魔法少女はニチアサ展開に付き合いたくないって話。   作:暁真

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温度差が憎い。


あ、月刊1位ありがとうございます。


手が届くなら掴むのがヒーローって話。

 

「クソ……が……私は、ま、だ……」

時空加速(クロノアクセル)終了……よくやってくれた、ミネルヴァ』

「正直頭がぐわんぐわんしますけど……なんとかなって、よかったぁ……」

「……後は」

 

 着地した後忘れずアポロから破損したディーデバイスとティタノデバイスを回収し時空加速(クロノアクセル)を解除。

 一番怖いのはこれを回収されて次のアポロ(被害者)が生まれること、それだけは絶対に避けなきゃいけない。バッカスがこれを想定して無いはずがないのだから恐らくは……

 

「随分と無様な姿だな、アポロ」

「ネプ……トゥーン……!」

「この状況で連戦……!?」

 

 やっぱり回収係が居た。ティタノデバイスがこれ1つだとは考えられない、ネプトゥーンも持ってると仮定して……

 

「やはりバッカスの言った通りになったか。ウルカヌスの工房からティタノデバイスを持ち出したと聞いて嫌な予感はしたが……この体たらくとはな」

「黙れ……私は……!」

「もういい、どちらにせよ貴様は不要だ」

「……は?」

「「可能であれば」デバイスを回収してこい、というのが私の命令……それにお前は含まれていない」

「ふざけ……!」

 

 ……想像通り、バッカスは今のアポロを元から処分する予定だったらしい。彼女の事だ、ティタノデバイスを取らせたのもわざとだろうし、実験ついでに倒してくれたらまあいいかくらいで居たのだろう。

 

「……とはいえデバイスは奪われたか。3人は戦えないとはいえ今は多勢に無勢、退かせてもらおう」

「逃すとでも……っ」

『落ち着けミネルヴァ。時空加速(クロノアクセル)の負担は君の想像より大きい、退いてくれるのならば寧ろありがたいまである』

「テルスさん……」

 

 咄嗟に倒れたままの皆を庇って戦おうとしている、やっぱり三葉さんは強い人だ。

 

「……再び着身(マギアライズ)したか、ユピテル」

「ええ、もう私は逃げません。貴方達からも……自分からも」

「そうか、ならばもはやお前は回収対象でも何でもない、敵だ」

「そうですね。刃を向け合っている内は、敵」

「では、な」

 

 ネプトゥーンは何をするでもなく帰っていった。アポロのデバイスに執着しないという事はティタノデバイスの量産自体は始まっていると見ていい。つまりメルクリウスやウルカヌス、マルスまで……

 

 ……私に、どうにかできるだろうか?

 

「……ちく、しょう……!私は、私は、また……!」

「……」

「シルウィアさん?」

 

 いや、今それを考えるべきじゃない。まだ、やるべき事がある。

 

「テルス」

『……確認しておこう、それは君の意思か?』

「私の意思です。弍乃さんならそうしただろうと、そんな思考も少しはありますが……」

 

 ゆっくりと、地に伏せたアポロに歩を進める。

 

「なに、を……」

「助けたいと願っているのは他ならぬ私です……付き合ってもらえますか?」

『構わない、では「待ってください!」……ミネルヴァ?』

「……シルウィアさんがやろうとしてること、私にも手伝わせてくれませんか?」

「手伝うって……」

 

 確かにネプトゥーンは撤退した、再びゲートが開かれる可能性は低い。それでもやってる途中は完全無防備だし相応の負担がかかる、できれば見守るに留めて欲しいけど……

 

「……うん、貴方は言って聞く人ではありませんでしたね。こういう状況なら尚更」

「あはは……ダメですか?」

「本当はダメと言いたいですが……それで止まる気がしませんもの、一緒に行きましょう」

「はい!」

『……君達は弍乃と違って即断即決だな』

「善は急げと言いますので!」

 

 三葉さんはこういう人だ、振り回される事もあるけど気持ちが良い。だからこそ、遠慮なく力を借りよう。

 

『褒めている訳ではない……行くぞシルウィア、そしてミネルヴァ。2つのカオスデバイスを同期する』

「準備はいいですね、三葉さん」

「はい!」

「……?」

「「 強化三(マキシムトリ)重詠唱(プルコール)!」」

 

 アポロの前で2つのカオスデバイスを掲げ、詠唱。

 

共鳴(レゾナンス)

潜航(ダイブ)

「「 (リコレ) (クション)!」」

 

『演算は任せろ……行ってこい』

「はい!」

 

 詠唱終了と同時、視界が黒く染まって。

 

 

 

 

 

 

「え……お、落ちてるぅ!?」

「落ち着いてください三葉さん。此処は精神世界、落ちてるように見えますけどただ記憶の入り口を探しているだけ」

「そうなんですか……変な感覚……」

 

 再び視界に色が付く頃には2人揃って12時で止まった時計が並ぶ空間をひたすら落ちていた。以前弍乃さんからやり方を聞いておいてよかった、これなら迷う事もない。

 

「……あそこです。行きましょう」

「なんか、白一色なんですけど……大丈夫なんです?」

「正直私にも分かりませんが、弍乃さんが言ってたので多分」

「じゃあ大丈夫ですね!」

 

 少しすると見えてきた白い空間へと突入。気づけば落ちていくような奇妙な感覚は止み、脚にはしっかりと地面の感触があった。多分これで正解……の筈。

 

「此処が……」

「やっぱり真っ白……いや、あれ?」

 

 目の前でどんどん景色が形作られていく、多分これがアポロの記憶。そうだ、落ち着け。弍乃さんがそうしたように……本当の彼女を、引き摺り出してやればいい。

 

「これって……」

「私たちはただ見るだけでいいんです。本当の彼女を捉えるために」

「……」

 

 そうして描き上がった風景が再生される。これは……

 

 

『ダメね、これじゃあ』

『……』

『貴方は▪︎▪︎▪︎▪︎なのよ?もっとしっかりしないと』

『……私は』

『分かってる、もっと努力しなさい』

 

『……』

『私って、何なんだろ』

 

「……教育虐待?」

「にしては、あまりにも淡白すぎるような……」

 

 日常の一幕というにはあまりにも重々しい。目の前で少し涙を流しながら拳を握っているのが幼少期のアポロなのだろう。

 

(……もの好きだね、あんた達も)

「アポロ……!?」

「此処は彼女の精神世界、どちらかと言えばアポロじゃなく……」

(言っとくけどやめてよ?私この名前嫌いなんだよ)

「え、なんでですか……?」

(……ああクソっ、全部見られるの嫌なんだけど……)

「貴方のためです、我慢してください」

(自己満足だろうが……)

 

 景色が描き直される。次は……遺影?

 

『……なんで、死んでんだ』

『私は私だ!アンタじゃない!』

『なのに、なのに……!』

『なんでパパもママも、私をアンタの代わりとしか見ないんだ……!』

 

「……」

(あれは血縁上の私の姉さ……私が生まれる前に死んだけど)

「そういう……」

(ティフォンに殺された60万人の1人ってだけ。運悪く両親は生きのこっちまった)

「ティフォン……」

 

 ……つまり彼女も、あれに人生を狂わされた人間の1人。それも、生まれる前から。

 

(バカな親だよ。同じ名前にしたって別人なの分かりきってるだろ?なのにやれ頭の出来が違うのなんだの……そもそも顔から違うっての)

「貴方は……」

(憐れむな、それがいっちばんムカつくんだ)

「……すいません、続けましょう」

 

 二度、景色が描き直される。今度は……路地裏?

 

『ハハッ、ハハハッ!アハハハハハッ!』

『そうだ、最初っからこうすりゃよかったんだ……!』

『力だ、力さえありゃあ……私は私で居られる!代用品でもなんでもない、私に!』

『……あばよ、クソみたいな家庭』

 

(……ま、そんな生活にも限界が来てな。12の時に家を飛び出して喧嘩に明け暮れた、自分で居られる場所を自分で作るために)

「……辛くは、なかったの?」

(だから憐れむなっつってんだろ!当然勝つ日もありゃあボコられる日だってあった。けどな、それは私が自分で選んだ結果だ。だからあの家庭に居た時よりはずっとマシだった……けどな)

「けど?」

(……結局、私では居られなかったんだよ)

 

 喧嘩に明け暮れるアポロ。段々と付き従う者が増え、気づけば……

 

(喧嘩し続けた先にあったのはガラでもない「統括者」だ。必要とされてるのは最強である私で……本心を曝け出せる居場所なんて、結局作れやしなかった)

「誰かを頼る事はできなかったのですか?」

(お前馬鹿?みっともなく誰かに縋り付くリーダーなんて必要とされてねぇんだよ)

「ば、馬鹿……」

(ただ、あの家庭に居た頃よりは遥かにマシだった。無駄に頭は良かったからな、なんだかんだで出来ちまってたんだよ柄でもないリーダーがな)

「……それが、どうして魔導士(マギスター)に?」

(物凄い、単純な理由だ)

 

 三度景色が変わる。同じ裏路地だけど雨が降って……うん?

 

『……おい、なんだアンタ。死にかけてるじゃねえか』

『……げ……』

 

 ボロボロの男性と向かい合うアポロ、って……あの手に持ってるのは。

 

『あ?何言ってんだ聞こえねぇぞ。此処は私のシマなんだからもうちょっと分かりやすく『逃げ、ろ』……は?』

『俺に、関われば、君ま、カハッ……』

『……あ、え?』

 

「ディーデバイス……って事は」

(多分私の前のアポロだったんだろうな。ユノに負けて命からがら戻ってきたんだろうが……アイツに処分されちまった)

「アイツ……?」

(言わなくても分かってんだろ)

 

『はあぁ……なーんでウルカヌスに続いて君達まで最適化(フォーマット)すらしてない子に負けるかなぁ。次はもうちょっと使える子に与えないと……ってあれ、あーあ、見ちゃったかぁ』

『……だ、誰、だ?』

『君に名乗る名はないよ。さて、どうしちゃおうっかなー』

 

 ……やっぱり。

 

「バッカス……」

「こんな所にまで……!?」

 

『一番手っ取り早いのは後始末だけど……ま、次までの繋ぎくらいにはなるでしょ』

『いきなり現れて、なんだ、お前』

『大人に向かってそれはないでしょ。ああそうそう、君には一緒に来てもらうから、これに拒否権はないよ?』

『何を急に、ふざけっ!?』

『ふざけてないんだよねぇ……じゃ、これからよろしく、次のアポロ。期待はしてないけどせいぜい役に立ってよ?』

 

 

(……これが魔導士(マギスター)になった経緯だ。口封じ代わりに使い捨ての駒にされたんだよ、私は)

「酷い……」

「私以外にもこんなことを……」

(無様と笑うか?何処に行っても私は私で居られなかった。何処でも必要とされてるのは偽りの私だ、馬鹿みたいだなほんと)

 

 気付けば風景は白一色に戻り、目の前にはアポロ……いや、本当の彼女が佇んでいた。

 

「最初に言っておくが私はもう疲れた。それでも助けようってんならそれはお前らの自己満足だ、さっさと終わりたいんだよ、こっちは」

「それは諦めですか?」

「そうかもな、結局ハナから私に居場所はなかったんだ。どれだけ頑張っても、な」

「……それを否定することはできません」

「だろ?ならさっさと「けど」あ?」

「だからと言って見捨てたら私が嫌です。散々戦ってきたけど……やっぱり悪いのはタルタロスで貴方に非はないから。だから手を掴むんです」

「……偽善者だなお前は。助けたそのあとはどうするつもりだよ。病院に怪我した野良猫連れていくんじゃねえんだぞ」

「私達が本当の貴方で居られる居場所になります!」

「あ?」

 

 ……相変わらずだな三葉さんは。けど、助かった。私だけじゃ説得しきれなかっただろうから。

 

「私は貴方がどんな人かを知ってるから!別に何かを強いる訳でもないしして欲しい訳でもない、見捨てたら面倒だと思うから助けたい、それだけ!」

「……はあぁ、なんだよお前、めんどくさい」

「弍乃さん譲りなので!」

「チッ、お前もなんか言えよユピテル」

「私も同じですよ。貴方を見捨てる方が面倒だから助ける、それだけです。勿論アフターケア込みで」

「……こりゃ何言っても無駄か」

 

 呆れた様子で手を伸ばすアポロの手を三葉さんが笑顔で掴む。無事、成功したようだ。

 

「それじゃあよろしくお願いしますね!アポロ……じゃないや、えっとでも……」

「テトラ」

「はい?」

「テトラ・フローガ、見たんだから知ってるだろ。この名前は大っ嫌いだが……アポロの方がよっぽど嫌いだ、こっちで呼ばれる方がマシ」

「じゃあよろしくね、テトラ!」

「急に気安くなるんじゃねえ……ほら、さっさと行け」

「なんだかんだ魔導士(マギスター)になる前と後で性格殆ど変わりませんでしたね、貴方」

「黙れ、お前が変わりすぎなんだ」

 

 うざがっている顔は何故か本心には見えなくて、それだけでも彼女が少し救われたのかもしれない、と思ってしまった。何はともあれ記憶干渉は無事終わったようで視界が真っ白に戻っていく。三葉さんの協力のおかげもあるけど、やり遂げられてよかった。

 

 

 

 

 ……ねえ、弍乃さん。

 

 

 

 私、貴方みたいに上手くやれましたか?

貴方の変身ヒロインは何処から?

  • セーラームーン
  • リリなの
  • プリキュア
  • まどマギ
  • シンフォギア
  • その他
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