ここ悪の組織じゃね?ヤバ   作:駆け出し旅人

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紅茶

「何を持ってきたんだい?」

「その辺の有名だって話の店で買ってきた」

 

 土産を片手に、俺はタルタリヤと並んで通路を歩いていた。

 

「あんま深く考えずに選んだけど、被ってたら気まずいな」

「まあそんなに気にしなくてもいいさ。気楽にいこう」

 

 とタルタリヤは軽く言うが、俺は多少緊張している。

『傀儡』様に呼ばれてお茶会に出るわけだが、つまるところ上司との飲み会なわけで。

 

「気が重いなぁ」

「なんでそう強いのに、考え方は強者らしくないんだ? 戦士たるものもっとどっしりと構えるべきじゃないかい」

「ほっとけ。根っこは小市民なんだ」

 

 強いだけで、名家の出でもなんでもない元日本人の俺だ。

 そんなメンタルの強さは持ってない。

 

「それよりタルタリヤは何持ってきたんだ?」

 

 タルタリヤに、茶菓子の中身を尋ねる。

 

「カップケーキだよ。ほら」

 

 そう言って手にしていた紙袋の口を開ける。

 件のカップケーキは箱に入っていて直接は見えなかったが、それっぽい綺麗な包装がされていた。

 それから箱の上には──。

 

「ん? こっちは」

「ああ。俺が愛用してるやつを持参したのさ」

「へえ」

 

 クラッカーでも出るのかな。

 

「なんか意外だな。甘味にこだわりがあるとは知らなかった。でもなんか、オシャレでいいな」

「そう言われると照れるな。君もいるかい?」

「ありがと」

「お礼は手合わせしてくれれば十分さ」

「許可が出たらな」

「やったね。申請は俺から出しておこう」

「早まったか」

 

 ■◆■

 

「あら。もう来るなんて、殊勝な心がけね」

 

 到着早々になかなかのお言葉で迎えられる。

 集合場所に指定された部屋で『傀儡』様は椅子に座って、御付のロボット、プロンニアが準備をしていた。

 

「親友があまりにも急かすからね」

「そうね。アナタに早めに来ておこうなんて考えはないでしょうし。立ってないで座ったら?」

「失礼しまーす」

 

 入り口付近の椅子に座った。

 タルタリヤに引っ張られて、奥の席に連れて行かれる。

 ひどい。

 

「そんなに硬くならなくてもいいわ。ここでは無礼講よ。リラックスした気持ちでないとお茶もよく味わえないでしょう」

「あ、そう? ならそうさせてもらうぜ」

「最低限は配慮しなさいよ」

 

 タルタリヤが持ってきた茶菓子を開封して、置いてあった皿に出す。

 ああ、なるほど。これでシェアしてるのか。

 俺も持参した品を同じように皿に並べる。

 並べ終えたところで、『傀儡』様の指示を受けたプロンニアが紅茶を持ってきた。

 

「いい香りですね」

「ふふ。そうでしょう、ほら冷めないうちに味わいなさい」

「そうします」

 

 マナーなんか分からないけれども、無礼講と言われたばかりだ。そこまで気にしなくてもいい、といいなぁ。

 

「おっと。忘れてるよ」

「あん? 何がだ」

 

 カップを手に取った俺をタルタリヤが呼びとめる。

 彼は持ってきていた愛用だというジャムの瓶を開けると、中身を自分の紅茶へと投入した。

 

「はい。好きに取っていいよ」

「え……ありがとう?」

「アナタ達ねぇ! それをやめなさいと前も言ったでしょう!」

 

 あれ、俺にも矛先向いてる? 

 

「紅茶は風味を楽しむものよ。それをジャムなんか入れて台無しにするなんて信じられないわ!」

「おいおい。これはスネージナヤの伝統的な紅茶の楽しみ方だ。それにこうした方が美味しいしね」

「鼻が詰まってて香りが分からないのかしら。それか人の話も聞こえないくらい耳が詰まってるのかしらね。これは私が主催しているお茶会なのだから、フォンテーヌ式に合わせるのが筋というものでしょう!」

「でも親友も『オシャレ』だって言ってたから、二対一だよ」

「はあ!?」

「待てタルタリヤ。俺に振るな」

 

 謎の言い争いに巻き込まないでくれ。

 きのこたけのこ戦争みたいなもんだろうに、めちゃくちゃ熱くなって喧嘩腰な二人。

 

「そう。アナタも私の敵というわけね」

「俺が何をしたと」

「紅茶を冒涜した罪は重いわよ『見習』」

「俺が何をしたと」

「必ず報いは受けさせるわ」

「謝って。ほらタルタリヤ、俺が悪かったですって謝って!」

「ええ、俺が悪いのかい?」

 

 特別悪びれる様子もないタルタリヤ。

 口喧嘩は人が入ってくるまで続けられた。




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