ここ悪の組織じゃね?ヤバ 作:駆け出し旅人
「〜♪」
「ん……」
「〜♪」
「うぅ……なんだよ、こんな時間にうるせぇなぁ。……おっと『少女』様でしたか。これは失礼を。どうかしましたか? 事と次第によってはデコピンくらいはかましますよ」
「あ、起きた」
「はい、起きましたね。起こされましたね。何の用です?」
「今日の私の歌声はどうだったかな?」
「はあ? まあいつも通り綺麗な声だとは思いますが、何です? 執行官のど自慢大会でもやるんですか?」
「それいいね。今度会議で提案してみよう。……カピターノって歌うのかな? もし歌うのなら、色々な歌を知ってそうだよね」
「何しに来たんですか」
「サンドローネの部屋で歌っていたんだけど、サンドローネが『素晴らしい歌声ね。そうそう『見習』もアナタの歌を褒めていたわ。あっちに聞かせに行ってあげなさい。私は忙しいの』って。だから聞かせに来たの」
「……あんの滑稽ロボ……!」
■◆■
「的な感じで人の部屋に入り浸ったり」
「仲が良いのだな」
「まあ、それなりには」
彼女、ラウマの仲間も含めて、周りに人のいないところで『少女』様の話をしていた。
信仰対象の話題だってのに、こんなエピソードでいいんだろうか。
でも無いんだよな。神っぽいエピソードとか。
「それからは、なんでもぜんぜん寝なくても平気だから夜は月を見てる、ってんで仕方な〜く夜の滞在を許して、『傀……サンドローネもなんだかんだ甘いから、仕事の邪魔をしない条件付きで相手してたり。まあ楽しくやってると思うぞ」
「そうか。クータル、いやそなたらに合わせてコロンビーナさんと呼ぼうか。周囲とうまくやれているようで何よりだ」
「まあ、そうかもな……『霜月の子』からは逃げたみたいだし」
「申し開きもない。かつての『霜月の子』は未熟であったし、今もまだそうであろう」
「ふぅん」
里帰りを提案するのはやめておくか。
「他にも聞くか?」
「ああ。頼めるか」
■◆■
「お菓子無くなっちゃった」
「もう全部食べたんですか?」
「うん。他にもある?」
「もう無いですよ」
「え? そんなぁ……」
「ふむ。『傀儡』様のところにならあるかもしれませんね」
「サンドローネの? ……。そうだね。でもバレたら絶対に怒られるよ」
「怖いんですか?」
「ううん。私は月の力で身を隠せるけれど、『見習』は隠れるのはちゃんとできるのかなって」
「ふ。これでも冒険者ですよ。もちろん! と言いたいとこですが、その月パワーで僕も隠せますか?」
「任せて」
■◆■
「何をやっておるのだ、そなたらは」
「この後、月神パワーでサンドローネの部屋に忍び込んでお菓子を見つけたんだが、それでコロンビーナが騒いで見つかっちゃって」
「本当に何をやっておるのだ」
はむはむはむはむ。美味しい美味しい。
とか『少女』様がやったせいで見つかったんだよなぁ。
「てか、俺が言うのもなんだがよくこんな話を信じられるな。コロンビーナを信仰してるんじゃないのか? それとも『霜月の子』にいた頃からあんなノリだったのか?」
「確かに、にわかには信じ難い話ではあった。だがそなたからは強い月の力を感じるのだ。真に月神と関わりがあると信じられるほどの力をな」
「力……なるほど。コロンビーナは事あるごとに月の加護をくれるからな」
俺の身体には月の力とやらが多量に注ぎ込まれているのだろう。ラウマもそれを感じ取ったに違いない。
「ふむ。それもあるが、もっと形ある物を持っているのではないか」
「……もしかしてこれ?」
「そうだ。それは?」
「……コロンビーナから貰った財布」
「月神からの贈り物ということか。本当に仲が良いのだな」
「え、ああ、うん、そだな」
まあ細かいことは説明しなくていいか。
■◆■
数日の遠征の後、俺はスネージナヤパレスへと帰ることになった。
元より期日は定められていたからな。
だがまあやるべきことは終わったと言えるだろう。
アビスの脅威、ワイルドハントは見える範囲は焼き払ったし、途中に見かけたモンスターも焼いておいた。
此度の遠征の目的は万事果たしたと言えよう。
意気揚々と俺は戻り、部下を放置して一人で向かったことを怒られた。
いたんだ。そんなの。
傀儡「あいつアホなんじゃないの」
公子「真面目な顔して意外と話を聞いてないからね」