転生したらTATAだった件   作:ヒナまつり

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その人である証明

 

 昔から海が嫌いだった。

 

 綺麗なように見えて危険がいっぱいなのも、荒れている海が全てを飲み込んでそこにあったものを崩していってしまうのも。全部、全部。

 

 だから、死んで海に落ちていくのを僕は抗った。溶けて消えてしまうのも、情報の海の一部にもなりたくなかったから。

 

 そして、運の良いことに僕のアーツは魂ごと電脳世界に移動することが出来た。あぁ、でもそれは、死に近づき活性源石に満ちた身体による一度だけの奇跡だったみたい。

 

 で、気がついたら僕はこの身体にいた。記憶が欠けていたのはそのアーツでの無理矢理な魂の移動で魂の一部が傷ついたから記憶を失ったんだろう。

 

 けれど、少しだけ思ってしまうことがある。

 

 見た目と記憶を持つ違う魂の再旅者と、見た目も記憶も失って魂だけ同じ僕は、どちらが他の人から見てその人になるんだろう?

 

 ま、そんなこと考えるより今の方が大変なんですけどねぇー!?あの?やめて、ペリカ!叩いても記憶は直らないから!ちょっ、本当にっ!やめっ、やめろっー!

 

 「!Σ( ̄□ ̄;)」

 

 「冗談よ…えぇ、それで…本当にタタなのよね」

 

 そうだよ。混ざりものでも作られた何かでもない、タタ自身だよ。記憶はないけどねー。…やっぱり信じれない?

 

 「…いいえ。タタ、なのね。本当に…」

 

 「( *´・ω)/」

 

 あぁ、もう…泣き虫だね?綺麗な顔がぐちゃぐちゃだよ…。大丈夫、大丈夫。ちゃんと、生きてるよ。

 

 「えぇ、えぇ…生きてる…あなたはまだ、生きてる。良かった、本当に…もう、会えないと…」

 

 …ごめんね。君にそんな顔をさせるつもりはなかったんだけど…。そうだ、そういえばペリカ、僕はどんな人だったの?記憶があんまりないからよく分かんないんだ。

 

 「…そうね、あなたは無邪気で不思議な人だったわ。誰かのために機械を作り、ついでにイタズラで変な機能をつけたり。未来の予言を見たって騒いでその対策だって自分の身体に活性源石を突き刺そうとしたり…。でも、優しかったわ。イタズラで暗く塞ぎ込んだ人たちの心に光を見せ、生きる理由を与えたり…」

 

 「(´ロ`ノ)ノ」

 

 ま、待って?ごめん、いい話かなって思ってたけどえ、なに?活性源石を突き刺そうとしたりって…えっ?嘘だよね…?

 

 「…本当よ。あの時は皆で必死に止めたのよ?でも、隠れて自分の身体で色々実験してたみたいだけどね…?」

 

 あの、ペリカさん?顔が怖いですよー?あとその、腕がミシミシっていってるのですが…?僕の発明品こわれちゃいますよ…?

 

 「(^-^;」

 

 「…あの時もあなたの発明品で脅せば止まったのかしらね…?はぁ、タタ…。お帰りなさい」

 

 はは、そんなこと…無いんじゃない?それに、ただいま。随分待たせちゃったみたいだけどね。

 

 「( ≧∀≦)」

 

 「えぇ、本当に待ったわ。…後で皆に伝えなさい?あなたのことをまだ待ってる人はまだいるのだから」

 

 …そっか。直ぐに忘れられるって思ってたんだけどな。

 

 「…あなたを忘れるなんて、出来ないわ。誰もね」

 

 そうなの?人なんて直ぐに記憶を無くしてしまうものなのに。

 

 「(?ー?)」

 

 「…だって、あなたは管理人の伝説と共に語られているもの。それにね、あなたに助けられた人も、仲間もあなたのことを忘れるわけ無いじゃない」

 

 …仲間か。そっか、僕は君達の仲間になれていたんだね。

 

 「えぇ、大切な…大切な仲間よ。だから、今度こそあなたを死なせはしないわ。だから、無茶はしないで。お願いよ」

 

 …あー、そのね…?多分無理かもーなんて。死なないようにはするけどねー?

 

 「(^_^;)」

 

 「…タタ。まだ、私達は…エンドフィールドはあなたの重荷を背負うことは…出来ないのかしら…?」

 

 その時のペリカの顔は酷く弱々しく、救いを求めるように…縋るように僕に手を延ばした。

 

 でも、僕はその手を取ることが出来なかった。

 

 何故かは分からない。だけど、その手を取ってはいけないと思ってしまったんだ。

 

 その理由はきっと、消えてしまった記憶の中にあるのだろう。今の僕には分からないけど、それでも僕の直感は良く当たった気がするんだ。

 

 あぁ…だけど、逃がした手をペリカは逆に強く引き寄せ、逃げれないように抱きついてきた。

 

 「えぇ、そうよね。タタは、あなたはそんな人だったわね。そして、あの時の私達は不器用なあなたの手を無理矢理取ることなんて出来なかった。その結果、私達は…あなたを失った。だからね、タタ、背負わせて何て言わないわ。あなたの手を引っ張って行くからその荷物ごと渡しなさい。もう、二度と同じ過ちはしないわ。絶対にね、あなたを失いたくないの。だから、諦めなさい…?タタ」

 

 センサーで体温を感じてしまうほど近づいた彼女は、切なそうな、それでも力強い瞳で僕を見つめた。

 

 その強い想いは漏れでたアーツで勝手に読み取れてしまう。

 

 あぁ、嘘ひとつもない。綺麗で愚かで…美しいその想いが。僕の隠し事を暴いていくのだろう。僕はそれが怖くて手を隠していたのかもしれない。

 

 でも、もう逃げられないみたいだ。何れだけ踠いても、彼女は離しはしないみたいだから…折れるしかない。

 

 だから、僕は彼女にこれから起きるかもしれないことを教えた。エネルギー高谷の発電所から超域が開くのも、その後ネファリスとの戦いで超域を閉じるために僕が死ぬかもしれないこと、そして生き残る手段を必死に考えていたこと。

 

 それを聞いた彼女は深く考え込み、そしてゆっくりと僕を見て呟いた。

 

 「そうね、じゃあ準備をしましょう。先ず、タタ?これに魂ごと移動することは出来るのかしら?」

 

 そう言いながら見せつけたのは腕時計のような端末だった。多分、管理人がメールとかを見る時に開いてるアレだろう。

 

 ─うーん、あぁ意識だけは出来そう?でもやっぱりアーツユニットの出力が足りないね。魂の操作は出来なそうだよ。

 

 「( >Д<;)」

 

 「そう、アーツユニットの出力が高ければ出来るのね。…でも、やっぱり時間が足りないわ。やっぱり、知能ユニットの移動が早いわね。きっとイヴォンヌに頼めばそれぐらい簡単にしてくれる筈よ」

 

 そっか。やっぱりそうなるよね。でも、少しだけ怖いことがあるんだよね。

 

 あの時のTA-TAはイレギュラーの行為をしたって未来のイヴォンヌは言ってた。それは、色んな人と触れて彼が得た知能によって行ったことであるなら、知能ユニットのないTA-TAじゃ超域を閉じることが出来ない可能性が高いんだ。

 

 「(~_~;)」

 

 「…そうなのね。なら、あなたがアーツで外から試作モデルを操作すればいいのよ。イヴォンヌのボムバチちゃんにあなたを移動させて、意識だけはアーツで試作モデルに移せば問題はない筈よ」

 

 確かに…でも、怖いのはあの時の試作モデル…タタはオーバーヒートとか諸々の不具合を起こしていた。それで僕のアーツが切れてしまう可能性があるっていうこと。

 

 あぁ、でも…僕は知っている。一つだけ、その対策を取れる技があることを。…あまり、取りたくない手段だけど。うん、これは最悪の場合使うことにしよう。

 

 一先ずはペリカの言ってくれた内容で、問題はないだろうし。

 

 「(^^)d」

 

 「そう、タタ?一瞬あなたのアーツの接続が切れたけれど何を考えていたのかしら?また、悪いことかしら」

 

 ペリカさん、顔が怖いよ?そんな、僕は悪いことなんて考えてないよ?だからね、手…離してくれると嬉しいなぁ…?

 

 「…やっぱり、あなたはタタね。…ねぇ、昔からあなたが嘘をつく時はね、下手に出ることが多いのよ。それに、少しだけ手を握る力が強くなるのよね。それで、本当は何を考えてたのかしら?」

 

 ひえっ、僕のこと知りすぎじゃない?僕ですらそんなこと分からないのにぃ!

 

 「!Σ( ̄□ ̄;)」

 

 ま、まぁ別にそこまで凄いことじゃないよ?ただ少しだけ魂の分割をね、最悪しようかなぁー?ってだけだから…

 

 「…魂の分割?それは…なるほど、試作モデルとあなたの繋がりを強めるためのアンカーとして試作モデルに少しだけ魂を残すってことね。でも、それはあなたに負荷が掛からない?」

 

 少しなら平気、多分ね。でも、あんまり取りたくない手段ではあるよ。最悪の場合、自我を失う可能性はあるからさ。

 

 でも、そうしなきゃ四号谷地が吹き飛ぶ可能性もあるし、ペリカや管理人…色んな人が死んじゃうからさ。

 

 …やるべきだと思うんだよね。少しだけ僕が頑張るだけで皆が助かるならね。

 

 「そう、意思は堅いみたいね。でもね、タタ?忘れないで、あなたが傷つくことで悲しむ人がいることを」

 

 それは、重々理解しているつもりだよ。僕は鈍感じゃないからね。じゃ、ペリカ?そろそろ集成工業エリアに行こう。僕の記憶が正しければそろそろの筈だから。

 

 「分かったわ。─鈍感じゃない、ね。本当にそれなら良かったのだけれど」

 

 うん?ペリカ、何か言った?

 

 「いえ、何も。…ほら、早く行くわよ?」

 

 うーん?まぁいいや、行こうか。って、ペリカ?ちょっと早くない?あ、待ってよー!

 

 


 

 もう、渡すべき人が居なくなってしまった手紙を宙に浮きながらあたしは綺麗な夜空の上で眺める。

 

 その手紙は、あたしと同じ遠い遠い家から歩んできた一人のサルカズへ渡したかった手紙。

 

 でも絶対に渡そうと決めていた手紙は今ではあたしの涙の跡と何度も捨てようとしてそれでも捨てきれなくて風化した封とグシャっと握りつぶした跡だけ残ってる。

 

 あたしは彼に教えて貰っていた筈だった。時間はどれだけ止まっててと願ってもいつも通り刻んでいることを。

 

 大切なものこそ直ぐに届けるべきと、トランスポーターとしての生き方を。

 

 なのに、なのに…あたしはこれを渡すのが恥ずかしくて、怖くて渡すことが出来なかった。

 

 それから、あたしは絶対に荷物は届けるように心掛けてるの。だって、こんなに辛い想いを他の誰にも味わってほしくないんだ。

 

 だから、今日も景色を楽しみながら時間を忘れないように彼から貰った時計で時間を見てるの。

 

 「次は、四号谷地だね。…そういえばあそこにはあの人の…タタ先輩の思い出の場所があるんだっけ。少し、寄ってみようかな」

 

 再旅者を嫌い、あたしを再旅者としてではなくギルベルタとしてずっと見ながら彼女の記憶も愛してくれた彼がタロⅡでの旅の栞として残してくれた本を読みながらあたしは飛んでいく。

 

 その終着点に彼がもう居ないとしてもあたしはずっと彼への言葉を失うことだけはしないと思う。だって、タタ先輩はあたしに生きる理由をくれた人だから。

 

 でも、やっぱり少しだけ夢を持っちゃうの。タタ先輩にこの手紙を渡して読んで貰うことを。あたしの想いを知って貰うことを。

 

 そうじゃなきゃ、あの不器用で頑固なタタ先輩はあの日のすれ違いで自分のことをずっと責め続けちゃう。

 

 それだけは、嫌なんだ。あたしはタタ先輩にはずっと楽しく笑っていてほしいの。何度か見せてくれた無邪気に、ただ今を楽しむあの人の笑顔があたしは大好きだったから…。

 

 「…泣いちゃダメ。あたしに、そんな資格ないんだよ…。無邪気に笑えないようにしちゃったのは、あたしの所為なんだから…」

 

 急に降りだした雨に濡れながら、あたしはまだ残っている傷跡を撫でる。…でも今だけは、きっと濡れて全て隠れるから少しだけ、止まらないこの想いを流すのを見逃してほしいんだ。

 

 それだけであたしはまだ、歩けると思うから…。




ギルベルタのイベントがアークナイツしていながらエンドフィールドの感じもあって最高でした。なので、この気持ちを忘れないように曇らせときますね…へへっ。

そして、体調崩して更新遅れました、ヒナまつりです。その間になんだか、お気に入りが凄い勢いで増えて日間ランキングで23位という凄いことが起きていたらしいです。本当に皆様ありがとうございます…!今までで一番の伸びで嬉しくもあり怖くもありますがこれからも是非是非お気に入りや感想を頂ければ嬉しいです。

では、また。
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