「これ、溶接しておいて」
「はーい」
『傀儡』様から渡された金属製のパーツを熱してくっつける。
モンドからスネージナヤまで戻ってきて数日、特にこれといって、大きな仕事もなく、彼女の手伝いをしていた。
雪国であるスネージナヤでは、暖房器具は必須だ。
だから国をあげて、あちこちにでっかい機械製品を設置しているのである。もちろん機械なのでたまに壊れては、こうして誰かが修理に向かう必要がある。
「こんな感じでいいですか?」
「どうやって繋げたのよこれ」
「え、こう。熱してですが」
「とても溶接したように見えないんだけど。まあちゃんと繋がってるみたいだからいいわ。プロンニア」
納得いってない顔のまま、受け取ったパーツを巨大ロボのプロンニアに渡す『傀儡』様。
いったいなにが不満だというのか。言われた通り、ぴったり綺麗に繋げてやったというのに。
「ところで、モンドに行ってた時、ロザリンとなにかあったの?」
「どうかしました」
「あなたがお茶会に来る時って大抵、私かコロンビーナが呼んでくるでしょう」
「そうですね」
たまにタルタリヤや『召使』様に引っ張っていかれたり、自分で参加させてーと言いに行くこともあるが。
「でも最近になってから、ロザリンに連れてこられることが増えたじゃない? だから気になってたのよ」
「ああ、そういうことですか。訓練受けたり、酒飲まされたりが増えたからじゃないですかね。モンドでもそこまで特別なことはしてないですよ」
「ふうん。ほんとかしら」
「本当ですよ。一緒に行ってましたけど、一緒の仕事してたわけじゃないですからね。こっちはいつも通りの治安維持でしたし。まあ、今回は風魔龍とかいうのを、珍しく殺さずに済ませましたけど」
「風魔龍……? それも倒してきたの?」
「ええ。モンドで被害出てましたので」
「そういうことね」
「……? どういうことですか?」
なにやら勝手に納得したらしい。
「私が勝手に話すのもどうかと思うから、本人に聞いて……やっぱりなにも聞かずに黙っておきなさい。あなたに深く関わるようなことではないもの」
「あっはい」
「ま、必要ならロザリンから話すでしょう」
よくわからんけど、まあ誰にでも事情とかあるよな。うん。
ともあれ、そんな調子で回された簡単な作業をこなして、なんとか装置が再稼働した。
■◆■
「よ、タルタリヤ。なんだか忙しそうだな」
「やあ親友。サンドローネの手伝いは終わったのかい」
「まあな」
仕事を終えて、グラードまで戻ってきたところ、タルタリヤを見かけたので声をかける。
「なんかあったのか?」
「これからあるのさ。俺も神の心を取りに行くために、出発するんだよ」
「へえ。どこ行くんだ?」
「璃月だよ。岩神の神の心を手に入れにいくんだ」
てことは岩王帝君に会いにいくのか。
「そういえばそろそろ迎仙儀式の時期か」
「よく知ってるね。って、そういや璃月の出だっけ」
「まあな。あんま岩王帝君に迷惑かけるなよ。戦いを挑んだりな」
「それは相手の出方次第かな」
「マジでやるなよ、お前」
タルタリヤが岩王帝君より強いかどうかはわからないけれども、山みたいな槍をぶん投げたとかいう逸話があるからな。
これが実話だった場合、めちゃくちゃ大雑把な戦闘スタイルなわけだ。
ただの神話だったとしても、迎仙儀式で見る岩王帝君の姿はおっきな竜である。
そんなもんが暴れたら、大惨事になることは間違いない。
「ハハッ」
「笑い事じゃないぞ、まったく」
「そうそう。ついでになにかお土産でも買ってきてあげようか? 懐かしいものもあるだろう」
「ん、そうだな。……、なんかそれっぽい菓子でも買ってきてくれ。後は調味料かな。唐辛子があったらよろしく頼む」
「わかったよ。伝言とかはないかい?」
「いや、別にいつでもすぐ帰れるからな」
そもそも休日にはちょこちょこ帰っている。特別タルタリヤに伝えてもらうようなこともない。
「そうそう。せっかくなら万民堂にも寄っていきな」
「万民堂?」
「璃月の飯屋だよ。手ごろな価格だけど、質と量は俺が保証する。ただ一つだけ気を付けないといけないことがある」
と、俺は言った。きっと深刻な表情をしていたことだろう。
「へえ、なにかな」
「絶対に店内では下手なことを言わないように。大変なことになるぞ」
「ほう。それはそれは、興味深いな。どんなことになるって?」
「あそこの店は……めちゃくちゃ軽率に特大大盛りにしてくるんだ。テーブルに山積みの料理を提供されてしまう」
「ああ……それは、大変だね」
「そうだろう。味はいいんだが、美味しいものでも無限には食えないからな」
思い出すだけでも恐ろしい。
満面の笑みで大盛りの食事が運ばれてくるのだ。
「ああ、もちろん、暴れたりもするなよ」
「わかってるよ。むしろ飯屋で暴れそうなのは、ロザリンの方だろう」
「え、ロザリンさんも行くの?」
「そうだね。まったく、俺に付き添いなんていらないってのに」
「ハハッ」
ロザリン様、働きすぎでは。