魔法少女はニチアサ展開に付き合いたくないって話。   作:暁真

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過去回想はサプライズが仕込まれてるって話。

 

[どう?推定初めてのコーヒーの味は]

[……何故二美はこれに砂糖を入れる?入れない方が味のバランスが良い]

[あ、思ったより気に入ったんだね!]

[そういう訳では……]

[マスター!おかわりください!ブラックで!]

[……理解不能]

 

[いやぁこの年齢になってもニチアサは卒業できないなぁ]

[子供向け。子供の定義は18歳未満の未成年の事。二美は対象年齢]

[いやそういうのじゃなくてね?なんかこう……こういうキラキラしたのって例えフィクションでも勇気をくれるんだ。私も頑張れるって]

[勇気?]

[そう。どんなに辛いことがあっても逃げ出したくなっても、食いしばって一歩進む勇気をくれる。アニメは人生の教科書ってわけ]

[二美はフィクションの主人公ではない。逃げたければ逃げればいい]

[だーかーらー、そうしちゃダメって訳じゃないの。逃げたら何か大事なものを失いそうって時に立ち向かう覚悟をくれる、それがアニメ]

[……そう]

[というわけでこの連休を使ってシリーズ一気するよ弍乃!]

[別にいい……]

[残念ながら決定事項!]

 

「なんというか……」

「一宮さんが距離を置こうとすると引っ張ってますね、物理的に」

『こういう荒療治だからこそ弍乃は人間らしくなったと言えるだろう。今の趣味もほぼ彼女の受け売りだからな、深夜アニメにのめり込んだのだけは許し難いが……』

「母親?」

『親代わりと言われればそうなのかもしれんな。何せ当時の彼女は父親とあまり話すことがなかった』

「さらっと重い家庭環境暴露してる……」

 

 気になる写真を片っ端から再生(リプレイ)し弍乃さんと二美さんの記録を辿る。気のせいかアルバムが進むに連れ弍乃さんの鉄面皮がほんの少しずつだが緩んできてる気がする、私のよく知る彼女になったのは割と昔なのかもしれない。というかことあるごとに写真撮ってるな二美さん……

 

「次は……」

「ねえテルスさん、この写真どれだけあるの?」

『さあな、彼女がデバイスを持たずとも写真を撮れると気付いてから爆発的に増えた』

「えぇ……」

 

 確かに見てみればある時から写真を撮る時手を伸ばしていない。なら……これか。

 

再生(リプレイ)

 

 これは……

 

[ねえねえ弍乃]

[そろそろ機獣(ヘカトンケイル)が爆発する、処理の準備を]

[いやそうじゃなくてさ。いつもの写真って私が魔法使ってるから撮れてるんでしょ?]

[正確には呪文(アーツ)。けどそれが何か……]

[つまり……誰かに撮ってもらう風の写真もできるって事だね!んじゃそういう訳でっと!]

[え……え?]

 

 そりゃ困惑もするだろうな、という感想。爆発のタイミングに合わせてみよう!とでも思ったのだろうか彼女は。そうだとしたら随分と破天荒だ……あれ?

 

「……驚いてる?」

「あっほんとだ」

「初めてこの弍乃さんが表情出してるの見た」

 

 そりゃ荒療治なんて言う訳だ。これだけ破天荒に振り回していればそうもなるというか、うん……結果的に良かったんだろうけど同情してしまう。

 

「あ、なんか少しずつ一宮さんの表情が出てる写真増えてきてる」

「ほぼほぼ困惑な気がするけど僕の気のせい?」

「ではないだろうな、相当彼女に引っ張られたと見える」

「じゃあ探してみますか、困惑以外で表情が出てる写真」

 

 二美さんに振り回されてるから困った表情ばかりなのはわかるけどそれだけならあんな図太い性格にはならない筈。となるとあの人が自分から変わろうとした時期がある筈だ、今までの傾向を見るにある筈だけど……

 

「これ……?」

「あ、一宮さんちょっと頬が緩んでる」

「見てみましょう、再生(リプレイ)

 

 多分初めて見た困惑以外の表情。もしかしてこれが?

 

[弍乃〜、今期どれ追う?いやまあ私は候補結構絞ってるからそれ全部追う気だけど……]

[マスカレード3期とエージェントデルタは決めた。後は概要を見てから……二美?]

[に、弍乃が自分から深夜アニメを追い始めた……!]

[……いつまでも二美に付き合わされて徹夜で鑑賞するのは効率が悪い。言い換えれば面倒、自分で取捨選択した方が良いと判断した]

[私は今猛烈に感動しているよ……ねえ記念に1枚良い?良いよね?許可なくても撮るけど!]

[好きにすればいい、止めても止まらないのが二美]

[さっすが半年も付き合ってればお見通しだね。あれ、笑った?]

[……さあね]

[むう。まあ微笑でもいいや、パシャリと]

 

 ……

 

「本当に荒療治じゃないこれ?」

「でもそれ以外でこうなる気がしない」

「なんというか……あの人の図太さはこの人譲りなんだなってのはよく分かりました」

 

 生き写し、という訳ではないけど弍乃さんの根っこは二美さんに多大な影響を受けてるのは確かだろう。本当に……大切な友人だった筈だ。

 

「段々と困惑の表情も減ってきてますね」

「でもまだ表情が遠慮しがち」

「あ、これは?なんかいつもの一宮さんの表情みたい」

「ふむ……」

 

 段々と着身(マギアライズ)中の写真も表情が柔らかくなってきてる、何かあったのは確かだろう……見てみるか。

 

再生(リプレイ)

 

 戦闘後、だろうか。破壊規模を見るにこれは……

 

[……どうにかなった]

[奴らもそろそろ本腰を入れて君達のデバイスを奪いに来た、という訳だろうな。ウルカヌス1人だけだったのは疑問だが……]

[……]

[二美?]

[ねえねえ弍乃、いつの間にあんな煽りできるようになったの?]

[アニメの真似事をしただけ]

[なら普段もやってよ。正直堅苦しくてしょうがないよ弍乃の喋り方]

[そう?]

[そう]

[……二美が言うならそうなんだろうね。じゃあ……これでいいかしら?]

[そうそうそれそれ!如何にもお嬢様って感じ!]

[別に私はお嬢様でもなんでもない……]

[はい戻さなーい!]

[……はぁ、いっつも思うけど要求が多すぎるのよ貴方。面倒だわ]

[これも弍乃のためなんですー!と言うわけで記念に1枚!]

 

「いつもの一宮さんだ……」

『ようやく君達のよく知る弍乃に近づいた、と言っておこうか。価値観も合理非合理から面倒が基準になっていった頃だ』

「ていうかウルカヌス?」

「前任者だろうな。私が適合者(デヴァイサー)になったのは2年前の事だ」

「そんなにコロコロ変わる物なんだ……」

「案外変わっているぞ?君達のデバイスにもそれぞれ前任者が居た訳だしな」

「ああ……」

 

 ……多大な影響どころか弍乃さんを構成してるのは全部二美さんとの思い出なんじゃないだろうか。趣味口調……ここまで来ると全部彼女の生き写しだなんて言われたら否定できない、流石にそんな事はないだろうけど。

 

「となると後気になるのは……どうして弍乃さんが彼女との記憶を消すに至ったかですね。此処まで大事な存在なのに何故……」

『その答えは最後の写真にある。それまでゆっくりとアルバムを漁っていればいいだろう。時間はあるのだからな』

「意外、テルスさんは早く済ませたいものだと思ってたけど……」

『……存外私も覚えていて欲しいのかもな。2人の事を』

「やっぱり人間くさいですね、テルスさんは」

『そうか』

 

 アルバムを漁ると言ってももう大半が似たような構図でたまに違うのはどこかに遊びに行ってたりだったり……でも、明らかに弍乃さんの笑顔が増えている。それも皮肉じゃなくて心から笑っているようなのが。親友、って言葉がしっくりくる。

 

「肩まで組んじゃってるよこの写真」

「此処まで来ると一宮さんもノリノリみたい」

「あの人のことですし白けるより付き合う方が面倒じゃないとか思ってそうですね」

「確かに」

 

 これも気になるけど私達が知りたいのは二美さんと弍乃さんの別れであって日常をずっと眺める訳には……うん?

 

「これは……」

「コスプレ大会?」

「いやどう見ても着身(マギアライズ)してるでしょこれ」

「……見てみますか、再生(リプレイ)

 

 一際目を引く2人とコスプレのような格好をした女性達。これはどういう……

 

清く掲げるハートのサイン!魔導士(マギスター)シャルルッ!

誇り掲げるスペードのサイン!魔導士(マギスター)ダヴィド!

想像彩る神秘の記録!魔導士(マギスター)レッドフード!

[おお……私達もやるよ弍乃!]

[何も考えてないでしょ二美……]

[こういうのは即興!いっくぞー!]

[はぁ……付き合わないのも面倒ね]

刻むは慈愛、示すは秩序!魔導士(マギスター)ウェスタ!

刻むは栄光、示すは真理。魔導士(マギスター)ユノ

[そういうわけで今日は特別!]

[1日限りの魔導士(マギスター)ドリームチーム、結成だっ!]

 

 ……えっ。

 

魔導士(マギスター)……!?」

「どっどういう事テルスさん!?デバイスは私たちのとタルタロスので全部だよね!?」

『……居たのだよ、我々以外にも呪文(アーツ)を操る戦士が、この世界に』

「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」

 

 まあ考えてみれば自然な話だ。この世界の人間にも魔力はあるしケイオス以外でも他の世界に転移する技術は存在するだろう。なら私達とは系統の違う魔導士(マギスター)が居てもおかしくは……ない、か?

 

「……ちなみにこの人達は?」

『修学旅行で偶然出会っただけだ。普段は活動場所も離れている』

「そっかぁ……力になってくれると思ったんだけど」

「私達の事は私達だけでなんとかしましょう……あまり長居しても悪いですし、最後の写真だけ見て今日は解散としましょうか」

「おう、コーヒー一杯でどんだけ粘ってんだお前ら」

「あ、いたんだテトラ」

「あと客はお前らだけだからな」

「あはは……」

 

 悪態をつくテトラに心の中で謝罪しながら一気に最後のページまでアルバムを捲る。本当ならもっとじっくり見たい所ではあるが今日は知りたい事が明確だ、2人の内面を知りたいのなら時間がある時にゆっくりと見ればいい。

 

「……」

『これが最後の写真だ、日付は……2年前の9/12』

「ダイヤル番号と同じ……」

 

 最後のページに1枚だけある最後の写真。構図は最初と同じような自撮りになっているけど……手を伸ばしているのは、弍乃さんだ。

 

「……笑顔っちゃ笑顔だけど」

「何か、あったんだろうね」

「何処か悲しみを感じます……」

 

 お互いに笑顔だけど満面というわけではなくて、何かを押し留めているような、そんな……

 

「……では、行きましょう。再生(リプレイ)

 

 場所は、公園だろうか。ベンチで2人並んで……

 

[んー……そっか、やっぱりそうしなきゃか]

[私だって……私だってこんな事、したくないっ!けど、だけど……二美を守るためには、こうするしか……!]

[私のデバイス壊れちゃったしまた攫われることはないでしょーって希望的観測はダメ?]

[君のデバイスはタルタロスに渡れば修理されてしまう……そうなれば最適化(フォーマット)で適合率98%となった君を逃す訳がない]

 

最適化(フォーマット)……」

「って事は……」

「……」

 

 ……何が起きたかは察しがついた。彼女を遠ざけようとするのは、当然か。

 

[そっかぁ……]

[だから……デバイスを私が封印して、二美の記憶を消す。そのまま転校するし安全で、二美がこれ以上巻き込まれる事もない……!]

[……でもそれじゃあ弍乃が独りになっちゃうよ。テルスが居るとはいえさ]

[大丈夫、私は立ち向かえる、一歩踏み出せる!だから、だからっ……!]

[……全く強情だなぁ。昔じゃ考えられないよ、何もかも非合理的で面倒くさがってた弍乃がこうなるなんてさ。まあ今でも日常以外のイベントは面倒くさがってるけど]

[二美と一緒だから面倒じゃなかった、日常だった……けど、そうやって誰かに依存するのは……面倒、ね]

[……はいはい、じゃあ最後に一個だけお願い、いいかな?]

[何、かしら]

[写真、1枚撮ってよ。最後だし弍乃がさ]

[……分かった。絶対に、良いの撮るから]

[うん大丈夫、心配してないよ。それじゃ……せっかくだし笑って、ね]

[ええ……]

 

 2人とも涙を拭って、肩を組んで……これが、最後の写真の記録。

 

「……テルス」

『なんだ』

「二美さんは、今何処に住んでるんですか?」

『阿戸螺市という港町だ。距離はあまり離れていないが交通の便が悪い』

「そうですか、ありがとうございます」

「……シルウィアさん?」

 

 大体理解した。十窯二美という人物を、弍乃さんが誰よりも大切にしていた親友を。

 

「エンネア、ティタノデバイスを1つ頂けますか」

「……何をする気だ?」

「決めたんです」

 

 だから、決めた。

 

「彼女に会いに行きます。多分私も……弍乃さんに、託されたと思いますから」

 

 このデバイスとアルバムを、返しに行こう。

貴方の変身ヒロインは何処から?

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