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ガタゴトと、機械の馬に引かれながら馬車は走っていた。
意外とスプリングはしっかりとしているのか、中は大きく揺れることはない。
車内にいるのは俺と『淑女』様、それから複数名の兵士達。これだけではなく、後ろにももう何台か続いている。
長い、本当に長い旅だ。
目的地は、はるか遠くの国、モンドだ。
なにをしに行くのかといえば、いつも通りのアビス討伐である。
ただ、ほとんど同時期に『淑女』様も、モンドでの仕事があるとかで、一緒に馬車に乗っているのだ。
はあ。
集団行動ってめんどくせーな。俺一人ならさっさと行って帰ってこれるのに、もう何日もこうして揺られている。
その間、やっていたことといえば、酒を飲まされたり、トランプで遊んだり、後は。
「なかなか上達してきたんじゃない?」
返事をする前に、浮かべていた炎の蛾を消す。
「そうですか? ならいいんですけど」
後やっていたのが、この『淑女』様の真似だ。自分の炎を蛾の形にして、ひらひら羽ばたかせながら飛ばす。
細かいコントロールをできるようになるために、ということらしい。
「まあ私ほどじゃあないけれどね」
「ぐぬぬ」
だが事実である。俺はこの蛾を、複数同時に操るような真似はできないし、どこかに留まらせようものなら発火するだろう。
まあこんなことをしながら時間をつぶして、ようやくモンドにたどり着いたのであった。
■◆■
切り払い、焼き尽くす。
まったく、なんでこうもアビスの魔物がやたらと多いのやら。
モンドでなにか起きているのだろうか。
秘境にたむろっていた魔物を殲滅し終えたところで一息つき、背筋を伸ばす。
「ん? 誰かいるのか」
入り口側の道から足音が聞こえてきたので声をかける。
念のため魔物だった時のために、剣へと手をかけていたのだが。
「おっと。どうやら先客がいたみたいだな」
と、言葉が返ってきた。
現れたのは変わった二人組で、奇妙な衣装の金髪少女と、ふわふわと浮かぶ……なんだこれ。
「……、一応聞いておきたいんだけど、その生き物は魔物ではないよな?」
「おい! オイラは魔物じゃないぞ!」
「おっと。それは悪かった。
どこだったかなぁ。
白髪で、星みたいな飾りをつけたフェイもどき。
なーんか見覚えがあるんだよなぁ。
「フェイでもないと思うぞ。じゃあなんだって聞かれると困っちゃうんだけど」
「この子は私の非常食だよ。だから安心して」
「オイラは非常食じゃない!」
ぷんすかと荒ぶる謎の生き物。
なんだったかなぁ。
ポ○モン……デジ○ン……。
「まったく。こほん、改めてオイラは──」
「いや、パチモンだっけ?」
「誰が偽物だ! オイラはパイモンだ」
それを聞いて、パチンと指を鳴らす。
「おお。そうだそうだ。そういや、そんな名前だった」
今となっては懐かしいが、確か、海外のソシャゲの……どれだっけ。
やってなかった上に、二十年弱前のことで、かなり記憶が曖昧だが、有名なキャラクターだ。
「お前、オイラのことを知ってるのか?」
「うん?」
「オイラ、昔のことをなにも覚えてないんだ。なにか知ってるんなら教えてくれないか?」
おっと。しまった、あまりにも懐かしすぎる前世の記憶が刺激されたせいで、つい反応してしまったが。
記憶喪失系のキャラだったんだ、こいつ。
かなり本気目に問い詰められているが、残念なことにマジでなにも知らない。
「悪いな。それっぽいもんを昔見たことがあるってだけなんだ。納得したけど、名前もうろ覚えだから、ほんとに俺が見覚えあるのがパイモンかもわからないし」
「……そうか、まあ、なんか思い出したら教えてくれよな」
おお。なんか罪悪感。こんなちっこい生き物が悲しそうにしてるとくるものがあるな。
やっとけばよかったな、そのゲーム。いや、ここがゲームの世界かどうかもわからんけど。
「ああ、任せろ」
「はじめまして。私は蛍、よろしくね」
「よろしく。俺は──っていうんだ。好きに呼んでいいぞ。見習でも可だ」
「なんの見習だよ」
「ところで君達はなんでこんなところへ?」
「魔物討伐に来たんだ。けど、見る限り、もうその必要はなさそうだな」
「冒険者協会の仕事かなにかか? 依頼は出ていないはずだが」
冒険者協会はスネージナヤが出資している組織だ。俺が蹴散らして回ってるアビスの討伐依頼は、取り下げられているはずだけれど。
「冒険者協会の依頼じゃないよ。この魔物達がなにかを企んでるみたいだったから、倒していたの」
「ふうん? 俺よりも、なにか掴んでいそうだな。どうだ、ここは一つ共闘といかないか? 見ての通り──」
地面に積もる灰の山に視線を向ける。
「俺はかなり強いからな」
「おう! もちろん大歓迎だぜ。オイラを守ってくれよな」
「勝手に決められてるけどいいのか?」
「う~ん。報酬次第かな」
「勝手に首突っ込んでたんだろうが」
ちなみにどうやら蛍御一行は、現在真面目に金欠だったらしいので、恵んでやることになった。
見習「報酬はモラと原石のどっちで欲しい?」
テイワットを訪れたばかりで金欠の異邦人「す、少し考える時間をくれない」