『見習』の性別は可変ということになった
ソシャゲ原作のオリ主だから仕方ないね
……原神主人公の性別は変更不可ですが
「あの?」
「なんです?」
「あ、いえ、なんでもないっす」
話しかけてきた部下が引っ込む。なんだったんだろうか。まあいいか。
再び視線を海の向こうに戻す。
船なんて久々に乗ったが、しょっちゅう空を飛び回っているからか、前世に比べてぜんぜん酔わなくなったなぁ。
先日、『道化』様からロザリン様の死を聞かされた後のことだ。
彼からこう持ちかけられた。
「戦力の補充を行わねばならない。そこでだ、そなたに執行官の任に就いてほしい。執行官候補は複数存在はするが、『淑女』の抜けた穴を埋めるのであれば、実力的にそなたしかおるまい」
「ええ、もちろん。構いませんよ」
「そうか。では今日よりそなたが執行官第八位──」
「ただその代わり、一つだけお願いがあります」
というわけで、執行官の任を引き受ける条件として、最初の仕事は稲妻に決まった。
名目上、特使として送った執行官を殺害した稲妻への報復。
を、提案したんだけれどそれは却下されてしまったので、俺の仕事はメッセンジャーだ。
雷電将軍へスネージナヤの立場を伝える役目である。
問題は起こさないようにと言われているので、残念ながら大々的に暴れたりはできない。
将軍の顔を見たら、現地の兵を拾って引き上げることになるだろう。
■◆■
長い船旅の末、稲妻へとたどり着いた。
最近まで鎖国していた島国らしいが、日本モチーフって感じが強く、どことなく懐かしいような気になる。
どんな治世をしていたんだろう、と少しばかり情報収集をしながら、案内の軍人──というか侍達に稲妻城へと案内された。
「──以上がスネージナヤとしての立場になります」
正座するとかいつぶりだろうか。
まあともあれ、城内の頂上、雷電将軍の部屋にて彼女へとスネージナヤからの文を読み上げ終えた。
後ろに座っていた部下達も、なにやらほっと胸を撫で下ろしているようである。
まったく。
俺が後先考えずに襲いかかるような人物だとでも思っていたのだろうか。
「わかりました。ではそのように」
「もちろんです、将軍。時に城下町で聞いたのですけれど」
「なんでしょうか」
「どうも将軍に──決闘を挑んでもいい、法があるとか」
途端に空気がピリッとひりつく。
「仇討ち、というわけですか?」
「もちろん、受けてくださいますよね?」
「ええ。それでは始めましょうか」
周りが口をはさむ間もなく、さらりと雷電将軍は承諾した。
「ちょちょちょっ──」
「場所だけ変えませんか? 僕は気にしませんが、ここで暴れるのは被害が大きそうですしね」
「構いません」
周りを気にして本気になれなかった、なんて言い訳をされたくないし、したくもない。
まあ今の精神状態で、周囲に気を配りながら戦えるわけもないのでね。
「なにを考えているんですか、あなたは!?」
「でももう決まったから。ほら移動するよ」
■◆■
二人を置いて、船が無人の島から離れる。
ある程度、距離を離したところで停留した。
「なんなんだあの人、『淑女』より滅茶苦茶だぞ」
「見ろよ、のんきに手ぇ振ってやがるぜ」
「しかし、ほんとに勝てるのか? いくら神に匹敵する、なんていったって、相手は七神だぞ」
どうにでもなぁれ、と新たなる上司のかじ取りを諦めた兵士達は、甲板上で腰掛けながら、島の様子を見物していた。
そこへ船内からパタパタと慌ただしい足音が上がってくる。
「どうしたんだ、急に船を止めて。なにかあったのか?」
「いや、なにもないぞ。戦いを見届けないわけにもいかないし、終わったら回収に向かわなくちゃいけないだろ」
「馬っ鹿! 急いで船を出せ! ここじゃまだ──」
ズ──っと、斬撃が海を割いた。
遠く、はるかかなたまで、静かに分かたれた海は、少しの間を開けて元に戻る。
「な、なんだ今の」
「まさか今のが、雷電将軍の無想の一太刀」
「忠告するわけだ。あんなのに斬られちゃたまらない」
島に背を向けて船が走り出した瞬間、天を突くように火柱が上がる。
先の一閃とは正反対に、ひたすらに荒っぽく、火元を中心に瞬く間に水が泡立ち、爆発するように海が涸れた。
高温の水蒸気が船を叩く。
「さ、最大船速! 飛ばせ飛ばせ! こっちは範囲攻撃だぞ!」
戦場となった島ではなく、その上空で炎と雷が響き、衝撃が船を揺らす。
■◆■
最初の一撃で島が蒸発して足場が無くなってしまった。なので仕方なく空を飛び回りながら将軍と切り結んでいる。
俺が飛べるのはいいとして、将軍も空中を走れるとは思わなかった。
「しかしまあ、この中で戦闘続行できるとは、神ってのは頑丈なんだな」
土塊が気化するような炎だ。気温だって、まともな生物なら即死するほどに上がっている。
のだが、それだけで死ぬような様子はない。
ボ、と将軍の長い髪の先が発火して、彼女は素早く手にした刀で自身の髪を斬る。
それから周囲を見渡した。
「決闘としてあまり望ましくはありませんが、これほどの力がこれ以上、振るわれるのは見過ごせませんね」
刀を持っていない方の手をこちらへ向けると、電気が走り、なにかが彼女の手元へと飛んでいった。
「これで」
なにしてんのかはよくわからないが、足下で爆発を起こして、動きの止まった将軍に飛びかかり、刀を持った方の腕を斬り落とす。
「まさかそんな……」
剣をひるがえし、反対の腕も斬って、海底に蹴り落とす。
干上がって煙をあげる地上へと将軍は落ちた。俺も地上へ降り、彼女の前に立つ。
「俺の勝ちだな」
「……そのよう、ですね。しかし、この腕では自刃もできませんか。介錯をお願いできますか」
「ははは、潔いな。死ね」
将軍の首を刎ねる。
ふう……終わったか。
いやはや、復讐ってのは素晴らしいな。気持ちがスッとしたよ。
にしても、なんかこう、斬った感じが変だったんだよな。
「……なんだこれ、ロボット……?」
地面を転がっていた首を拾い上げる。断面からは、明らかな人工物が覗いていた。
「え、もしかして七神ってみんなロボットなのか……? ──っ!?」
壊れた機体を中心に、闇が広がった。
■◆■
「ようこそ! 冒険者協会へ」
「キャサリン!」
スメールへとたどり着いた旅人とパイモンは、真っ先に冒険者協会の支部へと向かっていた。
旅の道中である噂を聞いたからである。
「どうかなさいましたか?」
「変な噂を聞いたんだ。璃月の岩神に続いて、稲妻の雷神も死んだって。なにか知らないか?」
「その話であれば私も聞いていますよ」
「ほんとか! なにがあったんだ?」
「私の知る限りでは、ファデュイの執行官が決闘を挑んだようです」
「執行官が! だ、誰がそんなことを」
「確か……第八位『
このコードネームを出す直前に『見習』女の子説が出るとは