ホントに素人なんで、暖かく見守ってください…泣
目が醒めると、そこには闇だけが広がっていた
ここがどこだか、見当もつかない
とりあえず勇敢なのか馬鹿なのか、俺は足を一歩踏み出した
1
「はぁい!お疲れ様です!試験合格ぅ」
どこからともなくファンファーレが響き、アニメキャラのような甲高い声が俺の耳を打つ
唖然と暗闇を見つめていると、まるで蝋燭でも灯ったかのようにぱぁっと一点が光った
と、同時にぽんっという音と共に手のひらサイズの女の子が現れる
茶色い髪は肩につかないぐらいのショートボブ。妖精のような半透明の緑色の羽が飾りみたいに背中についていて、白いワンピースが風もないのに足元だけゆらゆらと揺れている
あまりに多い突然の異常事態に俺が目を見張っていると、小さな彼女はにこりとわらった
「おめでとうございます、合格ですよ」
「は…はぁ」
とりあえずの相づちはひどく呆けていたんだろう。彼女はぷくりと頬を膨らました。
「もー!まったくなんにも分かってないにぶちんですか?あなたは」
そういってワンピースのポケットから俺の小指の爪ほどの小さな鈴を取り出すと、リンッとこれまた小さな音をたてた。同時に俺の目の前にモニターが出現する。
彼女はモニターの一点を指差した
「わかります?これ、あなた」
正直、今までのを遥かに凌ぐ驚きだった
モニターに映し出されたのは事故現場だった。トラックが横断歩道と道路を塞いでいて、前のほうが潰れている。そしてそのトラックと道路には、どす黒い血が塗られていた。いや、そんなことよりも俺の目をひいたのは…――
「俺…死んだか…?」
ここで、初めて俺はこの暗闇で声を発した
血溜まりの中で見るも無惨な形で横たわっているのは、紛れもない俺自身だ。ぐにゃりとへし折れた自転車、あれは間違いなく俺が5年間愛用してきたものだった
方針状態でモニターを眺めていると、先の少女が顔の前に現れ、こちらの気も知らずに愛らしいほどの笑みを浮かべる
「分かりました?あなた、今日9月1日午前7時57分にお亡くなりになられましたっ」
「お…亡くなりて……おい…」
正直…飲み込めなくもない話だった。微かに頭に残っているのだ。
――いきなり突っ込んできたバカデカイ何かの影が…
「あ、ちなみに…あなたが亡くなった詳しい理由なんですけども、トラックの運転手の飲酒運転が原因ですね」
いんしゅ…うん…てん…
「信号待ちで課題考査の勉強をしていたあなたに突っ込んだものと思われます。あなたは数メートル引きずられ、即死…。トラックは電柱にそのまま衝突し、運転手の方は病院に搬送されたもののつい先程お亡くなりになられました。……っとこんなものでしょうか?」
他に知りたいことは?とにこやかに聞かれたもののそれどころじゃない。
死んだということはあれだろうか。もう会えないのだろうか。家族に、友人に、そして
「…ーー…」
音にならない声は、たった1人の少女の名を紡ぐ。
そこまで考えて、俺はふと思い出した。
目の前の女の子を見る。にこにこと笑う彼女、先程、なにかおめでとうございますだのなんだの言ってなかったか
そんな面持ちで彼女を見つめていると、一段と可愛らしくにこりとした。そして小さな手で俺に拍手をする
「やっとお気付きになられましたか。生き返る手段を与えられる権利を得る試験、あなたは見事合格されたんです」
そのまま彼女は俺の、一歩踏み出したままの足に舞い降りる
「この暗闇にきて、足を踏み出す人なんてまずいないんですよ。たいていそのまま目を閉じてうずくまってしまうんです。実は、不慮の事故に合われた方はみんなここに1度だけ連れてこられてこの試験を受けるんです。踏み出す、ただそれだけのことなんですが、ここに来れば恐ろしいぐらいにそれは困難なこと。よって、この試験に合格した人だけ…生き返る手段を与えられるんです。……まぁ…」
そこまで言って、彼女はまた俺の耳元までとんできた。そして可愛らしく耳打ちをする
「あなたが初めて合格した人なんですけどね…笑」
そして、彼女はまたモニターのところへ戻った
変わらぬ笑みを俺に向ける
「生き返りたいですか?」
「ああ」
俺の即答に、彼女はそうですよね、と返す。そしてまた口を開く
「例え…その手段がどんなに困難でも?」
「ああ」
「死に物狂いじゃないといけないかもですよ?」
「ああ」
「誰かを殺さなければいけないものでも?」
「………」
これには困った。人殺しは気が向かない。というより嫌だ
「あら、善良な人間ですね」
答えない俺の気持ちを読み取りでもしたのだろうか。彼女はころころと笑った。そして、またさっきの笑顔に戻る
「実を言うと、これからあなたは異世界へ行ってもらうつもりなんです。そこであるモノを獲得するゲームに参加する。これはその世界のある人物が言っている言葉を引用したものなんですが…
『殺し、殺される側となって』
」
ごくり、と。俺は生唾を飲み込んだ。
先にも言ったが、人殺しは…嫌だった。そんなことはしたくない。
ただ、俺はもうこの時、目の前の女の子なんて見ていなかった。
その奥にあるモニター。そこに映る泣き叫ぶツインテールの少女。
俺の目線の先を、女の子は知っているのか否か。
彼女はもう一度聞いた
「生き返りたいですか?」
俺はもう一度答えた
「ああ」
その瞬間…俺は光に包まれた。
最後に見えたのは女の子の変わらない笑顔と…―
モニターに映る恋人の、変わらない泣き顔だった