地方トレセンを舐めるなよ!   作:鼻毛王

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十六話 定例会議

 

 

 笠松トレセン学園の定例会議では毎度のことながら、様々な議題が俎上(そじょう)に載せられる。

 学園運営、設備保守、予算案の決定、対外的なメディアへの調整、全てはウマ娘の未来のためである。

 

 先日の新人デビュー戦も想定以上に順調な滑り出しであった。レース自体も大いに盛り上がりを見せ、笠松トレセンの名前を強く印象付ける結果となった。

 

 だからこそ、次が重要となる。

 一度点いた火をどう維持し、拡大するか。スタートを切った後の方が気苦労は大きい。

 

 休む間もないが、笠松のためと思えば仕方がない。

 今後も継続した盛り上がりを図るため、話し合いの場はどうしても必要不可欠となる。

 

 この会議は、そのための場だ。

 今後を見据えた議案も話し合われる。

 

 そして、その一つが——トゥインクルシリーズへの参戦である。

 

 トゥインクルシリーズ。

 地方のローカルシリーズとは異なり、観客の動員数やグッズの売り上げ、話題性、その全てが桁違いだ。

 歴史も厚く、ルールも驚くほど細かく定められている。

 東京に本社が置かれ、中央トレセンとも関係が深い。日本の中心にあるからこそ、国民の関心も集中する。地方が、どうしても話題性で中央に勝てない理由の一つである。

 

 では、その中央へ、地方のウマ娘が挑むにはどうすればいいのか。

 方法は大きく分けて二つある。

 

 一つ目が中央トレセンへの移籍。

 オグリキャップが原作でしていたように、地方から中央トレセンへ編入し、トゥインクルシリーズの参加資格を得る方法だ。

 

 中央のトレセン生徒には、在籍しているだけでトゥインクルシリーズへの出走資格が与えられる。厳しい入学選抜を勝ち抜いた特権とでも言えばよいのか。

 地方よりも厳しい基準が設けられているだけあり、入学した生徒には大きな恩恵が与えられている。

 ちなみに、中央への一番メジャーな挑み方でもある。

 

 そして、二つ目。

 こちらが地方在籍のまま中央へと殴り込む、唯一の手段

 ——指定交流レースで勝利することである。

 

 URAが指定した地方レースの中でも特にグレードの高いレース。地方版の重賞レース、と云えば分かりやすいだろうか。

 そのレースで勝利を飾れば、「トゥインクルシリーズへの参加資格有り」と判断される。逆を言えば、勝てなければ「トゥインクルシリーズに出る価値無し」と烙印を押されるのだ。

 地方から中央へと向かう登竜門。

 殴り込みをかけるには先ず、このレースを突破しなければならない。

 

「我が校の生徒たちなら、指定交流レースで勝利を飾るのも難しくありません。

 先のデビュー戦の勝ちタイムを見てもらえれば分かりますが、勝ちを狙えるウマ娘は既に何名も該当しています」

 

 オグリキャップやフジマサマーチが鮮烈なデビューを飾ったが、他の者も負けてない。

 他の生徒たちも、観客に強い印象を残している。勝ちタイム的にも、中央に劣らない。

 寧ろ、明確に上回っている。

 

 私も授業の中で、教えられる範囲の基礎は徹底的に叩き込んだ。

 コーナリング、スタートダッシュ、位置取り。そういった細部の完成度は、中央よりも圧倒的に上だと自負している。

 

 観客席で観戦していた者たちからも、その点は大いに評価されていた。

 

「少し早いですが、トゥインクルシリーズへの出走登録用紙を全生徒へ配布しましょう。

 URAの委員会からは数を絞れと文句を言われるでしょうが、申請用紙の提出自体は何も規定違反ではありません」

 

 地方トレセンの生徒にとって、トゥインクルシリーズは憧れの舞台だ。

 だが、憧れだけでは勿体無い。彼女たちは、参加に足る実力を身に付けつつあると私は踏んでいる。

 

 特に本格化を迎えた特待生組は、全員が中央に乗り込めるだけの力を備えている。私としても、ここで腐らせるつもりはない。

 

 中央へ殴り込みをかけ、トゥインクルシリーズを荒らしてもらう。

 そのための準備を、着々と進めている。

 

「ふむ、私も先日レースを覗かせてもらったが、中央にも十分対抗し得ると確信できた。

 文句を言われる程度は甘んじて受け入れよう。

 明日にでも生徒に申請書を配布するとしよう」

 

 反対意見は一つも出なかった。

 私含め、ここに集まる全員が生徒に絶対の自信を持っている。

 

 ここで一旦話を区切った。

 

 そして、次の話題へと移行する。

 

「では、次の議題だが……ファン感謝祭についてだな」

 

 笠松トレセンも昔から、地元民に向けて学園総出で感謝祭を開いてきた。

 が、如何せん予算が無かった。客足も無かった。

 内容も学生の祭りの域を出ない仕上がりだったと聞く。

 

 だが、先日のレースでは相当な集客が見込め、多くのファンを獲得することができた。

 

「地方レースのデビュー戦とは思えない、類を見ない規模での開催となりましたからね。

 入場料や各露店からの売上も一部還元され、お陰様で想定以上の収益を確保できました」

 

 設備投資の回収分には至らないが、以前では考えられない収益だ。

 昔の吹けば飛ぶような財政状況から脱出を果たしつつあり、財源に余裕が出てきている。

 資金難に苦しめられていた過去とは大違いだ。

 

「お金は天下の回りものです。

 溜め込むばかりでなく、ファン感謝祭として還元し、学園の魅力を伝えていきましょう」

 

「ああ、その通りだ。

 ここら一帯の地域振興のためにも、還元していかねばなるまい」

 

 私たちの目的は笠松トレセンのみの発展ではない。

 笠松全体の復興も含まれる。

 目的を達するためにも地域にお金を落とし、笠松トレセンが主体となり発展させていく必要がある。

 

「それでは、具体的にファン感謝祭の段取りを決めていきましょうか」

 

 開催日時の決定、露店の呼び込み、ファンへの周知、学園生徒への予算配分、等々。

 決めるべきことが山積みだ。

 

 大本が決まれば細部まで詰めていかなければならない。

 中央と開催日が被れば、ファンが向こうに流れるのもあり得る。

 その辺りも含め、慎重に判断しなければならない。

 

 ……後は、サプライズイベントなど用意してもいいかもしれない。

 トレーナー強制参加型レースとか、盛り上がりそうだ。

 

 普段は指導する側のトレーナーが、走る側に回る。

 担当ウマ娘にとっても、愉快な思い出になるだろう。

 後で提案だけしておこう。

 

 細々した調整は時間が掛かるが、こうやって運営側に回ってみるのも面白い。

 私は案外、運営者や経営者に向いているのかもしれない。

 

 自分のちょっとした一面に気付きつつも、会議はまだ続いて行く。

 感慨に浸る暇はない。

 

「次の議題は……来年度から学園主催で開催する学内レースについてだ。

 名前は確か、チャンピオンズミーティングだったか。

 これは君の提案だったな。詳しい説明を頼むよ」

 

「ええ、私から説明させてもらいます。先ずは……」

 

 こうして会議は、夜遅くまで続いていく。

 議題は尽きない。

 

 これからしばらく、会議漬けの日々が続くのだろう。

 

 




無名のナニカさん、葛葉さん、SYO034さん、ムッシーさん、メアトリさん、サマーブックさん、トントロラーメンのトントロ抜きさん、コメント有難うございます。

思ったより反響あってビックリ
皆、めにしゅき好きなのか……

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