「なにか弁明はあるか?」
「勘弁してくれよ。もうさんざん説教は食らってきたって」
璃月に出向いてしばらく、スネージナヤまで戻ってきたタルタリヤにアイアンクローをかます。
顔を掴まれているというのに、意外とスムーズに話すなこいつ。慣れてるのか?
「なんだ、もう小言は言われた後か。ならいいか」
「いいのかい?」
「どうせ同じようなことを言うだけになるしな」
そう言ってアイアンクローを外す。
「で、なんか……いろいろとすごい噂は聞いてるんだけど、実際のところなにがあったんだ? 古の魔神の封印が解けたとか、岩王帝君が死んだとか聞いたんだけど。帝君を殺したのか?」
「いいや。そこは俺じゃない。最初から話すよ」
「わかった。じゃあ、とりあえず移動しようか。茶も出すぞ」
「女性陣にだいぶ毒されてないかい?」
タルタリヤは無視して、自室に移動する。適当に彼を座らせた。
その間俺はポットでお湯を沸かして、茶を淹れる。カップを二つ持って、タルタリヤの対面に座った。
「それで、なにがあったんだ?」
「そうだな。一番気になってるだろう岩神が死んだ、ってところから話そうか。これが最初でもあるしね。あれは迎仙儀式の最中だ、俺も近くで見ていたんだが、急に空から岩神が降ってきたのさ」
「降ってきた?」
「落ちてきた、でもいいよ。ともかく儀式の場に、岩神は死んだ状態で現れたんだ。もちろん、すぐ大騒ぎになった」
「なんとまあ」
神って死ぬんだ。いや、そりゃあ死ぬか。大昔は神同士で戦争なんてしていたらしいし、その時の跡や神の死体が悪さをしているなんて話も聞く。
「問題はどこの誰なら七神を殺せるのか、だな。他の神が戦争でも吹っ掛けてきたならもっと大騒ぎになってるだろうし……七星なら儀式の場にはいたよな?」
「おっと。君もそう考えるのか」
「も? タルタリヤも同じ推理をしてたのか?」
「いや、俺じゃなくて相棒が同じように考えてたのさ」
「誰だよ相棒。ロザリン様か?」
「君も会ったことあるだろう。モンドでは一緒に風魔龍と戦ったって聞いてるよ」
「……? 蛍のことか? 金髪の少女の」
「そうそう、彼女もその場にいてね。見るからに璃月の者じゃないからだろうけど、容疑者として追われていたんだ」
なにやってんだか。
自分から首突っ込んでたモンドの一件はともかく、璃月でまでこんなことに巻き込まれるとは、なかなかに不幸体質。
「……」
「どうかした?」
パイモンがソシャゲのキャラだとして、どう見てもプレイアブルではないよな。
FG○ならフ○ウ君みたいなマスコット枠だ。あからさまにちっこいし。
と、考えると、もしかして蛍がこの世界の主人公なのか?
だとするならいろいろと納得がいくな。お人好しで巻き込まれ体質、いかにも主人公って感じだ。
蛍が主人公のソシャゲだとするなら、俺達ファデュイは。
「なんでもない、続けて」
「そうかい? ならいいか、それで千岩軍に追われていた彼女をファデュイで匿って、真相の究明を始めたんだ」
「そうだろうそうだろう」
我々ファデュイは全大陸の守護者。
冒険者協会を運営したり、一国での対処が困難な事態に対して戦力を派遣する正義の組織だ。
「で、それと同時に俺は岩神の神の心を入手するためにも行動していたんだ。順当に考えれば、どこかへと運ばれた岩神の死体を見付けられれば神の心も手に入るだろう。そう思って調査をして、ついに黄金屋にあることを突き止めたんだ」
「うん?」
「だがそこには先客が居てね。そう、彼女がいたんだ」
「ええと?」
「神の心をめぐって戦いになったんだけど、いやあ強かったね。魔王武装まで使ったというのに、戦いには負けてしまったよ。でもあれは楽しかった! いい戦いだったよ、俺ももっと精進しないとな!」
「はい?」
「せっかく封印を解いた渦の魔神とは戦えなかったのだけが心残りだが、おっと、悪い悪い。この辺は岩神の死とは関係なかったね」
ここ悪の組織じゃね? ヤバ。
え、なにをしてんのこいつ。
「あの……お前なんで渦の魔神の封印なんて解いてんの?」
「それなら簡単だよ、岩神は死んでなかったんだ」
「おお、なんか複雑になってきたな」
つまり儀式の場で死んだ、ってのは偽装工作だったわけだ。
まだワンチャン岩王帝君が邪神だった可能性があるか。
「だから岩神をおびき出すために渦の魔神を目覚めさせたんだ」
だーめだこりゃ。擁護のしようがない。あまりにも悪役すぎる。
「はあ……まったく。やっぱりお目付け役は必要じゃねーか。……ていうか一緒に行ってたロザリン様はなにやってたんだか」
「そう! 聞いてくれよ、ロザリンは岩神の死の偽装を手伝っていたんだ!」
「どゆこと」
「俺が頑張ってた裏で、俺にはなにも言わずに、岩神が死を偽装し、舞台から降りる手伝いをする代わりに、神の心を貰う、みたいな契約を交わしていたらしいんだ」
「うおお、ロザリン様ぁ!」
これは『淑女』。脳筋バカのタルタリヤと違って、おお、なんとスマートに事態を解決しているのだろう。
知らんけど、風神の神の心もスマートに譲ってもらったんだろうな。
というか、それでようやく話の流れが飲み込めてきた。
神を引退したがってた岩神が、ロザリン様と協力して自らの死を演出。
代価として神の心を払った。
でもそういう契約を結んだ、ってことをタルタリヤに連携していなかったから、神の死に振り回されていろいろやってたと。
「なるほどねぇ。うーん、とりあえず、タルタリヤにはもう一回医務室行ってもらおうか」
「よしきた、やろう!」
くそう、個性が強すぎて勝てない。
見習「それはそれとしてタルタリヤに情報共有してれば、こんなことにはならなかったのでは?」
淑女「岩神との契約の一つに、璃月に試練を与えて、乗り越えられるか試すってのもあったのよ。つまりタルタリヤには問題を起こしてもらいたかったってわけ」
見習「なるほどなるほど」