地方トレセンを舐めるなよ!   作:鼻毛王

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三十九話 帰還

 

 おいっすぅ、ナイスな姉ちゃんでーす! 

 え? 歳を考えろ? 

 五月蠅い。文句あるやつは坂路十本走ってこい。

 張り倒すぞ、この野郎。

 

 私とマーチはアメリカへの遠征を終え、無事に笠松へと帰還を果たしていた。

 マスコミなどのメディアには一言も告げず、秘密裏に帰還したので空港で出待ちは無かった。

 

 いやはや、静かに出帆した甲斐があった。

 

 マーチが勝利を飾ったレースを思えば、空港でそれこそスターのような歓待を受けていてもおかしくない。

 なにせアメリカでは街を出歩けばサインを求められるほどの著名人と化していたのだ。

 アメリカ出奔の情報が出回れば空港のロビーが埋め尽くされるだろうことは予期できた事態である。

 

 凱旋帰国などすれば間違いなく人波に飲まれる。

 まあ、それはマーチも私も望むところではない。

 

 アメリカでは嫌という程歓声と歓待を受けたので、暫くはお腹いっぱいだ。

 スポットライトを浴びるのは勘弁してほしい。

 

 久方ぶりに踏みしめる笠松の地面。

 懐かさもひとしおである。

 

 帰還を果たしたわけなので早速挨拶回りを と思っていたのだが、私のいない間に見ない顔ぶれが加わっていた。

 

 新入生の入試はたづなが代行しており、誰が入学を果たしているかは当然把握していない。

 

 ただ、笠松に帰って来て理解する。

 ああ……随分と賑やかなことになってやがるなと

 

 

 

 

 

「む? おニャンこポンの存在を検知! 

 これは今すぐにでも愛でに行かなければ! 

 最短経路でチョクシン、チョクシーン!!!」

 

「ちょわっ!!! 学内での疾走は学級委員長として見過ごせませんよ!! 

 バクシン的速度で追いついて見せます!! 

 いざ、バクシン、バクシーン!!」

 

 学園入口にて直ぐにエンカウントを果たしたバクシンオーと新顔のウマ娘。

 校門をくぐった瞬間から騒がしいとか、この学園の治安はどうなっているんだろうか。

 

 おい、治安はどうなってるんだ、治安は! 

 

 遠くからセイウンスカイの驚いた声が響き渡っていたが……

 どうせ、おニャン子レーダーに引っ掛かったのがセイウンスカイとかだったのだろう。

 

 多分、そうだな(大正解)

 のんびり日向ぼっこ中に、猫と勘違いされたに違いない。

 

 

 

 

 

「ふひょぉおお。バクシンオーさんとカルストンライトオさんの組み合わせ、堪りませんな~。

 あの二人に挟まる所を妄想したら涎が止まりません……」

 

 草陰からぴょこんと覗くピンクの髪。

 隠し切れない不審者のオーラ。

 どう考えてもアグネスデジタルですね。

 

 対戦有難うございます。

 

 

 ……いやワレ、入学しとったんか! 

 驚きすぎて、思わず足を止めてしまうくらいには衝撃的であった。

 

 あ、ありのまま今見たことを話すぜ……

 草陰に何やらウマ娘の気配を感じて見れば、超ド級の変態が隠れていた……

 

 さ、催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃ断じてねぇ……

 もっと恐ろしい奴の片鱗を味わったぜ…

 

「デジタル~。今日も隠れて眺めてんの? 

 推し活に励むのもいいけどさ~、さっさとトレーニングにも行くよ!」

 

「あ、ノルンエース先輩。いや~不肖このアグネスデジタル。

 どうもウマ娘ちゃんウォッチングを止めるタイミングを見失ってました」

 

 ずるずるとノルンエースに引きずられていくアグネスデジタル。

 それを見て、何も言えなくなってしまった。

 

 おかしい。

 明らかにおかしい。

 

 サクラバクシンオーとチョクシン少女の組み合わせといい、ノルンエースとアグネスデジタルの組み合わせといい。どうしてこうも相性抜群の奴らが入学しているのだろうか。

 

 類は友を呼ぶというが、幾らなんでも限度があるだろう。

 少しは自重して下さいと叫びたくなる程である。

 

 

 

「週末空いているなら良かった一緒に旅に出ないかい? 

 行先は決めてないけど、自由気ままな旅も刺激になると思うんだ」

 

「ふん、余の予定は常に満たされておる。

 トレーニング以外に(うつつ)を抜かす暇など——」

 

「……そうか。

 なら一人旅としゃれこむとするさ……」

 

「……べ、別に行かぬとは一言も言っておらぬわ。

 仕方がないから、その日は特別に空けてやるとしよう」

 

 オルフェーヴルともう一人の組み合わせは何と言うか、想定内ではある。

 一応オルフェーヴルの方が年上の筈なんだが、相手を気遣いすぎて不遜な態度が崩れかけている。

 

 きっとウマソウルに強く刻まれた本能でもあるのだろう。

 まあ、人によっては強く出れない人も居るだろうし、仕方ないね。

 

 他にも学内ステージで一人ライブを敢行するウマ娘や、裏の人格がひょっこり顔を出して併走相手に襲い掛かっているウマ娘。

 小悪魔スマイルでトレーナーを篭絡しているウマ娘など、盛り沢山のメンツであった。

 

 ……笠松って、こんなカオスな場所だったのだろうか? 

 数か月空けた程度で騒がしくなりすぎである。

 

 学園の雰囲気が、以前とは様変わりしていた。

 

 ……一体いつから笠松トレセンは個性豊かな奴らの集団になってしまったのだろうか。

 ひょっとしたら、中央より騒々しいメンツが集まっているのじゃなかろうか。

 

 お清楚組は中央に。

 

 クセ強は笠松に。

 

 そんな振り分けがされているんじゃないかと勘ぐってしまいそうだ。

 

 まあ、個性に富んだ奴ほど才能もぴか一だから文句も言えないが。

 素直に喜んだらいいのか判断に迷うところである。

 

 マーチも知り合いに帰還の挨拶をしに行っっていた。

 

 そして、テンションの爆発したオグリキャップに速攻でタックルを喰らっていた。

「ぐえええ!」とか汚い叫び声が聴こえた気がするが、気のせいだろう。

 花の乙女がこんな汚い奇声を上げる筈がない。

 

 マーチの周りにはいつ間にか大勢の生徒が集まり、周囲を取り囲んでいた。

 これが人気のなせる技か…… と感心してしまう。

 

 わいわいがやがやとお祭り騒ぎと化している。

 皆、アメリカでの遠征のことを聞きたいのだろう。

 

 世界の空気はどうだったかとか、お土産寄越せとか多方面から声を掛けられていた。

 

「待て、私は聖徳太子じゃないから一斉に言われても聞き分けられんぞ」

 

 とかマーチが勢いに押されていたが、愛されている証拠である。

 

 そんな光景を見れば、羨ましさも芽生えてくる。

 

 私もさっさと、沖野やたづなの元へと赴くとしよう。

 

 

 

 

 

「二人ともただいま」

 

「ええ、首を長くしてお待ちしてましたよ♪」

 

「おう、お前さんたちの活躍はテレビで見てたぞ。

 なんちゅうか……加減を知らないのかって感じだったがな」

 

 二人からの暖かい出迎え。

 

 それを見て、ああやっと笠松に帰ってきたのだと改めて実感するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでさ、新入生癖強い子多くない???」

 

「ああ、それなぁ。

 アイツら育て甲斐はありそうなのに、どいつもこいつも尖ってるんだよな~」

 

「それは……何も返す言葉がありませんね。入試を担当した私から見ても優秀なのは確かなのですけどね……

 何故こうも一癖もあるウマ娘が集まるのでしょうか?」

 

 三人して頭を悩ませる。

 資質自体は高いので受け入れるには受け入れるのだが。

 

 如何せん濃い。

 濃すぎる。

 

「……まあ、とは言っても才能の塊なのは変わりないけどな。

 現にオレも一人スカウトできたことだし」

 

「……まあ、それを言ってしまえば、

 私も追加でスカウトしたので何も言えませんね……」

 

 

 

「え゛っ?? 

 二人とも追加で受け持ったの???」

 

 

 




あとがき

沖野の追加メンバー
砂の隼——スマートファルコン

沖野トレーナー、芝だけじゃなくダートにも進出開始。
少しは自重しろおおお!

たづなの追加メンバー
黄金の旅路——ステイゴールド

メンバーが黄金一族なのは果たして偶然か??
狙って集めているとしか思えない。

川村トレーナー
そばかすが特徴の金髪女性トレーナー。
担当はノルンエース。
それとアグネスデジタル。
学園きっての問題児を抱えていることに、頭を抱えている。

ちょっと新顔を増やしすぎた感が否めない……
どうしよう……




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