「あの『淑女』様? 僕なんで呼ばれたんでしょう」
と、腕組みする『淑女』様に尋ねる。
ある日のこと、急にやって来た『淑女』様から、訓練への参加を命じられたのである。
それで、後ろをついて歩いていた。
「自分の胸に手を当てて、考えてみなさい」
「胸に……?」
ふむ。なんだろうか。
俺が一体なにをしたというのだろう。ここに来てから、なに一つ問題など起こしたことはないはずだが。
まあせいぜい『少女』様と一緒にイタズラしたり、『少女』様にイタズラしていたくらいで。
「特に思いつきませんね」
「あんたにマトモな軍事行動って奴を叩き込むためよ」
「なるほど。かしこまりました」
先日、作戦内容とか部下とか無視して、単騎特攻したことを普通に咎められていた。
■◆■
というわけで、今後俺が装備することはないであろう、一般ファデュイ兵達と同じ銃火器を装備して、諸々の物資が入ったリュックサックを背負い、他の隊員とともに一列に並ぶ。
「『見習』」
「はい?」
「あんたは元素力禁止」
パ、パワハラ。
「死んでしまいます……」
そこそこ冒険はしてきているものの、身体強化無しでスネージナヤの凍土を行軍はちょっと。
……いやまあ、ほとんど全ての兵士はそうしているんだけど。
「大丈夫でしょ。はい、出発」
そんなこんなで、訓練が開始した。
■◆■
「ガクガクガクガク」
雪を掻き分けながら行軍すること、どれくらいかも不明だが、とにもかくにもチェックポイントまでたどり着いた。
時間の感覚もないが、手足の末端の感覚もない。
「あの。大丈夫ですか?」
そんな風に声をかけてきたのは、周囲の環境にまったく合わない薄着をした水色髪の少女。
気遣いに感謝を述べようと思ったが、口が回らなかったので首だけ横に振る。
「それは大変ですね。とりあえずこれを飲んで、身体を温めておいてください。本格的な治療は戻ってからになりますが、しばらく耐えてください」
戻るまでの間に、手足が取れてないといいけど。
ともあれ、渡された水筒を開けて口をつける。
──ぐぇぇ!
な、なにこれ。飲んでって言われたけど、人間の飲み物じゃないって。消毒用アルコールは飲んで使うものじゃないぞ。
え、いじめられてる俺? 新人いびり?
しばらく休憩した後、ぐるっと回ってスタート地点まで戻ってきた。
■◆■
「なんでそんな死にそうになってるのよ」
「ガクガクガクガク」
「『淑女』様。先に医務室へ運んだほうがいいと思いますが」
「自分で治せるでしょ」
ああ、そうか。もう戻ってきたから、元素力使っていいのか。
切りっぱなしだった身体強化を戻して、全身を温める。
あ、足の指。ええと、よいしょ。ささっとこれも治しておいて、と。
「うっ、うっ。生きてる」
「大げさねぇ。でもまあ、そんなになっても炎を出さなかったところだけは評価してあげるわ」
「うっ、うっ。優しい……あれ、騙されてないか」
ブラックだ。違うか、元素力無しの俺がクソ雑魚かたつむり過ぎるだけだな。他の兵士達はそこまでグロッキーになってないし。
「そうそう、オデット。ついでにコレにマトモな剣術を教えてあげて。今は我流で適当にやってるから」
「はあ。構いませんが、この新兵にそこまでかかりきりになる必要があるとも思えませんね」
「お手数おかけします」
辛辣だぁ。なんも言い返せないがな。
「仕方ありません。剣は持っていますか?」
「あ、はい」
というわけで、人生二回目の戦闘訓練を受けることになった。
試しに剣を振るようにと言われたので、言われるがままいつも通りに剣を振って、めちゃくちゃダメ出しされることしばらく。
そろそろ実践しましょう、ということで模擬戦を行うことになった。
「参りました」
まあ、案の定ボコボコのボコにされたわけだが。
いやぁ、さすがの腕前。タルタリヤほどじゃあないが、見事な剣技だ。
「あなたもこの短い間に、かなりマシになりましたね。でもまだ──」
と、いくつか追加で指摘を受ける。理屈っぽいというか、だいぶわかりやすく教えてもらえてありがたい。
この間タルタリヤに師事した時は、ちんぷんかんぷんだったからな。
「精進します、教官」
「教官ではありません」
「精進します、先輩」
「ええ」
どうやらこれでよかったみたいだ。
「『見習』、あんた、手ぇ抜きすぎよ。それじゃオデットの方に得るものがなにもないでしょ」
「え?」
「すみません。身体強化の微調整って普段やらないもので」
「ならついでに手加減の仕方も学ぶことね」
弾き落とされていた剣を拾いにいく。
神の目を持つ者は、一般人よりも高い身体能力を得る。
が、まあそんな超パワーのまま日常生活を送ることなどできない。
なので身体能力を完全に切ることだけは、スムーズにできるよう練習してある。ただオデット先輩に出力を合わせるとなると、そういうのはやったことないんだよなぁ。
「ではもう一戦、お付き合いいただけますか?」
「……。わかりました」
「ちょっと強めにいくので、怪我させたらごめんなさい」
「あまり私を舐めないでください」
そう言って斬りかかってくるのを受け止める。
流れるように何度か放たれた攻撃も剣で防御、確実にいろいろと教わる前よりも綺麗に動けているな、俺。
ありがたいものだ。
しかし守ってばかりじゃ意味がない。俺も反撃しないとな。
タルタリヤくらい強かったら、殺さないようにするのも簡単なんだが、こんなもんでいいかな。
教わったことを意識しながら、剣を横薙ぎに振るう。
──ボンッ
と、俺の攻撃をガードしたオデット先輩が、地面と水平に吹っ飛んで雪塊に突っ込んだ。
「あ。……。え、衛生兵ー!」
オデト〜♪
・氷元素
・淑女が目をかけてる執行官候補
・才能不足を努力で補ってる
・パンクロックバレリーナ
・テイワットの現地人
見習
・炎元素
・公子が連れてきた執行官候補
・能力の強さだけで戦ってる
・上に逆らわない小市民メンタル
・高次の世界(現実)からの降臨者