推しのスーパードクター   作:衛地朱丸

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エンディングその1です。当初は一話に抑えようと思ったのですが、書きたい後日談が多過ぎたので二分割しております。
とりあえず成長した面々の設定は下記のような感じです。

アクア:原作において芸能界に身を落としていたのは復讐のためなので、
    そもそも動機がない。
    ゴローに憧れて医者に道を目指しているため偏差値は原作同様70

ルビー:さりなちゃん未インストールなので毒舌は控え気味
    原作の三割増しアホの子

かな:まるで恋する女子高生のようだったぜ!!

■オマケ
カミキ=デスタムーア
姫川=ダークドレアム
20ターン以内に倒すと発生するアレです。


カルテ15:入学式

「みんなー! 今日はB小町初のドームライブに来てくれてありがとー!」

 眩いペンライトやサイリウムが輝くステージの中心で、ファンへ感謝の言葉を向けるアイ。

「みんなのお陰で私たち、ここまで来れたよ! 最初に聴いてもらう歌は、当然この曲」

 センターに立つアイがクルッと回ると、背中合わせになっていたさりなが前に出てライブパフォーマンスを行う。

『サインは~~B♪』

 そうしてアイとさりなが同時に曲名を宣言し、ライブの幕は切って落とされる。

「いい? おとーさん、おにーちゃん! ペンライトはこうふるんだよ!! B小町サイコー!!」

 主演映画に携わった関係者という名目で、最前列の関係者席で応援を行うゴローと双子。ルビーは未就学時だというのに、大人顔負けのヲタ芸を披露するのだった。

「あははっ。ルビーはスゴいなぁ。アクアは出来るの?」

「いや、オレはムリ。コイツ、アタマわりぃクセに、ダンスはバツグンなんだよな……」

 大人しく振っていようとこじんまりとした動きを取るアクアであった。

(思えばよくここまで辿り着けたなぁ……。ベッドでステージに憧れていた君がドーム公演だなんて。ありがとう星野アイ、さりなちゃんをここまで導いてくれて……)

 そう心の中で感謝の言葉を呟きながら、ゴローは賢明に慣れないペンライトを振り続けるのだった。

(あっ! せんせが私を見てくれてる♪ やっと私の想いを歌に込めて伝えられる。来てくれてありがと!!)

 歌い踊る最中ゴローが視線に入ったさりなは、より輝かしい一等星の笑顔で熱唱する。

(ふふっ。ルビーはスゴい才能だなー。アクアもがんばれ♪ せんせは……やっぱりさりなちゃんを通して私を見ている)

 貴方が通して見る私は伴星に過ぎない。だけどそれでいい。だってこれが私が届けられる精一杯の愛なのだから――

 そう思いながら、アイは個人的な愛情を留め、会場の声援に応えるよう舞うのであった。

 

 

「フフフ……。若いっていいわね。こうまでキラキラに輝いて。貴方もそう思わない? ヒカル

「……」

「ああ、そうだった。とっくに心が空っぽになっちゃたんだものね……」

 ここは軽井沢にある姫川の所有物となったコテージ。照明の光がない室内においてスマホの明かりのみを照らし姫川は呼びかける。ベッドに横たわる精神崩壊したカミキに。

「言った通りだったでしょ? 『どうせいつか私の所にもどってくる』って……」

 TETSUへの協力と大輝の親権放棄。その見返りとして姫川が与えられたのが、軽井沢の別荘とカミキの身柄そのものであった。

「ドクターTETSUにはアナタが金輪際悪さしないよう見張ってくれって頼まれたけど。私も二度と手放したくなかったから、貴方が眠っている間に()()()()()()()()()()

 カミキの心は既にない。現実と空想の区別が付かず、完全に壊れてしまった。今ではもう姫川の愛玩物と成り果てていた。

「これで貴方はもう、一生私から逃げられない。()()()()()()()()()……」

 そう虚ろな目で当人の耳には入らない愛を呟き続ける姫川。いかにドクターKと言えど、愛情が病んでしまった人の心までは治せないのであった。

 

 

「おい、まだかかるのかルビー」

「もーっ! ちょっと待ってってばお兄ちゃん! この制服カワイイけどフクザツなんだもん……」

 時は流れ十数年後。高校の入学式を迎えたアクアとルビー。とっくに支度を整えたアクアは、鏡の前でもたついているルビーに辟易し玄関で待ち呆ける。

「もう。相変わらず不器用さんだなー、ルビーは」

 そんなルビーの仕草に苦笑しつつも、代わりにリボンを結んで上げるアイ。

「エヘヘ! ありがとママ!! それじゃいってきまーす!!」

「うん、行ってらっしゃい。ほらアクア、行ってきますの挨拶は?」

「じゃあな、ババア」

 アイに挨拶を促され、やや反抗的に応えるアクアであった。

「もーっ! アクアは相変わらず反抗期さんだなぁ」

「うるせぇ。アラサーの母親なんてババアで十分だろ」

 そう悪態を吐きながら、アクアはルビーと共に家を出る。

「ゴメーン、待ったーおとーさん!!」

 マンションの外で車を停めて待っていたゴローに元気良く声をかけるルビー。

「いや全然」

「ったく、遅刻ギリギリだろ。初日から父さんに迷惑かけんなよな」

 そうして2人はゴローの運転するレンタカーに乗せられ、陽東高校へと向かうのであった。

 

 

「ううう……。あんなに小さかった子たちが立派な高校生に……がんどうだぁ~~!!」

 入学式を終えるや否やゴローは感極まって大泣きした。

「ほらほらお父さん、泣かない泣かない」

 ルビーは手元に持っていたハンカチでゴローの涙を拭う。

「ぐすっ。それにしても、こうして2人の父親として学校行事に参加するのも、これで最後かぁ」

 アクアとルビーが成人するまで秘密を通してアイドル活動を続ける。アイはTETSUとの約束を律儀に守り続け、入学式や卒業式といった親が参加する行事は全てゴローに父親役を務めさせていた。

「流石に高校の卒業式くらいは、アイに参加して欲しいからね」

 卒業時2人は成人。アクアとルビーが実子であることを公表し、晴れて卒業式にも参加出来るという算段だ。

「そっかぁ。せんせをお父さんって呼ぶのも、もう終わりが近いんだね……」

 産まれた時からずっと一緒だった関係の終焉に物寂しさを感じるルビー。

「何言ってんだ? 確かに偽りの関係は終わる。だけど、俺たちにとっての〝父さん〟には変わりはないだろ?」

 実の親より育ての親。その関連性は不変だと宣言するアクア。

「うおおおん! 息子よ~~!!」

 感激のあまりアクアに抱き付き頭をなでなでするゴローであった。

「あーっ! せんせ!!」

 講堂を後にして教室棟に向かう最中だった。3人に大声で呼びかける声があった。

「せんせ! せんせ! こんな所で再会出来るだなんて……。やっぱり私たちは運命の糸で繋がっていたんですねー!!」

 目をキラキラと輝かせ恋する女子高生のオーラを出しながらゴローに近付く少女の姿があった。

「えーっとぉ。確かぁ……10秒でヌける天才子役

 少女の顔を眺めながら、おぼろげな記憶を辿り指差すルビー。

10秒で泣ける天才子役!! 人をロリコンのオカズにすんじゃねー! 相変わらず失礼な子ねアンタは」

「アハハ……。数年振りだね有馬かなちゃん。ここの芸能科だったんだんだね」

 苦笑しながら名前を呼んであげるゴロー。

「名前、覚えててくれたんですね! 数年前に転勤で富永総合病院を後にしたからもう会えないかと思ってましたけど……何て運命的な……」

 ぽっと顔を赤らめながら自分語りするかな。頭の傷が癒えた後も定期的な通院が必要だとの名目で、富永総合病院に通い続けていたかな。アクアとルビーが小学校中学年になり託児所に預ける必要のなくなったゴローは、故郷の宮崎に戻り開業医となる道を選択したのだった。

「10秒泣ける天才子役なんて過去の話! 『君はこんな所で立ち止まらない、挫けない大女優になれる!!』大怪我して意識が失われていく中せんせから励まされた言葉は、生涯一度も忘れたことはありません! あの言葉と頭の傷を愛の証として芸能界を生き続け、今は『10秒で胸キュンするJK』と称される、大女優に大手をかけたんだから!!」

 大女優になった暁には改めてせんせに求婚する。その夢を叶えるべくかなは芸能界で必死に食らい付きもがき、順調にステップアップを重ねていたのであった。

「それにしても、心残りはさりなの奴に勝ち逃げされたことね。何年経っても演技はド下手なクセに、あのキラキラとした一等星の輝きに勝てたと思えたことは一度もない! なのに『一般男性と結婚』を機に、アイドル卒業どころか芸能界から姿を消しただなんて。まあ、これでせんせのお嫁さんダービーは一着確定ね! 有馬の名は伊達じゃないのよ!!」

「待って! ロリ先輩、本当にさりなおねーちゃんがどこのうまのふんかもわからない一般男性と結婚したと思ってるの? ピュア過ぎない!?」

 かなのあまりの乙女っぷりに、思わずアクアの耳にヒソヒソ話するルビー。

馬の骨な。ドラクエじゃねーんだから。まあ、ここまで純粋だから今まで生き延びれたんだろ?」

 過去の負い目もあり、一応はフォローするアクア。

「そこ! コソコソ話しない!! 私がお母さんになったら、キチンと躾し直さないとね!」

「いや。あはは……」

 アクアとルビーの手前上、ゴローは口が裂けても言えなかった。当然のことながら一般男性はゴロー自身を指し、さりなは卒業を機に晴れてゴローを結婚し、今はゴローを支える看護師となり子供も授かっている。

 卒業後も変わらずゴローとさりなの関係はトップシークレットなので、かなが2人の関係を知らないのは無理からぬことであった。

「にしても、ルビーの方が芸能科を受けるのは分かるとして。なんでアクアも入学してるの? アンタせんせと同じ医者目指してると思ってたから、偏差値40のウチの一般科じゃ不釣り合いでしょ」

「いや、コイツがあまりにアホ過ぎるから、1人にさせておくのが心配でな」

 そうルビーを指差し入学した経緯を語るアクア。

「具体的には?」

「偏差値39」

「うっわ……」

 名前書けば入れるレベルの一般科ですら合格が危ぶまれる知能っぷりにドン引きするかな。

「ちなみにアンタは?」

「70」

「なんで双子の兄妹で倍近く違うのよ……」

「ほら? 青ダヌキのアレだよ。兄妹で同じオイルを分け与えたってヤツ」

「ああ。知能を全部兄の方に持ってかれたってワケね」

「もーっ! お兄ちゃんヒドーイ! ルビーアホじゃないもん! 天然だもん!!」

「いや、それ遠回しにバカって言う意味だと思うけど」

 確かに会話をしているとどことなくアホっぷりを感じると溜息を吐くかなであった。

「よーし。じゃあ今からお前がどれだけアホか証明するための簡単な問題を出すぞ」

「ふっふーん! 全問正解しちゃうんだから!!」

「いい国作ろう」*1

「ニッポンの未来!」

「√5」*2

「新作の脱出ゲーム!」

「犬も歩けば?」*3

「電柱にオシッコする!」

「なっ?」

「あぁ、うん……」

 特段科目の問題ではない著名な語呂合わせも分からない残念知能だと、確かに介助人が必要だと納得するかなであった。

「アハハ。まあ、2人に頼もしい先輩がいるんなら、学校生活は問題なさそうだ。アクアとルビーを頼むよ、かなちゃん!」

「はい! もちろんです!!」

 良き先輩振りをアピールして好感度を高め結婚に漕ぎ着けるぞと目を輝かせるかな。

「……。やっぱり敵わないな」

「何がよ?」

 アクアの呟きに思わず反応するかな。

「父さんを前にした有馬の輝きだよ。今までずっと有馬の演技を見続けていたけど、どれもこれも劣って見えた。あの日手術を終えて父さんに求婚した時の笑顔には!!」

「ずっとって。アクア、私の出演作全部……」

「当然だ! 有馬の傷は俺のせいなんだから」

 そう言いかなに近付くアクア。

「ちょっとアクア!?」

 真剣な顔のアクアが急接近し、あたふたするかな。

「流石は父さんだ。傷痕は全然見残っていない。自分が負わせた傷のせいで有馬が女優業を辞めるんじゃないかって気が気でなかった。だけど怪我なんかどこ吹く風で続けてて。医者ってのは役者が演技では絶対に引き出せない笑顔を導き出せるのかって、あの時の輝きが俺を医者の道へと進ませた」

 そうかなの額を撫でながら心の内を打ち明けるアクア。

「だっ、だからぁっ! 全然気にしてないわよ! かっ、顔が近いってば~~!!」

 体温が上がり思わずバッとアクアを離すかな。

「ちょ、ちょっとくらいイケメンだからって、いい気にならないでね! 私は将来の大女優なんだから、こんな所でスキャンダルはゴメンよ!!」

 そうビシっと指さしアクアを拒絶するような態度を取るかなだったが、顔は真っ赤っかだった。

「おやおや。お父さんこれは」

 脈ありだねとゴローの耳にヒソヒソ話しかけるルビー。

「うんうん。俺もかなちゃんが相手だったら文句はないかな」

 流石のゴローも察し好意的に受け止める。

「えー。でもコレがママは有り得ないとして、義姉になるのもイヤなんだけどぉ」

「だからソコ! コソコソしない!!」

 アクアとルビーの入学にかなとの再会。確実に新しい風が吹こうとしていたのだった。

*1
鎌倉幕府

*2
富士山麓にオウム鳴く

*3
棒に当たる




本文中にK2キャラが一切出て来ない辺りがエンディングって感じになったかなと。
流れ的には今回で終わっても違和感ないのですが、もうちょい先まで書きたかったので。
そんなこんなで、次回が最終回です。推敲に時間かかるかもなので、2日に1話のペースよりは遅れるかもです。
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