ノコル 「 俺 が ノ コ ル 」
チンギス「 い い や 俺 が ノ コ ル 」
ごめんチンギス、1期の時にクソ粘着野郎とか言って……
あんないい奴だとは思わなかった……(泣)
――いつのことだっただろうか。最近、夢であの日のことを見るようになった。
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1年生の夏季合宿の時だったと思う。あの日、俺とアヤメ、ナグサは夜中にこっそり怪談をしていたのだ。
「百物語?怖い話を100個考えるの……?」
「折角の合宿だし、丁度いいだろ?」
「確かにね。じゃあ、誰からやる?」
「なら、まずは俺から話そう」
俺は知っている都市伝説を幾つか怪談風にして話すことにした。
*****
その日は、新しいワールドでマルチプレイを始める予定だった。
深夜二時。静まり返った自室のパソコン画面、チャット欄に見慣れない白い文字が流れるまでは、ただの退屈な夜だった。
『こんにちは、僕はベリティ。すべてのことを知っているよ』
足元に、見覚えのない奇妙な木の箱が転がっていた。
不審に思いつつそれを開けた瞬間——ぽん、と空中に浮かび上がったのは、鮮やかな黄色い球体だった。
黒く縦長の目がこちらを見つめ、口元は完璧なまでの「ニコニコマーク」の形に弧を描いている。
「やあ。何か困り事かい? 僕が何でも教えてあげる」
合成音声のような、妙に耳の奥にこびりつく機械的な声がスピーカーから響いた。
面白半分で「近くにダイヤはあるか?」とチャットを打つと、ベリティはくるりと宙を回り、ピピッと軽快な電子音を立てて地下深くの一点を指し示した。
言われた通りに掘り進めると、そこには嘘のように大量のダイヤが埋まっていた。
「すげえ、こいつ超優秀じゃん」
通話越しの友人の弾んだ声に、俺もつられて笑った。そのときは、まだおかしなことなど何ひとつなかった——はずだった。
異変が起きたのは、ゲーム内チャットに「残り3日」という奇妙な警告が表示されてからだ。
翌日、ログインした俺たちは言葉を失った。
ベリティの周囲を漂う光が、あの鮮やかな黄色から、血のような濁った赤黒さに変わっていた。笑顔の線は歪み、以前よりも少しだけ大きくなっているように見える。
「ねえ、どうして外に出ようとするの?」
話しかけてもいないのに、ベリティが喋った。声のトーンが、昨夜よりもワントーン低く、濡れたように冷たい。
「ここは安全だよ。僕がすべてを知っているし、君たちのことも、もう全部覚えたから。外の世界なんて、何もないよ」
「……なんだこいつ、仕様が変わったのか?」
友人が少し引き気味の声を出す。不気味になってきたからスポーン地点の箱に戻そうと、俺はベリティに向かって剣を振った。
その瞬間、画面が激しく明滅した。
ベリティの球体がぱっと四方にパカッと割れ、中から覗いたのは、不釣り合いに巨大で骨ばった、人間のものによく似た「白い顎」と、どこまでも引き裂かれた無数の歯だった。
チャット欄に、青白い文字が狂ったように流れる。
【Verityが接続しました】
【Verityが接続しました】
【Verityが接続しました】
「逃げられると思ったの?」
スピーカーから聞こえたのは、もはやゲームの音声ではない。
耳元、すぐ後ろのヘッドホンの隙間から、まるで生身の人間の湿った息が吹きかけられるような、冷たい声だった。
慌ててパソコンの電源ケーブルを引っこ抜いたが、目の前のモニタの暗い画面には、反射した自分の背後で、黄色くぼんやりと光る何者かの影が――ぴくり、と歪んだ笑顔を浮かべて揺れていた。
*****
「それって本当にあった話……?」
怪談にビビったのかナグサがアヤメに抱き着きながら言う。
「……どうだろうな、っていうか言ったらもう怪談じゃねぇだろ」
「他にもあるの?」
「そうだな、それなら――」
*****
古物商を営む祖父の遺品整理を手伝っていたとき、蔵の奥から古い木箱が見つかった。
中に入っていたのは、ボロボロに傷んだ和綴じの古文書だった。表紙には、かすれた墨でこう書かれている。
『白澤図(はくたくず)』
「これって、昔の妖怪図鑑みたいなもんか?」
興味本位でページをめくると、墨で描かれた奇怪な生き物たちの絵と、びっしりと細かい文字が並んでいた。
そこには「夜道で出会う化け物の正体」や「山神を鎮める呪文」、そして「どのような怪異が、いつ、誰の命を奪うか」という未来の厄災までが、驚くほど正確に予言のように書き記されていた。
気味が悪くなって閉じようとしたその時、ページの間から、白い毛皮の切れ端のようなものがパラリと落ちた。
拾い上げようと視線を落とした瞬間、背後で、妙に穏やかで、しかし人間のものとは思えないほど響く低い声がした。
「――よくぞ、我が知恵を開いてくれた」
血の気が引く思いで振り返ると、薄暗い蔵の壁際に、白い何かが立っていた。
それは、雪のように白い毛並みを持つ、巨大な獣の姿をしていた。だが、何より異様なのはその顔だ。
頭部に四つの目、そして胴体の両脇にもそれぞれ三つの目が縦に並び、合計で十個の目が、一瞬たりとも瞬きをせずにこちらをじっと見据えている。そして、人間の言葉を紡ぐように、口元が微かに動いた。
「世の吉凶、百鬼の弱点、お前の寿命、そしてお前が今日ここに至るまでのすべての選択。私には、そのすべてが見えている。知っている」
「なっ……なんだ、お前は……!」
足がすくんで動かない俺に、白澤は静かに歩み寄ってきた。威圧感はない。むしろ、底知れぬ知性と慈愛すら感じさせる佇まいだった。
「恐れることはない。私はただ、求められれば真実を授ける者だ。さあ、知りたいか?」
白澤の十個の目が、妖しく、しかし吸い込まれるように光った。
「お前がこれから迎える最期の瞬間を。あるいは、お前の大切な人間が、いつどんな苦しみで死ぬのかを教えてやろう。すべては、この書物に記されている」
「いらない……! そんなもの、知りたくない!」
必死に首を振る俺に、白澤はゆっくりと首を傾げた。
「知らぬか? だが、人間とは愚かなものだ。一度私の存在を知ってしまった以上、『知りたい』という好奇心から逃れることはできない。なぜなら……」
白澤が前足を一歩踏み出し、その冷たく白い顔を俺の耳元に寄せた。
「――お前たちの脳裏には、すでに『私が何を予言したか』という未来の記憶が、こびりついてしまっているからだ」
その瞬間、頭の奥が激しく脈打った。
覚えのないはずの光景が、走馬灯のように脳内に流れ込んでくる。自分が、いつ、どこで、どんな絶望の中で息絶えるのかという「未来の確信」が、勝手に頭を支配していく。
「あ、あぁ……あぁぁっ……!」
「どうだ? すべてを知るというのは、なんと冷たく、美しい絶望だろう?」
十個の目が一斉に細められ、白澤は満足したようにふわりと煙のように消え去った。
後に残されたのは、開かれたままの『白澤図』だった。
ページをめくる。そこには、さっきまでなかったはずの新しい項目が、真新しい墨でこう書き加えられていた。
『〇月〇日深夜、知識に溺れて狂死した男の記録』
耳の奥で、獣の穏やかな声がいつまでも、いつまでも反響していた。
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「――夢か」
俺が目を覚ますとそこは――
「あの、毎日ここで仮眠を取るのをやめて頂けますか?」
「ああ、すまん……セナ」
「羨ま死い――じゃなくて迷惑なんですが」
最近は家に帰れないので、セナに頼んで救急医学部の部室に居候させてもらっているのだ。さらにここは居候場所だけでなく……
「どうやら、来たみたいだな――」
ドアを2回、2回、1回、3回、5回とノックする音が聞こえた。俺はそれを確認したあと、扉を開ける。
「入れ」
そこに立っていたのはカンナさんの直属エージェントの一人、物部モリアだった。今回、アヤメを追うに当たって、SRTの時の迷惑料も兼ねてカンナさんに協力を依頼したのだ。そのため、ここが密会場所を兼ねているのだ。
「セナ、悪いが外してくれ。」
「あの……ここ、私の――」
「セナ、悪いが外してくれ。」
「無かったことにしないで下さい……」
そう言いながらも、セナは部屋の外に出ていく。それと入れ替わる形でモリアが室内に入った。
「……前に報告を受けた“謎の中二病おばさん”について、先日新たな情報を入手した。」
「ほう?」
「奴の名前はコクリコ。20年前の百花繚乱の委員長にして勘解由小路家の出身だ。現在は花鳥風月部と名乗る部活に所属している模様……」
(あの激イタおばさんの名前ってコクリコなんだ……)
「それで、そのコクリコは何処に……?」
「山海経だ、奴は山海経にいる。」
恐らく、アヤメはコクリコと一緒にいるだろう。そうだとすれば――
「行くか、山海経に……!!」
活動報告を見ている方は知っていると思うのですが、Youtubeチャンネルで随時情報を発信していくので、よろしければ見て頂けると幸いです。
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