ここ悪の組織じゃね?ヤバ   作:駆け出し旅人

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体調不良でちょっと目を離してる隙にすごいことに


霜月

 とうとう研修も終わり、正式に仕事が振られるようになった。

 女皇様から直々に与えられた俺の仕事は、時間稼ぎだ。

 何に対する時間稼ぎなんだろう、と思いはしたが、まあそんなことをその場で俺が聞けるわけもなく、業務命令だけ受け取って皇室を出ることになった。

 

「や。初仕事なんだってね。何やるんだい?」

「暇なのか?」

「おいおい。随分な言い草だなぁ。友達を心配して来てやったっていうのに。ま、療養中で暇なのもあるけどね」

「なんでまたそんなボロボロに……」

「お、聞いてくれるかい。俺の武勇伝を!」

「あー……僕今から仕事なんですよ『公子』様。『少女』様とか今日も暇してると思いますよ」

 

 にっこりと笑みを浮かべて俺は言った。

 

「ハハッ。会ったらそうするよ。それで女皇様からどんな命令を受けてきたんだ?」

「アビスを倒してこいとさ。とりあえず今回はナド・クライとかいう田舎に行くことになったんだが」

「へぇ〜」

「……。休んでろよ。連れて行かないからな」

「まだ何も言ってないけど」

「ともかく今後もアビスの排除が俺の基本業務になるらしい。他国にも回されるらしいんだが、ファデュイってそんなこともやってんのな」

 

 ナド・クライは辺境とはいえスネージナヤの一部だが、他国で起きたアビス被害の解決まで請け負うとは。

 

「ああ。スネージナヤは強国だからね。武力を貸し出して他国に恩を売るってのを時々やっているんだよ」

「なるほど」

 

 要は冒険者の時と同じか。金貰って敵を倒す。

 やること同じだけど転職して賃金上がってハッピーといったところ。

 

「じゃあまあ頑張って働いてくる」

「いってらっしゃい。お土産は適当でいいよ」

「ああ。変な旗とか買っといてやろう」

 

 ■◆■

 

 スネージナヤ自体、過去に避けていたわけだから、当然のようにナド・クライにも行ったことがない。

 あったらワープして移動が楽だったんだけどな。

 仕方がないので、普通に飛んで向かうことにする。

 

「よっ、ほっ」

 

 周りに迷惑かけないよう、壁や屋根を足場に高く跳ねて、空中で炎を噴射した反動でかっ飛ぶ。

 ふぅ、寒い寒い。

 スネージナヤの冷たい空気を切り裂きながら飛ぶこと数時間。

 日も傾きかけてきたところで目的地が見えてきた。

 

「そぉれ」

 

 急降下して、それっぽい敵を焼き払う。

 概ね人型なのだが、頭の代わりに人魂が浮いているような見た目のモンスターだ。

 

「相変わらずアビスのモンスターは変な見た目してんなぁ」

 

 勝手にロウソク人間とでも呼んでおこうか。

 剣を抜いて、それらを薙ぎ払う。

 

「ちょいちょい。そこの兵隊さん。あの発生源ぽいオブジェクトは壊していいやつ? 乗っ取られてるだけで大事なものだったりする?」

「い、いや、壊しても構わないものだが、あれは──」

「オーケー」

 

 ちょうどロウソク巨人みたいなのも出てきたので、まとめて焼き切る。

 

「壊せないからランプで……破壊、できるものなのか。あんたは一体」

「ん、んっ。悪い、答える前に一つ頼みが」

「あ、ああ。なんだ。俺達にできることなら」

「長時間飛んでて喉が渇いてるんだ。先に水をくれないか」

 

 水筒を貰えた。

 

「ぷはぁ〜。あ〜、ありがとう。死ぬかと思ったよ」

「それはこっちのセリフだ。あの規模のワイルドハントをこうもあっという間に。おかげで皆助かった。礼を言う」

「へぇ。現地だとそう呼んでるのか。どういたしまして。まあ気にするな、仕事だからな」

「仕事。依頼で来た冒険者か?」

「ちょっと前まではね。今回はファデュイからの増援としてだ」

「……! あんたファデュイだったのか!」

「どうかしたか?」

 

 なぜ嫌そうな顔をするんだろうか。

 

「まあなんにせよだ。俺はアビス……あー、ワイルドハント? の排除を女皇様から仰せつかってる。他に救援が必要なとこはあるか?」

「く。背に腹は代えられないか。東の方でも灯台の灯りが見えた。あっちも困っているはずだ。頼む。助けてくれ」

「はいはい。任せとけ」

 

 ■◆■

 

 戦いは一日では終わらず、日を跨いで続いた。

 途中、ちょっと強めなのも居たような気がするが、徹夜だったからあんまり記憶にない。

 

「ねむ……だる」

 

 祝勝会だか、炊き出しだかが行われる中、俺は足早にそこを抜け出そうとする。

 

「そなたは確か、ファデュイから来たという」

「あー、何眠いんだけ──うわっ」

 

 この世界、露出度高めで過激な格好してる奴はまあまあ多いが、その中でもかなり上位に来るような女だった。

 衣装の肌色面積も凄いが、体型もすご。

 っと。頭に鹿の角が生えているな。人外の類か。なら納得だ。

 

「ナド・クライのために戦ってくれたこと、皆に代わって礼を言う」

「どういたしまして」

「私は『霜月の子』のラウマ。礼といってはなんだが、炊き出しで配っている料理をそなたも食べていかぬか」

「いや俺は救援だから炊き出しは──霜月?」

「うむ。そうだな、そなたにもわかるように伝えるのであれば『霜月の子』は月の神を信仰している部族だ。ほら、そこにも像が見えるだろう」

 

 ラウマが指差す先は、別の場所でも見た覚えのある石像。

 頂点には。

 

「ああ、『少女(コロンビーナ)』の信者か」

「コロンビーナ?」

「なんだっけ。昔は別の名前で呼ばれてたって。あんたら的にはそっちのが馴染み深いか。確か……コーラルだっけ?」

「よもやクータルのことだろうか」

「そうだったかも」

「その話、詳しく聞かせてもらえないだろうか」




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