TSメス堕ち俺っ娘スライムと作る宇宙最強ハーレム   作:最条真

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二章開始。


二章『解釈と離別』
19『現実のオセロ』


 

 

 

 ――――君の名前を二度と呼ばない。だってお前は死んだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――《現実のオセロ》は残酷だ。

 

 

 ……そして、『ゲームとしてのオセロ』のルールに現実性がないのは、それを定義すると、あまりに残忍になってしまうからだ。

 しかし、白と黒と交互に指すというオセロのルールは、あまりに現実味がないと思わないか。

 

 何故、相手が自分が指すまで『指さずにいてくれる』のか。

 

 次の手を考える待ち時間、相手は駒を動かさずにいてくれるわけだけれど、あまりに優しすぎる。

 

 

 ・残忍性がない/現実性がない=優しすぎる。

 

 反対に、

 

 残忍性がある/現実性がある=厳しすぎる。 

 

 

 例えば、オセロで、白だけが一方的に指しだしたらどうだろう? 

 クソゲーだ。

 でも現実ってのはそういうもんで、相手は自分を差すのを待ってくれない。 

 しかし。

 

 初期の盤上に置かれた『黒』はひっくり返ることなく、むしろ、白が四手動いた後で、『ようやく』――黒が一手指し、しかも黒に挟まれた『白』は黒に染まってしまうとしたらどうだろう?

 

『ク』と『だ』で挟ま『ク』る結論になる『ク』だよなっ『ク』。

 

 でも現実ってのはそういうもんで、挟まれたところで中々、自分と同じ色に染め上げるのは難しい。

『ク』で挟んだはずの文章が全て『ク』にならないように、実際、駒には強さがあり――文章で言うと文脈に齟齬が生じない弱い言葉しか――染まってくれない。オセロに現実性を持ち込めば、指し手は順繰りではなく、そもそも挟んだ所で、『自分の色に染め上げられる』とも限らない。

 

 現実性を持ち込めば、残酷になる。

 優しさが失われ、競技人数が失われる。

 

 だから約束しよう。

 ここから先の『物語』を読む『競技人数』を失わないために。

 

 

 ――この物語はフィクションである。

 

 

 世界中のどこを探しても、このようなことは実際に起きていない。

 僕は優しさを担保する。

 ゲームの注釈でもよくあるだろ『※この物語はフィクションです』って。 

 それは物語の優しさを担保し、競技人数を損なわないための『営業努力』なんだよ。

 

 だから、語り手である僕も、読み手である君たちに対して全力で優しさを担保しなければいけない。

 

 ――この物語はフィクションである。

 

 安心してくれ。

 この物語はフィクションである。

 決して、実在の人物と団体とは関係がない。

 

 この物語はフィクションである。

 この物語は■■フィクションである。

 この物語はフィクションである。

 

 

 

 

 銃とは、ある種、生物の命を奪うリアリティが伴う明確な凶器であることに何ら疑いはない。やはりそれが、銀色の銃弾を飛ばす為の、祝福と《異星技術》が詰め込まれたテクノロジーであるのなら、なおさらだ。

 

 高校一年生・八月上旬。本物の銃を握りだして一か月。ようやく手に馴染み始めた『相棒』の重みは、《星の寵愛》が手伝って以前よりも余りに軽い。 軽い。やけに掌に馴染む。冷たい。

 そして、夏だというのに寒い――いつまでたっても、引き金を引くこの一瞬だけは。

 

「お、o、o、o、れ、e、は、a、ぁ、k、i、きょ、っせいは、だ――」

 

 ――一瞬――心を殺した瞬時の判断に硬直が生まれたのは、《共生派》という単語が聞こえたからだった。

「月野くん」

 背後から声が聞こえた。『先輩』のものだ。僕は人間社会に溶け込むように人型に擬態した《異星体》の額に、相変わらず銃口を突きつけながら、『大丈夫だ』と強がるように……トドメを果たす役割を変わるように、彼女が懐から取り出そうとした《シルバーバレット》を、手で制した。

 優しい人だ。

 

「僕がトドメを差します」

 

 そこだけは譲れない。『先輩』の補助ありきとはいえ、僕が、追い詰めた、今から僕が殺すべき、《異星体》だ。目の前の命の重みは、あまりに軽い、この引き金で呆気なく失われる。

 大丈夫だ、これくらいできるようにならないと。

 

「……お前らはオセロなんだよ」

「o……o、se? な、ぃ、を――」

「《共生派》は白。《侵略派》は黒。オセロの盤面を想像しろ。オセロの盤面は8×8の64マス。今は、八割方、盤面が埋まっている状態とする。盤上の駒の色の割合は、8:2。八割・白が盤面を占めていて、黒が二割を占めている。これからどうなるか、考えてみろ」

「ko、re、あ、……ら?」

「ひっくり返されるだろ、白が――黒によって」

「た、とぇ、そう、だと、しても……」

「白が白である理由は何だと思う?」

「……?」

「弱いからだよ。そして、弱いから多い」

 

 そして、

 

「反対に、黒は、強いから少ないんだ。お前らと違って少数精鋭なんだよ。分かるか。《奴ら》は、お前らを白から黒にひっくり返すだけの力を備えている。しかも、《現実のオセロ》は理不尽だ。差し手が『交互じゃない』。黒はどこかに隠れて、白ばかりが盤面に置かれていく」

 

 今の盤面上で、八割が白を占めている理由は、それだ。

 白→白→白→白→黒……――

 

 このループ。白と黒、共生と侵略の比率は8:2。

 約分すると、4:1。

 白が四回指すうちに、黒が一回指す。しかも酷いのは、初期に置かれている黒色の駒は、強靭過ぎて白にひっくり返すことはできない。

《現実のオセロ》には、駒ごとに強さが設定されている。黒は強く、白で挟んだところで、白には染まらない。黒のまま盤面の上に残り続ける。 

 現実は理不尽だ。オセロに現実性を持ち込むと、ただただ、理不尽なゲームになる。リアリティとは、時に残酷だ。今僕が目の前の生き物の命を奪う、現実も、また残酷。

 

「平常時であれば敵対しない《共生派》を《星狩り》が狩るのは、お前らみたいに弱い連中は黒に挟まれたらひっくり返るからなんだよ」

「そんなことは、ない。おれも、おれも《星座》に認定してくれ! だいじょうぶだ、俺は――」

 

《アッパーカット》――銃を握っていない拳で、相手の顎を下からカチ割る勢いで殴りつけた。

「ガ、ァ、ッ――⁉」

「僕の一撃でそんなダメージ受けるなら無理だよ。《星座》ってのは、最低限《二ツ星》の格が無いと務まらない。僕一人に追い詰められてる時点で――お前、一ツ星の雑魚だろ」

「ぅ、うしろ、の、女、が!」

「『先輩』は悪くない」

 しっかり、後ろに立つ先輩にまで声が届くように、響くように僕は言う。

 

「悪いのは僕だ。今からお前にトドメを差すのも僕だし、お前が憎むべき相手は僕だけだ。――僕が悪だ」

 

 銃口を、強く、相手の額に押し付ける。

 トン、トン、と『分かったか』と言うように、相手の額に押印をするように、トントンと何度も銃口を相手の額に押し当てた。

「僕が悪だ。地獄からも僕の名前を怨嗟の様に唱え続けろよ」

「馬鹿が」

 僕のズボンに向かって、そいつは唾を吐き捨てた。

「《星》が死んでも、地獄には行かねぇよ。空からお前を呪い続けてやる」

「黙れよ死に損ない」

 

 ニィっ、っと三日月を描くように、そいつは笑って見せた。

 

 

「――黙らせてみろよ、臆病者」

 

 

 僕は引き金を引いた。

 討伐数+1。

 

《シルバーバレット》から放たれた銀の銃弾を受けて、《異星体》の生体反応は完全に消失する。身体は(ちり)の様に散っていき、不自然な挙動で空へと舞い上がっていく。

 

 ――星が空に還っていくのだ。

 

 僕たち星狩りにはそれを最後まで見届ける役割がある。塵が目視できなくなって初めて、討伐成功と言えるのだ。さっきのは早計だったが、結果的には同じだ。

 殺した。

 殺せた。

 僕が、しっかり、この掌で。

 

 それにしても、臆病者、ね。

 

 効いた。

 

 確かに喋り過ぎたよ、饒舌だった。反省してる。

 自己弁護に奔走してたよ、次からは気を付けてやる。二度と説明なんてせずに瞬時に引き金を引いて何も考えずにただ歯車のように回り続ければいいって話だろうがやってやるよ――!

 

 

 ポン。

 と、気安い音がした。

 

 

「よく頑張ったね」

 背伸びした先輩に、僕の頭が撫でられていた。

「やめてくださいよ、柄じゃないんで」

「月野くんは頑張ったと思う。だから『先輩』には後輩を労う義務があるのです」

「じゃ、頭撫でるのやめてサイゼ奢ってくださいよ」

「にゅふふ、そうしよっか」

 変な笑い方をした先輩が、手をひっこめた。

 

「――《星戦》を解くよ」

 

 彼女の一声で、周囲に展開されていた結界は崩壊した。

 何も音は経てずに、ただ日常風景・児童公園に光学迷彩の様に溶け込んでいた僕たちの姿が、周囲から視認されるようになる。

 

「じゃ、サイゼ行こっか!」

 

 先輩は太陽のような笑みを浮かべて言った。

 化け物を殺した後で、ミラノ風ドリアを食べながら気軽に、放課後の高校生のような談笑を繰り広げる。

 

 傍から見れば、学校の先輩と後輩。

 その実、戦闘におけるバディであり、友人であり――バイト先の先輩でもある――五十鈴千代(いすずちよ)とはそんな関係。

 

 

 ああ、ちなみに《星狩り》はアルバイトだ。

 小学生から銃を握れるアットホームな職場である。

 

 はは。

 

 残酷だ。

 

 だけど、現実ってそんなもんさ。

 

 

 

「――じゃ、報告に行こうか!」

 

 

 

 伝票を持って立ち上がった彼女に続くように、僕たちは『渡辺探偵事務所』へと向かった。

 

 

 

 

 




幕開け幕開け~

殺人の自己正当化っていいよね…
あと、もし仮に改題するとしたら、『青春盤上:シルバーバレット』になるかもしれん。
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