地方トレセンを舐めるなよ!   作:鼻毛王

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十九話 オープンキャンパス

 

 

 笠松トレセンの学園生による快進撃は続いている。

 

 中央への挑戦権を賭けた指定交流レース。

 その勝者が、地方──笠松から立て続けに輩出されている。

 もはや偶然の一言では片づけられない。

 

 現時点で、勝ち上がった生徒は十名。

 本格化を迎えた特待生は一人残らず勝ち星を上げ、一般枠からも三名の生徒が勝利を飾った。

 

 学園側としても誉れ高い。これ以上ない成果である。

 笠松トレセン出身の生徒がこれだけ勝ち上がっている。

 地方レース場は笠松トレセン一強状態だ。

 

 地方紙もこの動きを見逃さず、歴史的快挙として大々的に報じている。

 同じ地方トレセンの中から、これほどの勝者が生まれた例は過去に存在していない。まさに前代未聞の事態だ。

 

 笠松から誕生した新たなスターたち。

 彼女たちは全員が全員、中央への参戦を表明している。

 宣戦布告にも近い。

 

 まさに世紀の決戦が始まる予兆とも云えた。

 

 その情報も波紋を呼び、地方からの反逆者、中央へ反旗を翻すレジスタンスとしてメディアを賑わせている。

 

 笠松から誕生した異端児たち。

 彼女たちの世代は、笠松覇権世代の到来として世間に広く知れ渡るであろう。

 

 学園側としても、この流れを断ち切るつもりは毛頭ない。

 

 中央への参戦者は多ければ多い程いい。

 トゥインクルシリーズを焼け野原にするために、着々と実力者たちを育て上げている。

 

 

 なお、一般入学枠から勝ち上がった生徒については、特待生枠に組み込まれた。

 

 特待生ともなれば学費も免除され、学園からの支援も厚くなる。一般枠からでも特待生に成り上がれると知れれば、生徒の意欲向上にも大いに貢献してくれるだろう。

 

 ……にしてもまさか、ウイニングライブで見掛けたギャルっぽいウマ娘が根性見せると思わなかった。

 

「あーしもマーチと同じ舞台に出て、間近でファンサするんよ!」

 とか言っていたのを廊下で耳にしたが……なんだろう、このアグネスデジタル臭は。

 

 厄介ファンと云うのは、時に限界すら凌駕してしまうのだろうか。

 熱狂的なファンの底力を見せつけられた気分である。

 

 マーチのウイニングライブでも、自作団扇と法被姿で最前列を陣取っていたし。

 オタクってだけで悪い子ではなさそうだが、何処に執念を使ってるんだと問い質したくなった。

 

 ともあれ、彼女たちが勝ち上がったお陰で笠松トレセンの知名度は爆上がりした。

 

 その甲斐あってか、オープンキャンパスの申し込みも絶えない。

 余りにも希望者が多すぎて、一時は電話回線がパンクしたと言えば伝わるだろうか。

 それ程までに反響を呼んでいる。

 

 そのため、人数の都合上。オープンキャンパスは二回に分けて行われる運びとなっている。

 

 一回目が今日、二回目が来年の一月。

 

 地方トレセンなれど、ここまで話題性を買えば興味を抱く者も大勢集まる。

 

 その中から我が校を第一希望校にしてくれる子が集まれば、これほど嬉しいことはない。

 入学審査で手間と労力は増えるだろうが、学園側としても歓迎するところである。

 

 さて、今日はオープンキャンパス。

 

 少々時期が早いが、その栄えある第一回目だ。

 

 私も態々遠くまで足を運んできたウマ娘のためにも、案内係に努めるとしよう。

 

 

 

 ◇

 

 

 沖野や北原、柴崎をはじめとしたトレーナー陣は総出でオープンキャンパスへと駆り出されていた。

 

 学園のウマ娘が勝ち上がったお陰で想定以上に希望者が多く、人手不足に陥った。

 教務課や総務課では対応しきれないと判断された結果だ。

 

 それを解消するため、トレーナー陣にも召集が掛かった形となる。

 学園施設の案内、授業見学、寮の紹介など、お助けスタッフとしての役割が期待されている。

 

 笠松のトレーナー陣は他所よりも数が多いので、一人当たりの担当する人数は少ない。

 それでも母数が多いので、一人頭、十人以上は面倒を見ることになる。

 

 手伝いに駆り出されたトレーナー陣だったが、彼らとしても悪いことばかりでない。

 

 将来入学するかもしれないウマ娘を、今の内から見繕うことができる。

 後を見越せば、数年後には担当になる子が紛れているかもしれない。

 運命と云うのは誰にも予見できないのである。

 

 ウマ娘も十人十色。

 色々な個性を持った子がいる。

 

 そして案の定。

 今日のオープンキャンパスでも、癖のあるウマ娘たちが姿を見せに来ていた。

 

 

 

「は~っはっは!! 

 将来、覇王となるこのボクを案内する権利を与えようじゃないか!!!」

 

 

「……黄金の旅路を飾るに相応しい場所だね。

 運命的な何かを感じる子も居るし、気に入った」

 

 

「アハハハハ!! 強いウマ娘の気配がする! 

 ああっ、興奮が抑えきれない!!! 全てを喰らいたい!!!」

 

 

「むむむぅ。この環境ならトップウマドルになるのも夢じゃないかも……? 

 よ~し、観る人全てを魅了してやるぞ~!」

 

 

「ん~。ここならキラキラできそ~♪ 

 セレブな生活目指して頑張っちゃうぞ~!!!」

 

 一癖も二癖もあるウマ娘たち。

 

 案内の担当となったトレーナーたちは、濃いメンツが来たな~と遠い目をしている。

 どうしてここまで個性を発揮できるのか、疑問を隠し切れない。

 

 だが不思議なことに、こういったウマ娘に限って将来大成しそうな気配を放っている。

 

 事実、あの“彼女”が直接スカウトに赴いたウマ娘も混じっており、原石の発掘には事欠かない。笠松の名が世間に浸透している証拠でもあるのだろう。

 今のうちに、唾つけを行うトレーナーたちも多く居た。

 

 沖野は相も変わらずトモを触らせてくれてと頼み込み、ウマ娘をドン引きさせている。

 あ、また蹴られた。まあ、頑丈さに定評のある彼なので、数秒後には何事もなかったかのように立ち上がるだろう。

 

 妖怪トモ触り。

 その頑健さは今日も健在で、ウマ娘の蹴りを真正面から受け止めても耐えきる。

 前世は塗壁とか、頑丈さに定評のある妖怪だったに違いない。

 

「ねえねえ、トレーナーさん。

 この学校ってスクールモットーとかあるの?」

 

 とあるウマ娘が、案内役のトレーナーへと疑問を投げかけた。

 それは純粋な好奇心から出た言葉である。

 

「ははは、難しい言葉をよく知っているね。

 勿論あるよ」

 

「えっ! どんな言葉なんですか?」

 

 英語だけどいいかな? 

 と一拍おいて、案内役の彼は静かに口を開いた。

 

「The proud gain no victory.

 Only the humble reach the summit.

 

 これが笠松のスクールモットーだよ。

 どういう意味か分かるかな?」

 

「え~。英語できな~い。

 わかんないよ~」

 

「ははは、だろうね。その意味を知りたかったら笠松へおいで。

 我々は、いつでも君たちを歓迎しているから」

 

 ケチ~とブーイングが飛んだ。

 だが、彼は苦笑してそれを受け流した。

 少しだけ意地の悪い、大人のやり方だ。

 

 彼女たちがこの言葉の真意を知るには、少々幼い。

 今意味を伝えたところで、本当の意味を理解することは出来ないだろう。

 

 その言葉の真意を理解し、体現できている者は笠松でもほんの一握りなのだから。

 

 

 




スクールモットーの解説

The proud gain no victory.
驕る者、勝利を得ず

Only the humble reach the summit.
驕り無き者、頂へと至る

中央を意識したスクールモットーになってます。
Google先生、アンタのアシスタントが無ければ流石に書けなかったぜ…

葛葉さん、トントロラーメンのトントロ抜きさん、torinさん、コメント有難うございます。
大須賀さん、外道麻婆豆腐さん、評価有難うございます。

執筆の励みになっておりますm(__)m

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