聖剣伝説3 TRAILS of MANA   作:モティ

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第十二話「極大送還」

 

 ルガーの攻撃は熾烈を極めました。

 

 ケヴィンとホークアイ、そしてリースは三人がかりでも防戦に徹せざるを得ない猛攻です。

 

 光の司祭との戦いでダメージを負ったはずなのに、その気勢は烈火のごとく。

 

 それだけ三人を真摯に叩きつぶさんと心を込めている証左とも言えました。

 

 ケヴィンたちは必死にルガーの攻撃を凌ぎ、躱し、時に助け合います。

 

 しかしただ攻防に集中するばかりのホークアイとリースに比べ、ケヴィンの心は津波のようにあらゆる感情が荒れ狂っていました。

 

 己を邪険にしていたルガーが、真正面から己を見据えて真剣になってくれた嬉しさ。

 

 ウェンデルを蹂躙せんとする暴虐に対する怒り。

 

 焼き尽くされたアストリアに対する哀しみ。

 

 そして、尊敬する拳士たるルガーと、正々堂々と拳を打ち合える喜び。

 

 ケヴィンの中で、たくさんの感情が善悪を越えて混ざり合っていました。

 

 そしてかつてないほどの充実を覚えたのです。

 

 とはいえ、ルガーに対してケヴィンの腕はまだ一枚も二枚も劣ります。

 

 つまりそれは、ルガーの真剣に報いてやることができないということ。

 

 それが歯がゆくて、

 

「ウオオオオオオ!!」

 

 ケヴィンが吼え猛りました。

 

 そして、攻勢に打って出ます。

 

 防御を捨てた、捨て身の攻勢!

 

「馬鹿が、勝負を捨てたか!」

 

 それでもルガーに届かせるには足りない攻勢。

 

 ケヴィンのがむしゃらな突撃に、ルガーはその攻撃の軌道を見極めて拳を打ち込んできます。

 

 ルガーの間合いの調整は完璧。

 

 このままではケヴィンが拳を届かせるよりも先に、ルガーの拳に砕かれる方が早い!

 

「させませんよ!」

 

 しかし、ルガーの致命的なカウンターに、横合いから槍が突き込まれます。

 

 そのタイミングの絶妙なこと!

 

 ルガーの攻撃が中途半端に止まり、ケヴィンの拳が綺麗に入りました。

 

 顔面をしたたかに打たれながら、ルガーは二の手をケヴィンに繰り出します。

 

 ケヴィンはその手に一切反応せず、ただひたすらに渾身の蹴りを一拍遅れで繰り出します。

 

 誰がどう見ても、ケヴィンは判断を誤っているとしか見えませんでした。

 

「そういうことかよ!」

 

 しかしケヴィンの意図を悟ったホークアイが、ダガーを叩きつけてルガーの攻撃を逸らします。

 

 その隙に叩き込まれたケヴィンの蹴りが、ルガーを大きく吹き飛ばしました!

 

 リースとルガーも理解しました。

 

 ケヴィンはホークアイとリースに防御を預けて、捨て身でぶつかってこようとしているのです!

 

 ルガーがぶっと地に血を吐き出し、凄絶な鬼面で笑いました。

 

「そんな攻撃では、このオレは倒せんぞケヴィン!」

 

「倒すまで、打ち続ける!」

 

 凄惨と表現せざるを得ないほどの攻防でした。

 

 ホークアイとリースに防御を預けたといっても、完全にフォローしてもらえるかなんて状況次第です。

 

 現に続く攻防でホークアイとリースが間に合わず、ケヴィンはルガーの凶悪な拳や蹴りを何度も受けて、そのたびに盛大な流血がほとばしりました。

 

 たまらずリースが矢面に立とうとすると、ケヴィンがそれを強引に押し退けて、ルガーの攻撃を自らの身に受けました。

 

 最も頑丈なケヴィンがルガーと殴り合い、素早く攻撃力に劣るホークアイとリースがフォローに回る。

 

 効率だけで言えば、なるほど、最適な答えかもしれません。

 

 しかし効率を突き詰めた狂気とすら言えるその攻防に、ホークアイとリースも戦慄せざるを得ませんでした。

 

 あの無垢な男の子が、こんな奇計に身を投げ出すなんて!

 

 それでも。

 

 ケヴィンは晴れやかな感情が胸に満ちてゆくのを噛み締めます。

 

 やはり己はビーストキングダムの子だったのだと、清々しい気分で受け入れることができました。

 

 そしてその一方で、だからこそやはりウェンデル侵攻は止めねばなりません。

 

 死に物狂いで。

 

 死ぬ気であろうと。

 

 その気力が、ケヴィンの体を突き動かしました。

 

 もはや、ケヴィンの意識も途切れ途切れでした。

 

 灼熱の夢うつつの中、もう一発二発ルガーからいいものをもらえば完全に意識を失うでしょう。

 

 ホークアイもリースも、必死でケヴィンをかばいます。

 

 それでもなお、ルガーの攻撃力がわずかに上回ってくるのです。

 

 このままでは、ケヴィンがもたない。

 

 そんな瀬戸際。

 

 わっと大きな鬨の声が聞こえました。

 

 神官たちが、気合を込めて叫ぶ声が聞こえるのです!

 

 それと同時、ウェンデル側の攻撃が激しさを大いに増したではありませんか!

 

 神官たちはホーリーボールを息も絶やさずに打ち続け、雄たけびを上げてフレイルを振り回します。

 

 それはありったけの力を振り絞るかのようで、なんと獣人たちを圧し返しているではありませんか!

 

 しかしそれは、ここで全てを出し切ろうとするような力の使い方です。

 

 この全力が途切れてしまえば、致命的な間隙が生じることは必定。

 

 そこに獣人たちが盛り返せば、一息にウェンデルの陣営が崩れてしまいかねない力の使い方です。

 

「準備ができた! 戻ってくるのじゃ!」

 

 ウェンデル陣営の最前線で、光の司祭が叫んでいるのが聞こえます。

 

 そうです、このウェンデル陣営の差配は光の司祭の計算の上に成り立っていました。

 

 ウェンデルが決死の抵抗で獣人たちを大きく後退させた今こそ。

 

 味方を巻き込まずに獣人たちのみを転移せしめることができる算段なのです!

 

 残りは、ケヴィンたち!

 

 三人を援護するように、ホーリーボールやセイントビームが雨と降り注ぎます。

 

 その光の魔法の軌跡は、そのままウェンデルへ後退するための道。

 

 しかしケヴィンも、ホークアイも、リースも、うかつに後退できませんでした。

 

 もしも何も考えずに光の魔法で守られた道を往こうとした瞬間、ルガーの拳が背骨を折りに飛んでくるのがありありと予想できました。

 

 ケヴィンとホークアイとリースと、そしてルガーが一瞬で無限の攻防の選択肢を脳裏に錯綜させる中で。

 

「……ふたりとも、後退して。ルガーはオイラが……」

 

 ケヴィンがルガーを見据えながら、ホークアイとリースにそう言いました。

 

 それにホークアイが苦笑します。

 

「できもしないこと、言うんじゃないよ」

 

「できる……いや、やる。光の司祭の術、もうすぐ。だからオイラひとりだけでも……」

 

「でも、ひとりよりも三人の方がきっと確実です」

 

 リースが生真面目な顔で会話に加わります。

 

「ケヴィンさん、気持ちは私も同じです」

 

「おっと、「私たち」って言い直して欲しいね」

 

 ホークアイとリースの心意気に、ケヴィンは胸がいっぱいになる気持ちです。

 

「いいんだね!」

 

「ああ!」

 

「ええ!」

 

 ふたりの返事に、ケヴィンが大音声を響かせます。

 

「光の司祭さん!」

 

 ケヴィンの声は、戦場の隅々まで通りました。

 

「オイラたち、戻れない! ルガー、止めないと、必ず術を邪魔する! だから! オイラたちごとやって!」

 

 ウェンデルの陣営に動揺が走りました。

 

 ひとり光の司祭だけが冷静に、しかし無念そうにその決断の正確さを汲みます。

 

 心底に歯がゆそうな、しかしウェンデルを預かる責任を胸に。

 

 光の司祭が右手を掲げます。

 

「相分かった。おぬしたちの義気、確かに受け取った! じゃが、この術は位相をずらして転送を成す! その衝撃でビースト兵たちも混乱するであろう! その隙に、逃げのびるのじゃ! そして、フェアリーに導かれた者たちを探せ!」

 

 じゃららららららららららら───…!!

 

 おびただしいほどのコインが光の司祭の周囲に展開され始めました。

 

 それは暗黒のコイン。

 

 深く暗い闇のエネルギーが封じ込められたマジックアイテムでした。

 

 溢れ零れるコインは、渦となって光の司祭の頭上を循環し、ひとつの魔法陣を描き始めます。

 

 その魔法陣こそ、魔法の効果を増幅・拡張せしめる古の秘法!

 

 光の司祭は、古の秘法により膨大な数の暗黒のコインに宿る魔法を統合し、増幅・拡張して放とうとしているのです!

 

「ぐ、ぬぬぬぬ……!」

 

 封印された秘法は、現代において無法と言っていいほどに強力な効果を発揮します。

 

 ゆえに秘法そのものが呪われており、現世において使う者の命を蝕むのです。

 

 今、光の司祭の肉体と精神には多大な負荷がのしかかり、呪いじわりと浸食を開始しました。

 

 それはルガーとの攻防で消耗し、左腕すら骨折した光の司祭にとって、多大な負荷と言わざるを得ませんでした。

 

 しかし。

 

 若者たちが決死にあの獣人の猛者を食い止めてくれていることを思えば、これしきの呪いなど!

 

 暗黒のコインより、術が広がり始めます。

 

 まるでそれは、地面に滴る黒い絵の具が、瞬く間に染みわたっていくような光景でした。

 

 地を這うように闇が広がってゆくのです。

 

 あっという間に獣人たちが立っている大地を、石畳の道を、暗黒が黒く塗りつぶします。

 

 しかし、それだけ?

 

 不気味そうに獣人たちが地を叩きますが、闇は揺らめくばかりで干渉できません。

 

 不発か、と獣人たちが嘲笑しようとしたその時です!

 

 闇から、音が聞こえたのです。

 

 それはまるでか細く聞こえる慟哭のような音でした。

 

 初めはごく小さな音だったのが、徐々に大きくなっていきました。

 

 それではまるで、何かが地の奥深くから近づいてきているようではありませんか!

 

「ひっ!?」

 

「なんだこりゃ!?」

 

 慟哭が大きくなるにつれ、獣人たちの足元に異変が生じました。

 

 まるで沼に沈んでいくように、ゆっくりと獣人たちの体が闇に沈んでいくのです!

 

 慟哭はもはや、硬い物質が剪断される寸前に響くような不協和音となっていました。

 

 それは、この世界の形がひずんで軋む音でした。

 

「ちぃっ!」

 

 ルガーが跳ねるように動きます。

 

 狙いは光の司祭。

 

 この術の完成までに仕留めれば!

 

「させない!」

 

 しかしそこに立ちふさがるケヴィン、ホークアイ、そしてリース!

 

 足が沈む奇妙な感触の中で、ルガーの拳とケヴィンの拳が交わり、その突破を許しません!

 

 他の獣人たちも、この闇から離れようとしますが、ウェンデル決死の攻撃に圧し留められてどうしてもそれが叶いません!

 

「ケヴィン、ホークアイ、リースよ!」

 

 光の司祭の、命を振り絞るような大声が聞こえます。

 

「ウェンデルはすぐに結界を張って守りに徹する! 故に、フォルセナじゃ! シャルロットたちと共に、フォルセナへ向かえ! 英雄王リチャードに会うのだ! おぬしたちにマナの女神様の祝福があらんことを!」

 

 暗黒のあちこちから紫電が弾けてまき散ります。

 

 闇が、立ち上がりました。

 

「極大送還!」

 

 禁術により極大の拡張がなされたイビルゲートは、ケヴィンたちごと獣人の軍勢を飲み干してしまったではありませんか!

 

 闇に飲み込まれた誰もが、重力の枷から解き放たれて上下左右の区別を失います。

 

 そして強く理解しました。

 

 重力とは枷であると同時に、自らの位置を定かにしてくれる碇であり、安心の礎であることを。

 

 闇の中、圧力のない津波や雪崩の中にさらされるかのような不安と不安定に誰もが恐慌をきたす中で。

 

 闇が唐突に晴れました。

 

 視界に映ったのは、森。

 

 上空から見渡す、ラビの森でした!

 

「うわあ!?」

 

 木よりも高い位置に突然放り出された形となり、多くの者が受け身も取れずに墜落していきます。

 

 イビルゲートは本来この世界と別の世界をつなぎ、その位相差のエネルギーを意図的に敵へ流入せしめることでダメージを与える魔法でした。

 

 今回、光の司祭はあくまでこの世界の中、別の場所に空間をつないだのです。

 

 それでも少なからずイビルゲートを通った者たちに、空間を越える軋轢がダメージとなってしまったのは必然!

 

 そのせいで気絶したまま地上に墜落した獣人たちも多数いるようでした。

 

 また、位置関係もイビルゲートに飲み込まれた前後で同じとはいきません。

 

 闇の中で撹拌され、ウェンデルで立っていた位置関係とはてんでバラバタの状況で空に放り出されたのです。

 

 ホークアイとリースはこの撹拌により、幸運にも気絶した獣人たちが固まった位置に現出することができました。

 

 体内をかきまぜられたかのような嘔吐感をこらえながら、ホークアイはリースの手を引いて即座に身を隠すことに成功したのです。

 

 では、ケヴィンは。

 

「ぐぐ……」

 

 ケヴィンもまた、這う這うの体でかろうじて意識を保っていました。

 

 そして、ルガーの足首を掴んで、光の司祭に突撃することを最後の最後まで防いでいたのです!

 

「ぐふ……がは……こ、ここは……」

 

 当のルガーは、膝を衝いて周囲を確認します。

 

「ラビの森か……あの、おいぼれがぁ……!」

 

 激怒に塗れて吐き捨てますが、どうにも気迫に欠けてしまっています。

 

 さしものルガーと言えど、光の司祭やケヴィンたちとの連戦に加えて、イビルゲートによるダメージでもはや疲労困憊なのです。

 

 ふらつきながら立ち上がると、足首を掴んで離さないケヴィンを憎々し気に見下ろします。

 

「へ、へへ……」

 

 ケヴィンが、かすれた声で笑います。

 

「ウェンデル、守れた……これで……人、死なない……」

 

 どごンッッ!

 

 ルガーが、ケヴィンを蹴り飛ばしました。

 

 突き刺さるつま先を、圧し返す腹筋の力もなくなったケヴィンはもんどりを打って吐しゃ物をまき散らします。

 

「この裏切り者が! 貴様、ケヴィン……貴様は殺す!」

 

 森に響き渡る怒号を聞き、まだ動ける獣人たちは大慌てで止めにかかります。

 

「ルガー、ケヴィンを殺すのはまずい」

 

「そうだ、獣人王様の息子だぞ」

 

 この言葉にルガーもいくらか冷静さを取り戻し、八つ当たり気味に地を踏み砕きます。

 

「被害状況を報告しろ! 動ける者は? もう一度ウェンデルに……」

 

 言いかけて、ルガーが何かを思い出したように舌打ちをします。

 

 ウェンデルまで辿り着いた獣人たちですが、とても大きな失策がありました。

 

 実は獣人たちは、既に食料が尽きているのです。

 

 ビーストキングダムは、ルガーの代で大規模な軍事行動を起こした事例はありませんでした。

 

 その世代が中心となって動いた時、様々な経験不足が露呈します。

 

 そのひとつが兵站の未熟さでした。

 

 検討に検討を重ねたウェンデルへの侵攻ですが、実際に行動を起こして見ると、ビーストキングダムで試算した量ではとても賄えない事態となってしまったのです。

 

 というのも、我の強い獣人たちの行動は、軍の強制力でも言い聞かせ切ることができません。

 

 そのせいで定められた量以上を口にして、定刻通りの行動もできずに遅れた分だけ食事量が増える。

 

 ジャドで徴収しても、アストリアを焼いた時に奪取しても、ラビの森で獣を狩っても足りない状態でした。

 

 筋量が豊富で活動的な獣人にとって、補給の有無は正念場にパワーを発揮できるかが懸かっています。

 

 この食料事情のために、シェイドの刻の方が有利になることは分かっていましたが、まだ日が出ているうちにウェンデルを攻めたのです。

 

「……一度ジャドに戻る」

 

 ルガーははらわたが煮えくり返りそうな気持を押さえて、そう判断しました。

 

 側近の獣人たちが目を見開きます。

 

「いいのか? ここまで来て」

 

「どうせ、再び新しい結界が張られている」

 

 ルガーの冷静な言葉に、側近の獣人たちがそうだった、と唸ります。

 

「あの道化め、のこのこと戻ってきたらタダでは済まさん」

 

 ルガーが忌々し気に吐き捨てます。

 

 もともとは死を喰らう男の、結界を破る手段を当てにした行軍だったのです。

 

 それに乗ってやったというのに、今に至るまで姿を見せないのですから業腹です。

 

「……いや、待てよ。破らせればいいのだ、あいつらに」

 

 ふとルガーが思いつきます。

 

 今回ウェンデルに攻めるにあたり、結界を破った男たちが侵攻の助けになりました。

 

 ウェンデルに合流されれば厄介と思い、滝つぼに叩き落しましたが、その水はラビの森へと流れているのです。

 

 おそらくこの辺りの水辺に流れ着いているはず!

 

「おい、全軍に通達しろ! 人間たちを探せ。ファイターと、マジシャンと、クレリックだ。このあたりの水辺に流れ着いているはずだ」

 

「……ああ、そうか。結界を破ったっていう」

 

 側近がなるほど、と手を打ちます。

 

 しかし別の獣人は訝しげです。

 

「だが、溺れ死んでるかもしれないぜ?」

 

「その時はその時だ。水から引き揚げてここに……いや、ジャドに連れて行って、牢屋にぶち込んでおけ。どうせ、オレたちもジャドに戻って再編成だ。その時に無理矢理にでも言うことを聞かせてやる」

 

 ルガーがばきりと指の骨を鳴らしながら牙を剥きます。

 

「ケヴィンはどうするんだ?」

 

「そいつもジャドの牢屋にぶち込んでおけ」

 

 側近に問われ、ルガーはもはや意識朦朧のケヴィンを一瞥して鼻を鳴らします。

 

 それから、ルガーは次々と上がってくる状況の報告に対処を始めました。

 

 ホークアイはこの話を、木々に身をひそめながら耳にしていました。

 

 戦場でも敏捷に立ち回っていたホークアイは、ケヴィンとリースよりもダメージが少なく、イビルゲートによる影響から最も早く立ち直っていたのです。

 

 リースを休ませて、周囲の状況を探っているとルガーの怒号が聞こえて忍び寄ると、大まかな獣人たちの方針を把握できたのでした。

 

 しかしルガーの周囲には獣人たちがどんどん集まってきます。

 

 そろそろ潜んでいられないと見たホークアイは、音もなくその場を退散してリースと合流します。

 

「ケヴィンを見つけた」

 

「本当ですか? どこに?」

 

「ルガーのすぐそばだ。ちょっと近づけなかったけど、ヤツらケヴィンも連れてジャドに戻るつもりだ」

 

「私たちも戻りましょう。ケヴィンさんを助けなきゃ」

 

「もしかしたらケヴィンだけじゃなくて、三人と合流ができるかもしれない」

 

「三人? ……あっ、デュランさんたちですね」

 

「当たり。獣人たちも三人を捜索するみたいだ。結界を破らせるためにね」

 

「たいへん! 私たちが先に見つけないと……でも、獣人たちがたくさんいる中じゃ……」

 

「無理だろうね。だからこういう時は、獣人たちに探させるんだ。獣人たちも兵たちを再編成するためへジャドに戻るらしい。ケヴィンと三人をそこで助けて、船で脱出する。それが理想だな」

 

 リースは感心したように目をしばたかせます。

 

「確かに合理的です。すごいですね、こんなにすぐ考えをまとめられるなんて」

 

「盗みの仕事の組み立てもしていたんだ、これくらいは朝飯前さ」

 

 ホークアイが得意げにウィンクをしました。

 

 

 

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