ここ悪の組織じゃね?ヤバ   作:駆け出し旅人

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研修

 今日は実地研修。もとい強いんだからなんとかしてこいと投げられた戦場に来ていた。

 よその国との小競り合いをしているらしい。

 

「はじめまして、先輩方」

「来られましたか。こちらへどうぞ」

 

 と、拠点らしいテントの中に通される。

 そこで簡単に戦況の説明を受けて、それから意見を求められた。

 

「どうされますか?」

「俺は別に指揮官ってわけじゃあないんだけどなぁ。う〜ん、俺が一人でやるのが一番楽そうだが」

「ほう、それはそれは。ではそれで行きますか」

「あ、いいんですね。じゃあ下がらせといてください」

 

 なんだ。人を率いる能力的なものを求められていたわけじゃないのか。

 この方が気が楽でいいな。

 

 しばらくして、部隊の撤退が完了したらしく、俺は一人、剣を担いでトコトコ歩きながら前線に向かった。

 

「部隊長、いいんですか?」

「ああ。『公子』様の推薦だかなんだか知らないが、好きにさせてやればいいさ」

 

 ■◆■

 

 懐から時計を取り出して、敵軍に向けて大声で叫ぶ。

 

「もしも〜し! こちらファデュイだ! 今から五分後に攻撃を始めるから、死にたくない奴は離れとけー!」

 

 よし。伝達完了。

 その辺の段差に腰かける。

 

 ヒュウと矢が飛んできて、俺に当たる前に燃え尽きた。続けて元素力を纏った矢が飛んできて、同様に燃え尽きる。

 何度か繰り返していると、剣やら槍やらを持った兵士が走ってきた。

 

 が、結局は途中で足を止めて遠巻きに眺めたり、何かしらの遠距離攻撃をするに留まっていた。

 ああ、何人かは無理に近づこうとして、灰になっていたが。

 

「あ〜、そろそろ五分だけど逃げなくてよかったのか?」

 

 まだ残っていた兵士達は、誰かの撤退命令と共に引き始める。

 逃げ切るの待ってやろうかな。

 いやでも五分後に攻撃するって言ったしな。

 ちゃんと逃げてれば、だいたいあの辺までは行けてるだろうか。遠目にも、俺の警告を聞いて即刻逃げ出した兵士の姿がちらほら見える。

 

 安全圏はその辺りってことでいいだろう。

 立ち上がり、剣を抜いて、炎を纏わせ、大振りに一薙ぎする。

 過たず元素の炎は、設定した安全圏よりこっち側にある、あらゆる可燃性物質を灰にした。

 

 ■◆■

 

 仕事を終えて、俺はスネージナヤパレスまで戻ってきていた。

 報告書の作成やらが残ってはいるが、まあ急ぎではないし、今日は久々に暴れたからなぁ。書類仕事は明日にしよう。

 そう思っていたところに呼びかけられる。

 

「戻ってきていたのか」

「『召使』様。はい、無事に戻りました」

「そうか、何よりだ。ふむ。ちょうどいい、この後時間はあるだろうか? もしよければ少し付き合ってくれないか」

 

 これがタルタリヤからだったらNOを突きつけていたんだが。

 まあ『召使』様、美人だからな。

 美人の女上司からの依頼なら多少の残業くらいは許せるか。

 

「ええ。もちろん構いませんよ」

「わかった。では行こうか。ところで君は」

「なんでしょうか」

「自転車は持っているか?」

 

 ……? 

 

「いえ? 持っていませんが」

「そうか。なら徒歩で行くとしよう」

「あ、はい」

 

 目的地どこだか分かんないけど、チャリで行こうとしてたのかこの人? 

 

 そんなわけで再びパレスを離れて、城下町に繰り出していた。

 

「ファデュイに入る前にもスネージナヤには来たことがあるか?」

「いえ。ありませんね」

「なら色々と他国とは違っていて困惑することも多いだろう。分からないことがあれば聞きに来るといい。いや、そういえばタルタリヤの推薦だったか。なら彼に聞きに行くのでもいいな」

「そうですね。機会があれば頼らせていただきますね」

「ああ。そうだな、さしあたり土地勘の無い君に、目的地に着くまでの間、簡単に街案内でもしようか」

「本当ですか? ありがとうございます」

 

 それで『召使』様の案内を聞きながら、引き続き歩いていった。

 

「あっちの道をまっすぐ行くと酒場がある。いい店だ。酒を嗜むなら行ってみるといい」

「そこの定食屋はおすすめだ。飯時に来るのもいいが、日持ちするものを包んでもらえば遠出する時も持っていける」

「服か? それなら、いや、そういうのはタルタリヤに聞いたほうがいいだろう」

 

 なんてしばらく話を聞きながら歩いていると、とある地点で足が止まる。

 

「着いたぞ」

「ここが目的地……ですか」

 

 特に何でもなく、普通に町中だった。

 

「ああ。すまないが、君にも卵を買ってきてほしい」

 

 卵をかってきてほしい。

 狩ってきてほしい、かな。む、ファデュイの隠語か何かだろうが。

 卵とは誰のことだろう。

 

「わかりました。ええと、もう少し詳しく話を聞かせていただいても」

「うん? ああ。今日は卵がセールなんだ。だがお一人様一つまで、でね。……もしかして君も卵が必要だっただろうか」

 

 ……? 

 

「あ、いえ」

「そうか。ならよかった。代金は後で渡そう」

「あ、はい」

 

 ……全部暗号か何かでできた会話、だったのだろうか。

 わからないから、言われた通りに、額面通りに卵を買って、店の前で待つことにする。

 怒られたらその時はその時か。

 

「待たせてしまったか」

 

 十数分後、両手いっぱいに食料品を抱えた『召使』様が店から出てきた。

 ……?

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