地方トレセンを舐めるなよ!   作:鼻毛王

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二十四話 ヴィクトリークラブ

 

 笠松トレセンは生徒たちに自由な活動を許容している。

 クラブ活動もその一例であり、部員を揃えて活動内容さえ明確に定めれば、学園から活動費が支給される。

 

 ここで重要なのは、活動費を手渡すのが生徒会ではなく、学園側からというのがミソである。

 

 中央とは異なり、生徒会が独自で予算案を決定するとか意味の分からないシステムになっていない。

 

 生徒に予算配分を一任するとか、正直どうなのだろうか。

 社会経験を積めると捉えれば悪くないかもしれないが、一生徒が背負うべき責任としては重過ぎる。反発が出たらどうするのかと疑問を覚えざる負えない。

 

 そんな中央とは異なり、笠松トレセンでは学園からの支給が原則となっている。

 

 既存のクラブにそのまま所属するも良し。

 入りたいクラブがなければ、新たに立ち上げるも良し。それは各生徒の自主性に依るところだ。

 

 クラブを立ち上げるにしても、活動内容が余りにも理に適っていない限りは、基本的に認可が下りる。

 笠松トレセンはクラブ活動も積極的に励行している。

 

 

 

 とあるウマ娘。

 短距離を得意とし、快活な性格でも知られるサクラ一門が一人

 ——サクラバクシンオー

 

 彼女もクラブに参加しようと試みていた。

 

 しかし、幾度か体験入部を繰り返したがピンと来るクラブが見つからず、彼女の心を躍らせることが無かった。

 

 生徒の模範たる学級委員長がクラブに所属していない。

 これはあってはならないことだ。

 模範的生徒を自称するサクラバクシンオーとしては、頂けない事態である。

 

「心躍るクラブが無いのならどうするか。

 そう! 自ら立ち上げれば良いのです!!」

 

 パンが無ければケーキを食べればいい。

 惹かれるクラブが無いのなら自ら立ち上げればいい。

 

 積極性と行動力に富んだ彼女は、学園よりクラブ設立の用紙を貰い、すぐさまクラブを設立した。

 

 彼女が立ち上げたクラブ。

 その名も“ヴィクトリークラブ”

 

 ヴィクトリーと名乗る通り、レースでの勝利を目的としたクラブである。

 

 活動内容は効率的な練習の模索やメンバー同士での併走、過去のレース映像からの勉強会等々。生徒自らがトレーナー不在でもやっていけるよう、自己研鑽に励んでいくためのクラブである。

 

 アプリでは

 サクラバクシンオー

 サクラチヨノオー

 サクラローレル

 

 このサクラ三人衆が所属していた。

 

 しかし、残念なことに笠松トレセンにはサクラバクシンオーしか席を置いていない。

 縁戚であるサクラチヨノオーとサクラローレルは中央へと既に進学しており、サクラ一門によるクラブ結成は成し得なかった。

 

 本来であれば中央で三人揃ってクラブを創設する予定ではあったのだが、バクシンオーが急遽地方へ方向転換したため、三人が揃うことは無くなってしまった。

 

 サクラバクシンオー、中央へバクシンするかと思えばまさかの急旋回。

 いきなり地方へとハンドルを切り始めた。

 こんなのは誰にも予測不可能である。

 二人からは「何してんだてめぇ!」と思われてるかもしれない。

 

 でも、バクシンオーは此処に来たこと後悔してないっぽいし、仕方ないよね。

 

 メンバーが一人では当然ながら認可が下りない。

 

 しかし、そこはサクラバクシンオー。

 サクラ一門が誇る時代きっての異才。コミュ力の化身。

 

 学級委員長としての顔の広さと彼女自身の積極性も相まって、人員集めは恙なく終わった。

 

 

 

 

 

 

 

「私なら蹄鉄も一から手作りできますから。

 クラブの皆さんにもお教えできますよ」

 

「ふむふむ。実に頼もしい! 

 蹄鉄のお世話は自身でやるのが基本! 

 とは言え、一から蹄鉄を鋳造できるとは……この学級委員長も感心です!」

 

 エントリーナンバー1番──ベルノライト。

 

 実家は大手スポーツ用品メーカーであり、その辺りの知識にも詳しい。

 蹄鉄も材料と工具さえあれば一人で鋳造できてしまえるという地味にとんでもない技能を持っており、スポーツ用品店の娘に恥じないサポート能力を有している。

 正直アスリートではなく、サポート学科に向かうべきだったのでは? と自分自身でも思ってたりする。

 

 ちなみに最近は、オグリキャップのサバ折りをどう躱すかを悩んでいる。

 ウマ娘の力から繰り出される抱きしめ攻撃。

 そのパワーは想像を絶し、万力にも劣らない威力を誇る。

 

「自分の蹄鉄は自分でお世話!」

 をモットーに掲げるクラブとしては、欠かせない人材である。

 

 

 

 

 

 

 

「あ~しが入ったからには情報分析とかは任せときな! 

 どんなウマ娘であろうと完璧に情報を掴んでやんよ!」

 

「おおっ! ノルンエースさんの解析眼はトレーナー顔負けと評判ですからね~! 

 期待していますよ!!」

 

 エントリーナンバー2番──ノルンエース。

 

 笠松にて急激に頭角を見せ始め、今や笠松内での序列にも名を連ねるウマ娘である。

 ギャルっぽい見た目とは裏腹に、その本質は重度の厄介オタク。隠れざる変態である。

 

 笠松版アグネスデジタルとでも言ったらいいのか。推しのグッズを買い漁り、ウイニングライブでは最前列を陣取るオタクの中のオタク。

 最近の悩みはグッズを買い込みすぎて、寝るスペースが圧迫されていることである。

 

 クラブの情報収集担当としての活躍が期待される。

 レース映像をフレーム単位で分析し、その変態的な眼でどんなウマ娘の癖も暴いてくることだろう。

 

「お願いだから犯罪だけはしないでくださいね!」

 とバクシンオーから釘を刺されている。

 

 

 

 

 

 

 

「……ふん、戯れにクラブとやらに入ってやったが……

 余の期待を裏切るような真似をするでないぞ?」

 

「それは勿論ですとも! オルフェーヴルさんに入部して頂ければ百人力! 

 お互いの実力を高め合うためにも、切磋琢磨していきましょう!」

 

 エントリーナンバー3番──オルフェーヴル。

 

 天上天下、唯我独尊。

 王冠輝く、期待の金ぴかウマ娘。

 

 己が玉座を揺るがす存在がいる以上、自己研鑽は怠らない。

 未だ本格化を迎えてはいないが、潜在能力は疑いようもなく高い。

 いずれは笠松のトップを奪い取る気概で日々のトレーニングに励んでいる。

 

 最近の悩みは、中央に行った姉上から鬼のように電話が掛かって来ること。

「お願いだから深夜に電凸しないで余……」と言いたくなる程、毎夜睡眠時間を削られている。

 

 実力を高めるためにクラブ加入を決めたが、彼女が居るだけで不思議と活動風景が格式高く見えることだろう。

 

 これが王のカリスマ……

 

 

 

 

 

 

 

「いや~私は入る予定は無かったんだけどね~。

 ただ、トレーナーさんに釣りし過ぎだって怒られちゃって。

 少しでいいから匿って欲しいな~なんて」

 

「どんな事情を持っていようが構いませんよ、セイウンスカイさん! 

 私たちは貴方を歓迎します!」

 

 

 エントリーナンバー4番──セイウンスカイ

 

 怒られそうだから匿ってなどと口では言っているが、口とは裏腹に実は誰よりも努力を重ねるウマ娘。

 

 表面上はのんびりマイペースを装ってはいるが、人知れずに早朝に走り込みをするタイプ。

 

 このクラブにも自ら進んで入部を出している。

 

 生徒同士とはいえ、自己研鑽に励める環境はこの上ないと考えている。

 使えるものは何でも使い、己に活かす。それがセイウンスカイの流儀である。

 

 そして、最近の悩みはスペシャルウィークの食事に付き合い、度々太り気味にさせられていること。

 腹八分目ってなんだっけ? と毎度自問自答している。

 

 

 以上がヴィクトリークラブに入部を希望してくれたメンバー。

 

 バクシンオー含めて計5名。

 

 客観的に見ても癖の強い連中の集まりにしか見えない。

 

 ベルノライトは常識枠かと思わせといて、シューズの話となればシューズキチとなる一面を持っていたりする。

 つまり、ベルノライトも他のメンバーに負けず劣らず、十分癖が強いのである。

 

 サクラバクシンオーはメンバーを見渡し、満足げに頷いた。

 

「素晴らしい布陣です!!」

 

 このメンバーなら上手くやっていける! と彼女は謎の自信を抱いている。

 

 傍から見れば問題児しか集まっていないのだが、残念なことに彼女は正常な目をしていない。頭も目もサクラに支配されている彼女の目には、可能性しか映っていないのだ。

 

 ヴィクトリークラブ

 今はまだ少人数クラブに過ぎない。

 

 だがいずれは、誰もが入部を希望してくれるクラブにしてみせる! 

 

 そんな心意気の下、彼女たちはクラブ活動に励んでいくのであった。

 

 




スペシャルウィーク『あの……私たちもクラブに入った方がいいんでしょうか?』

ライスシャワー『……ライス、ごはん食べることくらいしか取り柄がないよ…?』

オグリキャップ『なら、私たちも結成しよう。
そうだな、土手鍋クラブとかどうだろう?』

笠松トレセン『却下です』




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