幽霊メイド、キヴォトスに転生す   作:塚山 泰乃(旧名:なまけもの)

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第六話 クラスメイト勧誘

 小学校に登校したローナは特に仲の良い友達三人に声をかけた。

 

「ローナちゃん、相談って何?」

「何に困ってるの?」

 

 友達に尋ねられ、ローナは開口一番から結論を出す。

 

「みんなとゲヘナ学園に行って風紀委員会で一緒に部活動しようよ」

「「「え?」」」

 

 三人が互いに顔を見合わせローナに向き直る。

 

「いきなりどうしたの?」

「私あれから色々調べ物をしたの。そうしたら私一人の力だけじゃどうにもならないことが分かって」

 

 そう言うとローナは腰を折って頭を下げる。

 

「お願い、力を貸して。みんなもゲヘナ学園に行くつもりなんだよね? 私たちみたいな小さな子供を殴ったり蹴ったりするような奴らを野放しにできないよ」

 

 三人は困った表情で互いに顔を見合わせる。

 

「でもさ、私たちまだ小学生だよ? いくら何でも早すぎるんじゃ……」

「だよね」

「ゲヘナ学園に入ってからでも遅くはないよ」

「それじゃ遅すぎるの」

 

 諭そうとする友達にローナは首を横に振る。

 

「……どういう事?」

「今の内にみんなとそれぞれ何をやるか決めて、勉強したりお金を貯めてそれぞれに合った武器を買うの」

 

 三人は一様に首を傾げる。

 

「今から?」

「早すぎない?」

「コンビニで売られてる銃で十分でしょ?」

 

 キヴォトスではしごく当たり前の考え方にローナは頷く。

 

「コンビニの銃って便利だよねー、お金払えば直ぐに手に入るし。……まあ私が欲しいのは、あんな弱っちいのじゃなくてもっと強いのが欲しいんだけどねー」

 

 そう言い、ローナは机の脇に掛けてたランドセルから図書室で借りてきた分厚いカタログを取り出して机の上に載せ、予め付箋を付けてある該当ページを広げる。

 

「私が欲しいのは、これ」

 

 ローナが掲載されている画像を指差す。

 

「……え、何これ」

「形が普通のと大分違うね?」

「ねえローナ、これ何?」

 

 友達がローナに口々に質問すると彼女はふんすと鼻息を漏らしながら答える。

 

「M19っていうグレネードマシンガン」

 

 友達がオウム返しに首を傾げる。

 

「グレネード……マシンガン?」

「マシンガンは分かるけどグレネード、って何?」

「確か手榴弾って意味じゃなかったっけ?」

「それって……」

 

 まだ幼いながらも銃社会の一員である彼女たちも意味をなんとなく理解したようだ。

 ローナは念のため補足説明する。

 

「文字通りの意味だよ。爆弾をマシンガン並みの速さで撃って敵を片っ端から吹き飛ばして行くの」

「ローナちゃん、過激ぃ!」

「そうかな?」

 

 友達の率直な評価にローナは首を傾げる。

 

(費用対効果を考えた結果なんだけどなー)

 

「何でこれが欲しいの?」

「私たちキヴォトス人だから頑丈でしょ? ちょっとやそっとじゃ痛いだけで済むから威力のでかいのが必要だと思って。これなら一発で倒せるよ」

 

 ローナの屈託のない笑顔に友達三人は感心する。

 

「よく考えて選んだんだね」

「凄ーい」

「他にも理由があるんでしょ?」

「えーとね」

 

 ローナはもじもじしながら上目遣いで答える。

 

「ほら、普通の銃って正確に狙いを定めて撃たないと当たらないでしょ? いちいち狙って撃つのが面倒臭いからまとめてぶっ飛ばしちゃえって」

「わー大雑把」

「それだけの理由で……」

 

 困惑する友達にローナがボヤく。

 

「でもあいつら、そこかしこから湧いてくるし」

「うん、蟻ん子みたいだよね」

「むしろゴキブリ?」

「言えてる〜」

「でもさ、これ、何か大きくない?」

「すっごい重そう」

 

 ヘルメット団の日頃の行いに対する友達の辛辣な感想にローナが答える。

 

「うん、本体だけで35kgの重さがあるよ。これを支える三脚も含めたら60kgになるって」

 

 ローナの解説にクラスメイトたちは困惑した。

 

「60って、私ら三人分の重さじゃん!」

「待って待って。弾薬は? そっちの重さは!?」

 

 友達の問いかけにローナは淀みなく答える。

 

「専用の弾薬箱が32発入りの14.4kgだって」

「「「えぇ〜……」」」

 

 三人が引きつった顔をしながら引く。

 

「え、それ重すぎて持ち運ぶの大変」

「どうやって運ぶの?」

「まあ、順当に考えて車に載せるんじゃないの?」

 

 ここ学園都市キヴォトスでは中学校在学中に車の運転免許の資格取得のための勉強をし、卒業までには免許を取れる制度がある。

 控えめに言ってもキヴォトスは広い。原作ではアビドス高校の砂狼シロコが自転車で旅をすると端から端まで数ヶ月かかると言及しており、ファンの考察では各自治区全てを合わせると北アメリカ大陸並みの広さがあるのではないかと噂されている。

 

 ローナはカタログの別の付箋の付いたページを開くと、そこには 軍用車両と呼ばれる装甲車の写真があった。

 

「ハンヴィーっていう車なんだけど、これにさっきの武器を載せるんだよ」

 

 カタログを覗き込んでいた友達の一人が驚く。

 

「何この車、とんでもなく高いんだけど!」

 

 その驚いた声に他の二人がどれどれと価格を見る。

 

「……うわ、高い」

「こんなの買うの?」

「ローナちゃんのお小遣いで買えるの?」

 

 友達の言葉にローナは首を横に振って否定する。

 

「じゃあ、ローナちゃんのお父さんに誕生日プレゼントとして買ってもらうの?」

「さすがにそこまで迷惑をかけられないよ。私がお金を稼いでそのお金で買うつもり」

「稼ぐって、いつから?」

「今、これから」

 

 ローナの宣言に友達が困惑する。

 

「どうやってお金を稼ぐの?」

「私たち小学生だからバイトできないよ?」

 

 友達の疑問にローナはA4大の紙を何枚か取り出して机の上に広げる。一枚一枚に顔写真が写っていて下の方に数字が表記されている。

 

「誰、この人たち?」

 

 友達の言葉に少女は断言した。

 

「指名手配書」

「……え、こいつらを捕まえるの?」

「止めときなよ」

「地元のオラオラヘルメット団でさえ野放しなのに無謀だよ」

 

 友達の心配する声に少女は苦笑いする。

 

「別に捕まえるわけじゃない。ゲヘナ学園の風紀委員会の人に訊いたんだけど、こいつらが普段どこにいるかを教えて逮捕できたらお金をくれるんだって」

 

 友達がへえと首を傾げながらも頷く。

 

「……それなら安心かな?」

「くれぐれも無茶はしないでね?」

 

 友達の安堵と応援の声にローナは微笑んだ。

 

「ところでさ、さっき手伝ってほしいって言ってたけど私たち何をすればいいの?」

 

 友達の問いに、ああそれはとローナが解説する。

 

「ほら、さっきの武器を車に乗せて撃つじゃない? 車を運転してくれる人、私たちの邪魔をしようとしてくる人を追い返すために守ってくれる人が必要なの。できればあと何台か、車が欲しいし数が揃いさえすればみんなと一緒に戦えるよ」

 

 友達は彼女が何をしたいのか、そして本気だと理解した。

 確かにみんなで力を合わせればヘルメット団なんか怖くないだろう。

 しかし、である。

 

「でも私たち、ゲヘナ学園に行ったら他にやりたい部活があるんだよね」

 

 友達の一人の言葉にみんなが同意する。

 

「そうなんだよね」

「悪い奴らも何とかしたいんだけどねー」

「それに何よりも夢を実現するためには武器を揃えるためのお金がたくさん必要になるし、準備が終わってから始めても良いじゃない」

「そうだよね」

 

 友達の感想にローナの顔が曇る。

 これから青春を謳歌したいのに余計な事で時間を潰したくないという気持ちは理解できる。

 だからといって、悪人を放置するのは違う。

 実際に風紀委員会だけでは手が回らないのは日常を通して否応なしに分かってしまったからだ。

 

「……うん、分かった。まずは私が建てた計画が上手く行くかどうかやってみる」

「頑張ってね」

 

 予鈴が鳴り、友達が各々の席へ戻っていく。

 

「今は夢でしかないけど、もし実現できそうなら私たちも風紀委員会に入って手伝うよ」

「約束だよ?」

「うん、約束」

 

 友達と別れた後、ローナは次の授業のための支度をしながら具体的な計画を練り始めた。

 

 

─────────────────

 

 

 放課後、一目散に帰宅したローナは自室でノートを広げてあれこれ書き出して整理する。

 指名手配犯の捜索の方法だが、何も馬鹿正直に聞き込みをしたりしない。そんな事をしてたら噂を聞きつけた犯罪者どもが彼女に直接危害を加えに来るだろう。

 

(正直、使いたくはなかったけど夢の実現のためにはしょうがないよね)

 

 ローナは自室の扉に鍵をかけ、ベッドに横になり目を閉じる。

 間もなくしてローナの体から白く半透明の彼女の姿が抜け出て空中に浮かぶ。

 

(これで透明化の魔法を併用すれば騒ぎにならないね♪)

 

 基本この状態で犯罪者どもの側で盗み聞きである。

 前世では勇者を助けるためにこの状態で諜報活動を行っていたので慣れたものである。

 魔法で透明化したローナは壁をすり抜け外へ飛び出した。




こちらも書き溜めに入ります。
それでは。
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