リミナル   作:苔桃おいし~

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初めての執筆です。


困惑

 

 

 

 

 

 

「………は?」

 

 

 思わずそんな声が出てしまった彼に眉をひそめる者はいなかった。

 いや、()()()()()()()()()()()()()といったほうが正しいだろうか。

 

「待って、ちょっと待って、状況が理解できないんだけど。」

 

 彼の困惑した様子に反応する者もまたいなかった。

 視界に入ってくるのは思わず遠近感を間違えたかと勘違いしてしまうほど長い廊下。

 

 聞こえてくるのは己の呼吸音と古いデザインの蛇口から垂れる水滴の音だけ。

 

 木材とコンクリート、ホコリ、カビが混ざったみたいな不快で古臭いにおいが鼻腔を刺激する。

 

 ひどく間延びした、不快で懐かしい感覚。

 

 

 眼前にはいつか見た小学校を引き伸ばしたような空間が広がっていた。

 

「なにこれ、気持ち悪ッ…」

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 彼、今年で高校生となった相川 聡を端的に言うと

「凡愚」その一言に尽きるだろう。

 

 成績は良くて中、大抵は中の下を彷徨っていおり、スポーツの成績もいいわけではない。

 特技もあるにはあるが、同じ分野で彼よりはるかによい成績を残す人間は五万といる。

(もしかしたら凡愚以下かもしれない)

 

 にも関わらず、いや、だからこそ彼は特殊な状況に憧れていた面があった。

 

 平凡で冴えない日常から脱するような、刺激的で冒険的な状況を望んでいた。

 そのような経験を得て、ほかの人間とは違う何かを得たいと思っていた。

 

 青年期特有のアイデンティティの追求である。

 

………しかし、

 

「もうずっっッと歩いてんだけど!?出口どこだよ!」

 

 いくら特殊な状況だとはいえ、十数時間も変わらない場所をぐるぐる周り、出口を探し続けることは平凡な彼には耐えられるものではなかった。

 

「アアッ、クソッ!頭おかしくなりそうだ!」

 

 特に彼の精神を蝕んでいるのはその風景だった。

 

 ひたすら歩いているのにも関わらず、廊下の様子は変わらず、窓から見える太陽が傾いた様子はない。

 

 その様子が彼には自分の無力さを嘲笑っているように感じられ、不愉快でさらに不安を煽っていた。

 

そして、彼の身体にも異変が起こっていた。

 

(俺ってこんなに体力あったっけ?)

 

 疲れを感じないのだ。

 

 平均以下の体力の彼が今の今まで飲まず食わずで歩き続けることができたのが何よりの証拠だろう。

 

「ちょっと頭休ませないと、、」

 

 疲れないとはいえ理解できない状況に精神的な疲労を感じた彼はゆっくりと壁際に腰を下ろし、静かにため息をこぼした。

 

 しばらく歩いているが、出口のようなものは見当たらず、どうやら完全にこの奇妙な空間に閉じ込められてしまったらしい。

 

「いったい俺が何したってんだよ……」

 

 ふと、そんな言葉が口からもれた。

 

 確かに自分は聖人といわれるような人間ではないが、余裕があれば人助けをするくらいの善性はある。

 少なくともこんな目に遭わされるようなことをした覚えはない。

 

「ああくそ、ホントに何なんだよ…ここ、、、」

 

 身体を動かすのをやめ、疲労した脳を使い思考する。疲れた脳はネガティブな方向へと考えを出力する。

 

 (もしかしたら、このままこの空間から出ることができずに一生をここで過ごすのかもしれない。)

 

 そう考えると走馬灯のように後悔が押し寄せてきた。

 

 常に受け身で生きてきたこと。

 

 常に受け身で勉強し、受け身で運動し、受け身で他人との関係を続けてきたこと。

 必死に積極的に努力している人々を見ては、尊敬はすれど理解しようとはしなかったこと。

 

 自分の人生を生きている実感がなかったこと。

 

 (⁠そう考えると、どうして俺は帰りたいんだろうか?⁠)⁠

 今帰ることができたとして、自分の人生が向上するわけでもないだろう。

 テキトーに生き、テキトーに死ぬだけだ。

 

 なら誰にも迷惑をかけずに()()()()()()()()()ほうがいいんじゃないんだろうか?

 

 

 (…ダメだダメだ、疲れて変な思考になってるな)

 

 極端な考えに頭を振った、その時だった。

 

「えっ…?」

 

 廊下の奥の曲がり角、そこに人影があった。

 嫌なほど見慣れた風景に突然現れた異物。

 そして、それを見逃すほど彼の視力は低下していなかった。

 

「す、すみません!!」

 

 人生で最大であろう声量を出し、走り出す。

 もしかしたら出口を知っているかもしれない、

何かこの空間について知っているかもしれない、

 

 もし何も知らなくても、ずっと一人彷徨っていた彼には会話ができる他者が必要だった。

 

「あの!………ッ!?」

 

 彼我との距離が5メートルに迫ろうとした時だった。

 

 相手がこちらの存在に気づき、ゆっくりと顔を振り向いてくる中、彼は気づいた、気づいてしまった。

 

 

 

 その人影の頭と身体の大きさの比率のおかしさに。

 

「あの?え?、な、はへ…?」

 

 見えた一筋希望から一転し、

 得体のしれない存在への恐怖に脚が震え、過呼吸をおこす。

 

 小学生ほどの身体に大ぶりのスイカほどのアタマがついているといえばわかりやすいだろうか。 

 

 『だぁれ』『なぁに』『目えた』『見た』

『いたいたいたいた』『どうしたの』『にがすな』

 

 

 窓からかかる太陽光がソレの顔を晒す。

 

 中心に生えている大量の目玉とそれを囲むように笑みを浮かべる口。

 

「あ、あああぁぁぁぁ……!」

『『『『『『『なあ”あ”あ”ぁぁぁに』』』』』

 

 異界の怪物が今まさにそのアギトを開かんとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか上手い描写ができませんでした。
ですが初めての小説にしてはうまくできたので満足です。

もう少し続き書こうかなと思います。

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