラの分際で黄金使徒の名前借りてイキってんじゃないよ、どーせ死にたくないから地べた這いずって命乞いしながら靴舐めてたんだろ? 気に入られてよかったね」

「…………いいだろう、まずはお前から! その骨すら残らず俺の魔獣が全て食らいつくしてやる!」

 

顔が真っ赤になったガルディオが両手を掲げると森の奥からざっと五十体くらいの魔物(モンスター)達が集まり一瞬にして囲まれた。コカトリスやマンティコア、さらにキメラもいる豪華仕様。

 

「たかが魔法使いひとり、この数の前でどうだ戦うつもりだ? 杖も持たぬ詠唱もまともにできないなら相手にもならんな」

「……別に持ってないわけでも詠唱ができないわけでもないんだけど」

 

樫の木で作られた杖を『取り出して』構えた。そんなにお望みなら答えてあげるのが誠意ってもんだよね。

 

「は? お前今どこから」

「ええと、確か詠唱は……『火』にして『第一』」

 

魔法には『第一級』から『第七級』まであり数字が大きければ大きいほど高火力&高魔力量(コスト)である。魔力のステータスが高ければ高いほどより強力な魔法を撃てるようになり、言い換えれば低火力&低魔力量(コスト)の魔法なら自身の魔力が切れるまで撃ち続けることができる。

 

「変換せし火は弾丸となりて焼き尽くせ、『火弾(フレア・バレット)』」

 

火弾(フレア・バレット)』は最序盤で覚えられてかつ少ない魔力量(コスト)使えて魔王戦まで活躍できる超優秀魔法。威力は低いがそこは数で勝負。五、六、七と徐々に数を増やしていき、丁寧に周囲の魔物(モンスター)を処理。

 

ちょこっと魔力出力も調整して、十、二十、三十と機関銃のようにひたすら撃ち終わる頃には周囲の魔物(モンスター)は全て灰にと化していた。もちろんガルディオくんへの攻撃の手は一切緩めず確実に追い詰めていく。

 

「な、なんだその馬鹿げた魔力量は!? それにこの発射速度もッ!? ぐっ……!?」

 

流石に物量には勝てなかったのが防御結界の展開も虚しくガルディオの体に直撃。汚い悲鳴をあげては熱さで顔が歪み、足元がおぼつかずそのまま倒れたのでおかわりの『火弾(フレア・バレット)』百発追加。

 

ゲームじゃできない芸当だから一度やってみたかったんだよな。やろうとしてもラグとかゲーム機本体にえげつない負荷がかかるし結構出力調整も面倒で絶賛脳がオーバーヒート起こしかけてるので適度に緩めていこう。

 

「ば、ばけものだぁ……」

 

聞こえてますよモーネくん、自分地獄耳なんで。まあこんなに撃ってたらビビるのも無理ないけど、これくらいで腰抜かしてちゃ世の中生きていけないぜ。

 

「さーてそろそろいい焼き加減になってる頃、合い……」

「ふぅ、やっと魔力切れか? 大口叩いてる割に大したことなかったな」

 

思わずその光景に目を見開く。そこに立っているのは多少服が燃えた跡が残っているも、肉体の方は無事のガルディオがいた。

 

「俺に傷一つつけられない程度の魔法で調子に乗っていたのか? 少しは期待したんだがな?」

「…………ふ、ふひへっ、ふひひひっへへへっへっ」

「えッなに、笑い方キモ」

 

これほどの猛攻撃を耐えなおかつ()()な状態のガルディオを見て、自分は一つの可能性にたどり着き思わず笑いがこぼれた。

 

「君ィ、さては使役した魔物(モンスター)に自身の死を因果を置換させたねぇ?」

「……うん?」

「いいね、いいね! 待ってたよそういうの! それが君の固有(ユニーク)ってわけだ! 『使役魔法(テイム)』で魔物(モンスター)を操って無理矢理相手に死を肩代わりさせる素晴らしい魔法、いや待て! 因果律をいじくるとしたらやっぱり呪術の方かな? でも道具が必要となる場合があるから一旦置いといて術式の構築とかは多分錬金術を元にしてると仮定して主軸となる『使役魔法(テイム)』との組み合わせを考察して」

 

不意打ちに連続で対応できるやつなんてそうそういないので固有(ユニーク)関連とみるが普通! いやあ黄金使徒以外で固有(ユニーク)持ちと出会うなんたる幸運! もし因果律をいじくれるのなら一旦生け捕りにして術式解析して習得するのがベスト! いやその前に実験と検証して安全が確保できてからだ、もし習得できれば身代わり人形なしで楽に周回できる!

 

「そうか媒体は魔物(モンスター)の魂! そして因果律を逆転、いや魔力回路を逆算させて死の因果をそのものを無効化してる固有呪術(ユニークスキル)! その名も『因果の白紙化(リセット)』! これが答えでしょ!」

「……いや違う……普通に身代わり人形を大量に持ってただけだが……」

 

めちゃくちゃ申し訳なさそうに、懐から燃えカスになった身代わり人形を見せてきた。

 

「……ええと、すまん」

「なーにモブキャラが大量に残機アイテムなんか持ってんだ馬鹿野郎! 正々堂々戦えや!」

 

はいもうぶちキレた。生け捕りとか検証とか実験とかしませーん。あと笑い方キモイっていわれたのが頭に来たので確実にぶち殺しまーす。

 

「来いよ魔物(モンスター)頼りの卑怯者くんがよォ! ボコボコのギッタンギッタンにしてやらぁ!」

「…………そうか、ならばその愚行に対して俺も応えてやろう! 軍勢の力というモノでな!」

 

不敵な笑みを見せつけて両腕を掲げた。発動する前に阻害さえしてしまえば大抵の魔法や呪術などは発動できないので今度は最高火力で爆げ…………あっやべ今普通に魔力切れだったわ。

 

「『使役』にして『第六』、野に巣食う魔獣らよ、我が呼びかけを聞き、我が声を受け入れよ」

 

耳障りな詠唱に応えるように刻まれた術式が赤く光る。それを皮切りに周囲の森や丘から無数の魔物(モンスター)が迫る音が鳴り響く。『第六』ともなると使役できる数は大体五千を超えるはず、ゲーム内でのブルーム周辺の魔物(モンスター)の数は…………五千近く。

 

「『魔獣呼応(ビースト・コール)』」

 

…………もしかしてブルーム周辺の魔物(モンスター)を呼んでくれてたりしてます?

 

「さあこの数に、お前はどう戦う?」

 

その問いかけに思わず息詰まってしまう、決して答えが見つからなかったわけじゃない。だがその反応が余計に相手の高揚を誘ったのだろう。

 

「あぁ、そうか、そうだろう! 絶望したのだろう? 可哀想に! 己を過信してそのガキを救おうなんて思ったのが運の尽きなのだ! その小さな英雄心がお前自身を殺す! なんて哀れだろうか! 本当に────」

「おっけ計算終わり」

「……は?」

 

経験値計算を終わったので迫りくる軍勢の位置を探知しつつ、魔力回復薬(マナポーション)を『取り出して』一気に魔力を補給。アルヴェニール戦で使う暇すらなかったのが幸いしたか。

 

位置も大体把握し終えたので深呼吸をしてモーネを抱き寄せる、言っとくが自分はショタコンではないしちゃんと理由があるからだぞ。

 

「『風』にて『第七』」

 

杖を地面に突き立て魔法陣を足元に展開。五千弱の荒々しい獣の行進を上書きするように風が吹く。止まらぬ軍勢をものともせず風はやがて暴風雨へと形を変えた。

 

「眠れる大気の化身よ、禁忌に飲まれ夢見の果てに堕ちた偉大なる嵐の化身よ」

 

自分の体の中にある膨大な魔力が空になる感覚に襲われ、立っていられないほどの眩暈が走った。だが途中で意識が途切れないように言葉を繋ぐために踏ん張る。

 

「我が代価をもって我が愚行に応え給え、そして宣言するは我が勝利」

 

使用者の全ての魔力量(コスト)と引き換えに発動させるのは『風魔法』の最上位級、詠唱破棄不可能なのでその間は何もできないため大きな隙もいいところ。ちょっとでも端折ったり間違えたりすると魔力が逆流して爆散するので慎重に詠唱しなければならない。

 

魔物(モンスター)の軍勢との距離は目と鼻の先、臆病者の指揮官は上空で防御結界を張りながら待機。本人は“どうせ身代わり人形で無傷”と高を括っているだろうけど残念だったなガルディオ。この魔法にその身代わり人形(おもちゃ)は無意味だよ。

 

「ゆえに蹂躙せよ、『風魔王(パズズ)』」

 

発動と同時に空が暗雲に包まれ、大嵐の化身が現れた。蝗害の象徴とも呼ばれるその異名はその名の通り魔物(モンスター)の体を風が肉を食い荒らし、雷が体を貫く。立ちすくむ個体もいればこの現象を止めようと、もしくはこの存在から逃げ出そうと走り出す個体がいるが冷たい雨が不可避の矢の如く降り注ぎ一瞬にして野原を血の海へと成り果てた。

 

風魔王(パズズ)』の範囲は使用者の半径五キロメートルの上空も含めて乱気流を発生させて範囲内の敵味方・障害全てに貫通付与の風属性の魔法をぶつける。さらに追加で継続ダメージを与え続けて身代わり人形などの残機アイテムを強制的に消費させる『Soul Lead』屈指の最凶魔法。つまり“発動させたら負け(勝ち)”の最大の切り札。

 

対人戦で(その節)はお世話になりました。ほんとマジで。

ちなみに範囲が馬鹿広いが魔法陣内部は絶対安置なので出なければ問題はない。

 

「はわわわわわわわわわわ」

「はいはいしっかり掴まっててね。あと間違っても魔法陣の外には出ないように、あんなふうにミンチになっちゃうぞ~」

 

(ベジャ)ッ、と落ちてきた魔物(モンスター)だった肉塊を指差す。その光景を見たモーネは首が取れる勢いで頷き、ぎゅっと腕を掴んで顔をうずめてきた。

 

……ちょっとやりすぎたかも。腹いせに『風魔王(パズズ)』使った結果ビビらせてしまったので反省しつつ、大体五分くらいたった辺りで太陽が顔を出してきた。

 

「お、終わりましたか?」

「うん終わア°ッ」

 

急に全身に力が入らなくなり、そのまま糸が切れた人形のように倒れる。

 

「えっちょ、ちょっとどうしたんです!?」

「大丈夫大丈夫……ちょっとした副作用だから……魔法封じと空腹のダブルパンチで動けなくなってるだけだから……うきゅ……」

「なにも大丈夫じゃないですよね!?」

 

強すぎるがあまり『第七級』には全て副作用という名の確定デバフが付く。『風魔王(パズズ)』は魔法の使用禁止と空腹状態が一時間だけ続くという比較的軽い部類だ。他の『第七級』はこれの比にならないくらいキツイ。しかもこの魔法撃つだけで杖が壊れちゃうからマジの切り札なんだよな。

 

「てかやばい、腹減りすぎてブルーム行く前に餓死する……」

「もしかしてブルームに行く途中だったんですか?」

「うん……」

 

嫌だ! 餓死エンドとか一番恥ずかしい! でも空腹で動けん…………。

 

「あの……! もしよかったら僕転移門(ワープポイント)持っているので送ります!」

「…………いいの? こんな情けない状態だけど」

「構いません! 命の恩人には変わりありませんから!」

 

花が咲くようにモーネが笑い、優しく手を掴んでくれた。

 

…………まあ、悪くない気持ちだ。たまには人助けを積極的にやってもいいかもしれない。

 

「それじゃ飛びましょう!」

「え、まってこの状態で? せめてなんか食わせてから飛ばしてほしいんだけど」

「善は急げです! その状態だったらあっちでおいしものたくさん食べさせてあげますよ!」

 

違うのモーネくんこの状態で飛んだら間違いなく転移(ワープ)先でゲロっちゃうからそれだけは避けたいんだよ頼むやめろ今すぐ転移(ワープ)止め────

 

「いざ、『花の都』ブルームへ!」

「ア°────!」

 

そこで意識は暗転した。

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