現在は電波が通りにくい場所にいるので、後程落ち着いた場所でまとめて返信させていただきますm(__)m
ベルノライトは――実は裕福な家庭の出身である。
全国に支店を構える大手スポーツ用品メーカー
『SPORTS LIGHT』
その社長の娘であり、ご令嬢といっても差し支えない立場である。
庶民とは数段階かけ離れた生活を送れるほどの富裕層であり、別荘も幾つか有しているほどである。
この事実を知ったらフジマサマーチや他の面々は卒倒する。
仲の良い面々でも、多少の距離感が生じてしまうかもしれない。
少なくとも、ベルノライト“さん” とさん付けされるのは間違いない。
「おお!ついにベルノも地方レース初勝利か!
これは勝利を祝してパーティでも開かないとだな!」
「まあ、お母さんも誇りに思うわ!
貴方ならやればできるって昔から信じてたもの!」
「……い、いやぁ。そこまで褒めなくても。
あ、絶対にパーティとか開かないでね!
なんか、恥ずかしいから!」
地方レースで見事勝利を収めたベルノ。
その報告を受けた彼女の父母は、余りの興奮に愛娘を褒め称えた。
目に入れても痛くないほどに溺愛しており、娘のためならばなんだってする。
そんな両親であり、過保護気味と云われても否定できない。
事実、レースでの初勝利を耳にしてからは嬉しさのあまりに、中央から笠松へとスポンサー契約を移し替えてしまうほどであった。
普通にやばい。
突如スポンサー契約を断たれるという事態に陥った中央は、頭を抱えていたほどである。
そんな親馬鹿を両親に持つベルノライト。
オグリキャップやフジマサマーチと一緒にいる姿が目立つが、実は交友関係もかなり広い。
「いや~ベルノの指導は分かりやすくて助かりますな~」
「そうだね~。アタシもいつも参考にさせてもらうことも多いしね~。
ネイチャさんも大助かりですよ」
「いやいや、困った時はお互い様ですから。
私もスカイさんとネイチャさんから、色々学ばせてもらってるし」
ベルノライトは頭脳派でもあり、授業で習った内容をノートに丁寧にまとめ、分かりやすく整理している。
メモしたノートと照らし合わせながら実際に身体を動かし、反復することで技術の習得に努めている。
そのお陰か、技術の習得速度も人一倍はやい。
笠松では上から数えた方が早いほど技巧派としても有名であり、トリックスターの異名をもつセイウンスカイや、デバフ技術を得意とするナイスネイチャとも気が合った。
三人であれこれ修正案を考えたり、議論を重ねたりと、気の置けない仲へと発展している。
「そういえば、ベルノはこの前先生から質問されてたよね?
一体何聞かれてたの~?」
「いや、私にも何がなんだか分からなくて……
「切れ者取得してない?」とか突然言われちゃって、なんて答えたらいいのか分からなかったよ」
実はたづなや主人公にも目を付けられているベルノライト。
吞み込みの早さで云えば学年随一。
切れ者持ってんだろお前ええ!!と詰められるほどに優秀である。
これで身体能力が伴っていれば、間違いなくGⅠすら奪えていた逸材であった。
それを差し引いても、指導者側としてみても優秀な才能を秘めている。
人に教える才能が異様に高く、明らかにトレーナー向きの才能を有している。
彼女が望めば、卒業後は笠松のトレーナーへの道が用意される。
進路は本人の自由だが、笠松側はわりと本気でベルノライトをスカウトしたいと考えていた。
「それじゃあ、いつものお返しも兼ねて今度はセイちゃんが指導してあげましょ~」
「あ、それならアタシも攪乱の技術なら教えよっか。
この前、コツを教えて欲しいって言ってたし」
「二人ともありがとう。
じゃあお言葉に甘えて、ご指導お願いします」
三人集まれば文殊の知恵。
笠松でも技巧派系のウマ娘が互いに切磋琢磨していく。
その効果は凄まじく、ことレース技術に限ればフジマサマーチにも引けを取らないほど三人は成長を遂げるかもしれない。
フジマサマーチやオグリキャップが日の目を浴びる中、木陰でひっそりと成長しているグループも存在していた。
◇
「ふう~。今日も充実した一日を過ごせた。
順調に強くなってる自信もあるし、いつかオグリちゃんと並び立てる日が来るといいなぁ」
ベルノライトはこれまでを振り返った。
北原の指導。
ヴィクトリークラブでの練習。
仲の良い二人組との秘密の特訓。
笠松に来てからというもの、毎日充実した生活を送れている。
リアルが充実してきた証だ。
世間ではこの状態を、リア充という。
「笠松に入学できて、よかったなぁ~。」
笠松に入学できた幸運に感謝するベルノライト。
一学年三百人と、中央に比べたら少数精鋭の笠松トレセン学園。
トレーナーの人数も充分確保されており、皆がトレーナーからの指導を享受できるという恵まれた環境にいる。
トレーニング器具も豊富で、怪我に対するアフターケアまで完備されており、文句のつけようがない。
時折、授業にも関わらず頭のおかしいトレーニングを強要されるという欠点もあるが、それさえ目を瞑れば天国といっても差し支えない。
まあ、着実にこなしていれば自然と実力が伸びているので、表立って文句は言えないが。
恵まれているなぁ としみじみと感じるベルノライト。
ベッドに潜り込む彼女の表情は、まさに満ち足りていた。
――深夜――
その日の夜に限って、眠ったはいいものの、突如として目を覚ましてしまう。
「……ちょっと水分取り過ぎちゃったかも」
パジャマ姿で寮内のトイレまで向かうベルノライト。
静まり返る夜の廊下。
その道中――
のっし のっし と歩いているフジマサマーチの巨大なぬいぐるみを見掛けてしまう。
ベルノライトは何度も目をこすって確認をしたが、気のせいだと断定できなかった。
最近、トレセン内でまことしやかに囁かれている怪談がある。
オグリキャップが抱き着いて寝ているぬいぐるみ
――フジマサマーチのどきゅーとぬいぐるみが、夜中に寮内を徘徊している。
そんな噂がトレセン内に流れていた。
冗談だと思っていたが、その噂が事実であったことをこの眼でばっちりと確認してしまう。
物を大切に扱い続けると付喪神が宿るという。
ウマソウルが現実として存在するこの世界。
オグリキャップが毎日大切に扱っている“どきゅーと”と呼ばれる巨大ぬいぐるみに魂が宿ったとしても、なんら不思議はない。
腰を抜かしながらも、なんとか部屋まで戻って来れたベルノライト。
発見されずに無事に戻ってこれたのは奇跡に近い。
「もぉ~、オグリちゃあああん!!
勘弁してよおおおお!」
完全に意思を持って歩いていた巨大ぬいぐるみ。
誰のせいで意思が宿っているのかは、言うまでもない。
その夜。
ベルノライトは布団を頭から被り、ウマ耳を閉じて全力で眠ろうとした。
怖すぎたので。