お前も万魔殿最高と叫びなさい!   作:竹製手桶

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先生…前に「シヲはどうして万魔殿のことを支持するの?」と聞いてオタク語りじみたプレゼン(シヲ曰くライト版)をされたことがある。

深町シヲ…原作に存在しない生徒。マコト強火担。支持者が増えても「まあ、私は古参だし?先に彼女の良さを知ってたのは私だし?」と後方彼氏(彼女?)面をキメている。週刊万魔殿でイブキのページよりマコトのページに喜ぶ異端派。


4.例の条約に対する所感

シャーレのオフィス内。

エデン条約に関する議題になったときのシャーレの空気は、まだ重い。トリニティとゲヘナの間にある問題は根深い。

 

先生は深町シヲに問いかける。

 

「……君はエデン条約に対する万魔殿の判断について、どう思う?」

 

資料を纏めていた深町シヲは即答した。

 

「エデン条約締結時における羽沼マコトの行動は一切擁護できません」

 

先生が目を瞬かせる。万魔殿支持派筆頭と言える彼女のことだから何らかの理屈を並べてマコトを擁護するかと思っていたからだ。

 

「即答だね……」

 

シヲは淡々と続ける。

 

「条約締結を事実上なかったことにしようとした。会場を混乱に陥れた。政治的影響を考慮しても、戦犯扱いされる可能性が高い行動です」

 

一拍。

 

「批判自体は、妥当です」

 

だが、次の言葉にはわずかに温度が宿った。

 

「ですがトリニティや他の学園の……方々が、羽沼さんを好き勝手に扱き下ろすのは、我慢なりません」

 

先生は苦笑する。トリニティや他の学園の、の後に続きかけた言葉をシヲが懸命に飲み込んだのを感じ取ったからだ。

 

「……言い方が強いなぁ」

 

「事実確認と誹謗中傷は違います」

 

即答だった。

 

「批判は許容できます。ですが嘲笑、歪曲、人格攻撃は――別です」

 

静かな声だが、芯は固い。

 

「羽沼マコトの判断は今後も誤ることがあります。トリニティや風紀委員への敵愾心も消えることはありません。ですが、だからといって何を言ってもいいという理屈には賛同できません」

 

そして、少しだけ声を落とす。

 

「……彼女のためにもなりません」

 

カチン、とホチキスで資料を留める。

 

「確かに私は羽沼マコトを支持しています。ですが、間違いは間違いとして扱います」

 

一拍。綴じた資料を置いてもう一つの書類の山へ手を付ける。

 

「同時に、彼女を雑に貶める言葉とも戦います」

「彼女は確かに間違えた。致命的なまでに。ですが彼女はゲヘナ学園の選挙で選ばれた生徒会長です。彼女を代表に選んだのは我々です。投票していなかった生徒達も、これまで政治に無関心だったツケが回ってきたとも解釈出来ます」

「誰もやりたがらない生徒会長という仕事を押し付けておいて、上手くいかなかったときだけ批判するのは道理に合いません。それに間違えたのはティーパーティーの方々もです」

 

きっと誰かにその胸の内を話したかったのだろう。彼女の口は普段の倍以上のスピードで言葉を紡ぐ。

淡々とした口調だったが、言葉は鋭かった。

 

「ティーパーティーをはじめとした内部の統制不全。アリウスへの対応の遅れ。情報共有の欠如。……どれも、今回の混乱を招いた一因です」

シヲは淡々と資料を揃えながら言う。

「それにも関わらず、責任を羽沼マコト一人に集約するのは――都合の良い物語化に過ぎません」

 

先生は小さく息を吐く。

 

「……思ってたより、ずっと冷静だね」

「感情と判断は別です」

 

即答。

 

「私は羽沼マコトを支持しています。ですがそれは、正しいからではありません。自らの理想に妥協しない点と、躊躇うことなく計画を実行する胆力にあります」

 

その言葉は、静かだったが重かった。

 

「彼女は逃げませんでした。いえ、物理的な脅威からは距離を置きましたが。彼女は批判されると分かっていても行動に移しました。私は――その姿勢を評価しています」

 

一拍。

 

「英雄視はしません。免罪もしません。ですが、叩いていい存在として扱われるのは許容できません」

 

先生はそこで、はっきりと理解する。

 

(この子はマコトを守りたいんじゃない)

(責任を負う人間が、雑に消費される構図を嫌っているんだ)

 

「……君は、政治家向きだね」

 

半分冗談のつもりで言うと、シヲは即座に首を振った。

 

「お断りします。私は表に立つ側ではなく、支える側で十分です」

 

そう言いながらも、最後にぽつりと付け足す。

 

「……ただし、支える相手が理不尽に貶められるのであれば、私は反論します」

 

ぱさりと音を立てて最後の書類が積み重ねられた。

 

 




「でもさ。シヲ、前にマコトの見た目も好きって言ってたよね」
「はい」

即答だった。間髪入れず、反射のように。
先生が思わず顔を上げる。

「……即答なんだ」
「事実ですので」

淡々と返しながらも、シヲの耳はわずかに赤い。

「羽沼マコトの容姿は、支配者という機能と高い親和性を持っています。加えて表情、姿勢、所作、声色。どれも人の注意を惹きつけるために最適化されていると評価できます」
「理屈っぽいなぁ……」
「理屈です」

即答、二度目。
一拍おいて、ぽつりと付け足す。

「……それに、美しいものを美しいと認めるのは、合理的です」
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