地方トレセンを舐めるなよ!   作:鼻毛王

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お久しぶりです。
第一編終わってから一気にお気に入り数伸びててビックリした……
お陰さまで目標に据えてた1000まで届きそう

感謝感激ッ!



地方飛翔扁
二十三話 交渉の席


 

 私と理事長の正面では、URAの役員たちが並んで席へ座っていた。

 その面持ちは緊張に強張り、額には汗が浮かんでいる。

 しかし、そんな重圧の中でも彼らは必死に私たちへと語りかけている。

 

 彼らは私たちとの交渉を行うために、遠路はるばる笠松まで足を運んできた。

 

 本来ならば笠松側がURA本部と出向くのが普通であるが、今回は異例である。

 向こうから頭を下げる形で、この場が設けられている。

 

 まあ、彼らの目的を想像することは容易い。

 

 彼らが交渉の席にやってきた理由は明白であり、グッズ販売に関連した話をしに来たのだ。

 

 つい先日、笠松トレセン所属のオグリキャップが中央のGⅠレースで勝利を納めた。

 地方所属のウマ娘がトゥインクルシリーズ、それも最高峰の舞台で勝ち星を上げたのは史上初である。歴史的快挙といってもいい。

 

 偶然やまぐれで片づけられるような内容ではなく、誰の目にも分かる圧巻の勝利である。

 

 地方からトゥインクルシリーズへと挑戦する者はこれまでもいたが、その全てが中央の壁に阻まれ、着外という結果に沈んで来た。

 そんな常識をオグリキャップは見事ひっくり返してみせたのだ。

 

 その劇的な勝利に観衆は湧き、熱狂は世間へと伝播した。

 レースの影響はそれだけにおさまらず、翌日以降、関連グッズへの問い合わせが押し寄せた。

 フィギュアやポスター、ぬいぐるみ、記念グッズの販売を催促する声が各地から届いたのだ。

 

 グッズ販売はURAの管轄の範疇でもある。

 人気が出ればそれに比例して、グッズも売れる。

 

 売り上げが伸びれば、当然、管轄者の懐も潤う。

 

 グッズ販売で莫大な利益が見込めると踏んだからこそ、彼らはここにいる。

 

「利益分配金の比率ですが……

 中央トレセンと同様、五分五分での配分をご提案したく……」

 

 URAの役員が必死に頭を下げて、私たちに交渉を行っている。

 腰も低く、どちらが上の立場か明白であった。

 無論、私たちが上座であり、向こうが下座である。

 

「URAは我々を舐めているのかね? 

 今一度尋ねるが、本当にその比率で交渉を持ち掛けているのかね?」

 

 笠松の理事長は、顔に血管が滲みでそうになっている。

 顔にはぶち〇すぞ、てめえらと出ている。顔面ヤクザだ。

 うーん、怖い。

 

 役員たちも雰囲気に気圧されながらも、前例を持ち出して説得を続けている。

 

 中央とURAは五分五分で利益を享受しています。

 だから、笠松も同様にお願いします とのことだ。

 

 残念ながら、これでは話にもならない。

 一見、話を纏めてもいいように感じるがそんなことはない。

 理事長がガンを飛ばすのも無理はないほど、舐めた条件である。

 

 そもそも地方と中央はイーブンな関係ではない。

 同じ条件で語られること自体、既におかしい。

 

 中央トレセンは長年に渡り、URAと密接な関係を築いている。

 潤沢な資金援助に加え、CM雇用や競技関連イベントでの広報案件での抜擢。

 加えて、スポンサー支援や名家からの設備投資など、様々な資金調達ルートを確保している。

 

 それに対し、地方への援助はほとんど無い。

 URAからの資金援助も雀の涙で、中央に比べれば雲泥の差がある。

 

 笠松トレセンの運営も、ほぼ県の補助金で賄われていた。

 URAへの支援要請も水に流され、これといった恩恵は無いに等しい。

 事実、大規模改修工事を行った際も一銭たりとも資金援助の申出がなかった。

 

 人気も話題性もない地方が利益を確保できるのは、精々がレース場での観客の入場料程度である。

 資金の調達ルートが限られ、支援も皆無といって言い状況だ。

 地方が寂れがちなのは、こうした背景があるからだ。

 

 その上で、莫大な利益が見込めそうなときだけ中央と同じ条件を持ち出すとは、余りにも都合が良すぎる。風上にも置けない野郎である。

 

 理事長を含め、笠松の上層部も般若のような形相をしている。

 

「……中央と同じ比率で交渉を申し込まれるとは心外だ。

 我々には過去の確執もある。

 その事情を理解した上での提案を、期待していたのだがね」

 

 URA役員たちの表情が見るからに硬くなった。

 何名かは既に、失敗を悟った顔をしている。

 

 私も理事長の言葉を継いで話す。

 

「此方には既に県議会から、グッズ作成の協力の申出が届いております。

 デザインやぬいぐるみ製造の打診もきてますし、県の流通網を活用すれば全国展開も可能とのことです」

 

 その言葉に笠松陣営はうんうんと頷き、URA側は絶望の表情を露わにした。

 

 利益の分配比率次第では学園側にも大きな利益を齎す。

 これは言うまでもない。

 グッズの売り上げは、決して侮ることができない。一つ一つが手軽な値段だろうと、塵も積もれば膨大な利益へと繋がる。

 

 笠松も大規模改修にて資金面で多くの出費を強いられた。

 今後の学園運営、感謝祭の開催、設備保守、チャンピオンズミーティングの開催。

 イベントごとにも金が掛かる。

 我々にも、支度金以外の継続的な収入が必要なのである。

 

「非常に残念です。

 URAの方々の良識を期待していた私たちが大変お恥ずかしい。

 我々を慮った提案をしてくれるだろうという思い込み自体、浅慮でした」

 

「ある意味で期待を裏切ってくれた。

 さて、もう話し合いの場も必要ないだろう。お帰りは扉を出た向こうです」

 

 私と理事長は彼らを切って捨てた。

 五分五分とか、舐めてるのかと。

 熟考の余地すらない。

 

 URAはウマ娘レースを取り仕切る巨大組織ではあるが、グッズ販売等に関しては彼らを通す義理はない。

 学園の個々の裁量に委ねるとも規定されており、我々が個人でグッズ販売を展開してもなんら問題もないのだ。

 

 今回のように飛び込み営業される場合もあるが

「URAを通した方が宣伝効果がありますよ」と謳っているだけに過ぎない。

 

 URA側は独自の販売経路や宣伝の伝手を持ってはいるだろうが、それだけで利益の五割を持っていくのは余りにも御門違いだ。手間や労力を考えても明らかに取り過ぎである。

 

 必至に再考を迫ってくるURAの役員たちをさっさと追い返した私たち。

 

 足取り重く帰る彼らをよそに、私たちは気楽な感じで談笑していた。

 

「交渉で相手を虐めるのも、案外気分がいいですね~」

 

 理事長や上層部も苦笑しながら頷いていた。

 まあ、言ってしまえば最初からURAと手を握るつもりもなかったのだ。

 過去に資金難に陥った際の因縁を、笠松側は忘れてはいなかった。

 窮地の際は手を差し伸べなかった癖して、美味しい所だけ手を出してくるとか厚かましいにも程がある。

 

「地方を軽く見たまま席に座るからこうなる」

 

 URAの手を取るなら、笠松トレセンの新造に協力してくれた者たちに還元する方が断然いい。それは皆の共通認識である。

 

 恩には恩で報いる。

 無作法には無作法で返す。

 

 手を組む事になった岐阜県議会とは、これからもwinwinの関係を築きたいところだ。

 長い目でお付き合いしていきたいところである。

 

 にしても交渉で相手を虐めるのは初めての体験であった。

 これほど心躍る経験をすることは、この先も稀だろう。

 実にいい経験を積めた。

 

 

 




葛葉さん、蝉仕草さん、pokotenさん、マグ屋さん、トントロラーメンのトントロ抜きさん、ムッシーさん、コメント有難うございます。

蝉仕草さん、なー02さん、Q..さん、アヴァンシアさん、メアトリさん、Himakuraさん、ふぶき-さん、ル二さん、ごろ ごろさん、TABASAさん、せら。さん、トガッチさん、評価有難うございます。

執筆の励みになります。

ストックが無くなり次第一時休止します。

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