聖剣伝説3 TRAILS of MANA   作:モティ

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第十話「定める心」

 

 

「デュランさん!」

 

 甲板の端っこでまとまっていたデュランたちに、かかる声がありました。

 

「サイ! 無事だったんだな!」

 

 ひとりの男が人の波を抜け出して近づいてきます。

 

 それはデュランがジャドを脱出する手引きをしてくれた男ではありませんか!

 

「あなたがウェンデルに伝えてくれたおかげで助かりました。本当に、ありがとうございます。」

 

「秘密の抜け穴まで教えてくれた、あんたのおかげさ」

 

「デュランしゃん、このひとだーれ?」

 

 シャルロットの疑問に、デュランは最初にジャドを脱出した時の経緯を話しました。

 

「ほへー、じゃあ、あんたしゃんがいなければ、フェアリーしゃんが、しょーめつしていたかもしれんでちね。あんたしゃん、せかいのきゅーせーしゅになるかもでちよ!」

 

「救世主……?」

 

 シャルロットの話に、サイが戸惑います。

 

 デュランが苦笑しながら手を振りました。

 

「いいんだ。こっちの話さ。それより、あんたたちはマイアについたらどうするんだ?」

 

「ひとまずウェンデルの方々が差配をしてくれるそうです。既に、マイアにも連絡を飛ばしたと言っていました」

 

「こんな大人数、本当に受け入れてくれるのか?」

 

「運が良ければ、倉庫や空き家を使わせてもらえるかもしれないと言っていました」

 

「運が悪ければ?」

 

「野宿ですね」

 

「まぁ、そうなっても冬じゃないんだ、なんとかはなりそうだな」

 

「ええ。それから食い扶持を稼げるように支援をしてくださるようです。当面はジャドから来た者でまとまって、ウェンデルの方々にマイアと調整をしてもらう予定です」

 

 流石はウェンデル、手際が良い、とデュランたちは感心します。

 

 心なしか、シャルロットも誇らしげです。

 

「デュランさんたちは、これからどうするんです?」

 

「オレたちはフォルセナ行きだ」

 

「では、黄金の街道ですね。気を付けてください、最近は何やらきな臭い噂が流れてるようですから……戦争が近いかもしれない、とか」

 

 サイの言葉に、アンジェラに緊張感が走ります。

 

 それから、いくらかのやり取りをしてサイは家族の元に戻っていきました。

 

「戦争か……やっぱり、アルテナが……」

 

 アンジェラの不安そうな声に、デュランも難しい顔です。

 

「アルテナの戦争を止めるためにも、一刻も早くマナの聖域に行きましょう」

 

 フェアリーが姿を現して、デュランたちは力強く頷き合いました。

 

 さて、出航した次の日の昼頃。

 

「ねぇ、ウィル・オ・ウィスプ、魔法を教えて欲しいんだけど」

 

 甲板の隅で素振りをしていたデュランに、アンジェラが声をかけました。

 

 シャルロットも一緒です。

 

 デュランが手を止めてると、ウィル・オ・ウィスプがその体からふわりと現れます。

 

「はいは~い、フェアリーさんから聞いてるッスよ! ふたりとも、逸材なんですって?」

 

「いや~それほどでもあるでち」

 

 シャルロットがない胸を張ります。

 

「お話を聞く限り、アンジェラさんはマナを通す体内のパスが開いてなくて、シャルロットさんは逆に全部が開いてるんじゃないッスかね」

 

「パス?」

 

「はいッス。聞くよりも感じる方が分かりやすいんじゃないッスかね。ちょっと失礼するッスよ」

 

 そういうと、ウィル・オ・ウィスプがアンジェラの体内にすぅっと入り込みます。

 

「ちょっと、やだ!?」

 

 アンジェラが慌てて自分の体を抱きしめますが、どうしたことでしょう。

 

 体内に灼熱感が走りました。

 

 まるで血管の中を熱い何かが走り回るかのような感覚です。

 

 しかし不思議と不快ではなく、ずっと閉ざされていた部屋を解放して、一斉に換気するような清々しさを感じます。

 

 灼熱感が体中を一周すると、アンジェラはまるで生まれ変わったような気分を覚えます。

 

 それと同時に、ウィスプがアンジェラの体から現れました。

 

「はいッス! これでアンジェラさんの、光のマナを運用するパスが通ったはずッスよ。何か知ってる呪文とかないッスか?」

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 アンジェラが目を閉じて、記憶を呼び起こします。

 

 母である理の女王が、アンジェラに贈ってくれた魔導書についての記憶です。

 

 魔法が使えない日々、何度も何度もその魔導書に目を通し、アンジェラはほとんど内容を暗記していました。

 

 以前のアンジェラは、書かれている内容に沿って呼吸や意識の統一をしていたにも関わらず、成功した時の感覚をモノにすることができませんでした。

 

 だから次の項目に書かれているステップにも移れずに、魔法を使うことが叶いませんでした。

 

 しかし、今のアンジェラにならば分かります。

 

 この状態は、全てのステップをクリアした状態なのだと!

 

 魔導書にあった、光の魔法の初歩であるホーリーボールの概要を思い出します。

 

 意識を集中して、光のマナを指先に凝集するイメージ。

 

 するとどうでしょう!

 

 なんとアンジェラの指先に、光のマナが収束してゆくではありませんか!

 

「きゃー! やったー!」

 

 喜びのあまり跳び上がると、ホーリーボールは消えてしまいました。

 

 しかし、苦節十数年。

 

 アンジェラは初めて自分で魔法を行使できた事実に、泣きだしそうになりながら歓喜します。

 

「やった! やったわ!」

 

 デュランと手をつないではしゃぎまわり、シャルロットを抱きしめてくるくるとスピンします。

 

「お、おいおい、まだ完成できてなかっただろ」

 

「あはは、できるようになったのが嬉しくって、つい。それじゃあ、改めて……」

 

 デュランの指摘に、アンジェラが舌を出して構えなおします。

 

 今度は、改めて魔導書に書かれていた手順を、最初からなぞります。

 

 呼吸、意識の集中。

 

 そして呪文。

 

 さらに指先ではなく、杖を通してその先端に光のマナを凝集していきます。

 

 深い集中力でアンジェラはホーリーボールを練り上げていきますが、

 

「アンジェラ! ストップ! ストップだ!」

 

 デュランの必死の制止が聞こえてきます。

 

 なにようるさいわね、まだまだホーリーボールに力を注げるんだから、邪魔しないでよ。

 

「アンジェラしゃん、ストップでち! みて! ホーリーボールみて!」

 

 シャルロットの慌てた声まで聞こえてきて、アンジェラはようやく深い瞑想状態から脱します。

 

 気づくと、なんとデュラン、シャルロット、アンジェラを飲み込んで余りあるサイズの、巨大な光が頭上に輝いているではありませんか!

 

「な、なにこれ!?」

 

 アンジェラの平静から揺れた瞬間、頭上のホーリーボールも揺らぎました。

 

「海! 海に捨てるッスよ、アンジェラさん!」

 

 ウィル・オ・ウィスプの慌てた声に従い、アンジェラが悲鳴をあげながら杖を振るえば、ホーリーボール放物線を描き、遠くの海上で炸裂!

 

 かなり遠くに飛ばしたのに、飛沫がこちらまで飛んでくるほどの威力です。

 

 なんだなんだ、と甲板にいた者たちが不審げにデュランたちを見ています。

 

「ご、ごめんちゃい! まほーのれんしゅうちゅーだったんでちが、ちょっとしたてちがいでち! ゆるしてちょ!」

 

 シャルロットがかわい子ぶって上目遣いで人々に許しを請うと、そのキュートさでメロメロになっておおむねの人たちが許しました。

 

 ただ、船員には注意されました。

 

「困るよ、船が壊れるような魔法を船内で使われちゃ!」

 

「す、すまねぇ。次からは注意するよ」

 

 デュランが先頭に立って謝り倒してことなきを得ましたが、一息つくとアンジェラがどさりと尻もちをつきました。

 

「あ、あれ? なんか、力が抜ける……」

 

「さっきのホーリーボールで魔力を使い果たしたッスね」

 

「フルメタルハガーの時のシャルロットと同じ状態か」

 

 デュランは、ヒールライトを使って動けなくなったシャルロットを思い出しました。

 

「アンジェラさんの場合、意図的に全てのパワーを使い切ろうとしたッスから。これからさじ加減を覚えていけばいいッスよ!」

 

「そうね……ありがとうウィスプ。私、魔法を使ったの初めてなの……すっごく気持ちいいのね」

 

 アンジェラが仰向けになって快晴を見上げます。

 

 今のアンジェラの胸中は、あの空のように晴れやかです。

 

 あれほど悩み、苦しんで、憧れた魔法。

 

 手の届かない遠い星だと思っていました。

 

 いつか使えるようになると自分に言い聞かせていながら、本当は無理なのだろうと感じていた絶望。

 

 しかし今、アンジェラは魔法をとても身近に感じていました。

 

 まるでずっと姿が見えなかったのに、いつもそばにいてくれた古い友人のような。

 

 母が見ている景色の一端に、ようやく自分も至れたのだと思うと、アンジェラは一筋だけ涙を流しました。

 

「ウィスプしゃん、つぎはシャルロットにおしえてほしいでち」

 

「はいッス! それじゃあまたまた失礼して!」

 

 次に、ウィル・オ・ウィスプがシャルロットの体に入り込みます。

 

 ──それじゃあシャルロットさん、何か魔法を使ってくださいッス!

 

 すると、シャルロットの頭の中にウィル・オ・ウィスプの声が響きます。

 

「うへ~なんかへんなかんじでち。デュランしゃんはいっつもこんなかんじでフェアリーしゃんとはなしをしてるんでちかね」

 

 そう言いながら、意識を集中させて詠唱を開始いします。

 

 ──ほいほい、ほいっと。

 

 魔法を練り上げる行程中、ウィル・オ・ウィスプがシャルロットの中で何か細工をするようでした。

 

 うるちゃいでちね、と思わなくもないですが、シャルロットは体内で不思議な感覚が広がるのを感じます。

 

 いえ、逆です。

 

 不思議と感覚が狭まるのを、感じるのです!

 

 しかしそれも不自由な感覚ではありません。

 

 むしろ、無軌道だった体内の感覚が整理されるような、清々しい感覚なのです!

 

 ──今ッスよ、シャルロットさん!

 

「ヒールライト!」

 

 狭まった出力でシャルロットが魔法を解放すると、デュランにのみ癒しの光が降り注ぎます。

 

「おお!?」

 

「やったでち!」

 

「お見事、今の感覚ッスよ!」

 

 すぅっとシャルロットの体内からウィル・オ・ウィスプが姿を現します。

 

「いや~エルフと人間のハーフなんでしたっけ? 流石、すごいパスの数ッスね。しかも、違う属性のパスにまで光のマナが流れ込んで、無理やり機能させちゃってたんですから、大したものッス。そりゃ、一回の魔法で動けなくもなるってもんッスよ」

 

 ふよふよとシャルロットの周囲を飛び回るウィル・オ・ウィスプに、デュランが疑問を投げかけます。

 

「なぁ、今さらなんだが、パスってなんだ?」

 

「えーっと、術者がマナを取り込む通り道のことッスよ。術者はマナを取り込んで、自分の物にして、そのエネルギーを自然に作用させて、魔法にするッス。だからここが閉じてたら、まず話にならないッス」

 

「ぎゃくにシャルロットは、マナをたべすぎててからだにふたんがかかってたでち?」

 

「そういうことッスね。だから今度からは、できるだけ小食でいくッスよ、シャルロットさん!」

 

「わかったでち! シャルロットの、マナだいえっとでち!」

 

「そうッスそうッス! スリムなボディで魔法もスマートッス!」

 

 デュランにはピンとこないワードセンスですが、シャルロットとウィル・オ・ウィスプはたいへん通じ合っている様子です。

 

 アンジェラが仰向けから上体だけ起こして髪をかき上げます。

 

「アルテナで教えられた時、パスはこんな感じで通っているって教えられたのよ」

 

 アンジェラが自分の体を上からなぞります。

 

「でも、私がさっき感じたパスはこんな感じだったわ」

 

 そしてもう一度、体をなぞり直しますが、先ほどと違う個所をなぞっているのが分かりました。

 

「ぶっちゃけ、全部のパスが通ってなくても魔法は使えるッス。だから個人差をひっくるめるように、「だいたいこのあたり」でパスを通すように教えられるんじゃないッスかね。それでまぁまぁ魔法は使えるッス。ただ、そこまで違うと、アルテナの教え方じゃ百年経ってもアンジェラさんは魔法を使えなかったと思うッスね」

 

「お母様も、ご自分のパスの位置を踏まえて魔導書に書いてくださっていたの。私はそれを信じて疑わなかったわ……」

 

「アンジェラさんのパスは、どっちかと言うとデュランさんの形に似てるッスね」

 

 ウィル・オ・ウィスプが不思議そうにしているのに、デュランも頷きます。

 

「ああ、フェアリーもそう言ってたな」

 

「つまり、アンジェラさんはアルテナの人とフォルセナの人のハーフってことッスかね?」

 

「分からないのよ。そうなのかもしれないっていうだけで……」

 

 アンジェラが複雑そうな顔をします。

 

 ウィル・オ・ウィスプはその周囲を、「人間はたいへんッスねぇ」とばかりに呑気に浮遊しました。

 

「ふーん、理の女王様を差し置いてアンジェラさんのパスの形をフォルセナ人に近くするなんて……お相手はフォルセナ人の中のフォルセナ人なんスかねぇ」

 

「なんだそりゃ。そんなヤツがいたら、フォルセナ出身として、是非ともお目にかかりたいもんだぜ」

 

 デュランがクスッと笑ってしまいました。

 

「私、お父様について調べたい!」

 

 がばっとアンジェラが立ち上がり、決意を眼差しにたたえます。

 

「ちょうどいいわ、行先がフォルセナだもん! 私、お父様を探す!」

 

 突然な言葉に、デュランが目をしばたきました。

 

「そりゃいいかもしれないが……」

 

「精霊探しも真面目にする! まずは世界を救うことを目指す! けど、英雄王さんに相談したり……ねぇ、いいでしょう?」

 

「う、そりゃ……ダメとは言わないけどよぉ」

 

 アンジェラがうるんだ上目遣いで懇願すれば、デュランもたじたじです。

 

「やったぁ! 私、絶対お父様に会いたい!」

 

 アンジェラは希望をたたえた瞳で、はるかな水平線を見つめました。

 

 それから、船上でアンジェラとシャルロットは、瞑想に努めて、マナの制御に磨きを掛けました。

 

 ふたりの才能はフェアリーの見込んだ通り素晴らしく、また精霊の指南は十年の修行に勝る教えとなりました。

 

 船旅を追える頃には、アンジェラはホーリーボールを習熟し、シャルロットはヒールライトとホーリーボールを自在に操れるようになりました。

 

 船内の食料がきっちりなくなった頃合い、三隻の船がマイアに入港しました。

 

 この食料の計算も、神官が勘定したらしく、流石はウェンデルとデュランは感心しました。

 

「う~ん、やっぱり地面が一番だな」

 

 マイアの港を踏みしめると、デュランが体いっぱいに伸びをします。

 

 アンジェラも杖を使って軽く体をほぐしながら問いかけてきます。

 

「これからどうするんだったかしら?」

 

「西に黄金の街道ってのがある。それを通って、大地の裂け目を越えて、高原を北上すればフォルセナだ」

 

「このまちで、きっちりじゅんびをしなきゃでちね!」

 

 これからの方針を話していたデュランたちでしたが、別の船に乗っていた神官が慌てたように駆け寄ってきました。

 

「シャルロットちゃん、無事だったか!」

 

「あっ! あんたしゃんは! デュランしゃん、アンジェラしゃん、こちら、ウェンデルのしんかんリックしゃんでち。ジャドのこうさくのリーダーをしてまち」

 

「シャルロットちゃん、落ち着いて聞いて欲しい。光の司祭様が、不治の病に倒れてしまった」

 

「ええ!?」

 

 その言葉に、シャルロットが跳び上がって驚きます。

 

 リックが小さな筒を取り出して、中から紙片を抜き出します。

 

 筒で書類を保護して、鳥に運ばせる通信です。

 

 中を開いて紙面を見せると、デュランたちが滝の洞窟に向かった後の経緯が細かく書かれていました。

 

「まさかビースト兵団に……」

 

 全部を読まないうちにアンジェラが先走った予想を口にします。

 

 しかし神官のリックは神妙な顔で首を振りました。

 

「禁術が原因だ。光の司祭様は、ビースト兵たちをラビの森に転移させるため、禁術で拡張したビルゲートを使われた」

 

「イビルゲート?」

 

「異界との門を開いて、位相のエネルギー差によるひずみで敵にダメージを与える魔法だよ。おそらく光の司祭様は、異界ではなくてウェンデルとラビの森とつなげて、ビースト兵たちを追い払ったんじゃないかしら」

 

 デュランからフェアリーが姿を現しました。

 

 リックがその言葉に頷きます。

 

「その通りだ。しかし問題はイビルゲートを増強させるために使った禁術の方だ……禁術は、使う者の命をむしばむ。そのため、司祭様は倒れられた……」

 

「なんとかできないのかよ?」

 

「……ヒースくんがいれば治せたはずなのだが……」

 

 デュランの問いかけに、リックが悔しそうにうつむきます。

 

 その横で真っ青になったシャルロットがいてもたってもいられない、という顔で今下りた船に再び乗り込もうとし始めます。

 

「おじいちゃんが……! はやく、はやくウェンデルにもどらないと!」

 

「待て、シャルロット!」

 

 慌てて右往左往し始めるシャルロットを、デュランが掴んで落ち着かせます。

 

「まずは落ち着け。今からどうこうできねぇ!」

 

「でも、でも!」

 

「シャルロット、今おまえが戻ってできることはないんじゃないか?」

 

 デュランがかがみこんでシャルロットの瞳と視線を合わせます。

 

 シャルロットは今にも泣き出してしまいそうな顔です。

 

「オレたちがじいさんのためにできることは、少しでも早くマナの剣を手に入れて、ヒースを見つけることのはずだ。違うか」

 

「ッ……!」

 

「……すまん、冷たい言い方だった」

 

 シャルロットはぐっと歯を食いしばり、ぷるぷると首を振ります。

 

 それでも、溢れそうになる涙をこらえるのに精いっぱいです。

 

「うう……おじいちゃん……」

 

「シャルロットちゃん、光の司祭様も懸命に闘っておられる。そばにいる神官たちも、力の限りサポートしている。まだ余地はあるはずだ」

 

 リックの言葉に、シャルロットが顔を上げます。

 

「シャルロット……かならずヒースをつれてかえるでち! ぜったいぜったい、おじいちゃんをたすける!」

 

 シャルロットが、これ以上ないほどの力強い声音でそう叫びます。

 

 リックも励ますように頷きました。

 

「私も、光の司祭様から遣わされた使命を全力で遂行する。ジャドの者たちを、誰ひとり欠けさせずに取りまとめよう。君たちにも、できるかぎりの力添えをしたい。必要なものは言ってくれ」

 

「ありがてぇ!」

 

 こうしてリックと分かれた三人は、準備を整えて、明日に備えるのです。

 

 旅立ちを決意した日、若者たちは運命がこのように流転するなど想像すらできませんでした。

 

 しかし、激動する世界は彼らに後戻りを許しません。

 

 フォルセナを次の目的地に定め、デュランたちは新たなる旅立ちに踏み出すのです。

 

 

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