推しのスーパードクター   作:衛地朱丸

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原作と前提が変わっているキャラがいるので補足

・大輝
清十郎に愛情を注がれて育ちアクアとルビーが血の繋がった兄妹であることも明かされているので、原作よりはやや明るめ。
反面実母が実父を愛玩物としているので、抱えている闇はより深い。

・あかね
出来レースではなく正攻法で真っ正面からかなに敗北する。憧れな存在から真っ当なアドバイスを受けたことで、超える存在としてかなに執着。
ポジティブよりではあるが、原作同様かなにはクソデカ感情を持っている。


ラストカルテ:次世代のスーパードクター

「あー。撮影疲れたぁ」

 ある日帰宅したルビーはぐったりとソファーにうな垂れる。

「お疲れ~~ルビー。肩揉んであげよっか?」

「ありがとーママー。あぁ、生き返る~~」

 アイに身体を解され一気に疲れが抜けるルビー。

「大輝くんもありがと~~。いつも家まで送ってくれって」

「いえ。〝兄〟として当然のことをしてるまでです」

 そうクイッと眼鏡をあげる大輝。離婚成立後、上原は自分がカミキと引き合わせてしまったせいだとアイに謝罪し、母子家庭で生活は大変だろうからと可能な限りの支援はすると提案を持ちかけた。

 対してアイは支援は要らない。だけど代わりに大輝くんにアクアとルビーを血の繋がった兄妹と明かし仲良くして欲しいとお願いした。

 それから大輝とは定期的に交流し、今では従兄弟くらいの距離感であった。

「にしても、恋愛リアリティーショーって思ったよりキツいー。素のままでいいと思ったら、結構ディレクターの指示あるしさ~~」

「めげない、めげない。この程度こなせないようじゃ、ママのような嘘を吐き通すアイドルには絶対なれないから」

 ママのようなアイドルになる! それがルビーの将来の夢であった。しかしルビーは本質的にはさりなちゃんタイプであると見抜いていたアイは、自分を目指すというのには否定的であった。しかし諦めたくないというルビーに押され、だったらと場数を踏ませるため鏑木に相談し、「今ガチ」の出演が決まったのだった。

「ママってばからじた~~」

辛辣(しんらつ)毒舌(どくぜつ)だ。読みすら合ってねーぞ。賢く見せようとしてうろ覚えな単語使うんじゃねぇアホ妹」

 そんな中、シャワーを浴び終えたアクアがツッコミを入れる。

「お前も今帰ったばかりかアクア。俺等と代わんない時間ってことは、相変わらず〝課外実習〟か?」

「ああ兄さん。父さんのような医者になるためには、医大入る前から可能な限り場数踏みたいからな。兄さんの方こそ、いつもルビーの見守り助かる」

「兄として当然のことをしてるまでだ。番組とはいえヘンな虫が付かないか心配するお前の気持ちは痛いほど分かるからな」

 今ガチは「芸能活動をしてる高校生達が週末いろんなイベントを通じ交流を深める」と言うのが基本コンセプトなのだが。ルビーを単身潜り込ませるのは兄として承服出来ないと、大学生である大輝も鏑木にプレゼンして参加しているのであった。

「『帝国演劇賞最優秀男優』で『月9主演俳優』が今ガチ参戦って面白いと思いません?」

「うん採用♪」

「ってな感じで一発OKだったのは助かったぜ」

「もうっ! 番組は鷲見ゆきと熊野ノブユキのカップリングが中心になって、そこに嫉妬心を見せるケンゴって流れになってるからいいけどさぁ。大兄ぃの私への絡み方があまりにお兄ちゃんで、『守ってあげたい天然系妹』キャラってのが定着してるんですけどぉ~~!!」

 自分の描くアイドル路線とは乖離したイメージが築き上げられていることに不満なルビー。

『いや事実だろ』

 息を合わせるように同時にツッコむアクアと大輝であった。

「まあ、俺としては頼り甲斐のあるお兄ちゃん設定固まると、年下の可愛い女の子と絡む闘値(とうち)下がるからありがたいんだけどな」

「そっちが本音かーい!」

 思わずツッコんでしまうルビー。

閾値(しきいち)な。漢字読めねーのは遺伝か?」

 ヘンなところは間違いなく兄妹だとツッコむアクアであった。

「そういう所は上原さんソックリだなぁ大輝くん。それにしても気になるなぁ。ルビーと大輝くん以外興味ないから顔と名前は全く一致しないんだけど、確か番組は〝男女6人〟でしょ?」

 今までの会話に出てきたのは5人だ。つまり番組で浮いてる少女が一人いると指摘するアイ。

「ああ。黒川あかね。俺と同じ『劇団ララライ』所属の看板女優。舞台でこそ輝く少女だが、リアリティーショーには全く向いてねぇ。俺はやめとけって忠告したんだけど『愛を知らなきゃかなちゃんに追い付けない』って頑なに譲らなくてな。その子が危なっかしいと思ったから参加をより固めたって経緯もある」

「えっ? その子有馬に対抗心抱いてるのか?」

 かなの名前が出て来たことに思わず反応するアクア。

「ああ。彼女は有馬に憧れて演劇の道を目指したんだが、初めてのオーディションで鉢合わせたようでな」

 

 

「かなちゃん、ほんもの……えっと……わたしかなちゃんのファンで……」

 オーディション会場でかなと邂逅したあかねは、緊張したしろどもどろの声でかなに自己紹介する。

「……。……」

 しかしあかねの声はブツブツと台本を読み込んでいるかなの耳には届かなかった。

「~~! かなちゃん!!」

 小さい声じゃ届かないと思ったあかねは、思い切って大声でかなに呼びかける。

「何? アンタもオーディション受ける子? かなの邪魔して欲しくないんだけど」

 ピクリと反応し、邪険に扱うかな。

「ごっ、ごめんなさい。わたし、かなちゃんのファンで、ずっとあこがれてて……」

 改めて想いを伝えるあかね。

「ふ~~ん。じゃあこのオーディションはかなで決定ね」

「えっ?」

 一瞬何を言ったのか分からないあかねだった。だが、理由はすぐさま判明した。

「ぐすっ! 全然かなわなかった……」

 演技力は歴然としていた。かなは素人目でも分かるほど他の候補者より一つも二つも頭が飛び抜けていて、経験値の足りないあかねでは到底太刀打ち出来ない相手だった。

「ほら言ったとおりでしょ? 今のアンタじゃ全然届かない」

 オーディション会場の外で泣き崩れるあかねの帽子を、ぽふっと叩くかな。

「うっく。どうすればかなちゃんみたくなれるのかなぁ?」

「それがダメなのよ」

「えっ?」

「憧れってのはね、最初から負け確なのよ。追い付きたいって思いばかりじゃ決して辿り着けないものだから」

「じゃあどうすれば?」

「なりたいじゃなくて、追い越したいって思わなきゃね。さっきアンタ、かなに聞いて欲しくて大声出したでしょ? あの時アンタは間違いなくかなの視界に入って来た。そーいう爆発力が必要ってワケ」

「あっ……」

 かなの言っていることが心で理解出来泣き止むあかね。

「もっとも。アイツの輝きには全然届いていないけどね」

「えっ?」

 その時あかねは思った。ひょっとしてかなちゃん自身が追い越したい人がいるから、こんなにも輝けるの。だから振り返って私を見てくれる余裕すらないのと。

「後はそうね……」

「まだあるの?」

「ええ! 愛よ!!」

「えっ? 愛?」

「かなにはね、将来大女優になるって約束した大切な人がいるの!! その人が見てくれた夢に辿り着いて改めて求婚するの!! だからこんな所で立ち止まっているヒマなんてないの!!」

 

 

「……ということがあったんだそうだ」

 あかねより聞いた昔話を語り終える大輝。

「えっ? ロリ先輩おとーさんにクソデカ感情持ってるとは思ってたけど、そこまで複雑骨折してたの!?」

「例え表現としては微妙にズレてるぞ妹よ」

「まあ、せんせは魅力的だから仕方ないけど。あかねちゃんって子は危険かなぁ」

 私も嘗てそうだった。さりなちゃんとせんせの関係を羨ましく思って、本能的に愛に飢え求めていた。その結果未成年で子供を産むことになってしまった。アクアとルビーを授けられたことに後悔はないが、今のあかねにはあの時の自分のような危うさを感じてしまうと思うアイであった。。

 

 

「しかし、そんな平凡な高校に入学するとは勿体ないな。君ならもっと上を目指せただろう」

 放課後。アクアはとある場所に毎日のように通い続けていた。

「大事なのはどこで学んだではなく、いかに積み重ねたかだろ? 医者になるのに出る学校は関係ないのはアンタが証明してる」

 そうアクアが声かけるのは、アメリカより帰国し日本で開業した譲介であった。

「それは言えてるな」

「にしても、アンタからも律儀に約束守り続けてアイドル続けてるババアに一言言ってくれないか? ルビーの奴は『ママってばいつまでも若い~~』って前向きだけど、30過ぎた母親がフリフリした衣装着て踊ってるのはキツいぞ? 巷じゃアイドル界のキングカズとか武豊って言われてる始末だぞ」

「アハハ!」

「流石に未成年アイドルユニットが売りだったB小町所属で居続けるのは厳しいだろうって、さりなさん卒業に合わせてソロに転向したけど」

「そう言えばツートップ失うとグループの存続の危機だって新メンバー募集してた時、富永総合病院の患者さんの娘さんも応募したんだっけ?」

「ああ。MEMちょと名乗っていてな。今では母さんに代わるB小町のセンターだ」

 過労で倒れ富永総合病院に入院したMEMちょの母親は、担当医だったゴローに身の上話をし、アイドルを目指している娘がいる旨を語った。するとゴローからB小町の新メンバー募集中の話を聞き、オーディションに合格し加入したのであった。

「しかしルビーちゃんもアイさんと一緒にステージに立つのが夢なんだろ? 君も夢を追っているのなら、とやかく言う権利はないんじゃないかな?」

「それはそうかもしれないが。譲介さん、そろそろ」

「ああ」

 アクアと譲介は揃って手術室へと向かう。急患がいるわけではない。シャドーオペ。医療免許を有していなかった学生時代、一也や譲介が幾度となく繰り返した行為だ。アクアもそれに習い研鑽を重ねている。

「君の目標は脳外科医だっけか?」

「ええ。父さんがT村で見せた技術が忘れられなくて。専門医を目指すならって」

 道は険しいがなってみせると手を進めるアクア。

「しかし、一つ重大な問題がある」

「何が?」

「名前だ! アクアマリン先生なんて呼ばれたら死にたくなるぞ!!」

 物心ついた時から自分の名前には嫌悪感を抱いていたが、医者になって子供にからかわれて本名で呼ばれるのは悪夢でしかないと。

「百歩譲って宝石の名前を付けるのはまだ分かる。だが玻璃とか翡翠とか、和名でマトモなのはいくらでもあんだろうが! なんでよりによって英語をセンスのカケラもねぇ当字で読ませるんだよ!! しかもアクア、アクアってアクアマリンってフルネームで呼んだことねぇし!! 一生恨むぞあのクソババア!!」

 アクアがどこか影がありアイに対して不遜な態度を取るのは、8割方本名が絡んでいるのであった。

「ハハハ! 普通は名字で呼ぶから杞憂じゃないか?」

本名真田徹郎なのにドクターTETSUなんてローマ字表記で呼ばれてる闇医者いるのに、まったく説得力ねーんだよ!!」

「だったらいっそのこと開き直ってドクターAQUAなんて名乗ったらどうだ?」

「待て。どうして英語表記なんだ?」

「名前に〝K〟が入るのは畏れ多いだろ?」

「ぐっ! それは確かにそうだが……」

「それかK先生にあやかってドクターQってのもいいんじゃないか?」

「本名一文字もねーじゃねーか!!」

 

 

「ふう。今日はこれくらいにしておこうか」

 会釈をしながら1時間ほど行い、取り止める譲介。

「はい譲介さん。それにしても前々から思っているんですけど、渡米してから随分ガチムチになりましたね」

 幼少時見た時にはスラッとしていたイメージだったが、帰国後は体型が一変していて本人だと気付かなかったと述懐するアクア。

「この程度。一也に比べたら全然大したことないさ」

「あの人は異次元ですよ。苺プロダクションに『ぴえヨン』っていう覆面筋トレ系ユーチューバーが所属してるんですが……」

 半年くらい前に企画された番組の内容を語り始めるアクア。

 

 

「ピヨピヨピヨ~~! ぴえヨンチャンネルぅうう!! ハイ今日はネ! 新企画やるヨー。題して! 『ぴえヨン筋肉百本勝負』ぅうう!! 実は社長のお知り合いにね、やたらとガタイのいいお医者さんがいてね! その人と筋肉勝負することになったピヨ~~!」

「どっ、どうも初めまして。くっ、黒須一也で、です……!」

 ユーチューブ初出演でガチガチに緊張した一也が画面に姿を現す。

「そして二人の勝負を見届ける司会&審判兼任の、苺プロダクション所属の新人アイドル、星野ルビーでーす!! 公平で公正な判断するからヨロシクね!!」

 続けてハキハキと踊りながら出て来るルビー。この企画はガチ恋と並行してルビーの名前を売るという側面もあったのだった。

「最初の一本目は単純明快! 腕相撲勝負~~!!」

 カメラの先には木製のテーブルが映し出され、そこで手を組み合わせるぴえヨンと一也。

「あのぉ。本当に本気出してもいいんですか……?」

 いざ勝負が始まる寸前、申し訳なさそうに訊ねる一也。

「もちろんピヨ~~! 真剣勝負(ガチンコ)じゃなきゃ視聴者に伝わらないからね」

「分かりました!」

 ぴえヨンの誠意を受取り腕に力を込める一也。

「それじゃあ百本勝負の一本目腕相撲、開始~~!!」

 ルビーが重ね合った拳に手を置き、離した瞬間がゴングだ!

ぬんっ!!

ア゛ッ!?

 勝負は一瞬だった。一也はぴえヨンの腕を一瞬で叩き伏せただけではなく、メキメキとテーブルにメリ込ませながら粉砕し、ぴえヨンの身体は勢いで一回転し、床にヤムチャスタイルで倒れ込むのだった。

「えっ、えーっとぉ……。なんだかよく分からないけど、筋肉モリモリマッチョマンの変態……じゃなくてスゴいお医者さんの勝ち~~!! ってぇ! う~~んしょ! う~~んしょ! 一也さん肩こだわらないでぇ~~! 勝利のガッツポーズできないよ~~!!」

 十中八九ぴえヨンが勝つと思っていたルビーは、一也勝利時の台詞をまったく考えておらず、突発的な言葉で一也の腕を掴み高らかと上げようとするも、肝心の一也もやらかしてしまったとカチコチで微動だにしなかったのだった。

 

 

「いや、面白過ぎんだろ。仮にも年収一億の筋トレ系ユーチューバーを瞬殺とか商売あがったりだろ。ネットではヤラセじゃねーかって声もあったけど、完敗する直前ぴえヨンが素で驚いてたし、一也さんが『これどうするの?』って狼狽えた顔してたし、こだわるじゃなくて(こわ)ばるなと相変わらずアホ語彙力な妹の反応でガチだって見解になった」

 その後も幾度も勝負を重ねるが、ほぼほぼ一也の圧勝だった。

「唯一ぴえヨンが勝てたのが、『重さ30キロの特大フライパンで二十人前チャーハン炒め勝負』でな。軽々片手で持ち上げる一也さんに対して両手で支えるのがやっとのぴえヨンだったんだけど、一也さんがあまりにメシマズで味の差でぴえヨン勝利って。最早筋肉関係ねぇじゃねーかって、神回認定されてたな」

 ネットではそもそも医者であるというのがブラフなのではとの考察も為され、医者であることを証明するよう苺プロダクションの企画によって一也の医療チャンネルである「スーパーKチャンネル」が開設された。

 一也の博識振りは他の医療チャンネルにも引けを取らず、苺プロダクションの主要チャンネルの一つとなっていた。

「ん? ルビーから着信が」

 ふとスマホの時刻を見れば時間は23時に差しかかろうとしていた。ついシャドーオペに夢中になってしまい、早く帰って来いとの催促だなと渋々電話に出るアクア。

『お兄ちゃん大変なの! 助けて!!』

 

 

「どうしたルビー!?」

 応対するルビーの声があまりに切羽詰まってて語尾を強めに問い質すアクア。

「あかねちゃんが台風の中コンビニに出かけちゃって、全然帰って来ないから心配で捜してるんだけど見つからなくてぇ……」

「分かった! あかねの家とコンビニのルート検索結果のスクショを転送しろ! 俺も探しに行く!!」

 アクアは急いで雨具に着替え、ゴローより受け継いだ医療カバンを持ち出かけようとする。

「譲介さん! ルビーの共演者が台風の中出かけて帰宅してない! 万一に備えて頼みます!!」

「分かった!!」

 そうしてアクアは状況を簡潔に伝え暴風吹き荒れる中捜索へと打って出る。

(黒川あかねの顔は分かる! ルビーがヘマしないか心配で今ガチは欠かさず見ている! クソッ、早まるんじゃねーぞ!!)

 モニター越しに一方的にしか知らない人物だ。しかし危うい状態にあったのは兄さんから聞いている。医者の卵として自殺させるわけにはいかないと、ルートを必死に辿るアクア。

「あれか!?」

 するとアクアの目の前には、覚束ない足取りで歩道橋を登っている少女の姿が目に映った。

(マズイ!?)

 まさか歩道橋の上から飛び降りるつもりか。人違いでも構わない、一瞬でも足を止めなければと、アクアは腹に力を込める。

「あかね! 黒川あかねー!!」

「!?」

 大声で叫ぶアクアの声が届いたのか、あかねは不意に後ろを振り向く。

「良かった、気が付い……」

 アクアが安堵した一瞬だった。突風があかねを襲い傘の骨は一斉に上向きに折れ曲がる。そうして強風に煽られるようにバランスを崩し、後頭部から階段を転げ落ちてしまうのだった。

「あっ……あぁ……」

 アクアの脳裏を過る幼少時のトラウマ。自分の些細な一言により頭部を負傷し血の海へと沈むかな。

「そんなぁ……ただ俺は助けようとしただけなのに……」

 思いとどませようと動いた結果、最悪の結果を引き起こしてしまった。かなの時とは違い善意が悪意として跳ね返ってしまったことにうずくまるアクア。

「うっ……ぐっ……」

 そして心がズタズタに切り裂かれ吐き気を催し嘔吐する。

「うぅあぁ……ママぁ……オレのせいでぇ……」

 ショックにより幼児退行してしまったアクアは、アイにすがろうとする。

 

「大丈夫だよ! だってあなたたちの〝お父さん〟は……私の推しのスーパードクターだから!!」

 

「――」

 絶望の海へと沈みかけていたアクアの心を呼び覚ましたのは、在りし日母が励ましてくれた言葉だった。

「バカヤロー! 何してんだ俺は。父さんの子だろ!!」

 有馬が負傷した時足が震え言葉も出なかった自分とは違い、父さんは真っ先に駆け付け医療行為に及んだ。自分の医者の卵なら目の前の患者を前に怖じ気付いてどうするとアクアは自分に言い聞かせ、ゴローから受け継いだカバンを持ち直しあかねの元へと駆け寄る。

「おい! しっかりしろ! 意識はあるか黒川あかね!!」

 応急処置をしつつ必死に呼びかけるアクア。

(何だっけ、これ……)

 走馬灯が逡巡するあかねの脳裏に映るのは、かなとの邂逅の日だった。

(そうだ……。あの時かなちゃんは愛だって答えた。一体誰をそれほど愛してるんだろって、必死に調べたっけ……)

 それで後年憧れの人はというインタビューにかなが答えたのが、雨宮吾郎という医者だった。

(『それが始まり』の撮影時アクシデントで頭部を負傷して……駆け付けて治療したお医者さんに恋したって……似ている……)

 今の自分がかなの初恋の時と酷似していると思うあかね。

(ということは……)

 目の前にいるのは……

「おいしゃ……さん……?」

「! そうだ! 俺は医者だ! 俺は……」

 あかねが呼び掛けに答え、アクアは自分を鼓舞するように、そしてあかねを安堵させようと在りし日のゴローのように叫ぶのだった。

最強無敵のスーパードクターだ!!

 と――。




お待たせいたしました。約一ヶ月に渡る連載も、いよいよ最終回となります。
最後だから設定詰め込められるだけ詰め込もうと思ってたら、今までで一番文字数の多い回となりました。

……いや、全然終わってねーだろ! あかねどうなんだよ!? 何だかんだでアクア、かな、あかねの三角関係のフラグ立ってない? と思う方もいらっしゃると思います。
今作の基本コンセプトって「推しの子とK2のクロスオーバー」なので、この後の展開は別物になってしまうんですよね。
なので物語は一端終わらせておく必要があると。

まあ、続きは構想していないことはないですね。人間関係が全然変わってしまったので、物語の再構築が大変ですが。
気が向けばアクア、かな、あかねの三角関係を主軸とした話は別タイトルで書こうかなとは。
ちなみに著者は黒川あかね最推しなので、あかねENDにはなると思います。

それでは続きがありましたなら、またお会いしましょう~~。
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