地方トレセンを舐めるなよ!   作:鼻毛王

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お久しぶりです。
コメント、評価して下さってる方、有難うございます。
特にコメントの方は、毎度楽しみに拝見させてもらってます。

執筆意欲にも繋がりますので、お気軽に書いて頂けると嬉しいです。

あと先に宣言しておきます。
更新速度、落ちます。
こればかりは時間が取れない都合上、ご承知頂けますと幸いです。



四十三話 新入生インタビュー

 

 本記事は、月刊トゥインクル編集部が先日行った独占取材の記録である。

 対象となったのは、この春新たに笠松学園へと入学してきた新入生たち。

 

 近年、地方トレセンの一つに過ぎなかった笠松学園は、急速にその存在感を高めている。

 中央の有力トレーナーすら注目するほどの実績を挙げ、国内のみならず海外関係者からも関心を寄せられる学園へと変貌を遂げた。

 フジマサマーチやオグリキャップたちの背中を追うように、多くの有望株が笠松へと集まり始めている。

 果たして、彼女たちは何を想いこの学園を選んだのか。

 本記事ではその生の声をお届けする。

 

 

 

 

 

 

 ―ドバイを夢見る少女―

 

「え~? 

 なんで笠松に入学したのかって?」

 

 そう言って小さく笑ったのは、今年の新入生の中でも特に注目度の高いウマ娘。

 

 小悪魔的な笑みを浮かべながら、彼女は軽やかに答えた。

 

「実はね~。最初は笠松に入るつもりはなかったんだ~。

 中央への入学を視野に入れてたんだよ♪ 

 合格も貰ってたしね~」

 

 この発言からも分かる通り、彼女は中央トレセンへの進学資格を有していた。

 だが、その選択を彼女は取らなかった。

 

「王道の道を進むよりも、多少は曲がりくねった道を進んだ方が面白いでしょ~

 ドバイでキラキラするなら“普通”の道のりからは外れないとねっ♪」

 

 軽い口調の裏には、確かな覚悟が見える。

 彼女は三姉妹の末っ子であり、姉たちは既に中央へと進学している。

 

 当然ながら、家族は笠松への進学に強く反対したという。

 だが彼女は理解していた。

 海外で勝つことの難しさを。

 

 日本のウマ娘が海外レースで勝利する例は、決して多くない。

 挑戦する者の大半は、結果を残せぬまま帰国している。極一部の例外を除き、日本出身ウマ娘の戦績は芳しくない。

 

 なにより、歴史がそれを証明していた。

 

 

「私はラッキーだったんだ~。

 中央へ進学を決める前に運よくスカウトさんが来てね。

 夢を叶えるまでの指針まで教えてくれたんだから♪」

 

 彼女は見た目に反して、頭の回転が速い。生まれつき要領も良い。

 そして自分の能力を冷静に分析できるタイプである。

 

 普通の道では夢に届かない。

 そう判断したからこそ、彼女はリスクを承知で地方を選んだ。姉たちの反対を押し切り、笠松へ飛び込んだそうだ。

 

 本能が手を取れと、直感的に叫んでいたとも言っていたが。

 まあ、今となっては後の祭り。

 当時の選択が正しかったことを、世間が証明してくれている。

 

「実走指導の先生はちょっと厳しいけどぉ、

 でも成長は実感できてるんだよ~♪」

 

 笠松学園のカリキュラムは、中央と比べても特異だと云われている。

 伝聞でしかないが、心肺機能を極限まで高める高密度トレーニングや、卓越した指導者による技術指導。

 噓か誠か、領域なるものの座学も学ぶという。

 とても新入生向けとは思えない内容だ。

 それを平然とやってのける、笠松学園のカリキュラム。

 

 そこに痺れる、憧れる!! 

 

 放課後にトレーナーから提示されるメニューもこなせば、一日で疲労困憊となる。

 

「ベッドにダイブしたら、そのまま朝って日もあるよ~」

 

 だが彼女は、それを苦にしていない。

 

 今日よりも明日。

 明日よりも明後日 といった具合に、成長を実感できる日々を彼女は気に入っているからだ。

 

 確実に前へ進んでいるという実感が彼女を突き動かしている。

 

 施設面でも笠松は充実しており、酸素カプセルや最新のトレーニング機器まで揃っている環境は、素晴らしいの一言に尽きる。

 

 何より、競い合う相手に困ることが無い。

 上級生たちは、一筋縄ではいかない実力者たちが揃っている。

 

 併走相手には事欠かない。

 中央では、ここまでの成長を実感できなかったかもしれない。

 

 ドバイのレースで勝利を飾る。

 その夢を叶えるための最短経路が舗装されており、至れり尽くせりの環境である。

 

 

「え? 

 もしお姉ちゃんたちと競い合うことになったら?」

 

 そう尋ねると、ヴィブロスは一瞬考え込んだ後、にやりと笑った。

 

「その時は──

 

 

 

 

 夢のために踏み台になってもらおっかな~♪」

 

 

 

 ……。

 ……。

 あの? 

 本当にヴィブロスさんですか?? 

 

 姉たちから溺愛されていた三姉妹の末っ子。

 その愛らしいイメージはどこへ行ったのか。

 

 おっかない思考へと変貌を果たしたヴィブロス。

 小悪魔という前評判から小の字が取れ、悪魔的思想に染まっている気がしてならない。

 

 前情報との食い違いに、インタビュアーはそう疑問を呈するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ―トップウマドル候補―

 

 

「笠松に入学した理由? 

 う~ん、ファルコが此処を目指した理由はマーチさんに憧れて、かな?」

 

 スマートファルコン。

 将来トップウマドルを目指すと公言する新入生だ。

 彼女はダート専門のウマ娘。

 

 ジュニア期のGⅠレースを観戦した際、フジマサマーチの走りに衝撃を受けたという。

 

「逃げの脚質も似てるし、すぐにファンになっちゃった☆」

 と発言していた。

 目を輝かせながら語る様子から、本気で憧れていることが伝わってくる。

 

「いつかファルコが有名になったら、逃げ切りシスターズを結成したいな~」

 

 逃げ切りシスターズ。

 その構想について聞くと、彼女は嬉しそうに続けた。

 

「その時はマーチさんにも入ってもらうよ☆

 もちろんセンターはマーチさんに譲るけど!」

 

 フジマサマーチ。

 知らぬ間にアイドルユニットのセンター候補へ内定を果たす。

 

 本人がこの話を聞いたらどんな反応をするのか。

 編集部としても非常に気になるところだ。

 

 ちなみにユニットが実現した場合、独占取材を約束してもらった。

 その日が来ることを、心から期待している。

 

 話題を変え、学園の上級生についての印象を尋ねる。

 

「マーチさんを天辺として、実力の高い人が揃ってるよね☆」

 

 彼女の言う通り、笠松の上位層は非常に強い。

 近年ではGⅡ・GⅢに進出して勝利を収めるウマ娘も増え、GⅠレースへ挑戦する者も現れている。

 

「十芒星だっけ? 

 あの人たちは別格だよね」

 

 笠松のトップ層は、彼女が言うように実力の桁が異なる。

 地方とは思えない、破格の強さを誇るウマ娘たちだ。

 

 だが彼女は臆していない。

 

「この学園は歴戦の猛者みたいなウマ娘ばっかりだけど、ファルコだって負けられないんだから! 泥臭く喰らい付いてだって、ファルコがこの学園で一番輝いてみせるよ☆」

 

 今はまだ無名であるが、将来は異名を獲得していそうな気配を漂わせる。

 その眼からは炎が迸り、情熱が燃え滾っている。

 

 彼女のトレーナーにはエリートと名高い沖野トレーナーが就任している。

 その才能に期待を寄せているのは間違いない。

 

「ファルコがデビューしたらまた来てね~☆」

 

 その際は是非にと返事を返した。

 編集部一同、彼女の活躍を楽しみにしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―二つの人格を持つ少女―

 

「私が、此処へ来た理由ですか……?」

 

 最後に質問をした新入生。

 伏し目がちに視線を泳がせ、彼女は語り始める。

 

「私はそのぉ……少し特殊な事情を抱えてまして……」

 

 彼女──スティルインラブは、二重人格を抱えるウマ娘だという。

 レースになると、もう一人の人格が現れるのだとか。

 

「レースになると抑えが効かなくなってしまうんです……」

 

 そのため長年悩んでいたらしい。

 だが、ある日スカウトと出会う。

 その人物は彼女の話を真剣に聞いた上で、こう言った。

 

「無理に抑え込む必要なんてない

 レースは結果が全て。強い者が歓迎される」

 

 その言葉に、彼女は救われた。

 さらに併走指導を受けた結果──

 

「第二の“ワタシ”も手も足も出ませんでした」

 

 完膚なきまでの敗北。

 だがそれは衝撃と同時に、転機でもあった。 

 

 あの経験を経たお陰で、今では内なる存在ともある程度意思疎通ができるようになったという。

 内なる存在も、少しは自重してくれるようになったそうだ。

 

 その時、ふと質問を投げかける。

 

「ところで、今ターフで併走している方たちをどう思いますか?」

 

「彼女たちですか?」

 

 スティルインラブがターフへと視線を移す。

 

 すると、彼女の瞳が急に狂気に支配されたかのように変質していく。

 先ほどまでの控えめな少女は消え、そこにいたのは──獲物を狙う肉食獣。

 

 まるで人が入れ替わるような様子に、生唾を飲まずにいられない。

 

「ああ……アハハ! 

 身体がレースを! 闘争を求めてるノ! 

 コウシチャいられない!」

 

 次の瞬間。彼女はターフへと駆け出していた。

 止める暇などない。

 その様子を、ただ呆然と眺めることしかできなかった。

 

 ……。

 ……。

 いや。

 全然コントロールできてないやん。

 

 少しは己をコントロールできるのではなかったのか。

 普通に乗っ取られとるやんけ。

 

 

 

 

 

 

 夢のためなら姉すら踏み台にする小悪魔。

 トップウマドルを目指すアイドル志望。

 二重人格の狂戦士。

 

 笠松に入学を果たした将来有望な新入生。

 この個性豊かな新入生たちを、学園はどのように導いていくのか。

 

 その手腕に注目が集まる。

 

 




急に乱入してきたスティルさん。
たまたま併走していたライスとネイチャはびっくりしながらも、普通にボコボコにしている。

ライス「…きゅ、急に割り込んで来るからびっくりしちゃった」

ネイチャ「いや~噂で二重人格の娘がいるって聞いてたけど凄いね~。良い練習相手にはなったけど」

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