最高効率の周回場解放のためにラスボス最速撃破したらシナリオブレイクしました。   作:ニャル太郎

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変人の上位互換は狂人

「う゛ぁああ゛あぁあぁぁぁああ゛ッぁあああッッ!?」

 

それはおおよそ十二歳の少年の喉から繰り出される声ではなかった。激痛に苦しみ、熔岩の中に押し込まれたように耳が張り裂けそうな絶叫が周囲を包む。

 

「熱い! 熱い熱い熱い熱いッ! このクソ売女めッ! この僕に聖水をぶっ掛けるとかどういう神経してんだ!? 脳みそ湧いてんのかアバズレがよ!」

 

獣のように叫び散らかしながら水が掛かった皮膚を剥がす勢いで顔を搔きむしり、キリエを恨めがましく睨みつけた。

 

「おい何してんだ! ぼうっと突っ立てないで早くこのおん、なを……」

 

ようやく何かに気づいたのか彼の顔が強張る。

まるで失言をしたのに気がついたかのように。

 

「……ふふっ、あらあらあらぁ? ごめんなさいね? ワタクシ聞き逃しちゃったみたいで? なんでしたっけぇ?」

 

コツコツ、とブーツの音を鳴らしながらモーネの姿をした偽物の前に歩き、小瓶を取り出した。

 

「そうそう、ワタクシってばひとつ間違いをしていたみたいですわ。アナタに掛けたやつ、どうやら()()()()だったみたいで本物の聖水はこっち」

 

追い打ちをかけるように愉悦に満ちた表情でキリエは狂気じみた笑みを晒す。

 

「なぁんで()()、なんて言ったのかしらねぇ?」

 

そこまで言い切れば、いやあんな反応した時点で自ら暴露したようなものに等しい。さっきまでこちらに剣を向けていた騎士達は全員、モーネ・ラピス・シュタインの皮を被った“なにか”に視線を向ける。

 

「………………」

「なぁんとか言ったらどぉなんですのぉ~? それとも言い返せない理由がおありでぇ~? ね~ぇ~ふべきゃんっ!?」

「下がれ、そこまで刺激すればもう十分だろう」

 

エイデルがキリエの首根っこを掴んで後ろへと放り投げた。さっきまでそこの偽物とご歓談してた輩がこの場を仕切るのは無理があるんじゃない? という野暮なツッコミをするのは後が怖いから黙っとこ。

 

「ここからは我々の仕事だ、貴様のような女が出しゃばるような────」

 

直後、玉虫色の刃が何重にも重なって視界を横切るのが見えたので咄嗟にモーネを抱いて回避を取り距離を取る。パリィをしようものなら受け流した刃がうねって背後の対象に直撃されるように計算されつくした狡猾な攻撃。

 

周囲にいた聖騎士達は何が起きたのかわからずに吹き飛ばされた衝撃で気絶したりと使い物にならなくなっていたが、軽傷で済んでいたり胴体が真っ二つにならなかったのは異変にすぐに気づいたエイデルが庇ってくれたおかげである。その代償に彼の体は至る所に斬り口ができて赤い血液が滴っていた。

 

意外と聖騎士っぽいことしててちょっと関心、とか言ってる場合じゃないのでモーネを安全な場所に下ろす。

 

「ジャクト、負傷した団員の応急手当と避難をしろ。ここは俺が引き受ける」

「でもそれじゃエイデルさんが……」

「お前じゃあの攻撃に耐えきれん、さっさと手当をしてこの場から離れろ」

「……わかりました! 動ける人はすぐに治療と避難をしてください!」

「ぼ、僕も手伝います!」

「助かります! モーネさんはこちらをお願いします!」

 

さっすが有能ネームドと野生の有能。こういう時はほんとに頼りになるのでガンガン頼らせていただきますよ。その隙に自分は落ちていた剣を拾い上げて偽モーネ改め謎の魔物(モンスター)に視線を移す。

 

「ほんっと仕事できない奴と組むんじゃなかったよ、たかがガキ一人も殺せない無能と組まされるなんて僕ってば運がないんだから」

 

イラついた表情で溜息を吐きながら伸ばした腕をぐにゃりと湾曲させ、肘の先から鋭利な刃へと変形させる。

 

「ようやく正体を現したか、下劣な魔物(モンスター)め」

「ひっどいなぁ、その魔物(モンスター)に騙されていたのはどこの誰だよ? 自分達に都合がいいから僕に賛同してくれたわけじゃないの?」

 

ぐっとエイデルはした唇を噛む。まあ君はブルーム嫌いだから賛同したい気持ちはわからなくないよ、職務に私情を持ち込むなと言いたいだけで。

 

「君も可哀想だよね、こんな使えない部下共の御守なんてしなきゃいけないの。そんな体になってまで庇うなんて同情するよ」

「…………」

「あれ~? もしかして怒ってる? それとも図星? 弱くて才能がない奴らなんて死んだほうがい────」

 

刹那。黒と白の眩い閃光が横切り雷鳴が走る。

 

目で追うのがやっとのほどに速く鋭く、美しいその剣術は人の努力が積み重なった速度でありながら限界まで火力を出力した魔力の塊。もはや斬るというよりは叩きつけるに近い膨大な魔力によって防御結界はおろか、回避すらも間に合わない影と光が入り混じる斬撃。

 

まさしく『月影の狩人』の異名に相応しい剣術で魔物(モンスター)の首を斬り落としてみせた。

 

「……人間の言葉を真似る怪物が、何も知らずに語るな」

 

幾つもの怒りや苦痛が渦巻くようにエイデルは呟き、剣に付着した粘液を払い落としこちらに振り返る。

 

「貴様、いつまでここにいる。さっさと避難しろ」

「なんか君丸くなったね」

「ふざけているのか? 早く」

 

背後から悍ましい殺気の形をした玉虫色の刃が飛んできたのを、エイデルは見向きもせずに弾く。初見はただのかませキャラかと思ったらちゃんと不意打ち対応してきたので嫌い、ゲーム本編一週目は普通に負けたの未だに根に持ってるからな。

 

「へえ驚いた、今の防がれちゃうんだ」

 

転がっていた首から老若男女が入り混じった声で子供の口調で話していた。

首のない体から無数の刃が形成されて触手のようにうねり、その一本が首を拾い上げる。

 

「まぐれにしてもすごいんじゃない? 褒めてあげようか?」

「……いい加減その耳障りな口を閉じろ」

「あぁごめんごめん」

 

嘲笑うように生首が咳払いをすると、聞き慣れた少年の声で話し始めた。

 

「やっぱりこっちがいいよね、いかにも無垢な子供って感じでしょ」

「どこまでも人を……ごふっ……!?」

 

突然、エイデルが血を吐き出して握っていた剣を落とし口元を抑える。

 

「これ、は……毒か……!?」

「その通り! 無駄に硬くってびっくりしちゃったもんね!」

 

まるで死にかけの虫でも見るかのような目で無邪気に笑い終わると数十本の玉虫色の触手を生やす。あの触手、いやあの粘液そのものが毒と見ていいだろう。さっきの猛攻でもろに受けていたせいだろうけどよく耐えてたな。

 

「そのまま毒で殺すのもありだけど、そうだなぁ」

 

何かを閃いたのかぶら下げてた生首を元の位置に戻すと、ぐにゃりと再び形を変えて今度は()()()()の姿になった。

 

「せっかくだ、この姿で貴様の首を斬り落としてやろう」

 

その姿、その口調、その声、その腹立つ表情はまさしくゲーム本編で巡り合うエイデル・ローリエそのもの。あまりにも本人すぎてテンション上がってきた。こっちの本物エイデルくんなんか丸くなってるもん。

 

「き、さま、一体……」

()はかの黄金使徒の第八位にて『誘毒の魔女』天蠍宮(スコーピオ)様の優秀な配下! 貴様らを蹂躙する恐怖そのものである!」

 

口調もエイデルを模倣したか、てことは剣術全般も使えるとみていいだろう。しっかし獅子宮(レオ)に続いて天蠍宮(スコーピオ)の部下ときたか、本人達が直接来てくれた方が経験値にできるんだけどな。

 

「自らの剣術で殺されることに絶望し後悔を抱きながら死ぬがいい! 安心しろ! あとで無能な部下達も貴様の後を追わせてやろう!」

 

狂気が混じった笑い声をあげながらエイデルの首を斬り落とそうとしたので剣を構え────ようとしたら今度は頭上から四角い箱が割り込んでくる。双方箱から距離を空けて、よく見てみればそれは何かのケースで落下した衝撃で地面が三十センチほど沈んでいた。

 

「お待ちなさい! このキリエ・ゴールデン・シュタインを差し置いて勝手なことは控えなさい! そしてワタクシも混ぜなさい!」

 

うおっビビった、急にデカい声を出すな。姿が見えないと思ったらわざわざ門の上に登ってたのかよ。

 

「……馬鹿は高いところが好きらしいと聞いたことがあるが、どうやら本当のようだな」

「そう! 馬鹿と天才は紙一重! つまりワタクシは大天才という事!  この世紀の大天才であるワタクシのお相手になることを光栄に思いなさい!」

 

都合のいいように変換、いや捻じ曲げてしまう性格のキリエには皮肉なんてものは効かなかった。

 

「ところで白き来訪者さん、そこで死にかけてる聖騎士も気にしてあげなさい。もはや虫の息ですわ」

「あ、ほんとだ。ごめん放置してて、まだ耐えるかな思ってた」

「はや……はやく……しろ……ぐっ……」

 

申し訳なく思いながらも瀕死状態のエイデルを引きずって一旦退避、ぱぱっと解毒をしてあとは救護組に任せて二人の対戦を眺める。

 

「ここからワタクシがお相手差し上げますわ! せいっ!」

 

無駄に回転しながら見事に着地し、キリエは偽エイデルと対峙。

 

ぱっと見魔法使いだとは思うけど杖は持ってない、意外に『祈祷』ガン積み脳筋バフゴリラとかだったりするのかな? あえてのメンヘラデバフ盛りまくりの呪術師かも、いやぁ人の対戦ってなんかワクワクするよね。

 

「先行はお譲りしますわ、ワタクシ後攻の方が好きですので」

「そうか、ではありがたく譲らせていただこうか!」

 

偽エイデルは一層激しく触手の剣を振るった。だが彼女はうねる剣撃を踊るように躱し、触手が触れようものなら()で丁寧に弾いては赤い火花が舞う。よく見てみれば黒い手袋をしており、何かしらの魔学技術が施されているだろうと察せられた。

 

しかしキリエはひたすらに防戦一方、あるいは遊んでいるように攻撃に移行しない。

無理もないだろう、相手は真似事は言えエイデルの剣術を再現しながらオリジナルの触手攻撃を加えて近づくことすらままならない。さらに再生能力を持つ魔物(モンスター)で与えたところで大したダメージにもならないのだ。

 

「さっきから防御に徹しているようだが、貴様『魔法』は使わないのか? それともまさか、使えないのか?」

 

ぴたり、とキリエが口角を上げたまま動きを止めた。

 

「えぇ、そのまさかですわよ。ワタクシ、この見た目で魔力量は人より少なく遠距離射撃も下から一番という腕ですの」

「……フ、フハハッハッハハ! それはあまりにも」

「哀れと言いたいのでしょう」

 

貼り付けた笑顔のまま、苦悩も無念も一切ない声でキリエは続けた。

 

「だからワタクシ考えました、天才なので」

 

瞬きの合間にキリエの姿が消えたかと思えば一秒後、遅れて振動が駆け巡る。

 

瞬間、キリエは偽エイデルの目の前に現れ、轟々々々々々(ドガガガガガ)ッ! と機関銃の如く拳を撃ち込む。一発二発と直撃する度に爆炎が舞い、反撃を試みる触手も容赦なく爆破。綺麗だった玉虫色の粘液が黒く焼け焦げて炭化し周囲に無残に飛び散った。

 

何かを言いたげに口を開こうとする彼の顔面に強烈な右ストレートを放ち、目にも止まらぬ速さで連打し続けトドメの回し蹴りで偽エイデルを壁へと叩きつける。

 

()()()()()()()()()()()()、と」

 

ドカンッ! と追撃(おかわり)の爆発。

瓦礫や粘液が飛び散り、土煙が静かに舞い上がる。

 

「久々に体を動かすと気分が上がりますわね、アナタもそう思わないかしら?」

「…………ダンスの誘いにしては、なかなか楽しめたぞ」

 

キリエの問いかけに冗談を言えるくらいには余裕だったようで、煙の中から顔がドロドロに溶けた偽エイデルが現れた。流石にこれは予想外だったのか普通に驚いていた。

 

「この程度で『最終兵器(ジョーカー)』と豪語するとは、口ほどでもないな」

 

すぐに元通りの憎たらしい顔に戻り、まるでここまでが計画通りのように語り出す。

 

「貴様がどんなに強力な『魔法』や『武術』を使おうが俺には通用しない、あらゆる攻撃は全て例外なく無効化される! 加えて俺は模倣した人間・魔物(モンスター)の技を完全に扱うことができる! ゆえに俺は、最強なのだ!」

 

そこまで言ってくれるであれば、と頭の中にある攻略本・ファンブックに検索をかけて該当する魔物(モンスター)の特徴を思い出す。確かにこいつには『()()』も『()()』も『()()』も『()()』すら効かない。だが倒す()()はちゃんとある。

 

「そろそろ十分に理解したではないか? どれ程の努力を積もうが貴様ら人間如きの培った技術ではこの俺の肉体を傷つけることなど不可能! 絶望だけが事実として貴様らの心の奥深くに突き刺さり死を招くのだ! 今なら這いつくばって命乞いをすることを許そう! あぁそれとも、その体をいたぶり嬲りつくし屈辱のままに支配するのも一興か」

 

嘗め回すような視線を向けられても表情は変えず、キリエは笑う。

 

「あぁなんと、素晴らしきかな! やはり世界にはアナタのような陳腐でありきたりな悪役がいてこそ物語は色づくというモノ! あぁ美しきかなその悪なる精神! あぁ素晴らしきかな人生!」

 

かつてないほど狂気に満ちた感情を見せつけるキリエに、一瞬だけ偽エイデルはたじろいだ。ついでに自分もちょっとだけ距離を置いた。

 

「その悪役魂に拍手を! そして最大の敬意をこめて! 今ここで! アナタの全てを開示差し上げましょう!」

 

直後。手慣れた様子でワンピースを剥ぐとそのまま下着を露に、とはならず代わりに赤と白の線が交差した艶々のラバースーツが姿を現す。腰から使い古されたベルトにタイトルすら読めない魔導書がぶら下がっている。ワンピースで隠されていた豊満なボディラインが浮き彫りとなり、正直ちょっと目のやり場に困った。

 

「おぉぉおおおまッ!? なんてもん着てんだ! モーネが見たら性癖歪むぞ!」

「ご安心を! すでに教育済みですわ!」

「最低ッ!」

 

モーネくんの性癖を何だと思ってるんだこの女。そんな自分の訴えなんて耳に入っていないのか横を通り過ぎ偽エイデルの前へと歩いていく。

 

「自身が最強だと言うのであればすべてさらけ出してこそ、と思いませんか?」

 

異質な問いかけの回答を待たずに、彼女はぶら下げていた魔導書を持ち上げた。

 

「 【かくて秘密は隠匿されしもの】 」

 

詠唱と共に、偽エイデルの体が真っ赤に燃ゆる炎に包まれた。その場にのたうち回るが消えることなく轟々と舞い上がる。離れているはずなのに肌がじりじりと灼けそうになる程に熱く、痛い。

 

「 【焚べる魔力は火となり形を映し出す】 」

 

飛び上がる火の粉と暴れ狂う焦げた粘液状の触手の間を糸を縫うように進み、キリエは流れるようにその火柱を掴み取ると本に書き込む。

 

「 【隠匿は火により開示され、遍く火の下に全ては暴かれる】 」

 

────それは魔力量が少ないと言われた人間から放出される魔力の量と質ではなかった。根本から違う『魔法』であり厳密には『魔法』ではない不明瞭な力。聞き覚えがあって、知らない言葉で紡がれ【魂】に刻まれた願いを具現化するための祈りであり呪文であり詠唱。一部の者のみが()()によって与えられる固有の能力。

 

「 【固有魔法(ユニークスキル)秘密を暴く者(ダンタリオン)』】 」

 

黄金色の瞳は燃え盛る炎をの中を覗くように真っ直ぐと見つめて、ふっと視線を外す。

途端に偽エイデルの体を燃やしていた炎はいつの間にか消えていた。

 

幻覚と片付けるにはあまりにも儚く、現実と言いつけるにはあまりにもあっさりとした数分の出来事。

 

「……それが貴様の、見せつけたかった力か? 随分と期待外れも────」

魔物名(モンスターネーム):ブロブ。スライムの亜種で粘液状の魔力生命体、生まれながら高い再生能力を携えており廃都周辺で見かけることが多い。死んだ人間や魔物の心臓に寄生し魔力を溜め込み体を形成する粘液は吸収した魔力や死体によって変質し酸性にも毒性にもなる。一番の特性は溜め込んだ魔力量によって強度が変化する」

「…………は、っ?」

 

偽エイデルの、否、ブロブの顔が青ざめた。突如として自身のことを話し出されたら誰だって焦る。しかしキリエはお構いなく語り続ける。

 

「スライムとは違い、一定の知性を持ち人間または魔物(モンスター)の姿を模倣しその人物に擬態しようとする習性がある。これは自身の存在を固定化させる行為でありブロブ自体の個人名や姿は存在しない。別名『名状しがたき模倣者』」

「よ、せっ、やめろっ! 黙れ!」

 

無機質な機械音(ゲームのアナウンス)を彷彿とさせる声を発し、瞳からは五芒星の星が消えていた。ただひたすらに拾い上げた魔力を纏った炎を本へ入力し、文字に変換させながらひとつずつ見せつけるように魔法陣を組み立てていく。

 

「この魔物(モンスター)の弱点はただひとつ、それは」

「やめろと言っているだろうがぁ!」

 

子供のように荒げるブロブが無数の刃で切り裂こうと変形した腕を伸ばす。だが、キリエは避けずに腹の底から叩き出すような声で答える。

 

(コア)となる寄生している心臓! ですわっ!」

 

光輝(ばちこーん)っ☆とやかましく瞳に五芒星が宿ったのと同時に、心臓目掛けてムーンサルトキックの構えを取った。当然、ブロブは必死に弱点を隠そうと何重にも触手を重ねて距離を取る。

 

「やはり心臓を守りましたね? 最強ならばそんなことをしなくてもよいのでは?」

「ぅ、ぁ、だま」

「安心しなさい! この肉体の身ではアナタの粘液を突破し弱点に当てることは無理でしてよ!」

 

屈託のない笑顔で嘘偽りのない言葉を吐きながら歩く彼女を、ブロブは理解ができないといった表情で追っていた。

 

「だからこそ、ワタクシは魔学に頼りますわ」

 

キリエは()ッと背筋を凍らす笑顔をブロブに向けると最初に降ってきたケースを舐めるように触り、ゆっくりと開ける。

 

「そ、それは……?」

「我が魔学技術のほんの一端ですが、あらゆる装甲を切り裂き砕くことに特化させた魔動機」

 

全長約一メートルの四角い装置。魔力で動くエンジンを搭載し使用者が操縦しやすいように設置されたハンドル、多数の小さな刃が鎖状に連なり回転する仕組みの機械。刃にはいくつもの斬撃・打撃の魔学技術が刻み込まれ、さらには『呪術』に似た効果を付与されてるせいか紫と緑、黄色の三色が混合し不気味にギラついていた。

 

「名を、魔剣『魔鎖鋸(マナチェーンソー)』」

 

さてはこいつ転生者だな? うすうす気づいてはいたけども。

 

まあ気づいたところで興味なし。ブロブも倒すのに苦労する割に経験値がクソしょっぱいので今回は見送り。せめて逃げられないように結界張っておこ、そろそろ救護組の治療と避難が終わる頃だろうしね。

 

「アナタ、どんな()()も効かないんですわよね? 再生能力も相まって驚異的な防御を誇るそうですけど」

「や、やめろ……」

 

魔物(モンスター)にも感情はあるように、彼は腰が抜けて動けなくなっている模様。

だからなんだ? と言わんばかりに魔力(エンジン)を吹かし、魔剣が起動される。

 

「よせ、まて、近づ────」

 

悲鳴と認識するの苦痛の叫びは、『魔鎖鋸(マナチェーンソー)』の咆哮とキリエの愉快な笑い声でかき消されてしまった。

 

今のキリエがどんな顔をしてるのかはここからじゃ見えない、見たくもないのでご想像にお任せしましょう。

 


 

固有能力(ユニークスキル)とは】

『soul lead』における固有能力(ユニークスキル)とは『祝福』であり『願い』であり『呪い』である。

 

「その者を象徴する『武術』『魔法』『祈祷』『呪術』」「生死問わずその者が強く願ったモノ」「その者の死因、もしくは死に直結した概念」のうちのどれかが禁忌によって算出され具現化した力。

 

『能力』の部分が『武術』『魔法』『祈祷』『呪術』に置換され初めて使用可能となる。

また同一系統の固有(ユニーク)は存在するが、完全に同一の固有(ユニーク)は存在しない。

 

『願い』が一定量を超えた場合、新たに進化する場合もある。

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