最高効率の周回場解放のためにラスボス最速撃破したらシナリオブレイクしました。 作:ニャル太郎
「わぁああー!? なんか僕がもう一人います!?」
不穏な雰囲気ぶち壊しありがとう。この大声で相手さんも気づいたようで茶髪眼鏡の青年はお化けでも見てるような目で見てくるが、いけ好かない金髪の男は驚きはするものの動揺はせず、
対するモーネの姿をした
「え、は、な、なんでこんなところにいるんだお前!?」
ガチビビりしてる辺りモーネが戻ってくることを想定していなかった模様、いや想定はしておけよ。
「だ、誰ですか貴方! なんで僕と同じ顔なんですか! 怖いです!」
「知るか偽物! 質の悪い魔法か何か使ったんだろ! 狡猾な怪物め!」
レッサーパンダの威嚇ってくらいの勢いで警戒し合う二人を横目に金髪の男が口を開く。
「その者捕縛しろ! 少しでも怪しい動きをしたら斬り殺して構わん!」
困惑していた茶髪眼鏡くん含めた十字架のマントを纏う騎士達は金髪男の指示で我に返ったように自分とモーネは拘束した。
さて面倒なことになった。十字架と言えば聖教会の象徴、つまり聖教会直属の『聖騎士団』と呼ばれる精鋭部隊。
聖教会は『創世の女神』フェイリアを信仰する宗教団体。宗教が正義のこの世界では最高権力として君臨し、女神のためなら何をしてもいいと思ってる思想を持ち、信仰者である自分達はその寵愛を受けるべきだと女神の力を利用という名の悪用している連中、率直にいうと悪性腫瘍の集団である。
中でも『聖騎士団』は王都からの物資を独占、横領等やりたい放題しまくってるのに聖教会が絡んでるというだけでお咎めなしの超無敵集団。おまけにストーリー中はめっちゃ嫌がらせしてくるくせに攻撃したら即
ちゃんといい人達もいるのだが大体真実知って口封じされたり
「なにしてるんだ! あっちが偽物なんだからさっさと斬り殺せばいいだろ!」
「私としてもその方が手っ取り早く助かるのだがね、万が一ということもあるだろう。それに我々は貴方に会うのは今日が初めてだからな」
「……チッ、大人しくしておけよ偽物め! あとそこの白いローブのお前もだからな!」
こちらとしても身の潔白を証明するために大人しく捕縛されておこう。
手荷物は全部没収されるけどほぼ無一文みたいなもんだし気にすることはない。
が、しかしだ。自分は過去に聖教会襲撃というとんでもない大罪を犯している。
一応証拠は全部消してるから大丈夫だと思うけどバレた時はそん時、今は大人しく巻き添え食らった旅人を演じておこう。
「ん? なんだこれは?」
「あ、それは……!」
隣で荷物検査をしてるモーネの懐から瑠璃色のブローチが取り出される。
「ほほう? かなり高額そうなブツじゃあないか」
「か、返してください! それは大切なものなんです!」
取り乱す様に声を荒げて聖騎士の男に飛び掛かるも、子供の力なんてたかが知れてるのですぐに抑えられてしまう。
「おい! 暴れるんじゃない!」
「どうしたんですか? ってこの宝石は……」
ちょっと貸してください、とモブ騎士に声をかけたのは茶髪の青年。
じっとブローチを見つめ何かに気づいたのか、モーネと同じ視線までしゃがみしっかりと目を見て話しだす。
「こちらのブローチ少しだけお借りしてもいいですか?」
「っ、うん……」
「ご協力ありがとうございます」
涙目のモーネを宥めるかのように頭を撫でて、金髪男のところまで戻っていく。
この青年は話が通じそうで助かるなぁ、ってあいつジャクト・クラレンスくんじゃねえか。
『聖騎士団』の中では貴重な聖人枠でめちゃくちゃ有能なお助けNPC枠の中では当たりの中の大当たり。大体こいつがいれば何とかなってしまうがゆえに序盤で退場させられてしまった可哀想なキャラ。
とりあえず元気に生きててよかった、多分この後も大変だけど頑張ってくれや。
「どうした、怪しいものでも見つかったのか?」
「こちらのブローチなのですが、確かこれってブルームの最高責任者から渡されるものだったって聞いていまして、世界に一つしかないとか」
「ふむ、貸してみろ」
金髪男はブローチを嘗め回すように見ると偽モーネの元へ行く。
「こちらの物に見覚えは?」
「……はぁ、持ってるに決まってるだろ」
ポケットから青い宝石のブローチを見せてきた、がここからだと遠すぎるのとちょうど金髪男が邪魔で見えない。
「それで、持ってなかったら僕が偽物って言われるわけ? 全く勘弁してよ、たかがブローチ一つで本物かどうかわかるわけないのに」
呆れたように偽モーネは金髪男からブローチを奪い、弄ぶように掌で転がした。
「随分精巧に作られてるみたいだけど偽物に決まって……」
「違う! 偽物なんかじゃない! それは
例のブローチがどれほど大切なものなのかはモーネの声量と必死さから痛いほど伝わってきた。だが問題はそこじゃない、こちらのモーネからこぼれた言葉が全員に疑念を持たせてしまったことだ。
「
その言葉にモーネはハッとなり口元を隠した。言ってはいけない言葉だったのか何か事情があるのだろうけど、こちらの事情なんて知ったこっちゃないと言わんばかりに偽モーネの追い打ちが入る。
「どうせこれも見様見真似で作った欠陥品だろ、お前みたいなものが持つにはもったいないものだよ!」
「……! お願い! やめて!」
手を伸ばすも拘束されてそのまま地面に押さえつけられた。その行動が返って相手のちっぽけな加虐心を煽ったのか偽モーネはブローチを叩きつけようとする。
その行為を止めようと茶髪の青年も走り出すも到底間に合わない。彼の腕を掴むよりも先にブローチが地面に叩きつかれ砕けてしまう。周りにいる騎士は
「走術『駆』」
拘束を振りほどき風を切るが如く駆け巡り、ブローチが地面と接触する直前に掴み取る。
ほんとは可愛げのない偽物の顔面を蹴りたかったんだけどモーネの顔を蹴るようで気が引けた。
「ったく、大事なものなんだからもっと丁重に扱えっての」
掴み取ったブローチを確認した。色褪せることのない輝きを放つラピスラズリの宝石にマリーゴールドを模した装飾が施されており、意匠のこだわりがそこかしこから感じ取れる一級品で作り手の苦労と努力が一目で伝わってくる見事なブローチだ。
ぱっと見傷はついていない。よかった、これで『駆』の衝撃とかで割れてたら合わす顔なくなるとこだったぞ。
「動くな、それ以上は敵対行動として見なすぞ」
さっきまで傍観していた金髪男がようやく剣を抜きながらこちらに歩いてきた。握っている剣は所々傷まみれでありながらも手入れが施されておりその立ち振る舞いからは地道に剣術を研鑽に積んできたのが窺える。
二十代後半くらいで『聖騎士団』の鎧に十字架のマントを着こなしくすみがかった金色の髪を襟足まで伸ばしているウルフカット。しっとりとして甘い顔立ちに深い海のような青い瞳を持つ色男。
しかし瞳の中の光は鋭く、野心に燃えていた。
「……もしかして君、エイデル・ローリエ?」
いけ好かない金髪男だと思って凝らして見てみれば、その顔には見覚えがあった。
「……フッ、そうだとも! 俺はこの『聖騎士団』を束ねる者であり『月影の狩人』! エイデル・ローリエである!」
『Soul Lead』の一章から登場する『聖騎士団』の大団長。主人公らが通う学園に強化剤と称して麻薬を広めたり王都で疫病を蔓延させたり古代遺跡を爆破したり冤罪吹っ掛けたり聖都の宝物を破壊したり目的のためなら本来敵のはずの黄金使徒に情報流したりゲーム本編前には前大団長を毒殺したりと、とにかくやることなすことが迷惑不快極まる害悪NPCことエイデル・ローリエ。
そんな彼にも悲しき過去あり────だがそれにしたって罪状が多すぎるだろって当時のスレにも書かれてたっけ。まあ
「それで貴様は何者だ? 大層な仮面までつけて余程姿を見られたくないのか?」
「別に君なんかに名乗ったってそっちに利益があるわけないんでしょ」
こちとら黄金使徒殺してるんだから顔バレとかが怖いんだよ。君なら普通に情報渡すだろうし、あとシンプルに嫌い。
「そうか、ならば貴様を敵と見なす!」
エイデルが剣を構えた。他の騎士達からも剣も向けられているがビビってる暇はない。
拘束は無理矢理解いて自由の身、剣と杖は壊れてるが腕と足と
敵は偽物のモーネ含めて計八人。この多人数だとギリ何とかなるが大した経験値にならなさそうだし、隙見てモーネを連れて逃げることも考えなきゃいけない。それにまだ『
「おら掛かってこいや、君らなんてこの
「その余裕、いつまで持つか見物だな」
互いに向き合い戦闘態勢を取る、が。
「お待ちなさい!」
時計塔の鐘の音より響く声がした。
見上げてみるといつの間にか門の上に誰かが立っている。
「暴力だなんて野蛮もいいところ! 人には知識があり言葉があるではありませんか! ならばここは! とうっ!」
掛け声とともに舞い降りてきたのは揺らめく炎のような赤髪の縦ロールヘアーの上に白いとんがり帽子をかぶり、黒のフリルシャツに白ベストのワンピースを着たどこがとは言わんが豊満な少女。
顔には満点の夜空のように散りばめられたそばかすに黄金色の瞳に五芒星を宿した彼女は太陽のように輝く笑顔を放ちながら自分含めた全員に宣言する。
「話し合いで解決するのが道理というモノ! ですわっ!」
キャピッ☆とウィンクをする彼女は………………誰だこいつ、こんなやつゲームにいたか? 隠しキャラか没キャラ辺りだと思うけど公式ファンブックに載ってたかな。
「な、なんだお前!? 勝手に入ってきて────」
「お黙りなさい、アナタの発言は許可してませんわ」
明るく元気な話し方から一変、ナイフで刺すような声で言葉を遮り偽モーネをゴミを見る目で睨みつける。
「下劣で品性のかけらもないその汚い口で我が愛しき弟の声を真似るなんて、万死に値しますわこのゲテモノ風情が」
淡々と冷たく告げたかと思えば、けろっとさっきのご機嫌顔に戻り軽快な足取りで歩き始めた。
「この場で発言を許しているのはワタクシと我が愛しき弟のモーネ、そして」
ビシッ! と風を切る勢いでこちらを指差した。
「アナタですわよ、白い来訪者さん」
「……えっ自分っすか?」
自信気に告げる彼女の顔を見るもやはり見覚えはない。年齢は自分と同じか年上あたりだが、どこかで助けた村の子供とかかな? いやこれだけ派手なら忘れるはずもない。
「待て! なぜ我々が貴様を信用する理由があるというのだ!?」
「そ、そうだぞ! 今のところ怪しいやつが増えただけじゃないか! そもそもお前は誰だよ!」
「………………発言を許可した覚えはないのですけれど、確かにワタクシとしたことが失念していましたわね」
図星だったのか不機嫌そうに呟くと中央まで歩き、両手を掲げた。
「ならば我が声を聴きなさい! この『花の都』において最大の叡智を司り数多の魔学技術を開発した世紀の大発明家であり、この世の歴史を読み解き全ての『魔法』を解析し改良する大天才!」
言い終わりと同時に彼女は優雅に回り、キレッキレの動きで決めポーズを決める。
「……モーネ! いつもの!」
「え、あ、はい!」
小声で合図されたモーネは慌てた様子で手を翳す、その瞬間彼女の地面から花火が打ち上がった。
「我が愛しきブルームの『
自信満々に告げる彼女の自己紹介にモーネは感激の拍手を鳴らし、花火が鎮まる頃には会場は何とも言えない空気に包みこまれていた。
「我が異名とこの美貌を存分にその小さき灰色の脳細胞に刻み込むがよいですわ! オーッホッホッホッ!」
だってこんなキャラ知らないもん。シュタイン家の情報なんて“魔学技術を研究し続けた一族”しか書いていなくてそれ以外はほとんど載ってなかったし、ファンブックはページに穴が空くくらい読み直したから自信あるもん。
「……で、このイカれた女は知り合いか?」
「し、知るわけないだろこんな狂人!」
ごもっともすぎる。混乱してた状況がさらに混沌化しただけだよ。
「まあ、ひどい言われようですわ。そうですわよねモーネ」
「え、あ、あの」
「もう隠す必要はないですわ、なんだってようやくワタクシのことを世界に開示する時が来ましてよ~!」
一人で舞い上がってるこの女をどうしようかと悩んでいると偽モーネが顔を真っ赤にしながら口を開く。
「ふざけるのも大概にしろ! 僕はお前みたいな頭のおかしい奴なんて知らないしこの後も予定があるんだ! これ以上舐めた態度を取るなら今この場で斬り殺すこともできるんだぞ!」
「あら、どうしてそう言い切れるの?」
「周りを見ろ! お前の周りには『聖騎士団』がいるんだぞ! この状況下で大口叩けるなんて思うなよ!」
実はしっかりと自己紹介中の間から今現在ずっと剣を向けられたままだった。だがキリエと名乗る少女は依然としてうるさい笑顔を崩さず、やけに楽しそうに話し出す。
「ふぅん、なるほど。この鈍な鉄の塊を下ろせばいいのよね」
豊満な谷間に手を突っ込み、中から一枚の紙を取り出して広げてみせた。
「この印章が目に入るのであれば聖騎士の皆様方は今すぐに剣を下ろしなさい!」
「貴様、それは……!」
太陽に照らされながらもはっきりとその紙を見た聖騎士は全員、
あのエイデルですら顔を強張らせて剣を収めるほどだからよほどの事が書かれていたのだろう。
「は……? お前何を……!?」
「さあ剣を下ろさせましたわよ、いい加減この茶番にも飽きてきましたわね」
「ぐ、ふざけるな! なにか催眠系の魔法でも使ったんだろ! 僕にはそういうものは効かないんだよ!」
「あらあら、この期に及んでまだ自分が偽物だと認めないんですの? 見苦しいにもほどがありましてよ」
「うるさい黙れ! お前がこの都市でいう『
「……そう」
その言い方はもはや自白では? と野暮なツッコミをするよりも先に、キリエは腰のポーチから小瓶を取り出して中の液体を偽モーネにかけた。
「…………お前、どこまで僕をコケにすれば────」
「それ聖水ですわ」
その言葉を聞いた途端、偽モーネは時間が止まったように固まった。
【アイテム紹介】
〇聖水 分類:消費アイテム
より強い聖水を作る場合は聖女、あるいは女神の依代の力が必要となる。