ウマ娘ハリボテエレジー ディープインパクトが倒せない!   作:フリオ

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初投稿です。


第1話 ディープインパクト

 

 優秀なトレーナーというのは育成年代のウマ娘を一目見れば、その才能の果てを想像することができた。ウマ娘というのは運命を持って生まれてくる。おそらく優秀なトレーナーというのはその運命を目視することができるのだ。ぼんやりと、あるいはハッキリと。

 

 うら若い女性トレーナーである与瀬橋もウマ娘の運命がぼんやりと見える一人だった。トレーナーになり二年目と年月は浅いが教え子はすでにG1レースを勝利し、重賞には多くの与瀬橋印のウマ娘が出走していた。

 

 そんな与瀬橋が本日訪れたのはノーリン学園の運動会である。ノーリン学園には育成年代のウマ娘が多く在籍し、その運動会はトゥインクルシリーズの前哨戦のような位置付けとしても見られていた。

 

 運動会にはトレセン学園のトレーナーも多く訪れ、トレセン学園に入学する前に声をかけておくというのが通例になっていた。運動会に初めて参加する与瀬橋は、先輩である神野に連れられて観覧席の端っこに陣取った。

 

「あの子は短距離の重賞で良いとこまでいくやろ。んで、そっちの子はそやなあ、ダートの2勝クラスやろなあ。お、こっちの子はバリバリのステイヤーになるで。いつかの天皇賞・春に名前があってもおかしないやろな」

 

 神野は双眼鏡を構えながらウマ娘たちを観察し、好き勝手呟いていた。若い女性であるのに関わらず、レース好きのおっさんのような言い草だ。これでいて才能を的確に見抜くのだからすごい。そこまでハッキリと見えてしまうのなら、数年後に待っているのはただの答え合わせだろう。いったいこの人は何を楽しみにトレーナーをしているのだろうか。

 

「ほらみい。800メートルのレースやからそりゃ負けるけどもやな、走り終わった後に表情一つ変えへんやろ? 心肺機能が強い証拠や。ウチが鍛えたらようさん伸びるで。しかし晩成っぽい顔が気になるわな。ダービーに間に合うやろか」

 

 与瀬橋は神野が注目していたウマ娘に視線を向ける。青鹿毛の美しいウマ娘だ。周りの子よりも背が高そうに見えるけど、これで晩成傾向なのだろうか。神野は顔を見て晩成だと言っていた。キリッとした良い顔をしている。確かに、強そうなウマ娘だ。しかしG1を取るというような運命は与謝橋の目には映らなかった。

 

「えー、どれどれ。お、この子やな」

 

 神野は双眼鏡をずらし手前のパンフレットに視線を落とす。

 

「シャケトラちゃん。よし。ウチが先に唾付けとかんとな」

 

 そう言って神野は観覧席から駆け出した。そんなに急いでも変わらないだろう。これは与謝橋がいつも思っていることだったが、運命というものが本当にあるのだとしたら、どのトレーナーに師事するかというのも運命によって決まっているはずだ。ここで慌てても仕方がない。そう思っているから、与謝橋はこれまで運動会に足を運んでいなかった。

 

 そんなわけで双眼鏡を使わずにぼんやりと見ていたからだろう。与謝橋の視界には競技場の端っこの方で、走り幅跳びに挑戦しているウマ娘が見えた。与謝橋以外のトレーナーはトラックを走るウマ娘に夢中だった。だから、そのウマ娘が走り幅跳びを飛んだ姿を見たトレーナーは与謝橋だけだったのだと思う。

 

 砂場から助走のために距離を取り、勢いを付けて走り出す。

 

 その走りは助走と呼ぶには速過ぎた。

 

「……え?」

 

 走り方は滅茶苦茶だ。基本のフォームがなっていない。笑ってしまうほどの前傾姿勢で、腕は身体の後ろに置いていく。脚を勢いよく振り上げるたびに、前屈みになった胸にぶつかりそうになっていた。同年代のウマ娘と比べても全く不器用。しかし、速い。なにより強い。

 

 運命すら置き去りにする助走の後、深い衝撃を大地に与え、ウマ娘は踏み切った。

 

 間違いなく飛んだ彼女の名は――

 

 ディープインパクトと言った。

 

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