幽霊メイド、キヴォトスに転生す   作:塚山 泰乃(旧名:なまけもの)

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第三話 ゲヘナ学園へ社会科見学

 そして社会科見学当日。

 ローナを含めた一学年丸ごとゲヘナ学園入口の前にやって来た。

 正門前を見渡せば他の学校からも同様の目的で訪れた生徒たちが大勢たむろしている。

 

「はい、みんな注目!」

 

 生徒たちが正門前にいる学園生たちに視線を集中する。

 

「これから社会科見学を始める。クラスひとつにつき二人私たちが付いて案内します! 皆さんよろしく!」

『は〜い!』

 

 元気良い子供たちの返事ににっこりする学園生たちに連れられて入園した。

 ローナはクラスの生徒たちと共に二列縦隊で校内を見て回り、学園生たちの授業風景や各部活動の日常の様子を見せられ興味津々だ。

 

 万魔殿に行って生徒会の面々の仕事ぶりを見た小学生たちからは「かっこいい」などの言葉が漏れる。

 真面目そうな議長の口角がぴくぴくしていたのは笑顔になりたいのを我慢しているのかもしれない。

 

 半日を通して楽しい見学が終わり学園を出てそれぞれのバスに乗車し帰路につく。

 バスの中では小学生たちが思い思いに見学した感想を口にする。

 

「ねえねえ、どうだった?」

「万魔殿、かっこいいよね。私、あそこに入りたい」

「エリートしかなれないみたいだよ? もっと勉強がんばらないと」

「うぅぅ〜、いじわる〜」

「私は給食部! 料理の腕を上げて将来の彼氏の胃袋を掴むんだ」

「リアリストぉ!」

「私はキラキラ部! おしゃれしてきれいになりたい!」

「あー、そういうのも良いよね〜」

「馬術部! 社会人になったら馬を飼うの難しいって聞いたし、体験しておきたいな!」

「どれが良いか迷うよね〜」

「私は救急医学部かな〜。必要な技術身に付けて、大人になったら有名な病院でバリバリ働いて活躍した〜い!」

 

 バスの中から子供たちの喧騒が満ちる。

 

「ねえねえ、ローナちゃんはどこに入りたいの?」

 

 みんなが騒いでいる中、一人静かに目を閉じて考え込んでいるローナに前の席に座っていた子が後ろに向き直って尋ねてきた。

 ローナが目を開いて答える。

 

「風紀委員会にしようかな」

 

 その声が届いた範囲のクラスメイトが会話を中断して一斉にローナを見る。

 ローナは無言になった彼女らの様子にたじろいだ。

 

「な、何?」

 

 クラスメイトたちが話しかけてくる。

 

「ローナちゃん、風紀委員会は止めておいた方が良いよ」

「あそこ、不良やヘルメット団と毎日毎日毎日毎日ドンパチしてて休む暇が無さそうだよ?」

「風紀委員会の人たち、ビシッとしてたけど……」

「疲れてたよね〜」

「入っても辛いだけだよ?」

 

 怒涛の言葉の濁流にローナは押し流されそうになるがぐっと堪えて反論する。

 

「そうかもしれない。でも、オラオラヘルメット団みたいな殴る蹴る連中嫌い」

 

 地元にたむろしてる不良集団を例に出したらみんなの顔が曇る。

 

『あー』

 

 大半の子たちから納得と同意の声が漏れた。

 

「あいつら、うざいよねー」

「この間、お小遣い取られた!」

「私なんか買ったばかりの本をドブに捨てられた!」

「逃げたら『狩り』とか言って撃ちまくられた!」

「目があったらいきなり顔を撃たれた!」

 

 どうやらクラスメイトたちも大なり小なり被害に遭っていたようで、数々の不満があふれ出した。

 

「ローナちゃん、風紀委員会に入りなよっ」

「私、応援する!」

 

 彼女たちは先ほどまでの意見を翻し、口々にローナを支持する。

 その豹変ぶりにローナは内心苦笑いしながらも「ありがとう」とお礼を言った。

 

 

────────────────────

 

 

 帰宅したローナはゲヘナ学園公式サイトを閲覧した結果、入学するのは比較的簡単らしい。その代わり放任主義な面とモラルの低い生徒たちが合わさり、ミレニアムサイエンススクールやトリニティと比べて生徒同士による銃撃戦や犯罪発生率が多いのが短所であった。

 ただ、目標としている風紀委員会の入会条件が入学よりも少し高めの成績でないといけないようだ。

 

(私の学力、今のところ未知数だけど油断しない方が良いよね)

 

 何よりも、前世と比べて真新しく知らない物がたくさんあり興味が尽きない。

 幽霊族の性であるためか、元来好奇心旺盛なのだ。

 前世は仕える貴族に対して粗相をしないよう、幼い頃からメイドとしての仕事を徹底的に教え込まれ自由というものがあまり無かった。

 今世は生きていくために必要な知識を詰め込みつつも、精一杯楽しむのだ。

 

 

───────────────────

 

 

 二冊を読み終え、残る『武器関連全般カタログ』を眺める。

 自動小銃と分類される銃がコンビニで一丁千円で販売されているが、他にも色々な種類の銃がある。

 コンビニくらいの大きさの店では回転率を考慮してか、売れ筋しか置いてないらしい。

 ローナにはコンビニ程度の商品では不満だった。

 

(勇者様を苦労させたのは私に火力が足りなかったからだ)

 

 火力は勇者担当で防御や支援はローナ担当と役割を決めていた。

 ローナ自身も攻撃魔法を使えるものの、勇者と比べたらしょぼいから任せきりだった。

 まあ、勇者の規格外の魔力量を活かしたごり押しと比べたらという意味であって、ローナが培った魔法技能も大概ではあるのだが。

 

(火力が欲しい。それも相当強力な)

 

 カタログの各武器の解説を見比べる。

 ハンドガンという小さく携帯性に優れるがキヴォトス人に対しては威力と射程が足りない。

 あくまで護身用の範疇ではないかとローナは除外した。

 

 サブマシンガンは短時間で大量に弾をばら撒ける利点があるが威力はハンドガンとさほど変わらない。

 弾幕を張れるのは良いけどすぐに弾切れになるのは減点、と除外した。

 

 自動小銃は上記と比べて威力と射程が上がるが、キヴォトス人へは心許ない上に少々かさ張る。

 ただ、この形状の銃がキヴォトスで生活する者たちの間では最も多く流通しているようだ。

 可も無く不可も無く。ローナは結論付けるのは早いと保留にする。

 

 ショットガンは薬莢に詰め込まれた細かな弾が散弾となって広がる特徴があって少し狙いが甘くても当たりやすいが、むしろ至近距離で撃ち込むと圧倒的な破壊力が生まれるのが人気のようだ。

 逆に言えば一定距離まで接近しないと効果が望めないという意味合いでもある。

 ローナはこれも保留とした。

 

 重機関銃は威力と射程、継続的な連射に優れるが弾薬の消費が激しく重量もかさみ持ち運びに手間がかかる。何よりも弾代が桁違いでお金を稼ぐのが大変だろう。

 ローナは学園生活で常に大荷物を抱えながらひいこらと移動する自分を想像し、何が悲しくて青春をそんな事に費やさないといけないのかと頭を抱え除外した。

 

 グレネードやロケットランチャーは威力と爆発範囲がピカイチだが一発ごとの発射間隔が長すぎるし、もたもたしてたら狙い撃ちされかねない。

 この武器は仲間たちと行動する時に用意できる物だ。

 場合によってはローナは単独で行動しなければならないと想定しているので除外する。

 

(こうして見ると、一長一短あるんだね)

 

 カタログにある項目に目を通したローナはため息を吐く。

 残ったのは自動小銃とショットガンの二択。

 普遍的な武器で多く扱われるがそれ故に対策もされやすい。

 

(いっその事、重機関銃にする?)

 

 ゲヘナ学園に入学する頃には体も成長しそれなりの体力を持つだろう。頑張れば重機関銃を振り回せるかもしれない。

 何ならポルターガイストの応用で浮かして重量を誤魔化すズルも可能だ。魔力消費は微々たるものだが四六時中浮かしてたら消費量はそれなりになるから考えものであるが。

 

(何か他に良いのないかなー)

 

 目次を見ていくと『車輌搭載用』という項目を見つける。

 該当ページを開くと戦車という乗り物が写真付きで解説されている。

 スペックも個人携帯用の銃と比べて桁違い。価格も目が飛び出るほど高くとてもではないが手が出せない。

 

(これ、どこかの国と戦争するための乗り物じゃないの?)

 

 こんな物まで販売されてるのかとローナは呆れてしまう。

 しかし、このカタログに掲載されているという事は一定の需要があるという事だ。

 特に個人が購入しても問題無いらしく、注意書きなどは記載されていなかった。

 

(ただ、戦うための燃料や弾薬、それに整備費用が金食い虫で普通なら手を出そうとは思わないよね〜)

 

 おそらく企業やお金持ちが所有するための物だろう。

 

(たぶん、学園も直接購入し所有しているんだろうな)

 

 雑多な銃火器相手なら無双できるだろう。敵も戦車を持ち出してきたら分からないが。

 

 戦車の購入は諦め、興味本位でページをめくっていく。

 いつの間にか装甲車の項目へ移る。

 こちらも戦車よりも安い価格だが手が出しにくい。

 車輌に載せる武器はどれも強力で魅力的だったが、肝心の乗り物が高くては話にならない。

 

(いっその事、車輌搭載用武器だけ買って一般人が乗り回す普通の車に載せて運用したらどうだろう?)

 

 車輌搭載用の武器のみに絞って閲覧していくと、ある物が目に止まる。

 

(…………これ)

 

 Mk19自動擲弾銃。別名グレネードマシンガン。

 重量に目をつぶれば連射速度、威力、射程に申し分ない。

 遠距離から一方的に対象を吹き飛ばせる事にローナは感激した。

 

(でも、本体重量35kgかあ)

 

 専用三脚も含めれば60kg。

 使用弾薬は40mmグレネード弾、32発入り弾薬箱が15kg。一箱だけでは意味がないから複数積み込む必要がある。

 つまり、それなりの大きさの車を選ばなくてはならない。

 

(弾薬の消費が半端ないけど、安い車を使えば何とかなりそう)

 

 一般車というと軽トラが思い浮かぶ。荷台に銃を据え付けて弾薬箱を複数載せ、一人乗る。

 

(あんまり自由が無さそう)

 

 となると、軽トラの荷台よりも広いトラックが欲しい。

 当てはまるのは2トン以上の積載量を持つトラックだ。

 弾を撃ち尽くしたら弾薬箱を交換する作業が必要になる。その間無防備になるから護衛もいる。運転手と助手席にも一人欲しい。

 ローナ以外に三人の仲間が必要だ。

 ローナは特に仲の良いクラスメイトたちを思い出す。

 

(巻き込んじゃおうかな)

 

 ゲヘナ学園に入学し風紀委員会に揃って入って武装トラックで登下校し、視界に入る悪人を片端から吹き飛ばす。

 

(素晴らしいわ)

 

 ローナの脳内でオラオラヘルメット団がビリヤードの玉のようにまとめて蹴っ飛ばされたサッカーボールのように飛んでいく映像を思い浮かべにやりと笑う。

 

(まずは目的の品物を買えるだけのお金を稼がないとね)

 

 ローナは自身の能力を最大限に活かして資金調達ができないか皮算用を始めた。

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