地方トレセンを舐めるなよ!   作:鼻毛王

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四十二話 感謝祭二日目

 

感謝祭二日目。

この日は初日とは180°趣旨が変わって、学園生徒たちも気合を入れている。

頭に「必勝」と書かれた鉢巻を巻いて参戦する生徒たち。負けん気に溢れた生徒たちしか見受けられない。

 

学内対抗レース。

チャンピオンズミーティング。

 

勝者には一年分の高級人参が贈呈されるとあって皆のモチベーションも高い。

 

「さあさあ、此度のレースの勝者に与えられる高級人参

今回贈呈されるのは雪の中で甘みを増した、青森名物 雪人参ですよ♪」

 

たづなが生徒たちの前で贈呈予定の人参を一本取り出した。

 

「重量感もあって表面は艶やか。

とっても美味しそうですね♪

栄えある第一回目のチャンピオンズミーティングでは、1年分の人参が贈呈されます。

みなさ~ん!!気合はバッチリですか~!!!」

 

「「うおおおお!!!」」

 

ちなみにこの人参。

プレミアム価格が付いており、一本あたり三千円はする。

最高級人参と言っても差し支えない。

 

それが一年分ともなれば×365、単純計算で百万を超える。

しかも勝者は複数人生まれるわけで、合計金額は途方もない額である。

 

第一回目ともあって優勝賞品はかなり奮発している。

最近羽振りがいいのもあるが、学園肝いりのレースというのもあながち間違いではないのである。

 

スペシャルウィークはふんすふんすっと気合十分であり、ライバルたちを射殺さん目で睨みつけている。

普通に怖い。

「La victoire est à moi!(調子乗んな!)」

がいつ飛び出るのかハラハラである。

 

ライスシャワーは目から蒼い炎を迸らせ、セイウンスカイも目がマジだ。

 

やはりウマ娘。

好物である人参が景品ともなれば、譲れないものがあるのだろう。

皆一様に気合を入れて臨んでいた。

 

さて、開幕の言葉も早々に始まった催し。

午前中は、本格化前の生徒たちによるレースが主体となる。

 

本格化前とは言え、此処に集うのは飛ぶ鳥を落とす勢いの、話題沸騰中の笠松学園の生徒たちである。

天下の中央を下しつつある連中の集まりであり、そこらのレースなど比較にならない。

地方の学内レースとは思えないレベルで生徒たちが鎬を削る。

 

一部の生徒は本格化前にも関わらず領域を使用しており、レベルの高さを物語っている。

 

 

「バクシンバクシーン!!

これが学級委員長の模範的勝利です!!

短距離において私に勝てる者などいませんよ~!!」

 

「……敗けた。

まさかチョクシンの力が足りなかったのか。

今一度鍛えなおさねば」

 

「しゃ~い!ファルコ!

大 ☆ 勝 ☆ 利!!

この調子で決勝も貰っちゃうぞ!!」

 

勝利に一喜一憂し、喜びと無情を露わにする生徒たち。

学年混合のトーナメントマッチが繰り広げられており、一年生だろうと勝利を掴んでいる者は掴んでいる。

沖野の第二の担当バであるスマートファルコンや、新たにたづなの教え子となったステイゴールド。

彼女たちも順調に勝ち星を上げている。

 

強い者が勝ち上がり、優勝賞品と栄誉を勝ち取る。

弱肉強食の定理はこのレースにおいても適用されており、学年の壁などなんら問題にもならない。

 

高級人参は強者のみに与えられる。

敗者は土を舐めるしかない。

 

感謝祭二日目として来場している一般人たちも、あまりの白熱したレースに歓声をあげて楽しんでいる。

 

「おっしゃ~!!いいぞ~!

そのままゴールド一族の力を魅せ付けろ~!!」

 

長髪の葦毛のウマ娘もメガホン片手に勝手に盛り上がっている。

というか、実況席にまで乗り込んできている。

本当、なんでこいつは此処に居るのだろうか。

 

あ、選手の迷惑になるからとたづなに連行されていった。

 

う~む。

「裏でお話しましょうか♪」と言われていたが、もしや先行スカウトしていたりするのだろうか。

夢のドリームチームを作る布石とかだったりして。

 

一般人の目からみても分かるほどのデッドヒート。

その様相に大歓声が上がる。

 

特にスペシャルウィークとオルフェーヴルとの最後の競り合いなどは見ていて手に汗を握る展開であった。

 

領域の深化にまで至ってはいないものの、お互いの領域を削り合う二人。

レース関係者や目が肥えたファンには確かにその光景が目に刻み込まれたことだろう。

本格化前だとか信じられないといった声が口々に呟かれていた。

末恐ろしいにも程がある。

 

デビュー前でこれだけの完成度とか、正直頭がおかしいとしか思えない。

最後の接戦を制したのはオルフェーヴルであったが、クビ差での勝利であり、殆ど同着に近い形であった。

 

 

午前の部が終われば、次は午後の部へと移り変わる。

お昼休憩を挟み、行われるは本格化を迎えた生徒たちによるレースである。

 

彼女たちのレースは、午前の争いよりも一段上を行く。

重賞さながらの高水準なレースをさも当たり前のように繰り広げる生徒たち。

 

彼女たちのレース内容であれば、お金を支払って観るのが妥当なレベルとなる。

 

テレビ中継すれば視聴率は間違いなく取れる。

とういうか、岐阜のテレビ局が本格的な機材を持ち込んで放映していた。

数字が取れると踏んできたのだろうが、大正解である。

 

アメリカより凱旋を果たした英雄フジマサマーチ。

国内のクラシックGⅠを焼け野原にしつつあるオグリキャップ。

 

それに加えて、トゥインクルシリーズの重賞を破竹の勢いで勝ち上がっている特待生たち。

 

領域に片足突っ込んでいる者も午前とは比にならない程多い。

 

彼女たちのレースは熾烈を極め、観客たちは更なる興奮に包まれた。

 

「……ちょ、ちょっと。

この学園レベル高すぎないかしら??」

 

「……目指す道が高いのは燃えるけど、大分ハードな道のりになりそうだ。

アイ、これは悠長に鍛えてちゃ一番なんて夢のまた夢かもしれない。

……一度基礎を見つめ直してでも、トレーニング内容を見直そう」

 

「そ、そそそ、そうね。

わ、私が一番になるんだから!!」

 

何故か少女と青年が冷や汗を垂らしていたが、これが今の笠松の最前線を張る連中である。

もう草すら生えない。

 

“彼女”とたづなが授業を張り切り過ぎた結果であった。

少しは自重と言う言葉を覚えるべきかもしれない。

 

おたくの学園生、成長率おかしいですよ???

 

領域の深化を果たしているマーチとオグリキャップの二人は難無く勝利を勝ち取る。

 

順当な結果だ。

当然と言えば当然ではあるが。

 

「これが雪人参で知られる高級人参か……

色艶があって実に美味しそうだ。

今夜まで持てばいいのだが……」

 

「……おい、オグリキャップ。

少しは我慢を覚えろ……」

 

「ひゃっほー!

あ~しも高級人参ゲットだぜ~!!」

 

午後の部で勝利を飾った者たち。

彼女たちは満足げな様子で景品たる高級人参を受け取っていた。

 

花より団子。色気より食い気。

早速食しているオグリキャップを除き、手のひらに乗る高級人参の輝きに見惚れていた。

 

お値段一本三千円。

 

ウマ娘世界において品種改良を重ね、糖度や色艶など比べ物にならない程美味しくなった人参。

その美味しさは、食べれば昇天してしまうと謳われる程に美味である。

節度を守って食べれば、一日一本は食べられる。

身命を賭して、レースに勝った甲斐があったというものである。

 

最新鋭の環境に加えて、優秀な講師と新進気鋭のトレーナーに囲まれている笠松学園。

そこで育った生徒たちの質は高級人参にも引けを取らず、非常に質が高い。

 

もう地方だからと誰にも笑い飛ばすことができないレベルである。

 

彼らのレースを見物した観客たちも終わってみれば大満足の結果であり、新規の推しを見つけたファンも居たことだろう。

 

資金と労力を費やした甲斐もあり、第一回目としてはまさに上々の感謝祭を迎えることができたのであった。

 

 




この話にて一旦休止します。
ストックが溜まり次第、また連載していきます。
ここまで閲覧して頂き、有難う御座いました。

少し立て込んでいますので、前話のコメントは後日返信していきます。

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