各地の地方トレセンが共同で強化合宿を行う。
その噂は瞬く間に各地の地方トレセンにまで拡がり、波紋を呼ぶことになった。
合宿所として選ばれたのは今最も勢いのある笠松トレセンであり、設備の充実度、駐在職員の質、共に国内最高峰を誇る場所である。
笠松側の正式な許諾が降りると、各地方トレセンではすぐさま生徒の選抜が始まった。
来たる日に向けて各校とも粛々と準備を整えていた。
生徒も送り込むが、その生徒の相方であるトレーナーたちも同様に、出向という形で派遣される予定である。
要は、トレーナーたちも向こうで学んで来いというわけだ。
笠松は今や歴代でもトップクラスの指導者が集まる場所である。
育成の名手として言わずと知れた沖野トレーナーに、現役時代はトキノミノルとしてレース界隈を賑わせていた女傑。
最近、急速に才能を開花させている北原に柴崎といった若手トレーナー。
その指導力は折り紙付きである。
そしてなにより――
そんな面々を率いるあるウマ娘が、笠松にはいる。
彼女たちから直接指導を賜れる。
地方トレセンでくすぶっている連中からしてみれば、これほど幸運なことはない。
更に言えば、向こうにいけば格上の相手とも併走できる。
向上心あるウマ娘たちにとっては、是が非でも切符を掴みたいと思うはずだ。
当然ながら、各地のトレセン学園では選抜を巡って熾烈なアピール合戦が繰り広げられていた。
この機会を逃すまいと野心溢れるウマ娘や、表に出ていないだけで隠れざる才覚を持ったウマ娘たちが、選抜対象に選ばれようとこぞって選抜入りを目指している。
全国に十五箇所点在する地方トレセン。
そこから選び抜かれた精鋭たちがが、笠松へとやってくる。
その中にはもしかすると、お稲荷さんが好きそうな江戸っ子娘が混じっていたり、船橋への地元愛が強いウマ娘が混じってることが、あるのかもしれない。
なににせよ、全国の地方トレセンは生徒の選抜と事前準備に大忙しを迎えているのであった。
◇
受け入れる側へと回った笠松トレセンではあるが、此方も当然ながらある程度の事前準備が必要となる。
生徒やトレーナーたちの宿泊場所の確保は勿論として、合宿期間中の生徒を担当する教師を臨時に雇入れたり、食堂の食材の仕入れ量を増やしたりと、割とやることがあったりする。
そして、もう一つ。
受け入れにあたって、笠松側からも旗頭となる生徒を選出しようという話になった。
各地からトレセンを代表するウマ娘が集まるのであれば、笠松の方でも幾人かは顔役を立てるべきではないか。
と話が持ち上がったのである。
ちなみに。
フジマサマーチ。
オグリキャップ。
この二人は、ほぼ強制的に代表入りが決まっている。
海外でも目覚ましい活躍をしているマーチ。
国内で無類の強さを誇っているオグリキャップ。
彼女たちは先ず間違いなく笠松が誇るトップ層である。
今の笠松を象徴する存在であり、流石に外すことはできなかった。
既に二人からも承諾を受け取っており、代わりとしてVR機器の優先使用権や食堂の特別メニュー無料券を手渡している。
マーチは「そんなのやってられるか!」と投げ出そうとしたが、彼女のトレーナーが説得に説得を重ね、なんとか丸め込むことに成功していた。
チョロい。
マーチの人の良さに漬け込んだ悪い大人がどこかに居たようである。
そして。
笠松が代表に選ぶ三人目として、新たに白羽の矢が立った人物がいる。
オから始まってルで終わる、金ぴかの王冠が特徴のウマ娘。
オルフェーヴル
次代のスター候補としてロックオンされており、是が非でも旗印として表に立ってもらいたいと、笠松側は考えていた。
だが、気性難の筆頭格と云われるだけあって、説得には苦労を要した。
「どうして余が旗印として愚民どもを率いねばならぬ??却下だ」
の一言で一蹴される。
傲岸不遜、ここに極まりといった感じである。
このままでは説得が失敗に終わる。
そう思われた時、助け舟を出したのはまたもフジマサマーチのトレーナーであった。
「……もし引き受けてくれたら高級お茶漬けセットを贈呈するんだけどな~」
チラッ。
チラッ。
「……仕方がない、引き受けてやろう。
余がリーダーに立つのだ。大船に乗った気でいるがよい」
「クソチョロ」
といった感じで収拾がついたのである。
最終的には、彼女の好物を数セット用意するすることで決着がついた。
やはり、モノで釣るのが一番早い。
オルフェーヴルの好物がお茶漬けだと知っていれば、大抵のお願いは成功するだろう。
なんにせよ、笠松側からの代表ウマ娘はこれにて定まった。
フジマサマーチ。
オグリキャップ。
オルフェーヴル。
彼女たちには、各地から集まったウマ娘を率いるトップリーダーとしての役割が期待される。
雑務の多くは学園職員が引き受けるつもりではあるが、生徒同士の方が気兼ねなく相談できる場面もあるだろう。
そうした際の相談役としても、彼女たちは重要な存在となる。
期待に胸を膨らませた生徒たちを、笠松のトップ勢が出迎えてくれる。
これほどのメンツであれば、此方にやってくる連中も文句をつけないに違いない。
海外では知らぬ者なしと言わしめるほど桁違いな戦績を引っ提げているフジマサマーチ。
中央勢を蹂躙して火の海にしているオグリキャップ。
次代のスター候補生として頭角を見せ始めているオルフェーヴル。
この三人を前にした時。
他の地方から来た生徒が盛大に恐縮する事態が起きることになるのだが、それはまた別のお話。
書き溜めが無くなったので、一旦ストップします。
新生活でコメント返信する余裕がないほど忙しいので、ちょっと時間置かせてもらいます。