地方トレセンを舐めるなよ!   作:鼻毛王

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十七話 スペシャルウィーク

 

 

 お母ちゃんへ

 

 お母ちゃん。北海道で元気にやっていますか? 

 私は笠松トレセンでも元気に過ごしています。

 偶に地元が恋しくなることもあるけど、毎日が新鮮で、精一杯学園生活を満喫中です。

 

 学校には私と同じウマ娘が何百人といます。

 こんなの地元じゃ考えられません。

 

 学園自体もとっても大きくて、最初は本当にびっくりしました。

 それに——なんと、食堂も食べ放題で、おかわりも自由です! 

 美味しいご飯も好きなだけ食べられて、私、とっても幸せです。

 

 もちろん、トレーニングも頑張ってます! 

 トレーナーさんも付いてくれて、毎日練習に励んでます。

 

 トレーナーさんは脚を触ってくる、ちょっと変わった人だけど……いつも真剣にトレーニングメニューを考えてくれます。

 

 今は力を付けてる最中だからレースには出られないけど、いずれ大きなレースに出走して、お母ちゃんの元にも胸を張って報告できるよう頑張ります。

 

 日本一のウマ娘になるまで、見守ってて! 

 お母ちゃん!! 

 

 スペシャルウィークより

 

 ◇

 

 スペシャルウィークが此処、笠松に来てから半年が経過していた。

 

 最初は校舎の大きさに圧倒され、最新設備に戸惑い、食堂の存在に感動していた彼女も今ではすっかり慣れたものだ。

 

 最新のトレーニングコース。

 整備の行き届いた施設。

 食べ放題の許された食堂。

 

 彼女にとってはまさに天国に近しい。

 のびのびとやっていける環境が整っていた。

 

 偶に時をみては母へと手紙を書いている。

 スマホで連絡を取ることもできるが、あえてペンを取っている。

 

 こういうのは気持ちが大事である。直接文字を書くことでお母ちゃんを安心させたい、スペシャルウィークなりの気遣いだった。

 

「あれ~、スぺちゃん、誰にお手紙書いてるの~」

 

「あ、スカイちゃん。ちょっとお母ちゃんにお手紙出そうと思ってて」

 

「お~。スぺちゃんは母親思いですな~。

 私も最近連絡とってないし、手紙でも送ろうかな~」

 

 笠松に来てから友人も増えた。

 

 セイウンスカイもその一人だ。

 のんびりマイペースな性格をしているけれど、決して侮れない。

 しばしば一緒にトレーニングを積み、その実力を身をもって知っている。

 

「おや、スペシャルウィークさん! 

 お手紙とは随分古風ですね!!」

 

「バクシンオーさん! 

 これ、お母ちゃんにお手紙出そうかなって」

 

「なるほど!!! 

 母親思いのウマ娘ですね~! 

 この学級委員長、感心しました! 花丸を上げましょう!!!」

 

「あ、あはは~」

 

 彼女もまた、笠松へとやってきたウマ娘である。

 中央トレセンから合格通知を受け取りながら、笠松トレセンを選んだ一人。

 

 実は、このような同級生は結構多い。

 セイウンスカイもそうだし、隣の教室のオルフェーヴルもそう。

 彼女ら曰く、将来性を感じたとのことである。そう直感が囁いたらしい。

 

 中央への切符を捨ててまでやって来たことに、後悔はないらしい。

 寧ろ、その充実具合に満足しているのだとか。

 

「中央もいいけどさ~、笠松の方が実力伸びそうなんだよね~」

 セイウンスカイはそんなことを言っていた。……まあ、中央を蹴った人は、皆似たようなことを言っているが。

 

「ところで話は変わりますが、来年度からのチャンピオンズミーティング、楽しみですね~! 

 この学級委員長も今から身体がウズウズしてます!!!」

 

「一般の人にも開放して、大々的にやるらしいからね~。

 笠松トレセン内々のレースらしいけど、凄く盛り上がりそうだね~」

 

 チャンピオンズミーティング。

 先生より通達のあった、来年度開催予定の学内レース。

 

 距離別、バ場別に分かれて勝者を競う。

 学園生徒のみならず、一般人にも見学が許可される予定である。

 勝者にはトレーニング施設の優先使用権や、高級ブランドの人参一年分が贈呈される。

 

 参加資格はこの学園の生徒であることのみ。

 レース日程の都合で強制ではないが、何もなければ基本的には参加が推奨されている。

 

「高級人参……雪の中で育てた雪人参とかかな? 

 は~、考えただけでもお腹が空いてきちゃいます!」

 

「相変わらずだね~スぺちゃん。でも、私も高級人参一年分は欲しいかな。

 この学園のことだし、一本数千円する人参とか用意してそうなんだよね~」

 

 景品となる人参の値段をさらりと的中させるセイウンスカイ。

 実際、笠松トレセン側は生徒のやる気を引き出すために、目が飛び出る値段の最高級人参を用意していたりする。

 

 学園もこのイベントを盛り上げるために、ありとあらゆる手段を尽くすつもりだ。

 露店誘致もそうだが、笠松のオリジナルグッズ販売も計画していたりする。

 その辺りも抜かりはない。

 

「この学級委員長! 短距離では負けませんよ~! 

 最近の私は燃えに燃えてますから!!」

 

「バクシンオーさん! 私も中距離で参加予定ですけど、絶対勝って見せます!!! 

 人参一年分は、誰にもあげません!!!」

 

「お~、皆綺麗に分かれたね~。

 私は長距離でいくけど、出るからには勝ちたいね~」

 

 三者三様。

 皆共通して、レースに対する思いは強い。

 負けを前提で臨むような、廃れた根性は持ち合わせていない。

 出走するからには必ず勝利を掴む。彼女たちの意気込みは、誰よりも高い。

 

 それに、最近は別の意味でも火を付けさせられる出来事があった。

 

 指導教員として働くウマ娘が見せた“領域”。

 

 超集中状態においてのみ発揮出来るとされているが、ひとたび領域を発動すれば平常時よりも圧倒的なパフォーマンスを可能とする。

 

 中央のトレーナーすらその事象を知るものは極僅かであり、知識として知っていても、教え子に直接指導することは叶わない。

 

 ウマ娘が引き出せる超常的な能力なのだが、眉唾のように考えるトレーナーも多く居る。

 都市伝説扱いされることすらある。

 

 笠松トレセンでは、それを授業の中で普通に指導している。

 

 まさか、領域の手引きを学ばせる者が居るとは誰も思わないだろう。

 

 笠松に席を置く“彼女”だからこそできる荒行であり、中央トレーナーが見れば間違いなく発狂するだろう。

 現に笠松のトレーナー陣も発狂している。

 

 領域という、超常的現象を教わった彼女たちのモチベーションは高い。

 これをモノにできれば、更に高みへと至れる。

 

「ウマ娘なら、誰でも至れる。

 いいか、限界のその先へ行け。己の中の壁を打ち壊せ」

 

 そう助言をもらった日から、彼女たちの心に火が灯っていた。

 限界を超える。

 言葉で云うのは簡単だが、実行するのは難しい。

 だが、既にその領域をモノにしている者もいれば、掴みかけの者も居た。

 

 領域という、まことしやかに囁かれる事象を目の前にして、彼女たちのウマソウルが活性化していた。

 

 だからこそ、目の前のレースに懸ける思いも、熱く滾っている。

 

「私も領域を習得して、レースに出るぞ~!!!」

 

「スぺちゃん、負けないよ~!! 

 私も後少しで掴めそうだし、一足早く習得するんだから」

 

「はっはっは!!! お互い頑張りましょう!!! 

 この学級委員長も、皆さんに負けないよう励んでみせますから!!!」

 

 笠松に入学を果たした彼女たち。

 地方ながらメキメキと実力を蓄え、レースに向けて牙を研いでいる。

 

 中央との差は既にない。

 寧ろ引き離しにかかっている。

 

 中央の関係者は、そろそろ本気で危機感を募った方がいい。

 そんな段階まで笠松の生徒たちは成長を遂げている。

 

 




中央『さて、今日もトゥインクルシリーズで無双するぞ~』

笠松『さて、そろそろ胡座を搔いてる連中でも叩きのめしに行くか~』(オーバーキル予定)

どこぞの母親『さて、娘のトモ触る不埒者でも処しに行くか~』

ムッシーさん、ノワールキャットさん、crazyDさん、コメント有難うございます。
crazyDさん、カイザーレックスさん、ボールドさん、評価有難うございます。

最近は新顔の人からもコメント貰えて嬉しい
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