シルウィアさんが再びユピテルとして
「そういやアポロは何処に匿うの?流石にそれくらい考えてるよねシルウィアさ……」
「……」
「……まさか」
「考えて」
「なかった?」
「……どうしましょう」
「どうしましょうじゃないよぉ!?」
「どーすんのさこれ!?」
なんとシルウィアさん、テトラをどうするか考えてなかった。いやまあ襲撃が唐突だったし仕方ないっちゃ仕方ないんだけどさぁ。
「だーから放っておけっつったんだよ。別に私はそこら辺の草でも食えるしお前らに心配される筋合いはねぇ」
「幾ら今まで敵だったとはいえ流石にそれは見過ごせないよ!?」
「人間ってのは雨風凌げる場所さえありゃ生きていけんだよ」
「その年の子から出ていい発言じゃない!」
とうのテトラ本人はサバイバル生活する気満々だったしどうしよう……って所で。
「あ」
「八雲?」
「……うーん、ちょっとアテあるかも」
「一応聞いていいかな」
「ちょっと人手足りないから……さ」
「いいのかなぁ!?この子年齢多分三葉達より少し幼いくらいだよ!?いいのかなぁ!?」
「うるせぇ私は14だ」
「あっ外見よりちょっと上」
「誰がチビだはっ倒すぞ」
「言ってないよ!」
八雲からの助け舟。問題は八雲のご両親が受け入れてくれるかどうかだったんだけど……
「いらっしゃいませ!……ってなんだお前らかよ、いつもの席空いてるぞ座れ」
「客にする態度じゃない!?」
「客ならなんか頼みやがれ、会議室じゃねえんだぞ」
「それは……はい……」
「テトラちゃんはなんで君達には辛辣なんだろうねぇ……普通の接客は完璧なのに」
「複雑な事情があるんですよマスター……ほらさっさと行け、客はお前らだけじゃねえんだ、お前らを客扱いしたくねぇが」
「あはは……」
なんと無事オッケー。テトラは八雲のお父さんの店で働く事になった……色々と大丈夫なのかなぁって思ったけど本人達が納得してるんならまあいいだろう、多分。
まあ今日の本題はそこじゃなくて……
「……シルウィアさん、テルスさんは?」
「進捗70%と言った所でしょうか。三葉さん達のディーデバイスは最早ガワが同じだけの別物になっていますから完全な同期に苦戦していまして……」
「何やってんのさファウヌス」
「だからやったのは僕じゃないって!」
「まあティタノデバイスのサンプルがありますからどうにかはなりそうです……後1日程かかりますし、一回三葉さんのディーデバイスを預かって調整しないといけませんが」
「1日かぁ……」
『すまないがこればかりはどうしようもない。少しでも同期がおかしければ私と君に多大な負担がかかる』
「シルウィアさん、僕達もティタノデバイス修理すれば使えたりとかしない?」
「元よりディーデバイスの強化用ですしカオスデバイスより同期は楽だとは思いますが……それでも時間はかかるでしょうね」
「同時進行とかは……」
『やめておけ、シルウィアの負担が増えるだけだ。タルタロスが
「……やっぱりテルスさん、下手な人間より人間らしいですね」
『人間らしさの定義が何かによる。私は肉体もなく思考も計算されたただの機械に過ぎない、少なくとも人間という生命体とは似ても似つかないだろう』
「哲学的だなぁ……」
アポロの元々持ってたデバイスは今シルウィアさんが持ち歩いている。それを修理と同期ができれば私とシルウィアさん含めて
「それにティタノデバイスによる強化……
「正論ですね……ただ、そうなると」
「私達足手纏いになっちゃうね……」
「ずっと三葉とシルウィアさんに任せっきりにはできないし……うーん。ティタノデバイスも1つしかないもんなぁ」
相変わらずタルタロスはいつ襲撃してくるか分からない。ティタノデバイスも時間制限がある以上制限時間経過してから増援、なんてやられちゃたまったもんじゃないし……弍乃さんも言ってたけど対処に回るしかないのが本当もどかしい。
「迷ってんなら返せ、バイト代代わりくらいは働いてやるよ」
「なんか弱そう」
「よし表出ろ」
「何やってるんですか貴方達は……というか壊れてるの返しても何もできませんよアポ……テトラ」
「直してから返せって意味だが?」
「だったらもう少し時間がかかりますね……」
「あ、返さない訳じゃないんだ」
「バッカスからは用済み扱いされたとはいえ万が一の自衛策は必要ですから。とはいえ優先度は落ちますが」
「まあそうだろうな。私の適合率じゃティタノデバイス相手は「注文いいですかー!」はーい!すぐ行きますー!」
……わあ、テトラちゃん表情の切り替えがあまりにも自然。
「案外彼女向いてたのかもね、こういうの」
「お客さんにも結構好評みたいだよ、まさかこんなすぐ戦力になるとは思わなかったってお父さんが」
「人間何が向いてるか分からないものですね……」
「良かった……でいいのかな、多分」
ひとまずテトラちゃんに関しては問題なさそうだ、安心してこれからを考えられる。
「……うーん。三葉さん、明日までディーデバイスを借りて良いでしょうか?やはり実物がないと同期の調整が難しくて」
「別に構いませんよ」
『時間結界が展開されなくなった以上何か起きればすぐ駆けつける事はできるがそれでも万が一がある。帰路は護衛に就こう』
「そこまで……いや、そこまで、ですよね」
最初にウルカヌスと戦った時もそんな感じだった。偶然1人で居たところを狙い撃ちされて……もうないとは言いきれない、シルウィアさんの言うことは至極真っ当だ。
「それじゃあお願いします、シルウィアさん」
「ええ、最悪徹夜で仕上げてみせます」
「徹夜はしないでもらったほうが……」
「冗談ですよ、そこまで難しい作業でもありませんし」
「シルウィアさんも案外愉快な人だった……」
ディーデバイスを預けちょっと一息。あの戦いからちょっとの間に色々起き過ぎたけどシルウィアさんも立ち直ってくれたし、どうにかなりそうって気はする……けど。
「弍乃さん……」
どうしてもあの時消えてしまった弍乃さんが記憶に焼き付いて離れない。シルウィアさんとテルスさんを託すなんて言われちゃったけど私にはやっぱり荷が重すぎる、背負い切れる自信なんて到底ない。
『弍乃は
「それが人が住める所の保証は……?」
『最低限はあるだろうな。だが……本腰を入れて探そうにもタルタロスという障害がある、戦いが終わるまでは叶わぬようだ』
「……まだ、何もお礼できていませんもの。絶対探し出します」
「……うん!」
ごめんなさい、いろんな意味で。でも、信じてます。
きっと生きてますよね、弍乃さん。
「……眠れない」
その日は不思議な事に眠気が全く来なかった。コーヒーを飲み過ぎたとかそういう訳でもないし、身体が緊張しているという訳でもなさそうで。
「……走ってこよ」
こんな夜に襲撃も来ないだろうとこっそり家を抜け出して走りにでた。色々考えたけど原因は多分、今感じてるモヤモヤだと思ったから。
「……」
夏が本番になった事もあって夜でも若干蒸し暑い。走っていると風を浴びて涼しいけど止まると気持ち悪い、気づけば途中で止まるのもやめていた。
「どうすればいいんだろ、私……」
ただ、走っても走ってもこのモヤモヤは消える気がしない。無心になれないとかそういう訳でもなくて、どうしても奥に引っかかるような、そんな感じ。
私特別でもなんでもない14歳なのにどうして此処まで来ちゃったんだろう、とか。でもそれなら弍乃さんは13の時から戦ってるんだよなぁ、とか。シルウィアさんが居なきゃアポロ相手に何もできず負けてたし本当に大丈夫なのかな?とか。テルスさんに私はついて行けるのかな、とか。
いろんな事が浮かんでは消えていく、一向にスッキリしない頭と身体にイライラしながら走り続けて……
「……あっ」
気づいたらちょっと、遠い場所へ来てしまっていた。昼とかだったら別にいいんだけど今は夜だし家を抜け出してきてるから警察のお世話になりかねないし……まあこれだけ走れば少しはちょっとは眠くなるかなって戻ろうと、したんだけど。
「……えっ?」
帰ろうと振り返った一瞬、見覚えのある姿を見かけた。見覚えしかない帽子とコート、それは疑いようもなく……
「……弍乃、さん?」
気付けば足は帰り道から逸れて一瞬見かけただけの彼女を追っていた。ただの見間違いにしてははっきりとしすぎている、戻ってくるのが早すぎるとか、そもそもなんでこんな時間に出歩いてるのかとか考えるべき事は色々あった筈だけどなんでか今はそれどころじゃない気がして。
「何処に……居た!」
やっぱり見間違いなんかじゃなかった。近くの公園に佇んでいた彼女は私の声を聞いて立ち止まったようなそんな感じで……
「弍乃さんっ!」
居ても立っても居られなかった。帰ってきたんだとかそういうのより先に私の中のモヤモヤをスッキリしたくて、駆け寄って。
「私……その……!」
2人っきりだし弱音とかそういうの全部吐き出していいよね、とかそんな能天気な事を考えていたのがいけなかったのだろう。
「……え?」
……さっきまでそこに居たはずの弍乃さんは此方に振り向く直前姿を消して。
「
「っ……!?」
それに呆けているうちに飛んできた鎖を躱わせずアポロの時みたいに四肢を絡め取られて……まさか。
「いやぁ普段正々堂々戦ってるとこういう露骨なトラップもあっさり引っかかってくれるの発見ねぇ、ある意味効率的かしら」
「バッカス……!?」
予想外、とでも言いたげな顔で目の前に現れたのはバッカス。そっか、今私ディーデバイスもテルスさんも持っていないからゲートを感知できなくて……というか、なんで今……!
「予定ならちょっとティタノデバイスを試すところだったのだけれど……あっさり確保できちゃったし試運転はまた後日にしましょう」
「何が、目的……!」
「そんな怖い顔しないの、というか殺さない時点で薄々察してるんじゃないの?ミネルヴァちゃん」
「ひっ……!?」
近づいてきたバッカスに顎を持ち上げられ視線が合う。此方を覗き込んでくる目は私を値踏みするようで逃げてしまいたくなるけど、それすら許されない。
「とはいえどうしようかしらねぇ。交渉材料に使うまでは確定だけど前ユノちゃんにやった時は奪い返されちゃったし……下手に投入するよりは監禁しておいたほうがいいのかしら」
「弍乃さん、に……?」
やったって、まるで弍乃さんが1人っきりで戦ってた訳じゃないみたいな言い方……いや、まさか。
「貴方達のディーデバイスはなんかもう別物みたいだから
「人の事を、なんだと……!」
……2人の言っていた通りだ。こいつに人間らしい心なんてない。合理的で、悪びれなくて……!
「別に殺す訳じゃないわよ?ちゃんと人間という生命体としての最低限は用意してるし。というか死なれたら交渉材料に使えないじゃない」
「ふざけ……!」
「あら、強がらなくていいのよ?足ガタガタ震わせながら吠えてるの逆に可愛く見えるわ」
「そんな、こと……」
分かってる、これはただの強がりだ。でもこうしてないと自分が自分でなくなってしまう。怖さに押し潰されて……本当に何もできなくなってしまう。
「さて、何はともあれまずはデバイスを……ない?メンテ中なのかしら。まあそれならそれでいいわ、大事なのは万が一がない事だし」
「……っ」
でも電話……無理。皆は……来てないって事はバッカスを感知できてない、他に何か抵抗できそうな事は……ない、みたい。
「隠密行動も面倒なものね……ひとまずおやすみなさい、目覚める頃には全部終わってるか全部終わるまで待ってる事になるでしょう。
「や、め……」
意識が塗りつぶされていく、思考を維持できない。どうにか張っていた虚勢すら、崩されていく。
……ごめん、皆。
やっぱり私……ヒーローでもなんでもない、ただのか弱い女の子だったみたい。
貴方の変身ヒロインは何処から?
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セーラームーン
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リリなの
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プリキュア
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まどマギ
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シンフォギア
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その他