TSメス堕ち俺っ娘スライムと作る宇宙最強ハーレム   作:最条真

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52『満月、矛先を交える』

 

 

 

 

 理論には限界がある。能力には上限がある。才能には差異がある。

 

 生まれ持ってしまったものの“違い”、としか言いようがない。白雪結姫乃の凡人性と、月野初の特異性を比べれば。

 

 夜空を見上げれば、“星”が見ていないのだと、分かる。視点が与えられない。お前の鍛錬の様子に、誰も興味なんてない。

 

 悪趣味な星が耳元で嗤った。

 

 白雪結姫乃は構わず走る。ポニーテールで、ジャージ姿で、ランニングだった。走り込みだ。体力増強を目的とした自主トレーニング。

 ――《星魂》による身体強化の上限は、素の身体強度に依存する。

 ただでさえ才能がないのに、努力を怠るつもりはなかった。

《二ツ星》がなんのか、と問われれば。努力次第で誰でも“現実的”に昇格できる等級だと断言できる。並の才能があれば、半年もあれば、すぐに。

 

 結姫乃はその昇格に一年を要した。

 

 続けられること自体が才能なのだと、自身を擁護することは出来る。《星狩り》を続けるのは異常者だけだ。言ってしまえば、命を懸けて宇宙人と戦う仕事。実入りはいいがそれだけ。常人なら半年も持たずに辞める。辞めたほうがいい。

 

 ――恨みがないなら、こんな仕事。

 

 星狩りの八割は、被災者だ。『東日本大震災』『横浜重力消失事案』『九州全域昏睡病』『東京大停電』――そのいずれかに被災し、それを引き起こした《異星体》に恨みを抱いている。……抱き続けている。

 

 

 ――才能とは、情熱だ。

 

 

 心から笑い、

 心から怒り、

 心から哀しみ。

 心から楽しむ。

 

 

 一途に魂を燃やし続ける能力――星が求めているものだ。星狩りに必要な資質。身体の裡に抱えていないといけない熱量。白雪結姫乃にはそれが――。

 

「止めなさい」

 

 夜のランニングコースは、街の喧騒から完全に切り離されたように静まり返っていた。等間隔に立つ街灯の無機質な光が、黒々と沈む木々の輪郭と、アスファルトに落ちる結姫乃の影をぼんやりと浮かび上がらせている。

 

 すれ違う者すらいない孤独な暗闇の中、彼女自身の荒い息遣いと、焦燥感を沈めるように地面とスニーカーをぐりぐりと擦り付けて見せた。

 

 苛立っていた。やがて覚める。分かっている。

 許せない。何が。

 己の弱さが。貧弱さが。才能のなさが。

 並び立てない。誰に。

 彼に。私はどこまで行っても兄の二番煎じだ。

 

 

 ――お前は駄目だよ。

 ――だから。

 ――だから、狙われる。

 

 

 そこで結姫乃は唯一つ、悪辣な星がこちらを見下ろしていることに気が付いた。

 

「よォお姫様。良い夜だな」

 

 唐突に現れた。前方、降って湧いたかのように現れたのは、二メートルに迫る体躯を持つ大男だ。髭を生やした茶髪の、顔立ちの濃い欧米風の男。日本人ではないし、マトモな男ではない、ということを結姫乃は雰囲気で察した。

 男が持つ筋肉の鎧。それを包み込むように、荒々しい外套を羽織っている。続く、手袋、ブーツ、レザーグローブ。どれを取っても“歴戦”であることを感じさせ、むしろ気味が悪いのは、ここまで傭兵然としているにもかかわらず、一切の武具を身に着けていないことだった。

 

「…………、あなたは、……何?」

 

 目の前の光景に呼吸を忘れかけ、ようやく捻りだした一言目がそれだった。

 

「俺? 俺はダリウス。金を貰えたらある程度のことはやる……《傭兵》ってやつだ」

「傭兵……」

 

 話には聞いたことがある。《星の寵愛》を受けながら、組織に縛られることなく、その力を単純な金銭のために振るう存在。多くは関西に存在する軍事企業『PWC(Plan Warfare Corporation)』――金が動けばどこにでも現れる――《星守り》御用達の組織の名前だ。

 彼らの特筆すべき点は、人間であるという事。

 この星を守る仕組み――《蓋然性》は主に異星体に適応されるものだ。人は、縛られない。この母なる地球で、子供である人だけは自由だ。

 

 故に彼らは“予兆”もなく、突発的に現れる。

 

「どういう用件かしら」

「目的はお前の身柄。……空がうるせェんだよ。そろそろ“凶暴”なのが見たいってな」

 ダリウスと名乗った男は、空を指した。

 それを合図に、星が輝き始めた――気がした。

 

 マトモな用件ではないことは、男の口が開く前から確かだった。銃はない。だが、やってやれないこともない。例え戦闘になろうと、一介の傭兵如き相手になる――

 

 ――掌。

 

 とっさに頭を振って躱し、カウンターの蹴り――氷の刃を纏った《氷刃蹴り》を鳩尾に見舞う――が、びくともしない。まるで山に触れているみたいだ。動かない。動かせない――焦った。咄嗟、無詠唱は仕方ないとしても、男の琥珀に光る三白眼、虫を見るような目が、最悪な思い出と、兄との離別と結びついて。嫌な汗が流れ、

 

 

 二度目の掌が迫った。

 

 

 

 

 

 ――――――――――――☆―――――――――――― 

 

 

 

 

 満月だった。叫び出しそうなほどの激情が湧きだしそうな程の、満ち足りた月。月野初は蠢いた。目的地に誰よりも早く辿り着くのに必要としたのは触手だった。

 グラップアクション。

 伸ばした黒腕は驚異的な速度で壁に張り付き、伸縮、縮む力で月野は飛んだ。屋根、木々、電柱、電波塔、何もかもお構いなし。不吉な台風のような速度で、指定された住所へ向かう。最短最速最効率で。全てを感覚に委ねて飛ぶ。

 目を瞑っても分かる。

 どうすればもっと早く動けるのか。思い付きの移動手段、窮地が迫り、導き出した最適解の移動方法。地形を駆使して空を舞う。自覚なき超人的な躍動、画期的な移動手段。体得した少年の顔に笑みはなかった。只々、黒色の情念が瞳の奥に渦巻いていた。

 

 少年は世界に対しての呪詛を吐きながらも冷静で、しっかりと着地地点を見極めていた。そこは、地上の喧騒から完全に隔絶された高層ビルの屋上だった。おあつらえ向けにヘリポートまで用意された、広大な場所。『H』で象られた黄色い土俵の真ん中、月野はようやく、“最低な連絡”を寄越した男を見つけた。

 

「夜分遅くに呼び出してすまねェな」

 

 片手を上げて挨拶をする大男。敵意はない。不気味なことに、旧知の友人と再開するかのように、きさくな笑み。

 

「――結姫乃は無事なんだろうな」

「縛って置いてある。ほれ、あそこ」

 

 男が顎でしゃくった先、冷たい金網フェンスの根元に、結姫乃は力なく打ち捨てられていた。普段の気丈な姿は見る影もない。太く無骨なロープで手足を乱暴に縛られ、冷え切ったコンクリートに繋がれた姿はひどく痛々しい。微かに胸が上下しており、命に別状がないことだけは見て取れたが、それだけだ。

 それだけで、微塵も、月野の激情を納めることはなかった。

 

 よくわかった、というだけだ。

 今まで、日常というぬるま湯に浸かり切って、平和ボケして、世界から理不尽を押し付けられない平穏を享受して、それが当たり前ではないことを忘れていた。

 時に世界は理不尽を押し付けてくる。

 

 今まで運が良かっただけだ。いや、今回もまだ運がいい。愛しい彼女の命は、奪われることなくまだ留まっているのだから。幸いしたのは、相手が決定的な友好の断絶を望んでいない、ということだった。

 

「電話先でも名乗ったが、俺の名前はダリウス。しがない傭兵、金さえもらえれば殺しでもなんでもやる……まァ、悪いオトナさ」

 

 顎鬚を撫でながら、男はキザっぽく笑った。

 殺してやろうか、思ったが、男はそれでいて、案外隙がなかった。

 

「今回の任務は――アレだ、結構特殊でな、やりようを考える必要があって……お姫様を攫ってお前さんを呼びつけるのが最適だと考えた。こちとら外注されてんだ、やり方に文句を言われる謂れはないね」

 

 ダリウスは悪びれる様子など微塵も見せず、分厚い胸板を逸らして両腕を大の字に広げてみせた。

 まるで観衆に己の正当性を訴えかけるような、ひどく芝居がかった大仰な仕草。

 その顔には、歴戦の傭兵には似つかわしくない、酷薄でどこか人懐っこい笑みがへばりついていた。

 言葉では弁解を口にしながらも、獲物を前にした捕食者のように琥珀色の瞳はギラギラとした喜悦に濁っており、男がこの状況を心の底から楽しんでいることだけは明白だ。

 

「誰に言い訳してんだ?」

「――お前さんに、って言ったら怒る?」

 

 既に、血液は沸騰している。ぶくぶくと触手が泡立ち、発火していく。無意識化に六つ。暴力に最適化された黒い触手が、矛先を求めて揺らいでいた。

 

「まるで蜘蛛だな」

 

 男は笑った。

 

「……にしても、御託を聞く余裕もないか? 暗いのは嫌いなんだよ、俺は。映画はとにかくコメディが好きでね。『ホーム・アローン』とか。お前は?」

「お前と映画の趣味について語り合う必要があるか?」

「つれないね」

 

 ダリウスは『やれやれ』とでも言いたげに、丸太のように太い首をすくめて両肩を大げさに持ち上げた。

 

「確かに、俺はお前を殺しに来た男だ。今から殺し殺され合う仲……だからこそ、この一度きりの思い出を、より鮮烈なものとして残しておきたい。俺は言葉を尽くすタイプでね。女の子を口説くときはいつも」

「――気づいてないのか?」

「………………何が?」

 

 

 軽薄な男の雰囲気を吹き飛ばすかのように、真剣な表情で月野は言う。

 

 

「――お前、僕の逆鱗に触れたんだぞ」

 

 

 ははっ、乾いた笑みを男は漏らした。

 

「若いっていいね」

 

 禍々しく笑った男と、圧倒的な蹂躙を決意する少年の思惑は同じ。

 ――宣言できるのなら、しない理由がない。

 

 

「「《星戦》を宣言する」」

 

 

 重なった詠唱。現実世界がはじけ飛ぶ。

 月野が展開したのは“闇”――彼を空から見守る《後見星》が、自らの一部を貸し与える。それは、母なる深淵。夜よりも色濃い黒が辺り一帯を包み込み、結姫乃だけを除外した優しい外郭の形成――が始まらない。

 

 星戦が持つ基本効果――“外郭の形成”は、本来、戦場を現実から切り離し、部外者への被害を完全に遮断するための隔絶結界である。

 通常なら、領域外に弾かれた結姫乃は安全に保護されるはずだった。

 だが、二つの《星戦》が同時展開され領域が混在した場合、絶対の法則が立ち塞がる。互いの力が拮抗し、かつ双方が外郭の構築能力を有していれば、結界の形成は同時に行われ、“混ざり合う”――二つの戦場が融合する――交流戦時の虚木戦、闇と霧の混在が記憶に新しい。

 もしくは、どちらかが一方的に勝っている場合。強者の星戦が優先され、弱者の星戦は飲み込まれる。結果的に、結界の様相も単一のものになる。

 

 さて、何故“闇”は展開されず、ただ自らの後ろに佇んでいるのか。

 弱さを理由に押しつぶされているわけではないというのに。

 

 それは、多方に散っているより、ただ契約者に力を与えるべきだと判断したからだ。

 

 

 ――“神器【カラドボルグ】“

 

 

 ダリウスの星戦には、“外郭効果”を付与する余地がない。

 彼のリソースは、その伝説的武具を再現する“武装効果”に割かれているからだ。

 

 星戦とはいわば、後見星の一部を貸し与え、広める行為。

 仮に、後見星が神話に登場する《武装》を保有するのなら、寵愛を与えたものに貸し与えることも可能なのだ。

 

【カラドボルグ】とは、ケルト神話に登場する魔剣――。

 一説にはエクスカリバーの原形ともいわれ、それに並ぶ名剣であるともされる、伝説の雷電の剣だ。

 

 

 

 

「――さァ、始めようか」

 

 

 

 目的は明白、ただ自分を殺すことが目的だという男。

 こちらが滾る理由は単純だ。

 

 

 

「僕の大切な彼女に手を出して、タダで済むと思ってんじゃねぇぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






結姫乃を守るために外郭を展開しようとしたら、それやってる場合じゃねぇわと拒否られた奴。有能なエルママ。

星戦は主に三種類の効果、“外郭”“憑依”“武装”に分けられます。リソースがあまってるならどれか一つと言わずすべての効果を発揮することも可能です。星戦内の能力向上は、正確には外郭ではなく、憑依効果によって起きていたもの。今回は外郭張る余裕なしで憑依に全ぶっぱしました(エル判断)

後見星が許可するなら、神話的武装も投影できます。雑に強いよ。



話を合わせればまだ色々喋ってくれそうだったけど月野くんは華麗にスルー。
良くわからん男が彼女を害した、それだけでとっちめなければいけないのです。



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